わたしは生きる。なにものになろうとも。
これで完結です。
最後までお読み頂いてありがとうございました。
ニールと二人きりになり話をする。
「自分に似たお人形が処分されているのを知って、心穏やかにいろ。というのが無理です」
「処分ではない。偉大な研究に身を捧げているのだ」
「同じ事です」
散々心と身体を弄くり回して、飽きた頃に研究の材料として使いつぶす。
その頃には完全に洗脳も終わっているので、歓喜の中死んでいく。
好きにしてもらえばいいのだが、それが私そっくりとなれば、文句も言いたくなる。
「お前への捻れは理解している」
龍族になると、生み出したドラゴンへの執着が強くなるのは、分かっている。
元々抱えていたなにかもあるのだろう。
その結果が、髪型や顔を似せて、セッ○スする玩具というのは救われないにも程があるが
「私だって大概ですよ。相当滅茶苦茶です。人様に説教できる立場にありません。その上で、趣味悪いなぁと」
あのお人形が、ニールになにされてんのかとか思うとね。
「龍族の欠点だな。人族への共感能力を失う」
ニールは重々しく語る。
「で?その変装は取らないんですか?」
「ああ」
まあ良いだろう。
「オルグナとリグルド様に会ってました」
「二人とももう最後の挨拶か」
「そうですね」
「もう、お前と俺しかいなくなるな」
遠い目をするニール。
「…私の中では、ニールはもういないですが。この塔の上で、高笑いをしながら、ここから人類の知識が始まる!叫んだのが、最後に見たニールです」
「…そうだな。あれが、ニールとしての最後かも知れんな」
目をつむる。
「過去は過去だ。今は今。それだけだ」
「そうですね」
血の影響もあったろうと思う。
でも、血を呑んでも、ニールは当初はあまり変わらなかった。
それよりも、本人のいう「叡智を知り得たことで、いままでの生き方に間違いがあったことに気付いた」
ことだろう。
私にそっくりのお人形を弄ぶというあの行動。
旅の中、ニールは女性達に一切無礼を行わなかった。
それに対して評価は高かった。
だが、心中には、女達を好きにしたいという欲望があるのだろう。
それを責められるものではない。
しかし、叡智を知ることで、知識だけを追い求める態度では全ては得られないと知った時の喪失感。
そこが埋められないのか。
以前知り得た時には、私の人形は、跪き、臥した状態でただひたすら体液を求めていた。
優秀な子が欲しいと、なりふり構わず懇願する浅ましさ。
それを私の顔でやらせるな。という話だ。
「…未練ね」悲しい話だ
「龍姫様?」
「ああ、ごめんなさい。今日は少し気分が悪いわ。お風呂に入れてもらえる?」
「はい!」
挨拶を一通り済ませて館に戻る。
世話になった皆さんへの挨拶は終わった。
恐らく最後の挨拶。
ニールはまだ生きるだろうが、名前を変えた時に、私の中のニールは死んだ。
世話になった魔法使い達も既に亡くなっている。
ネクリさんは幸せな人生だったと思う。
最後まで才能の無さに苦しみながらも、ドラゴンを狩り、キャラバンを率いて、多額の金貨を手に入れた。
無駄使いをしなかったネクリさんは、故郷にそのお金を使い、生涯その街で名士として名を馳せた。
コルツさんは、魔法ギルド職員として生涯を全うした。
久しぶりに会ったときは、わだかまりなく、楽しく思い出を話せた。
エノームさんとも会えた。
ただ、基本は隣の大陸にいるエノームさんとはあまり交流が持てなかったのは残念だ。
最後は病気で亡くなったらしい。
グリー兄弟は、持ち帰った多額の金貨を抱えて幸せに生きた。とはならなかった。
有り余る金は、グリー兄弟を傲慢にし、様々な苦難があったらしい。
私とも疎遠になり、最後は火災で二人とも亡くなった。
様々な事があった。
人生とは不思議だ。
なにがきっかけで、なにがどう変わるのか。
わたしは、村で家族に殺されそうになった。
わたしは、キャラバンで売られそうになった。
わたしは、娼婦として生きるかもしれなかった。
わたしは、キャラバンで戦死したかもしれなかった。
すべてをくぐり抜けた先に今がある。
数多くの妾が待つ館に戻り
「ただいま」
わたしは、ここで生きる。
人で無くなろうとも、わたしは、わたしだ。
この館で、わたしは、まだ生きる。
ニールが狂った理由は
「知識の為に全てを捧げれば、真理に到達できると思ったのに、実際は逆だった」
龍族となり、知能が底上げされたニールがそこに気付いたからです。
メイルそっくりな少女に対する扱いは酷く、何人も殺されています。




