死んだと後から聞いても実感は湧かなかったのですが、目の前で死なれるとかなりキツいです
そして、オルグナと共に
「あれはダメだ。一度ミラーは出ていけ」
と忠告した。
「で、でも、あの子達は」
「関係ない。ミラー、このままではあなたが倒れる。あなたは睡眠が必要。まともに睡眠が出来ないあの屋敷ではダメなのよ」
とにかく、屋敷の人間はミラーに甘えすぎる。
苛めるほうも、苛められるほうも、なにかあるとミラーに来るのだ。
告げ口合戦。
最初は寝てるミラーを起こさない配慮ぐらいはあったのだが、基本いつでも寝てるミラーに耐えられなくなったのか、なにかある度に起こす。
起こすのが一人ならともかく、十人ぐらいが代わる代わるお越しにいくのだ。
地獄だ。
「屋敷はそのままでもいいのよ。まずはミラー。あなたがあそこを離れて。そうしていつもの睡眠ペースに戻して。それからまた戻ればいいのよ」
しかし、ミラーは決断出来なかった。
どうにか解決できないか、足掻いた。
しかし、ダメなのだ。ミラーは人間関係の調整は向いていない。
足掻けば足掻くほど、混迷した。
私達はミラーと比較的仲の良かったネクリを転移で呼び、ミラーの説得をしてもらったがダメだった。
いつまでも街に待機させるわけにもいかない。仕方なく再びドラゴン狩りをして、素材売却をしていたときに、ミラーさんの看病をお願いしていた医者から、遠距離会話で危篤であると連絡がきた。
「危篤!?死ぬってこと!?」
「睡眠不足で死ぬのか!?」
ミラーさんの睡眠量は異常だった。
あれにより、莫大な魔力制御が出来ていたのかもしれない。
その睡眠が出来ないとどうなるか。
もう、面影が残っていない、やつれたミラー。
「お願い、メイル、あの子達を、助けて」
それが遺言。
ミラーは死んだ。
戦場ではない。
ミラーが大好きな眠る為のベッドの上で。
死んだ。
目の前で、仲間が死んだのを見たのはそれが初めてだった。
慟哭。後悔。
あの時ドラゴン狩りに戻らなければ。
否、無理矢理ミラーをドラゴン狩りに連れ出せば良かったのだ。
話し合いが足りなかった。
いくら、ドラゴン狩りの直前で、仲間を待たせていたからと言えども。
だからこそ、出来ることはあったのだ。
教会でひたすら祈る。
もう、ここにはハユリさんはいない。
実績を認められ、新都に栄転したのだ。
「罪深き、わたしを、おゆるしください…」
泣きながら祈った。
ハユリさんに会いたかった。
ミラーの遺言だ。
屋敷に乗り込んだ。
本来ならばフェイを殴り倒したい。
だが、ダメだ。
暴力で従えるからダメなのだ。
私の後ろには、大勢の大人がいる。
「フェイ、ミラーの遺言です。あなた達をここで引き続き育てます」
「うん…それで、後ろの人達は」
怯えている。
正直フェイをはじめとしたこの館の人達には嫌悪感しかない。
私ではダメだ。
なので
「ここを学校にします」
「…学校?」
「そうです。規律と自立を目指す学校にします」
後ろにいる大人は、教師。
金貨を積んで集めたのだ。
「教育もされておらず、規律が滅茶苦茶な子供達に、教育指導してくれ」と
「そうです。みなさん。良いですか、規律を学びましょう。社会には規律が必要です」
優しい笑顔でいう先生
この人の評判は良い。
正直、適当な人を呼べば、今度はそいつが頂点になったイジメが開始になるだけだ。
人選は、慎重に行った。
「先生、この子達のことは、私の恩人から頼まれたのです。どうか、何卒よろしくお願いします。帰ってきましたら毎回来ますので」
「メイルさん、あなたは私に高い評価をくださり、最高の人材と教材を集めて下さった。必ずご期待にお応えしますよ」
このあと、ミラーの館は秩序を取り戻し、みなそれなりに幸せに生きますが、メイルのわだかまりは、ずっと消えませんでした。




