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さようなら、恩人。あなたのおかげで生き延びてこれました

再びお別れ回です。

私はひたすら本を読んでいた。


今まではニールに任せていたが、何故か文字を憶えるのが今までに比べ格段に理解しやすくなり、すぐ読めるようになっていた


「龍族は知能も底上げするのか…?」

私を見てニールがうめく。


「オリジナル・ドラゴンと龍族はまた違うのでは?」

「そうかもしれんな。今度龍族にした娘に会わせてくれ」

「分かりました」

今はまた20の身体に戻している。

私としては理想の身体だからだ。


でも、ニールにとっては不満なようだ。

幼い時から一緒だった。

だからニールの事はよくわかる。

こうやって、ニールと対等のように振る舞われるのが我慢ならないのか

それとも違う気がする。


「…俺は」

ニールが寂しそうに言った。

「はい」

「お前と本を読みながら、知識を語り合うのが本当に好きだったんだがな」

過去形。


そう。もう過去形だ。


オリジナル・ドラゴン以降、ニールとの関係は急速に悪くなっていた。



一方でオルグナ。

こちらはいつも通りだった。


ドラゴン狩りから手を引いた私に対しても世話をやいてくれていた。


「オルグナと、ハユリさんと、リグルド様だけです。変わらず接してくれるのは」


「俺は得をするから一緒にいるだけだ」

「しばらくドラゴン狩りはしませんよ?」

「金属を生み出しているではないか」

そう。既に何個か金属を生んでオルガノに託していた。

生み出した金属は質が良く、喜ばれていた。


「メイル、一応話した方がいいな。俺から見た、お前の変化についてだ」

オルグナが真っ正面から見る。


「はい。お願いします」

「まず、根本的な人間性に変化はない」

安堵。そこが一番怯えていたのだ。


しかし、次の言葉

「次、お前は人を、自分と同じものだと認識出来ているか?多分出来ていないと俺は思う」


「え?」


なに?

「ニールから。そう、あのニールからだ。相談を受けた。あのニールがだぞ。そんなことこの六年一度も無かった。そのニールが言った。メイルはもう人としての自覚が無いのではないか?と」


「ど、どういう事ですか!?」


自覚がない。

どういう事?


「お前、龍族にした少女になんと言って送り出した?」


「え?復讐するならして来いと」

「そうだな。そしてなんと言った」

「…?え?盗賊団の復讐とか、それと1000人ぐらいなら皆殺し出来るとか…」


「それだ」

オルグナは憂鬱そうに言った。


「もう一度それを言え」


「1000人ぐらいなら皆殺し」


「メイル、例え盗賊でも、人としてのお前はそんな話をしない。出来ない。葛藤は絶対にする」


あ…


「お前、ミラーの館にいるフェイをどうしたい?」

呆然とする。


そうだ、今は当たり前のように…

「…こ、殺したい…」

「そうだ。かつてのお前は、ミラーを死に追いやったフェイを憎んでいても、暴力を振るうことすら我慢した。人としてはそれが最善だと理性に従った。今はどうだ?」


「…あ、……ああああ」

衝撃。指摘されてようやく理解しかけてきた。

私が私でなくなる恐怖。


でも

「もう一度言う。本質は変わらんのだ。人を軽く見ているだけだ。そう例えれば、人が犬を可愛がるような気持ちに近いかもしれんな」

少し落ち着く。なるほど、その例えは理解しやすい。


「俺がお前と関係が変わらない理由は、お前が商人としてのオルグナを尊重しているからだ。同じ理由で、リグルド、ハユリをお前は信奉している。だから関係は変わらなかった。だが、ニールは?お前はオリジナル・ドラゴンとなり、ニールの知識に頼らず自分で本から情報を仕入れられるようになった。そして、ニールへの敬意を失った。その結果がこれだ」


オルグナは理性的に話をしてくれる。

とても有り難い。


「だが、ニールのことは気にしなくていい。あいつは相当変わり者なんだ。変に気を使う必要はない。そのままでいい」


「そ、そうなんですか?」

「ああ。ニールはニールでおかしいんだ。正直、お前が適当に扱うぐらいでちょうどいいぐらいだ」

溜め息をつくオルグナ。


「だが、気をつけろ。お前は以前と違う。正直な話だが、リグルドから提案された公爵の件は受けた方がいいかもしれん。」


リグルド様からの提案。

神教と密接な関係にある帝国。そこの公爵にならないか?という話。

理由は


「オルグナ。でも私が公爵になるということは、私の生み出す金属類は全て帝国の物です。あなたとはもう、商売もできない」


「メイル、それでいいのだ。そのうちに、この商売も行き詰まるのは見えているよ。俺はお前と良い関係のままでいたいのだ。」


オルグナは手を伸ばしてくる。


「メイル、公爵になれ。龍族で周りを囲え。たまには遊びに行くから、そのとき昔話をしようではないか」


「お、オルグナ…」


「心の底から、俺とお前にわだかまりはない。俺から見れば、多少傲慢になった程度で、お前はあの頃のままだ。チビで幼いのに、ドラゴンを狩ってくるから買い取れ!と言い放った、あの時のお前のままだ。」


そして、頭を撫でる

「よく、育った。いや、よく生き延びた。楽しかったよ。旅は。だから、メイルと、オルグナ商会の旅は、ここで終わりだ」


「お、オルグナ…」

泣いてしまった。


でも、嫌いになりたくない。嫌われたくない。

良い思い出のまま、別れたい。


「わ、わかったよ。オルグナ」


「ああ。とりあえず、龍族の娘が帰って来てからだが、宴をやろう。ニールも招くぞ!」

オルグナとニールの相談は、実際は相談の体をなさず、大荒れに荒れました。

「メイルがあんなことになったのは誰のせいだ。お前がちゃんと教育してないから悪いんだろう」という話から、掴み合いの喧嘩をしています。


オルグナは「多分ニールはこのあたりで悩んでるんだろうな」と補足して伝えています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 嫌いたくないから別れよう、気持ちはお互いを大事にしてるのに、解がそれ。悲しいなぁ。 別解が出せないのがなお悲しい。
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