アイスドラゴン攻防戦
国境を越え、アイスドラゴンの住む山脈近くの街に着いた。
早速ミーティング。
「よし、では、アイスドラゴン討伐の作戦会議を行う」
ニールが皆の前で話す。
「アイスドラゴンは、今まで相手にしていた龍種とは全く違う。ブレスも吐くし、空も飛ぶ。非常に厄介だ。だが」
言葉を区切る。
「ある時期だけ、滅多に飛ばないし、ブレスも吐かない」
「ある時?」
「そうだ。その時を狙う」
「その時っていつかはわかるの?」
「ああ、暖かくなったこの時期が該当する。それは産卵の時期だ」
産卵
「卵を産むときは狂暴と聞きました」
「狂暴だ。近接戦闘では悪夢だ。だが我々は遠距離からの動力攻撃だ。心配ない」
「…なるほど。しかし、ニール。これだけの情報であなたがあそこまで悩むとは思えません、まだ心配なことが?」
「その通りだ。ここまでは問題ないのだが」
周りを見渡してから
「アイスドラゴンが一体と卵しかいない。というのが信じられぬのだ」
…
「うん?」
ニールがなにを言っているのかわからない。
「いいか、アイスドラゴンは、この暖かな時期に毎年産卵しているんだぞ。竜種は強い。
なのに、この付近でアイスドラゴンが他にいる話なんて聞いたことが無い」
「そ、そういえば」
「そもそも、つがいはどこだ?この近辺には該当のアイスドラゴンしかいないのに、なんで毎年子供を産める?これがおかしい。俺は調べに調べた」
「うん」
「その結果から言うと、ドラゴンの種族によっては一度の交尾で、何年にもわたって連続で産卵するらしい」
「な、なるほど」
「もう一つの問題、幼いドラゴン。これは母親の付近にいるのは確定だ。大きくなるまで何年もかかる。情報から考えるに、十数匹はいてもおかしくない」
「はあ?」
勝てないじゃん。
「次の問題だ。幼いドラゴンはどれぐらい手強いのか。どの程度育つのか。これはすぐわかった。ドラゴンは育つのには100年が必要。長くて20年の竜は、人に例えると4歳だ。ブレスもできない。空も飛べない」
「比較的簡単に蹂躙できると」
「うむ、しかし油断は禁物だ。最大の緊張感で臨んでいってもらいたい。そして、今回は俺も行く」
「ニールも!?」
驚きだ。一度も出たことがないのに。
「アイスドラゴン討伐は、俺の中の一つの区切りだ。目の前で、自分の知識を上積みしたい」
ニールの初めての同行。
なぜか、堂々と荷台に乗っていた。
険しい山道のため、荷台をひく、グリー兄弟達の負担が大きいため、私や魔法使いすら歩いているのにも関わらずである。
「ニール、歩いて」
「うむ、歩きたいのはやまやまだがな、もう足が動かんのだよ」
「…あのさぁ」呆れたようにネクリさん。
普段動かないからなぁ。
幸い、今回からアキラさんたちがいた。
アキラさん達の引く荷台に乗ってもらおう。
そして、中腹
「いた…」
不安がよぎる。
本当にブレスはないのか。
翼を使われれば、こんな山の中腹に固まっている以上全滅は避けられない。
もしくはあのイエロードラゴンの時のような、断末魔の最後の攻撃はないのか。
今までにない恐怖心が襲ってきていた。
ニールを振り向くと、震えていた。
それでも拳を握り頷く。
「ミラーさん。お願いします」
「はーい」
いつものように緊張感の無い声。
他の魔法使い達は全員固唾を飲んで見守っている。
すると
「GRYUUUUUUUUUU!!!!!!!」
アイスドラゴンの絶叫
「効いてるぞ!ミラー!続けてくれ!」
しかし、いつものように即死とはいかないようだ。
苦しんでいるが、死んではいない。
「ちょっと!?こんな長時間魔術、いくらミラーでも魔力が持たないよ!」
連続で凍結魔術を唱え続けているミラーさんに、ネクリさんは回復魔法をかける。
「私はミラーさんに魔力を送り込みます」
ニルスさんも加勢にまわる
「素材凍らせるのは私一人でやるわ。二人ともお願い」エノームさん。
「了解!」
「ニール、氷魔術が効きにくいと言うことですか?」
「ああ。文字通りアイスドラゴンだからな。耐性はあるだろう。だが体内には暖かな血が確認されている。効くはずなんだ。実際効いた。後は、それまで魔法使いが持つか…」
「と!飛ぶぞ!」
「な!?」
アイスドラゴンはこちらを認識すると、翼を大きく広げた。
マズい。ここからでは逃げるのも、戦うのも無理だ。
「慌てないで!ここから無理に動く方が危険です!」一喝
「魔法使い達はミラーさんの支援を!それ以外の人達は、魔法使い達を囲んで防御!」
ブレスの前には無意味な陣形。
それでも、護衛に守られれば安心感は出る。
「ブレスが出れば死ぬな…しかし、産卵の習性は間違いない。飛んだとしても、ブレスは出ない…後は間に合えば」
「み、ミラー!!!」
ネクリさんの絶叫
ミラーさんが崩れ落ちる
「も、もう少し、ネクリ、手伝って」
「わ、私じゃ」
「もう、限界。寝る」くー
「ええ…」寝た。
生きるか死ぬかの瀬戸際で。
いつも通りに。
思わず吹き出す。
そして
「ネクリさん!ニルスさん!動力を狙って!!!」
「いっくよ!」
「近づいてるし!とどく!」
アイスドラゴンは近付く。
ブレスが出れば全滅、だが
「…出さない…やはりだ!ブレスは出せんぞ!」
ニールの歓喜の咆哮。
そう、アイスドラゴンはブレスを出そうとしたが、出ないのだ。
仕方がなくこちらに滑空してきた。
直線攻撃を狙う。だが
「RYYYYYYUUUUUUUUUU!!!!!!!」
「き!効いた!!!」ネクリさんの絶叫
「私も手応えあった!」ニルスさん。
そして、滑空姿勢のまま、アイスドラゴンは墜落した。
歩いて30分でニールは荷台に乗っていました




