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第35話 戴冠式

戴冠式前夜。

以前訪れたフェアリーの町で出会ったフィリアと再開した。

ずっと気になっていた…後悔していた選択をした町だった。

「トーマさん、ポメヤさん、おめでとう御座います。実は…二人が旅立った後なんですが…」


僕はフィリアさんの言葉を遮って

「すみません!僕達には何も出来ないと思って…決めつけて…見捨てたんです…ポメヤは助けに行こうとしました!でも僕はそれを止めたんです…」


僕はずっと気になっていたんだ、しかし現実問題あそこで何か出来たとは思わない。


しかしいつも思ってしまうんだ、何か出来たんじゃないかと…そう思ってしまっていたんだ。

そうして頭を下げ続けた。

周りのみんなは何事かとこちらに注目している。


「え?え?トーマさん、何してるんですか!?やめて下さい!大丈夫です!大丈夫ですから!」


「大丈夫なワケがない…帝国に連れて行かれたと聞いた時、僕はもう二度と会う事はないと思ったんだ…帝国はそういう国だった。」


「いや違うんです!逃げました!私はちゃんと逃げ切りましたから!頭をあげて下さい!」


「え?」

僕はその言葉で頭を上げてフィリアさんを見た。


「お話するのでちゃんと聞いて下さい、ポメヤさんも一緒に。」

ポメヤも気まずそうにこっちに来てフィリアさんに挨拶をした。


「それではお話します」

そう言うとフィリアは話し始めた。


「トーマさんとポメヤさんが町を出た数日後、帝国兵が攻めて来ました。

町の外に出ていた仲間が偶然帝国兵の姿を確認し、あと数時間もしたら村に到着するという事でした。


長老はこの酒の噴水だけは守らねばいけないと言い出し、みんなで戦おうという流れになったんです。


しかし私を含めた数人のエルフは長老の言葉よりも、お酒よりも自分の命が惜しくなり逃げ出しました。


騒ぎが収まった後に町を遠くから見てみたら仲間は全員いなくなっていて代わりに帝国の人間がいました。

結局逃げられる状況だったのに逃げなかった仲間も、お酒に溺れていたのも私達の落ち度です。


そんな時に、お二人が足早に出発した事を思い出したんです。

もしかしたらと思っていました、でも恨んでなんかいません。

だから…もしも…少しでも罪悪感に苛まれるような事になっていたのだとしたら…謝ろうと思って今日ここに来たんです。

仲間は帝国滅亡と共に解放されて新しい土地で暮らしています。

酷い目にあった仲間も大勢いますが、解放してくれたのはあなた達二人です。


エルフを代表して申し上げます。

貴方達に謝罪と最大限の感謝を、そして王になられた事、心よりお祝い申し上げます。」


フィリアさんは片膝をつき、頭を下げて謝罪、御礼、お祝いの言葉をくれた。


「トーマ、泣いてるんですぞ?」


僕は安堵と感謝が押し寄せて来て涙が止まらなかった。

ずっと気になっていたんだ。ずっと後悔もしていた。

でも僕達には無理だったと言い聞かせてきたんだ。


「トーマさんは悪くありません!なので気にしないで下さい!王様でしょ!」


怒られてしまった…

「わかりました。フィリアさん、ありがとうございます。僕は全てを忘れる事は出来ないですけど…こうやって再開できて嬉しいです。明日の戴冠式には是非出席して下さい!」


「僕もフィリアちゃんに会えて嬉しいですぞ!」


少し胸が軽くなった。

気がつけば日も落ちていたので、僕達は明日は是非見に来てくれと全員に言った後夕食を取り、寝室に向かった。


「いやーフィリアちゃん元気で良かったですぞ。」


「まあまだ罪悪感はあるけどな、無事で良かったよ。」


「戴冠式かぁ…楽しみですな」


「僕はまだ良く分かってないよ…急に王様とか言われてもねぇ」


そしてゆっくり寝て、翌朝


「時間ですよー起きて下さいー」

スライムのキリカさんに起こされ、僕達は着替えさせられた。


のだが…え?私服じゃんこれ。


「王様っぽい服よりこっちの方がお二人っぽくていいかなって…ダメでした?」


「いやいいですぞ、動きやすいし。」


「戴冠式もやり方とか分からないので数分で終わります、王冠かぶって貰って、何かこう、言ってくれたらいいです。」

キリカさん結構適当言うじゃん…


じゃあ行きましょうと言われ…

会場に歩いて行くと…

さあここですよと言われ…


「なんかこんなサックサク進むの?」

「まあやり方なんて知らないですし…」


そうですか、まあそうっすよね。


そして謁見室には入った瞬間に目を疑った。


「質素ぉ…」


「思ったよりというか…飾りとかもない感じですぞ…盛り上がりに欠けるというか…」


「明日の戴冠式来てくれよな!とか言っちゃったじゃん…」


何の飾りつけも無い謁見室

まあそれなりの装飾はあるけどなんかサッパリしてるような、従来の帝国の紋入りの装飾品は撤去したのか…


王座はいつも通り、そして来賓用の椅子にはそれぞれの種族の代表が座っていて、レッドカーペットの左右に分かれている。

フェアリーの王のユーカとエルフのフィリアさんもそこに座っており、手を振っていたので振り返した。


まあいいか…僕達っぽくて…


そしてカーペットの上をスタスタ歩いて、キリカさんに王冠を貰った。

王冠はドワーフの特製らしく、シルバーで格好良い


そして頭に王冠を乗せられて…


「はい、それではスピーチして下さい。」

とキリカさん。

緊張しすぎて覚えてないとかじゃなくてものの数分でここまで進んでしまった。


「これは、昨日結構楽しみにしてたのに…拍子抜けして倒れそうですぞ…」

ポメヤは完全にヤル気を無くしてしまった。

まあ僕の出番か…逆に緊張しなくて良いかも。


「国王になりました、トーマです。宜しくお願いします」

僕はスッと席に座る、だって言う事なんてないもん…


「まあこんな感じですぞ、今日は僕達の奢りで全ての種族の宴会代出すから、今まで縛られた事もあったと思うし、思う存分遊び倒してという気持ち」


そうだな…楽しくやろう

何も分からないしこれから何が起こるか分からない、かっこいい事も言えないしね


ギャンブルで引くほど稼いだこの金使うなら今だろ


盛り上がりに欠けてお通夜のような戴冠式はこの一言でお祭り騒ぎになった。


【王の奢りで好きなだけ飲んで騒げ】


戴冠式が終わった瞬間、この事は瞬く間に広がり、後日大量の請求書が届く事になる…


「トーマ達らしいなんとも締まらない戴冠式だったわね…もう少し格好良い事言えばいいのに」

フェアリーの王のユーカは残念なモノを見る目で僕達を見る。


「だってさ…全国民の前でスピーチ!みたいなの考えてたんだよ実際、この国を争いが無い、誰もが幸せになれる国に!みたいな。

でも見てよこの式場、教会の方がまだ豪勢だよ」


「テンション下がっちゃったって感じですぞ、でもこの王冠は良い、とても良い」

ポメヤ、お前王冠似合うよな…オモチャみたいに見えるけど。


「まあ気持ちは分かるけど…まあいいか、今日はこの城で宴会するわ!貴方たちも参加ね!絶対よ!」


「フェアリーミルク宜しくですぞ!」

お前好きだよなあれ


すごい微妙な顔のフィリアさんもお祝いの言葉をくれた。

「す、素晴らしい戴冠式でしたね…あの、おめでとう御座います」

良いんですフィリアさん…無理に褒めなくて…


「で、でもお酒飲み放題なんですよね!きっとみんな喜びます!」

いや別に良いんだけど前のエルフって酒で失敗して帝国にやられたのに禁酒とかしないの?いや良いんだけど別に


「ここでも宴会するんで良かったら来てください、好き放題して良いし誰呼んでもいいですよ」


「良いんですか!お城でお食事してお酒飲むなんて考えた事も無かった!是非来ます!絶対来ます!」


かくして戴冠式は無事に終了。

国民は気前が良い王の誕生だと喜んだ。でも顔も分からないんじゃないか?この感じ。


城の画材でポメヤに戴冠式の絵を豪勢に描いてもらい、国民にはこんな戴冠式だったと広めた。

素晴らしい戴冠式だったらしいと評判だ。


「あとは夜の宴会か…まあ僕もたまに飲むか…」


「お酒飲むんですぞ?つーか飲めんの?」


部屋に帰ってベットに横たわる一人と一匹。

「まあ実はお酒好きだし、ただ旅に支障が出るから飲まなかっただけだ。」


「へーそれはそれは、まあ大して変わらなそうだけどね、君はそんな感じですぞ」


「まあ大丈夫だろう、記憶無くしても」


「は?お前ってば酒飲むと記憶残らないタイプの人間ですぞ?なんか不安ですぞ」


夜は宴会だ、久しぶりの酒だし楽しもう。



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