第34話 戴冠式前日、旧友との再開
王になってしまった…なんでこんな事に…
異世界転移者トーマと小さな魔物ポメヤはスライム族の村での不用意な発言から帝国を滅ぼしてしまった。
そして帝国滅亡のキッカケを作った英雄として今王座に座っているのだが…
「なぁポメヤ、明日戴冠式だって、王冠貰えるらしいぞ」
「へー、僕前から一個欲しかったんですぞ」
一人と一匹は王の書斎でダラダラと過ごしていた。
現実味がない、これに尽きる。
数日前までただの旅人だったのに…急に王になるなんて事あるんだなぁ。
「でも旅には出ても良いって言ってたし、まあ形だけって事ですぞ。別に良いじゃん、もう別にさ…良いじゃん」
お前考えるの面倒になったからって投げやりになんなよ…
帝国の滅亡は既に世間の知る所であり、多くの種族が喜んでいる。人間も例外では無く、暴君が居なくなって喜びの声を上げていた。
それぞれの種族は帝国という目の上のたんこぶが居なくなり、随分とオープンになったって話だ。
今ではそれぞれの町の行き来も楽になり、番兵や門番といった人達の仕事もなくなったらしい。
戴冠式にはそれぞれの種族に招待状を出しており、知り合いが来るかも知れないと少し期待している部分もあるのだった。
「誰か知り合い来ますかなー、久しぶりに会いたい人もいるとかいないとかですぞ。」
「そうだなぁ…まあ一人も来ないとかなったら少し寂しいな。」
そんな事を言っているとドアがノックされ、スライム族のキリカさんが入って来た。
今では身の回りの世話をしてくれるありがたい存在だ。
「あのー…多分知り合いだと思うって言う人とトーマとポメヤちゃんに会わせてって言う人がそこそこの人数来てるんですけど…」
なにその宝くじ当たった後に来る知らない親戚みたいな人達
「一応無下に帰せないので広間に集まって頂いてるんですが…」
「そんなにいるんですぞ?まあ多分知り合いだから会いに行きますぞ。」
そうして僕達は少し身だしなみを整えて広間に向かった。
扉を開けると…うわ…ほんとにそこそこ来てるな。
みんな見た顔だ、少し嬉しい。
「トーマ!あんた王様なんてなるの?旅が終わったらうちの国に来るって言ってたじゃない!」
いや言ってない言ってない、かもとか言って濁したから言ってない。
まず駆け寄って来たのはフェアリーの王のユーカだ。
フェアリーの国では先が短い妹の為に娯楽を用意してくれと頼まれて祭りを開催したんだ。
盛り上がって祭りは大成功したし、ポメヤがエリクサーを生み出す水筒を見つけて妹も完治した。
「ポメヤちゃんもスゴいね!王様になったなんて!聞いた時ビックリしちゃった!」
この子はニーア、その妹である。
なぜかポメヤのご執心で、ポメヤとデートした思い出を書いた絵本をずっと持ち歩いている。
「お!ニーアちゃん!いやービックリですぞ、王様なんてもう、あれですぞ、王」
そうだな、王で間違いないな。
するとポメヤとニーアの間のドワーフの女の子が割り込んできた。
「おお!ハナちゃん!久しぶりですぞ!」
「久しぶり!戴冠式の案内がドワーフの所にも来たの!そしたらポメヤとトーマさんが王様になるって書いてあったから無理言って来ちゃった!」
この子はハナというドワーフの女の子、ドワーフの町に行った際に僕達は風呂がない事に絶望した。
そして僕達は風呂を宿屋に設置したのだが、その宿屋の娘さんがこのハナちゃんだ。
僕が一生懸命に風呂の材料やら何やらを集めている時に二人で遊んでいたらしく、誕生日のケーキを食べてプレゼントまで買ったらしい。
首にはその時ポメヤが買った綺麗なネックレスをつけている。
「この買ってもらったネックレスずっと大事に付けてるの!大事な思い出なんだ!」
そこでフェアリーのニーアが口を挟んだ。
「あの、ネックレスってどういう、というかどういう関係なんですか?」
「ドワーフの町に行った時に出会ったんですぞ、誕生日の次の日だったけどケーキ食べてプレゼントあげたってワケ」
「私達はねー、一緒にお風呂も入った仲なんだー」
ハナちゃん…雰囲気で察してマウント取りにいったな…。
「お、お風呂!?ポメヤちゃん!どういう事ですか!」
「いや…どういうって…普通に…入っただけですぞ…」
流石のポメヤもタジタジだな、ちょっと面白いから見とこう。
「ま、まあ私にはポメヤちゃんとデートしたこの思い出の絵本がありますけど!!?しかもポメヤちゃんが描いてくれた絵で!」
おっとこれは…大丈夫かポメヤ君、僕は面白くて目が離せないよ。
「絵本!?なにそれ私も欲しいよ!」
「あ、はい、今度書きますぞ、任せてよホント」
ポメヤ…良いのかそんな事言って
「じゃあ私も欲しいわよ!トーマの本!」
ほら出たよ、ユーカも欲しいんだよお前の絵
ポメヤを囲んでわちゃわちゃしてる女の子…大変だなぁ画伯ってのも…
「あの…おめでとうございます。」
ポメヤが揉みくちゃになってるタイミングで声をかけて来たのは
「お、かなり久しぶりじゃないかフランちゃん!」
狐族のフランだった。
ギャンブルの町で借金奴隷になっていた女の子。
親の借金のせいで毎日休みなく働いているのを可哀想に思ったポメヤが借金を代わりに返済したのだ。
その町で僕達が大勝ちし、初めの1万ベルから二人合わせて1520億ベルまで増えたのだ。
その時フランちゃんもギャンブルをし、2億ほど稼いで実家に帰って何かお店をやると聞いたが…
「お久しぶりです!あの時の御恩は忘れていません、私もトーマさん達が王様で良いと思いますよ!
尻尾を振りながら話すフランちゃん、可愛いなぁ
「いやまぁね、やるけど、王様…。そう言えばフランちゃんは何かお店始めたの?なにかしたいって言ってたけど。」
「カジノ始めました!なかなか儲けが出て村は結構裕福になったんですよ!」
えぇ…借金奴隷になったのって父親がギャンブルで作ったお金が原因だったんじゃないの…
たくましい子だなぁ…
「それでこの帝国でもカジノ開こうと思ってます!宜しくお願いします!」
「まあ良いけど、娯楽は重要だからね。」
了承を貰って喜んだフランちゃんは村に戻って準備して来ます!と急いで帰って行った。
後で遊べるレートでってお願いしておこう。
そして休むまもなく…
「パンパカパーン!おめでとう!おめでとうですよー!」
今度はミカエルか…やかましいのが…ん?
誰か連れてるな。
あれは…ミリィじゃないか、ドリアードの。
ミカエルはちょっと鬱陶しいテンションの天使族。
気まぐれで地上人を天使の国に招待(拉致)して国民全員でもてなして暇を潰す残念種族。
僕達はお金もあったしもてなしが普通に疲れたので特に感動する事無く帰った。
ただ帰りに障害だったドラゴンの町を飛び越えてくれた事には感謝している。
ドリアードのミリィは町に出来た穴は裏の世界に繋がっているという噂を鵜呑みにして冒険に出かけた女の子だ、なんでこの2人が一緒に?
「なんかこの子もトーマさんと知り合いだって言うから一緒にお祝いに来たよ!」
「久しぶり!元気してた?」
元気そうで何よりだ、気になっていたので穴の中の事を聞いてみた。
穴の中には何も無く、数ヶ月彷徨って心が折れたらしい、もうダメだと泣き喚いていたらミカエルに発見されて天使の国でおもてなしを受けているそうだ。
「すごいんだよ!私の探してた裏の世界そのもの!毎日がすごい輝いててさ!もうすごいの!」
ミカエルは自慢げにウンウンと頷いている。
「でも良かったなぁ、見つけて貰って、危うく死ぬ所だったじゃないか。」
「トーマさん達に困ってる人を招待しろって言われたからね!バッチリ困ってる人を招待したのよね!」
なんか適当に言ったけど世界が狭くて助かったなぁ。
「ちょっとトーマ!また新しい女の子と何してんのよ!」
ポメヤに絵を描いてくれともみくちゃにしていたフェアリーのユーカがこっちに気がついた…ずっとあの間抜けをもみくちゃにしとけば良いのに…
「いや違うって、いや違くは無いんだけども!」
僕は迫ってくるユーカから目を背けた先に見覚えのある顔があった。
一瞬時が止まったような気がした。
「フィリア…さん?」
エルフの町で出会った…優しい女の子
帝国の罠で噴水に麻薬を盛られ、お酒だと思い込みエルフ全員が中毒になっていた。
僕達はそれに気がついていたが、自分達にはどうしようもないと何も話さないまま町を出た。
その数日後、帝国兵によってエルフは捕獲されたのだ…貴族や王族のオモチャにする為に…。
抵抗したが麻薬漬けのエルフの弓など当たらなかった。
どうしようも無かった、今日来た旅人が真実を伝えたとしても信じて貰える確証が無かった。
酒を独占する気かと射殺される危険性もあった。
僕達は見捨てたんだ…そんな町で出会った女の子は目の前にいる。
ずっと気がかりだった、申し訳ないとも思っていた。
しかし…
「トーマさん、ポメヤさん、おめでとう御座います。実はお二人が旅立った後なんですが…」
フィリアは口を開き、あの後の事を語り出したのだった。




