新しい生活の始まり
オルグナとの送別会の後、帝国に行く前にブラックドラゴンと、ゴールドドラゴンに挨拶をしに行った。
まずはブラックドラゴン
「おい、バカドラゴン」
『また1人で来たのか。我は龍族を従えて挑んで来いと伝えたのだが』
「伝えてないよ。あんな話で伝わるか、バカドラゴン。」
挨拶に来た理由は
「どうせ寿命は何千年もあるんでしょう。私は私で忙しい。数百年後に殺しに行ってやるから、それまで待ってなさい」
私をオリジナル・ドラゴンにしたブラックドラゴン。
彼の望みは、私と龍族の連合による闘い。
しかし、現状龍族が増えておらず、聖女との闘いに備えないといけない私にそんな余裕はない。
しかし、いつまでも来ないことに業を煮やし、攻め込んでくるリスクがある。
なので、最初に
「そのうち攻めるから待ってろ」
と伝えに来たのだ
『ふむ。良いだろう。待つのも楽しいものだ』
続いてゴールドドラゴン
こちらは非常に話が通じる。
あのバカドラゴンとは大違いである。
「私はもうドラゴンと対立するつもりはありません。むしろ保護しましょう。そのためにも、お約束通り、力を貸して頂きたいのです」
これから行く領地の山を金山にしてもらうという約束。
すると
『ぬしは、話が早い。奴のお気に入りとは思えぬ。よろしい。約束は果たそう。ただ、まだある』
「はい、条件でしょうか」
『違う。シルバードラゴンと、アイアンドラゴンの力も貸してやる』
「…?え?」
『良質な銀と、良質な鉄を生む山にしてやる。もっとも、一つの山に3つは無理だ。3つ山が必要だがな』
「ありがたいです。そこまでして頂けるなんて」
『聖女は我々からしても厄介なのだ。奴は全ての生命の力を変節させてしまう』
ゴールドドラゴンは溜め息をつく。
『例えば噴火。あれは山の生命エネルギーが溜まり、噴火という形で現れる。聖女はその噴火するエネルギーを奪取して、噴火を止める』
話をきくだけで、呆然とするような能力。
『自然現象ならば良いと、人間は思うだろう。しかし奴は純粋な生命エネルギーも奪取する。我々ドラゴンなどもだ。隣の大陸にいたドラゴンは12体。全て全滅した』
恐ろしい。では。
『気付いたようだな。聖女は既に敵対する人間のエネルギーを吸い取り、自らの力にしたこともある。それでいながら聖を名乗るとは腸痛い』
「無敵ではないですか…」
文字通り化け物。私も化け物になったが、それどころではない。
『だが弱点がある。奴がエネルギーを吸い取るのは儀式に時間がかかるし、なによりも奴が一番困るのが社会混乱だ』
「社会混乱?」
『そうだ。奴は常にエネルギーを吸い取っているわけではない。自らへの信仰心を自然に吸い取り力にしている。だから災害や、飢饉がおき、聖女への信仰に疑問が出ると、奴としては困る。聖女が十年足らずで大陸を掌握したのに、他にいけないのはこのせいだ。領地が広がれば、トラブルは多くなるからな』
なるほど
『これから与える力は、聖女を掻き回すのに有効だ。良質な鉄の装備を聖女への反抗勢力に渡せば混乱は大きくなろう。金貨、銀貨も無尽蔵に渡せる。意味は分かるな』
「素晴らしい。必ずご期待に応えましょう」
ドラゴンは頭いいな。なんでバカドラゴンだけバカなんだろう。
準備は整った。
帝国に行く。ただし問題があった。
ミシディア。
「我が主!誰を殺せば良いんですか!?」
「知らないわよ」
有り余る闘争本能のコントロールが出来ないらしい。
私も大分口調が乱暴になった気がする。
それでも、その程度になっている理由は
「ミシディア。闘争本能垂れ流しは性格に重大な変質をもたらすわ。少しコントロールして」
「!!!わ、わかりました。では、どうすれば…」困惑気な顔。
どうすれば、か。
「私の経験だと」
「はい」
「オナ○ーね」
「…はい?」
「性行為。あなたも娼婦だったんだから知っているでしょう?」
「し、知っていますが!」
あ、そうだ。
「ミシディア、そうだ。1人でやるのも飽きたの。手伝ってくれない?」
男との性行為は何度も考えた。
だが、近くにいたのは、父のようなオルグナと、兄のようなニールぐらいである。
全然そんな気も起きない。
というか、男との性行為に強い忌避感が生まれていた。
それに対して、女性相手にはあまりない。
キスも、ミシディアには抵抗は無かったが、ニール相手は無理だった。
まあ、ニールだしな。
「あるじ!わかりました!任せてください!」
勇んでミシディアが寄ってくる。
「ええ。楽しみましょう?」
変質は怖い。だが、怖がってばかりもいられない。私は私であり続ける。
だから、様々な困難も、楽しんで乗り越えよう。
「あるじー♪」
ミシディアは、あれ以降べったりくっつくようになった。
元々、ミシディアは現役の娼婦だったのだ。
とても良かった。
「ミシディア、もうじき着くわ」
「はい!」
馬車に揺られながら前を見る。
リグルド様とお約束した待ち合わせ場所。帝都は目前だった。
「リグルド様、陛下とお会いする前にお話があります」
「ええ、なんですか、メイル」
「はい。ゴールドドラゴンより、新たな力を得ました。良質な銀と鉄の鉱山も作成可能です」
「なんですと!?」
リグルド様は驚嘆の声。
「な、なんというタイミングで…いや、まさしく神の御加護です。素晴らしいメイル。共に陛下にお伝えしましょう。それと、恐らくあなたをメイルと呼ぶのは最後でしょうな。これからは公爵としての名前を授かりますから」
そうなのか、でも
「リグルド様。リグルド様から見れば、何者になろうとも、私は小娘のメイルです。ハユリさんと共に神の教えを習う小娘から、なにも変わっていません。出来れば、リグルド様からは、引き続きメイルと呼んで頂きたいのです」
懐かしい記憶。
リグルド様は、ハユリさんの行為を止めなかった。
今ならわかる。
教会の上部の人間を待たせるなど本来は言語道断だ。怒って当たり前。信仰にまつわる重大な話かもしれないのだがら。
だが、リグルド様は怒らなかった。
それどころか、横に座り、共にハユリさんの話をニコニコしながら聞いていた。
私はあの姿に教会の正しさを確信したのだ。
「…メイル。懐かしい記憶が蘇りました。そう、初めてお会いしたときのこと、鮮明に覚えていますよ…」
涙ぐむリグルド様
「ハユリにも苦労をかけますが、あの時、私がハユリを止めていたらどうなっていたのか…全ては神の御加護。時間です。陛下の元に行きましょう」
謁見はすぐに終わった。
私の名前は、ドラグネイシア・メイ・ルテルス
となった。長い。
私の管理する領域は文字通り辺境
だが、堀あがった金属の運搬の都合上、海には近いし、街道も近い。
街とよべるような規模の街もない。
山間と港に集落があるぐらいだ。
そのあたりをアルネシア公国として独立し、帝国の一部になる。
そして、鉱山は帝国が直接管理。
そう決まったのだが、陛下は鉄と銀を生み出す力に驚喜した。
「この質が無尽蔵に発掘できるのか!!!これならば対抗できる!!!」
そして、ミシディア。
兵士達に囲まれているが、凄いことになっていた。
ミシディアは素手
兵士達は完全武装
それで囲んでいるが、ミシディアは少し兵士を押すだけで兵士が吹き飛んだ。
「龍族の力は恐ろしすぎる。コントロールも必要かも知れんな」
陛下は溜め息をつきながら言った。
領地に赴任した。
なにも無い街。ここからだ。
ここから新しい私の生活は始まる。
「ミシディア。ここから始めるわよ」
「はい!わがあるじ!頑張ります!」
ちょうど、隣の大陸の反聖女勢力に支援を送ろうかと画策していたのですが、金貨だけ異常に増産すると、単に金の価値が落ちるだけなので悩んでいたタイミングでした。
そこにメイルが、金だけではなく、鉄も銀も生み出せると言ったので皇帝は喜んだ訳です。




