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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
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第045話 生前想起05

 朝起きるとはじめちゃんは既に出かけていて部屋のどこにも姿はなかった。私はそんなに遅くまで寝てたのと目をこすりながら目覚まし時計を見ると時刻は7時を示していた。


 起こしてくれればよかったのに。


 ベッドから這い出してなにかメッセージを残して行ってないかとスマホを確認する。


『起きたら連絡よろしく』


 チャットアプリにたったそれだけの短いテキストメッセージが届いていた。私は画像スタンプをぽこぽこと送り付けて返答して洗面所に向かった。

 9時前には身支度を終えていたけれどはじめちゃんからの返信はまだ来ていなかった。それならいっそのことと私は夕子さんの喫茶店で朝食を摂ることにして直接はじめちゃんに待ち合わせの詳細について聞こうと決めて部屋を出た。


「モーニングセットひとつ」

「待ち合わせして、あとで合流するんじゃなかったのか?」

「時間聞いてなかったから。それにはじめちゃんが働いてるとこ見たかったし」

「そうかい」


 注文の品が出てくるまでの間、店内をぼんやり眺めていると私とそう変わらない年齢層の女の子が割と出入りしていて彼女らはみんなはじめちゃん目当てで来ているようだった。夜は閑散としているとこが多いので、この客入りは意外だった。


「はい、注文の品な」

「この時間にここ来たの初めてだけど、はじめちゃん人気者だね」

「そうか?」

「はじめちゃん顔がいいから。私もそれ目当てで来たよ」

「待ち合わせ時間聞きに来たんだろ。12時に駅前のあのよくわかんない像の前な。昼食べたいものがあるなら店選んどいてくれてもいいから」

「うん」


 店内の意外な混みように長居は避けるべきかとお会計をして駅前へと移動する。適当に店を見て回りながら時間を潰す。そうして11時45分を回り、そろそろいいかと待ち合わせ場所へと移動する。そこで待ち始めて10分ほど経った頃、軽薄そうな男が話しかけてきた。時と場合によっては相手次第で遊んでも構わなかったけれど目の前の男は言動からして一度関わるとなにかと尾を引きそうな印象が強い。それに今はゴミあさり男と童貞喪失くんがもたらした心的被害のお陰で普段よりも無茶な要求にもはじめちゃんが応じてくれている。だからどうでもいい男と関わって、その時間を無駄にはしたくなかった。

 無視しても無駄だと悟り、一旦この場を離れて交番の方に移動しようとしているとはじめちゃんがようやく待ち合わせ場所に姿を現した。


「わるい。待たせたか?」

「遅いよ、はじめちゃん」


 私は声をかけてきた男に見せつけるようにしてはじめちゃんの腕に抱き付く。すると男は毒突いて私たちの前から去って行った。


「あぁいうのには応じないんだな」

「今の人みたいなのは付き合ったりなんかしたら別れるときなにされるかわかんないじゃん。頼まれたからって誰彼かまわず付き合ってるわけじゃないんだよ、私だって」

「かも知れないが別れるのを前提に判断してるんだな」

「そうだよ」

「今まで付き合ってたのも?」

「うん」

「なんかお前って、別れるために付き合う相手選んでるみたいだな」

「そうかも知れないね」


 そう答えるとはじめちゃんは困った顔をした。実際のところはじめちゃんの受けた印象は間違っていない。私はなるべく短期間の付き合いを経て私が被害者という形で穏便に別れられそうな相手を選んでいる。理想としては友達からは男運が悪いと言われる程度で、男を見る目がないと自業自得のレッテルを貼られるレベルの男は避けた。

 私は私が元彼から心的被害を受けたという事実だけが欲しい。私にとって彼氏はそれらをもたらすためだけの単なる消耗品でしかなく私が本当に欲しいのは、その先にあるはじめちゃんに慰めてもらえる権利を得ることだった。


「ほら、早くご飯食べに行こ。どこも満席になっちゃうよ」

「そうだな。それでなににするつもりなんだ」

「パスタかな?」

「んじゃ、駅ビルか」

「かな? 他にどこかあったっけ」

「あるにはあるがここからだとちょっと距離あるし、あそこはそこそこ混むから今からだと厳しいかもな」

「じゃ、決まりだね」


 土曜の昼時だったけれど駅ビル内の飲食店はまだ空席がそこそこ残っていて待つことなく入ることが出来た。食事を口にしながらなにを買うのかを尋ねると主な購入対象は調理器具ばかりだった。

 目的もはっきりしているので食事を終えるなり、真っ直ぐに量販店に向かう。私は口出しすることなく、はじめちゃんの選んだ品々を購入するべく買い物カゴに入れていく。


「包丁はどうする?」

「はじめちゃんが使うなら」

「自分では使う気はないのな」

「料理なんて調理実習でくらいしかやったことないからね」

「まぁ、一応買っておくか」

「なになに頻繁にうちにご飯つくりに来てくれたりするの?」

「そんな暇じゃないっての。少しくらいなら料理教えられなくもないから手解きだけでもと思ってさ。出来ないより出来た方がいいだろ」

「私の手料理が食べたいってこと? それなら頑張ってもいいよ」

「そういうことでいいよ。ま、これでひとまず必要そうなものは全部揃ったかな」

「じゃ、お会計済ませてくるね。このあとそのまま晩御飯の材料も一緒に買ってく?」

「帰り、荷物持ちきれるか?」

「タクシー使えば平気だって」

「あの距離をタクシーか。でも、ま、仕方ないか」

「うん」


 そうして私たちは買い込んだ大量の荷物と一緒にタクシーでワンメーターの距離にあるマンションに帰った。

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