お久しぶり、ふるさと
龍族の特性は大分理解出来てきた。
とりあえず、オリジナル・ドラゴンへの執着は異常になるようだ。
既に処分した三人も、私に対して異常すぎるような執着をみせていたし、今の3人も私を慕ってくれる。
それはいい。
私も、ミシディア・ソレイユ・ヘイルカリは好きだ。
イチャイチャしていて楽しい。
だが、
「ビチグソのド底辺ガキが良い度胸してるじゃない」
ミシディアに攻撃されたらしいヘイルカリが壮絶な笑顔を浮かべて、ミシディアを追いかける。
「そもそもお前が先に攻撃したんだろうが!」
「口を開くな、便所臭い」
大騒ぎ。
龍族は切り刻んだぐらいでは死なない。
大抵の傷はすぐに癒えて傷口も残らないし、痛みも瞬間だ。
まあ、だから殺し合いみたいなのをしていて良いのか?と言われると困るのだが。
「新都から新たな龍族希望者が来るのよ。大人しくして」
既にここに構えて二年が過ぎた。
最初の募集からしばらく受付を停止していたのだが、帝国から
「いざという時の為に増やしてもいい」
と許可が出て再募集。
そうすると
「貴族ばかりですね」
集まったのは貴族の女性が多い。
ソレイユやヘイルカリも貴族だしなぁ。
比較的人族の名残があり、常識をまだ維持しているヘイルカリから希望者に説明。
ミシディアは色々アレだし、ソレイユは色々危ない。
必然的にヘイルカリに頼ることになる。
「…以上です。なにかご質問は?」
にこやかにヘイルカリが話すと
「はい」ひとりの女性が手を上げる。
「どうぞ」
「現状ですと、館の中におり、兵士として戦場に出ることがあることも理解しました。一度龍族となればそれっきりですか?」
言われてから気付いた。
それもどうなんだろうね。
「帝国に確認しますが、本人の意志があれば外に戻るのも可能か問い合わせます」
この館に、いたくもないのに居続けるのもどうなんだと思うし。
その回答に、周りがかなりざわめいていた。
遠距離会話で相談すると、返事は簡単だった。
「帝国の貴族の妾としてならば問題ないと思われる。もちろん、公女が外に出しても問題ないと判断する人物に限るが」
公女。私は帝国からそう呼ばれている。
帝国の返事が来るまで屋敷に滞在していた女性達はかなりざわめき、様々な追加の質問が寄せられた。
帝国からも追加で話し合い
「むしろ妾用に一人派遣できないか?」
と来た。
龍族とのドラゴンハーフならばコントロール出来るのではないか?
と予想しているらしい。
既に何人かの貴族から
「妾としてならば受け入れて良い」と来ていて、どれも名家だった。
その貴族の家と立場を伝えたら7人が龍族を受け入れ。
その内、3人が龍族とし身体を慣らしたら即貴族に行くことになった。
なので4人が館に残ることに。
新しい新人受け入れに、ミシディア・ソレイユ・ヘイルカリは
「さて、新人になにをしてやろうか」とニコニコしていた。
しばらく経ってから
「そう言えば故郷はどうなってるんだろう?」
と思い付いた。
全く思入れなどないが、一応は生まれ育った村と家族である。
ロクな思い出はないが。
今回は転移でひとりで行くことにした。
何日も空けなければ問題もなさそうだ。
そして、村に舞い戻る。
時が止まったかのように。
その村はあれからなにも変わっていなかった。
貧乏で飢えに苦しみ、子ども達は今を生き残るのに懸命だった。
「…?随分派手な身なりだな?」
村人が話しかけてくる。誰だったのか記憶にないが、それも仕方ない。なにしろ私が村を出て12年経つ。
人の面影を探すのがやっとだ。
「生まれ故郷なもので」
「生まれ故郷?お前みたいなのいたかな?」
クビを捻る。
「ガリウスの家は変わっていない?」
「ああ、ガリウスなら………あ!お前!ガリウスの娘か!!!」
「ええ」
「い、生き残ったのか…」呆然としている。
記憶に残った道を歩き、家に向かう
記憶よりも小さい。
よくこんな家に何人も暮らせていたものだ
「誰だ?お前?」
記憶を辿っても顔が分からない。兄は兄だと思うが。
「ガリウスは?家?」
「親父に用か。今はそこにいる」指をさす。
「そう。ありがとう。ちなみにお名前は?」
「?ジェスだ」ああ、次男だ。
言われても面影が湧かない。
「そう。私はメイル。思い出した?」
「……メイル?…メイル…メイル!メイルって、お前!」
叫ぶジェス
そしてガリウスの元に行くと
「…ジェスがメイルと騒いでいるが、まさか、お前メイルか?」
「はい。久しぶりですね」
「…信じられん…生き残ったのか。随分良い格好だな」
「商売で成功しまして。今では帝国の公国に仕えています」
「…貴族の妾か?凄いな。だがその格好見ても本当なんだろうな」
妾ではないが否定するのもなんなので流す。
「大分裕福になりました。こっちに来ます?」
一応声をかける。
しかし
「…いや、俺はここで生まれて、ここで死ぬ。貧乏だろうが、関係はない。ここを飛び出したお前には理解できないかもしれないが」
「いえ。そう返されると思っていました」
そして
「お父さん、お元気で」
「ああ、死ぬ前に売った娘に会えてなによりだ」
立ち去る。
その背中に
「お前を売った金のおかげで、翌年の飢餓でも、うちは誰も死ななかった。感謝している」
「それはなによりです」
銀貨2枚で救われたのか。
今館に積み上げている金貨は何枚になるのか。
村を見渡す。金貨をばらまくのは容易い。
だが、それが正しいとも思えない。
「もし、この村での生活が幸せだったら、私はこうなっていなかったからね」
オリジナル・ドラゴンになったメイルは人に対する情をかなり失っています。
元々両親と村に対しては、かなりアレな感情を抱いていたメイルに、故郷に帰るという選択肢は無かったのですが、情を失った結果
「もうあいつらどうでもいいし、顔ぐらい見てくるか」という気持ちになりました。




