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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
45/63

第044話 生前想起04

「ひと部屋しか使ってないのか?」

「うん。ふた部屋は全く使ってない」

「それで私はどっちの部屋を使えばいいんだ」

「なにを言ってるの?」

「どっちかを客間として空けてるんだろ」

「なにも置くものがないから空けてるだけだよ。はじめちゃんはなにしにここに来たと思ってるの」

「あー、そういうことになるのか」

「はじめちゃんは私の部屋に泊まるんだよ。寝る場所は空けて貰うから大丈夫」

「うん? ペットとかいたか?」

「ねこくんがひとり居るよ」

「全部の部屋見せてもらったがどこにも姿を見かけなかったぞ。あと見てないとこっていったらベランダくらいだが、どこかに隠れてるのか?」

「私の部屋に居るよ」


 寝室に戻り「あの子だよ」とベッドの上を示す。そこにはころんっと大きなねこのぬいぐるみがひとつ転がっている。その子を抱え上げて頭を数度撫でた。


「それって私が一昨年お前に誕生日プレゼントとして渡したぬいぐるみだろ」

「そうだよ。あの日から毎晩寝るときは一緒なんだよ」

「ペット?」

「変?」

「いや、うーん。まぁ、掃除機ロボをペットにしてるって人が居るくらいなんだし、ありなのか?」

「あの子はイマジナリーフレンドってわけじゃないから深く考えなくていいよ」

「言われなきゃ、気にしなかったよ」

「うん。だから深く考えなくてもいいから気にはしてね」

「またいつもの茶番か?」

「どうかな」

「わかったよ。そういうものなんだな」

「うん」


 抱えていたぬいぐるみをベッドの側に設えたチェストの上に座らせる。その隣に夕子さんから貰ったマッチ箱を置いて一旦寝室を後にした。


 晩御飯はなににしようかという話になり、私は冷凍庫いっぱいに詰め込まれた冷凍食品の中からどれを食べようかと見繕う。


「もう少し人間らしい生活をしろ」

「叡智の結晶だよ。文明的でしょ」


 と返したら苦笑いされてしまったが、他に食料などなにもなかったので今日のところはこれで済ませることとなった。


「これだけ広いキッキンなのに全く使ってないんだな。調理器具もなにもないみたいだし」

「あるよ。電子レンジが」

「他には?」

「万能器具の電子レンジがあるから他はなくても大丈夫だよ」

「あまり大丈夫とは思えないんだが」

「いぃのいぃの。ほら、ちゃちゃーっと食べちゃって」

「はいはい」


 TVもなく雑多な音のない部屋で言葉少なに静かな食事を終えて空になった食器類を片付ける。


「洗い物は私がやっとくね。はじめちゃんは先にお風呂に入って」

「覗くなよ」

「そんなことしないよ」

「ならいい。じゃ、風呂借りるぞ」

「はいはーい」


 早々に洗い物を終えて手持ち無沙汰になった私は、充電しっぱなしだったスマホを手に取ってロックを解除する。ほぼ丸二日間放置されていたこともあり、通知が結構な件数になっていた。特にチャットアプリの通知が多く、優先順位の高そうなものから目を通していき、ちょこちょこと返信したり、既読を残したりなどしているうちにかなりの時間が経っていた。

 既にお風呂から上がっていたはじめちゃんに早くお風呂に入るように急かされ、空返事を返していたら「今日は疲れたから先に寝てるぞ」と言われて慌ててお風呂に向かった。


 結局、そこから烏の行水とは行かず。長々と入浴してお風呂から上がってからも髪を乾かしたりお肌の手入れをしたりなどして時間をかけていたけれど、はじめちゃんはそれらが全部終わるまで起きたままリビングで待っていてくれた。


「さ、寝よ寝よ」

「客用の布団とかあるのか?」

「ないよ」

「だよな。そんな気はしてた」

「修学旅行みたいで楽しくない?」

「修学旅行じゃひとつのベッドにふたりで寝るなんてことしねーよ」

「そこはほら若気の至り的なね」

「ないな」

「もー、なにが不満なの。あんまりそんなことばっかり言ってるとあとで知らないからね」

「はいはい。それで、明日は土曜だが何時に起きるんだ?」

「起きるまで寝てる」

「そうか、7時な」

「早くない?」

「お前、昼まで寝てる気だろ」

「そういうこともあるかも知れないね」

「まぁ、寝ててもいいけど私は夕子さんのとこに手伝いに行かなきゃいけないから」

「私も一緒に行く」

「やることないぞ。それに明日は午前中だけでいいって言われてるからすぐに帰ってくると思うぞ」

「それならなおのことだよ。帰りに一緒にお買い物に行こ」

「あー、それなら繁華街で合流でもよくないか? 私が夕子さんの手伝いしてる間お前暇だろ」

「いいね。はじめちゃんと外で待ち合わせしたい」

「場所は?」

「駅前がいい。すごくそれっぽい」

「ぽい?」

「デートしよ、デート」

「なんか違わないか」

「それなら明後日、一緒に遊園地行こ」

「なんでそうなったんだ」

「はじめちゃんがデートとしては物足りないって言うから」

「言ってないよな、そんなこと」

「もう決めたから。明後日はデートって決まっちゃったから」

「明後日は暇だから付き合ってもいいけどさ」

「じゃあ、決まりね。約束だよ」

「お前いつもこんなことしてたのか? 相手の男もよくもまぁ付き合ってくれたな」

「え、私が彼氏を遊びに誘うわけないじゃん。向こうが誘ってきたら一応付き合ってたけど」

「うーん。なんか自棄やけになってないか?」

「なんでそう思うの?」

「昨日今日のやりとりでそう思わない方が無理じゃないか? 今までここまで露骨にべっとりはしてこなかっただろ」

「え、じゃあ、はじめちゃんが大好きだから我慢するのやめたの」

「取って付けた感がひどいが今はそういうことにしとけばいいのか」

「うん」

「はいはい、それならそれが落ち着くまではお前に付き合うよ。それじゃ、もう寝るか。さすがに眠い」


 欠伸をもらしながら寝室へと向かうはじめちゃんの後に続く。はじめちゃんは相当に疲れていたようで布団に入るなり寝息を立て始めた。そんなはじめちゃんの眠りを邪魔しないようにそっと寄り添うようにして私は眠った。

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