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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
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第029話 死者延命04

 転生者の遺骸である業魔ごうまとそれに付随するあれこれに関する調査は遅々として進まなくなった。

 私は完全に手詰まりとなり、屋敷に軟禁状態で窓からぼんやりと外の街並みを眺めるだけの日々が続いていた。

 なにかできることはないかと足掻いてみようにも頼みの綱である左腕も爪の先がわずかばかり鋭く尖るような変化しかしない有様だった。局長は優先して処置したとは言っていたが、暴走をしなくなったというだけでリンナ凍結の影響は大きかった。


 やることもなく今日も窓辺で頬杖をついていると視線を感じた。どこからだろうかと視線を巡らせると屋敷を囲う鉄柵の向こうからこちらを見上げる少年の姿があった。


 グウェンが情報収集のために雇った人員のひとりだろうか?


 もしそうならグウェンを介さず直接話を聞くことが出来るかもしれない。どうにも彼は私に伝える情報を制限しているような節がある。私が文字さえ読めれば簡単に解決出来る問題だけにもどかしかった。だが情報を持ち込む人間から話を聞けるなら文字を読めなくとも真偽のほどは別としてフィルタリングされていない生の情報を得られる。そう思い立った私は少年と意思疎通を図ることにした。

 手始めに少年が私のことを見ているのかを確認するために微笑んでちいさく手を振ってみる。すると彼は驚いたようにぴしりと身体を硬直させた後、恐る恐るといった様子で手をちいさく上げてみせた。そんな彼の顔は遠目でわかるほどにみるみる赤くなり、恥ずかしさからか逃げるように走り去って行った。


 彼には私が深窓の令嬢にでも見えているのだろうか?


 有用な情報を持っているかはまだわからないが反応を見る限り彼は利用出来そうではあった。どうにか接触出来ればいいが、屋敷の外に出るわけにもいかずどうしたものかと思案し、とりあえず安直な方法として思い付いたことを実行すべくグウェンに暇つぶしで庭いじりでもさせてもらえるよう頼んでみることにした。

 花でも育てたいと言えばグウェンも了承してくれるだろう。幸いにも別の世界で6年以上菜園を世話していたこともあり、その手の知識には事欠かない。ただ問題は身体をまともに動かしていられる時間が1時間前後しかないということだけが気がかりだった。


 早速、グウェンへと願い出てみるとすんなりと庭の一角を使用することを許可してくれた。


「なにか必要なものはあるだろうか?」と聞かれた私は最低限の道具類と花の苗を数種類注文した。今日中には届けさせるとのことだったので待っている間に花壇を作る場所の選定のために庭を見て回ることにし、グウェンの部屋を辞去する際に口付けと魔力を貰っておいた。


 ほどほどの日当たりで屋敷から死角になりそうな位置を探しながら無駄に広い庭を歩く。先ほどの少年が頻繁に来るとは限らないが、あの様子だと遠からずまた来るだろう。その辺も考慮して場所を選ぶ。そうして目星をつけた場所に届いた荷物類は運んでもらった。


 それから数日を費やして畳1畳分にも満たない小規模な花壇をつくる。1日に何度も何度もグウェンに魔力供給してもらうわけにもいかないので、これ以上規模を大きくするのは難しいとの判断だったが、それでも少し大き過ぎたかもしれない。用意してもらった花の苗を植えて水を撒いているとグウェンが様子を見に来た。


「手馴れてるんだね」

「昔、教えてもらったことあるからね」

「こうして君が花の世話をしているのを見てると初めて君を目にしたとき、籠を片手に花を売っていたのを鮮明に思い出すよ」

「あのときはびっくりしたよ。持ってた花全部買い取っちゃうんだもん」

「迷惑をかけてしまったかな?」

「ううん。とても助かったよ。お代もかなり多めにくれたからなおのことね」

「最後には君を買い取ってしまったけれどね」

「そうじゃなかったら花屋さんで今でもずっと働いてたかもね。両親の借金も返せるかわからなかったから」

「まだ働いていたかったかな? 少し前までたまに手伝いに出ていたようだし、君自身は花が好きなんだろう」

「どうかな? 花は好きだけどね」

「これからは私のためだけに花を売ってくれないかい」

「うん、いいよ」


 そう答えて彼と魔力供給を兼ねた口付けを交わした。


 本当におめでたいひとだ。花売りがなにをさせられていたと思っているのだろう? 私が胴元に頼んで唆させたとはいえ、かなり割増した身請けの代金も孤児だった私の居るはずもない両親の借金を返済したのだと思い込んでいるようだし、随分と抜けている。かなり過保護に育てられたお坊っちゃんなのか世俗のことにはめっぽう疎い。今も私の知らないところで騙されていないかと心配になる。


「そういえば例の件でひとつわかったことがあるんだった。ここにはそれを知らせに来たんだ。早く君に聞かせたくてね」

「なにがわかったの?」

「人体売買をしていた彼が見つかったんだ」

「え、じゃあ」

「うん、遠からず君を殺した人間にたどり着けるかも知れない」


 力強く伝えるグウェンだったが、やはりどこか情報の出し方に妙なものを感じる。嘘ではないがなにかが欠けている。そんな印象だった。

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