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第67話巨大魔獣と巨体魔法人形

島を揺るがす地響きがミラベル達に迫る!

ゴォォォォォ……。


突如姿を現した巨大な魔獣が一歩、前へ踏み出した。


その巨体が地面を踏みしめるたび、大地が大きく揺れる。


ミラベルは杖を握ったまま、歩み寄るその振動を感じて息を呑んでいた。


「…これは…足音…!?」


思わず声が漏れる。


巨大魔獣は四本の脚を持ち、全身を硬い鱗に覆われていた。


頭部には二本の角。そして、その口から覗く牙は一本一本が剣のように鋭い。


対して、もう一体。


アウレリオが用意した巨体魔法人形は、無数の魔法訓練人形が融合してできた異形だった。


腕だけでも、鍛えられた屈強な人間の身体ほどの太さがある。


「二体同時に相手をしないと…分散して戦いますか?」


ブレイブが呟くようにミラベル達に問いかける。


「そうね…。」


ミラベルも頷き、即興の作戦を練ろうとした時であった。


しかし…、そんなことを考える暇など敵が与えるはずもなく、巨大訓練人形が腕を振り上げた。


「!来るぞ!」


アルトが叫ぶ。


ドォォォン!!


巨大な拳が地面を叩きつける。


「くっ…!視界が…!」


地面が爆発したように土煙を巻き上げる。


「お嬢様!」


ブレイブがミラベルの腕を掴み、後ろへ跳ぶ。


「ありがとう!ブレイブ!」

「まだです!」


巨大魔獣がその隙を逃さない。


グオオオオオッ!!


「!?うわぁっ!?」


魔法人形への対処に追われていたアルトが、突進してきた魔獣に思わず驚き、その場を飛び退く。


「みんな!散開しろ!固まってると速攻で潰されるぞ!」


アルトの指示に従い、四人が左右へ飛び退いた。


魔獣が通り過ぎた瞬間――。


その場に弓の攻撃が降り注ぎ、ミラベル達だけを避けて魔獣と魔法人形に降り注ぐ。


「!この攻撃は…!」


攻撃が飛んできた方向を見るとそこにいたのは、ロザリアとセドリックであった。


更にセドリックは槍の先端から鞭のような雷魔法を出し、魔法人形の腕に巻き付けて魔獣から引き剥がす。


「ロザリア様!セドリック様!」

「こちらは我々に任せてください。魔獣への対処はそちらでお願いします。」

「!はいっ!」


セドリックとロザリアと合流したことにより、魔法人形と魔獣を分断させることに成功。


ミラベル達はセドリックに言われた通り、魔獣の相手に集中した。


「っ!今!」


ヴィオレットが杖を掲げる。


「風よ!」


強烈な突風が巨大魔獣の身体へ叩きつけられた。


しかし…。


「!…効いてない!?」


ヴィオレットは驚く。


放たれた魔法は上級の風魔法であったが、魔獣はほんの少し身体を揺らしただけだった。


アルトが歯を食いしばる。


「ヴィオレットの魔法が通らねぇなんて…!」

「それならっ!」


ブレイブが剣を構える。


「俺が囮になって時間を稼ぎます!」

「待って!」


ミラベルが叫んだ。


「真正面からは危険よ!」

「でも!このままでは…!」

「この魔獣…攻撃の直前に必ず右前脚へ体重を移してる!そこに隙があるかもしれないわ!」

「!はい!」


アルトがミラベルを見る。


「良い観察眼だな!その手で行くぞ!」

「はい!」


ミラベルは魔獣を睨みつけた。


「来ます!」


巨大魔獣が再び唸る。右前脚が動く。


「今です!」


四人が一斉に左右へ散った。魔獣が突進する。


その直後――。


「そこだ!」


ブレイブが魔獣の側面へ回り込んだ。剣に身体強化の魔力を集中させる。


「やぁっ!」


鱗の隙間へ剣を叩き込む。


ガキィン!


「くっ…!」


あまりの硬さに剣が弾かれた。


「ブレイブ!」

「大丈夫です!」


ブレイブはすぐに距離を取る。


「…鱗の隙間にも剣が通らない…!無力化するなら脚が狙い目なのに…!」

「それなら、攻撃する隙を作るわ!」


ミラベルが杖を掲げる。


「拘束魔法!」


魔法の鎖が巨大魔獣の脚へ絡みつく。


「今です!」


アルトが駆ける。


「はあっ!」


剣に強化魔法を乗せ、鎖で動きを止められた脚を狙う。


ドンッ!


剣が鱗へ食い込む。


「…っ!」


しかし、それでもダメージは浅い。


「硬すぎる…!」


アルトが叫ぶ。


「ならば、さらに重ねます!」


ヴィオレットが魔法を発動。


「土柱!」


地面から無数の土の柱が突き出し、魔獣の脚を囲み動きを鈍らせることには成功した。


ミラベルが叫ぶ。


「ブレイブ!」

「行きます!」


ブレイブが走る。剣にさらに魔力を集中させる。


身体強化。剣術強化。魔力集中。


全てを一つにまとめる。


「――これで!」


跳躍。


魔獣の背へ乗る。


「終わりだぁぁ!!」


剣が鱗の隙間へ深く入り込む。だが…。


「――ッ!」


魔獣が身体を大きく振った。


「!?ブレイブ!」


ブレイブが弾き飛ばされる。


「ぐっ…!」


地面へ転がる。ミラベルが駆け寄った。


「ブレイブ!」

「大丈夫です!」


立ち上がる。


「…今ので分かりました。」

「えっ?」

「攻撃する場所は、あそこです!」


ブレイブは魔獣の首元を指差した。


「鱗が…少しだけ薄い。」

「…っ!」


ミラベルも見る。


確かに、首の付け根だけ、他よりも鱗が細かい。


「だったら、そこを狙いましょう!私が…あの魔獣の注意を引きます」

「!囮になるんですか…!?危険です!囮なら俺が…!」

「ブレイブ。」


ミラベルは静かに真剣な眼差しでブレイブを見つめて静かに説く。


「ブレイブ…あの魔獣に攻撃を通せるのは近接戦闘に長けたあなたかアルト様だけ。拘束魔法についてもヴィオレット様の方が優秀だわ。だから…これが今の最善なのよ。」

「!ですが…!」

「お願い、私を…あなた自身の力を信じて。」

「!…わかり…ました…!」


ミラベルの説得にブレイブは剣を構えて真っ直ぐ魔獣を見る。


「私は拘束を続けます!」

「俺は脚を狙う!」


ヴィオレットとアルトがそれぞれに言う。


「決まりですね…!」


四人は頷き合った。


その時のことだった。


「おーい!!」


森の向こうから声が聞こえた。


ミラベル達が振り向く。


木々の向こうから、カインとエレノアが走ってきた。


「みんな無事か!?」

「カイン様!エレノア様!」


カインは状況を見るなり、剣を抜いた。


「…あれを相手にしているのか。」

「ええ。」

「なら、俺たちも加わる。」


エレノアも杖を構える。


「私も…!支援いたします!」

「助かります!」


仲間が増えた。それだけで、ミラベルの胸に少しだけ勇気が湧く。


「では、作戦を微調整します!」


ミラベルは素早く説明する。


「カイン様はブレイブと共に首元への攻撃を!」

「分かった!」

「アルト様は脚を!」

「了解!」

「ヴィオレット様は引き続き拘束魔法を!」

「はい!」

「エレノア様は全体の支援をお願いします!」

「はいっ!」

「私は…囮になって魔獣を惹きつけます!みなさん…どうかご無事で!!」


全員が散開する。


「行きます!」


ヴィオレットの声と同時に更に魔法の鎖が巨大魔獣へ絡みついた。


「今だ!」


アルトが剣を振るい、エレノアが魔力を重ねる。


ミラベルは囮になりながら風で魔獣を妨害する。


「ブレイブ!カイン様!」


二人が同時に駆け出す。巨大魔獣の身体を踏み台にし、跳躍。


「はああああっ!!」

「やああっ!!」


二本の剣が、首元へ同時に叩き込まれた。


ドンッ!!


魔獣が大きく鳴く。


「効いた!」


カインが叫ぶ。


「もう一度!」


ブレイブが着地する。


だが、セドリック達に引き剥がされたはずの魔法人形が突如乱入し、腕を振り下ろした。


「危ない!」


ロザリアが叫ぶ。


ドォォォン!!


地面が抉れる。


全員が散開する。


「申し訳ない!この人形…完全に拘束しても体を分解して逃れるようです!」


ロザリアと共に再び拘束魔法をかけながらセドリックがやってきてそう語る。


セドリックの言った通り、身体を分解することで拘束を抜け出した魔法人形がこちらへ向き直る。


「…あれも無力化しなきゃいけない…お二人の拘束を解いてこちらにやって来たってことは分散させるより二体同時に相手にしないとってことですよね…?」


ブレイブが問いかけると一同は頷いた。


再び、一同は巨大人形に向き直り構える。


強力な魔獣と巨体な魔法人形…強大な二体を気絶などで無効化させる戦いはまだ始まったばかりであった。

1話丸々戦闘回でした。次回も巨大魔獣と巨体魔法人形との戦闘は続きます。


今回は読んでくださりありがとうございました。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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