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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
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第059話 絶命因子10

「母上」

「なに?」

「ボクたちの記憶は同期させないのですか? 腕を構築していただいた際に渡されたのは転生者に関するちょっとした知識だけのようなのですが」

「今それやるのはちょっとね。自我が芽生える前の貴女なら問題なかったでしょうけれど今やるとなると記憶の上塗りで情緒面が不安定化する可能性が高いからね。なにか知りたかったの?」

「大したことではないのですが、父上はどのような方なのかと」

「さっきまでそこにいたでしょう。あれが貴女の父親」

「それは兄上のことですか?」

「えぇ、その通りよ」

「姉弟なのですよね」

「生物学上ではそうね」

「兄上がボクの父上なのですか。ですが、それだと年齢的に」

「貴女は、あれが14のときの子ね。そのとき私は19だったけれどね……理由を聞きたそうね」

「これまで子を成したことなど一度もありませんでしたから」

「左脚を損傷する因果を修復したことによる影響なのかもね。私自身が望んでつくったわけじゃないし、無理やりつくらされたといった感じだから。この顕界で私が生を受けた一族の意向とやらでね。一族の御偉方は制御出来ない私が疎ましかったみたいでさ。それでも私の能力自体は評価してたみたいでね。その才能だけを継いだ子を産ませるために無理やり孕ませたってわけよ」

「なぜ兄上なのです? あの人に才能の持ち合わせはないと思うのですが」

「潜在魔力だけは一級品なのよ、あれ。でも、それを全く引き出せないから無意味なんだけどね」

「そういう理由なのですか。しかし、その一族の御偉方にボクは一度もお目見えしたことがないのですが」

「私ら以外一族郎党みーんな殺されちゃってるからね」

「母上がやったのですか?」

「やると思う?」

「場合によっては」

「可能性は0じゃないから全否定は出来ないけど今回のこれは私の手によるものじゃないよ。私に執着してた、あの転生者の手によるものね」

「母上の墓のあった街での出来事ですか?」

「あそこからもう少し山奥に入ったところね。秘術を外部に漏らさないためにって隠れ里つくって引きこもってたような連中だから」

「そんな隠れ里に住んでいたのに転生者に見つかったのですか」

「転生者と言うよりそいつを隠れ蓑にした別のなにかにね。あの転生者自身は単に私の絶命因子を取得するために取り込まれてたみたい。私が産まれる以前まで遡って転生してたみたいだけど、その因子が効果を発揮したのは今から10年前の私が20歳を迎える目前だったから先んじて転生したのは完全に空振りだったみたいだけどね」

「それならもう寿命も近いのではありませんか」

「今は人間年齢で50くらいになるのかな? 寿命と言うには、まだ余裕がありそうだけど。それ以前に10年前の時点でなぜか容姿は10代くらいを装ってたのよね。その後すぐに人間の姿じゃなくなっちゃったけど」

「死ぬまで待つというわけにはいかないのですね」

「あれは私たちが駆除しない限り死ぬことはないでしょうね。あの異能だと」

「それなのですが。渡してくださった知識ではよく理解出来なかったのです。ボクの知ってる情報と合わせても10年かけて殺害した人間を人似偶像アイドルとして造り直して投身自殺させるという意味のわからないものですし」

「あれは私たち顕界文明管理官を竜宮に帰還させることなく、この顕界に拘束するためだけに特化した異能みたいなのよね。長期間未帰還になってる他の管理官も同じような異能で拘束されてるんじゃないかな」

「そこがよくわからないのです。通常なら殺害された時点で強制送還されるのではないですか?」

「通常ならね。でもそうならないのは相手の異能で殺害された直後に生と死の概念を逆転されてるのよ。肉体は死んでいるけれど、その死した状態こそが肉体にとって生の状態であると誤認させられ、魂を死体の内に留めているの。そこから更に生と死を錯覚した自身の肉体を材料に10年の歳月をかけて人似偶像アイドルに造り変えられ、投身自殺を強制されて粉々に粉砕される。そこで魂が解放されればいいのだけれど念土ねんど化された肉体は、念土ねんど自体を肉体として定義してしまっていて魂が解放されることなく、顕界に広がる大地の一部として溶け込むことになる。しかも肉体は死んでいて身体は一切動かせないのに生存していることにされてるから自我は残ったままなのが厄介極まりないのよね。途中で耐えきれなくなって自我を失っている人もいるでしょうね」

「母上、話を聞く限り手の打ちようがないように思えるのですが。生と死の概念を逆転されてしまうのなら生きている状態でその異能の餌食になれば死んでしまうことになってしまいます」

「なんのために私がこんな姿で蘇ったと思っているの」

「……もしかしてボクの左腕ですか」

「正解。死体を生の状態にあると定義付けされた私とついさっき体内に取り込んだ生体である貴女の生きた左腕は貴女の魂の影響で朽ちることはない。生きた生体と死体の両方を肉体に内包していれば生死概念を逆転されたとしてもどちらかが機能を果たすはず」

「上手くいくのでしょうか?」

「どうかな」

「やってみるしかないというわけですか」

「最悪失敗しても強制送還になるだけでしょうね」


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