第68話12人連携
ミラベル達は連携を極め、強敵に立ち向かう。
「…二体同時に相手にしないとってことですよね?」
ブレイブの言葉に、全員が頷いた。
目の前には二体の巨大な存在。
一体は、鋼鉄のような鱗に覆われた巨大魔獣。
そしてもう一体は、無数の魔法訓練人形が融合して生まれた巨体魔法人形。
どちらも、一人で相手にできるような存在ではない。
「そういうことなら…!」
ミラベルが周囲を見渡す。
「魔獣と魔法人形、それぞれに戦力を割きながら、必要に応じて援護を回しましょう!」
「分かった!」
アルトが剣を構える。
「でも、二体を完全に別々に相手するのは危険だ!」
「ええ…互いの攻撃がこちらへ飛んでくる可能性があります。」
セドリックが答える。
「だったら、私たちが魔法人形を足止めします!先程は分裂に油断しましたが…手の内がわかった今ならいくらでも対処は可能です。」
ロザリアが杖を掲げた。
「参りましょう!セドリック様!」
「ああ!ロザリア!」
二人が同時に走り出す。
「雷鞭!」
セドリックの槍から雷の帯が伸び、巨大魔法人形の腕へ絡みつく。
ロザリアも続けて魔法の詠唱をする。
「大地よ、彼の者の足を縛れ!」
地面から土の鎖が飛び出し、魔法人形の脚へ絡みついた。
巨大人形の動きが鈍る。
「今です!」
ロザリアが叫ぶ。カインが一気に距離を詰めた。
「はぁぁっ!」
剣を振り上げ、巨大人形の脚を叩く。
ガキィン!
「っ!硬い!」
「だったら…!同じ場所を狙い続ければ!」
ブレイブも反対側から斬りつける。
ガンッ!
「くっ…!」
傷はつかない。
しかし、二人が攻撃を繰り返すことで、人形の動きは確実に鈍っていく。
「エレノア!」
「はい!」
エレノアが杖を掲げる。
「風の檻!」
巨大な竜巻が人形の周囲に発生する。
人形の巨体が風に押され、数歩後退した。
その隙にセドリックが魔法人形の背後へ回り込む。
「ロザリア!」
「はい!」
二人の魔力が重なる。
「雷縛!」
「土縛!」
雷と土。
二つの拘束魔法が人形の身体を包み込む。
しかし――。
巨大人形が身体を大きく震わせた。
次の瞬間…。
ガシャッ!!
「!?」
その身体がバラバラに分解した。
拘束されていた腕や脚が、まるで無数の人形へ戻ったかのように分離する。
セドリックは分離した人形達を一体一体拘束していく。
「巨体に戻る前に少しずつバラバラになった人形を拘束していく…地道な持久戦になるがこれしか手はない…!」
その言葉を聞きカインは人形の急所の首や腹部を攻撃しながら答える。
「安心しろ!持久戦なら得意だ!」
セドリックの地道な作戦は功を奏し、彼らが更に拘束した人形達は巨体に集まることはなかった。
だが、そうこうしているうちに先程よりサイズダウンこそしているが再び魔法人形の集合体が完成し、再び分離させようとした、その時だった。
「戦力を地道に削ぐのも堅実な戦い方も良いが…策はまだあるよ。」
そう言いながら、一閃放たれた光魔法に魔法人形は膝をつく。セドリック達は攻撃が放たれた方向を向くとそこにいたのは…
「!ルシアン!アイリス嬢!」
いつの間にか、ルシアンとアイリスが森から姿を現していた。
「お二人とも!」
エレノアが声を上げる。
「遅くなりました!」
アイリスが駆け寄る。
「島の反対側で魔獣と魔法人形と戦っていたら、ものすごい音が聞こえてきて…ここまで来たのです。」
「なるほど…!」
ルシアンは巨大人形を見る。
「…やはり。」
「何か分かったんですか?」
ブレイブが尋ねる。
「この人形は、一つ一つの魔法人形が独立した魔力核を持っているんだ。」
「魔力核?」
「そう…魔力核は人形とって動力源のようなもの…だから拘束された部分を切り離して、別の場所で再構築できる。この再構築スピードを見るに…魔力核の数は20個以上はあるように見える。」
「!それなら…!」
ブレイブが考える。
「全部の魔力核を同時に止めればいいんですか?」
「その通りだ。」
ルシアンが頷く。
「でも、それには一度、完全に動きを止める必要がある」
「…それなら!」
ブレイブの目が輝いた。
「みんなで作りましょう!巨大人形の動きを止めるために、全員の魔法と攻撃を一点に集中させましょう!」
「いい作戦だ」
ユリウスの声がした。
「ユリウス様!」
森の奥からユリウスとマリナが姿を現す。
「全員揃ったな。」
「ユリウス様!マリナさん!」
魔獣サイドの相手をしていたミラベルも2人の登場に嬉しそうに笑う。
「遅くなった、」
ユリウスが魔獣と巨大人形を見る。
「途中で魔獣に襲われていたが…マリナの浄化の力にだいぶ助けられた。彼女がいなければここまで来るのにもう少しかかっただろう」
「一匹残らず浄化して無力化してやったぜ!」
マリナが胸を張る。
「ああ、助かったよ。…では。」
ユリウスが穏やかに笑った。
そして――ユリウスの表情が戦闘時のものへ変わる。
「作戦を聞こう。」
ルシアンが説明する。
「巨大人形は魔力核が複数あるため、拘束されても身体を分解して逃げられます。だから、全員で動きを止め、その瞬間にとアイリス様が魔力核を停止させます」
「なるほど…。」
ユリウスが頷く。
「では、私も加わろう。戦力の比重としては…ミラベル達の方に加わりつつ全体を見てブレイブ達に加勢するというやり方で良いか?」
「はい!お願いします!」
「魔獣の浄化ならあたしでも力になれる!あたしもミラベル達の方に加勢するぜ!」
ミラベルは心強い2人の存在に嬉しそうに頷いた。
だが、その直後。
グオオオオオオオッ!!
「!」
巨大魔獣が咆哮した。
「魔獣が動くぞ!」
アルトが叫ぶ。巨大魔獣がこちらへ突進してくる。
「全員、散開!」
ユリウスが叫ぶ。全員が左右へ飛び退く。
巨大魔獣がその中央を突き抜けた。
しかし…その進行方向には、巨大魔法人形がいる。
「まずい!」
ミラベルが叫ぶ。二体が衝突する――。
そう思われた瞬間…巨大魔法人形が腕を振り上げた。
ドォォォン!!
巨大な拳が魔獣の頭部へ叩き込まれる。
「…!?」
魔獣がよろめく。
そして、怒ったように魔法人形へ突進した。
「二体が…戦い始めた…!?」
カインが呆然とする。
「これは…チャンスかもしれない。」
ユリウスが呟く。
「二体が互いに意識を向けている今なら、片方ずつ動きを封じられる。」
「ですが…!」
アイリスが不安そうに言う。
「このままでは、どちらかが傷つきすぎます!」
「その通りだ。」
ユリウスは頷いた。
「だから、今度は我々が二体を同時に止める。」
「一体ずつならともかく…あんなでけぇの二体同時にできんのか?」
マリナが尋ねる。
「できるかどうかではない。」
ユリウスが微笑む。
「やるんだ。」
「!おう!」
マリナが頷いた。
「みんな!」
ミラベルが叫ぶ。
「魔獣と魔法人形が戦っている今のうちに、両方を止めます!」
「どうする?」
アルトが尋ねる。
「まず、私やエレノアさんヴィオレットさん達の拘束魔法で魔獣の脚を止めます!その隙に前衛のブレイブ達に怯ませてもらいます!」
ミラベルが魔獣を見る。
「アルト様、カイン様、ブレイブは前へ!」
「了解!」
三人が走り出す。
「ヴィオレット様、土魔法で脚を固定してください!」
「分かりました!」
「エレノア様はヴィオレット様を支援!」
「はい!」
「セドリック様、ロザリア様は魔法人形を!」
「任せてください!」
「ルシアン様、アイリス様は魔力核の位置を探してください!」
「了解!」
「マリナとユリウス様は――!」
ミラベルは二人を見る。
「私と一緒に魔獣が落ち着くよう、援護をお願いします!」
「分かった!」
「承知した!」
全員が動き出した。
まずは魔獣。
アルトが剣を振り、前脚の動きを誘導する。
「こっちだ!」
カインが反対側から斬り込む。
「来い!」
ブレイブは魔獣の正面へ躍り出る。
「こっちを見ろ!」
魔獣がブレイブへ視線を向ける。
「お嬢様!今です!」
ブレイブが叫ぶ。
「拘束っ!」
ミラベルの魔法の鎖が魔獣の脚へ絡みつく。
ヴィオレットが続く。
「土柱!」
巨大な土の柱が四本の脚を囲む。
カインがエレノアに向かって叫ぶ。
「エレノア!」
「はい!」
エレノアが強化魔法を重ねる。
「強化!」
土柱がさらに硬くなる。
「まだだ!」
アルトが剣を地面へ突き立てる。
「地縛剣!」
大地そのものが魔獣の脚を包み込む。
「動きが止まったぞ!」
カインが叫ぶ。
ミラベルは魔法をかけ続けながら力強く叫ぶ。
「今なら…!無力化ができる…!」
一方、その頃…巨体魔法人形と戦うルシアン達は――。
「ルシアン!」
「見つけた!」
セドリックの呼ぶ声にルシアンが叫ぶ。
「魔力核は…全部で24!」
「24!?」
セドリックが驚く。
「思ったより数が多いのですね…全員で片っ端から止めますか?」
ロザリアが尋ねる。
「いや…」
ルシアンが首を振る。
「核は互いに魔力を共有している。全部を同時に止める必要がある。」
「では、私たちが動きを止める!」
セドリックが雷鞭を伸ばす。
「ロザリア!」
「はい!」
二人の魔法が巨大人形を縛る。
「ルシアン!」
「分かっています!」
ルシアンは杖の先端を剣のように尖らせ人形の脚へ斬り込む。
「固定!」
続けてセドリックの槍が地面へ突き刺さり、雷の魔法で人形の足元を固定する。
「今だ!」
ルシアンが叫ぶ。
「風の縄!」
アイリスが巨大な風が人形の身体を押さえつける。
「私も!」
ロザリアが重力魔法を重ねる。
「重圧!」
巨大人形の身体が沈む。
「止まった!」
ロザリアが叫ぶ。
「今!」
ルシアンとアイリスが同時に杖を掲げる。
「魔力核、同期開始!」
「分離を防ぐための術式固定!」
巨大人形の内部で無数の魔力核が輝く。
一つ。二つ。三つ。
次々と光が消えていく。
「あと10個!」
ルシアンが叫ぶ。
「九!八!」
アイリスが続ける。
「七!六!」
巨大人形が再び動こうとする。
「頼む!絶対に拘束を解くな!」
ルシアンが叫ぶ。
「分かっている!」
セドリックが雷鞭をさらに強くする。
「ロザリア!」
「はい!」
二人の魔力が巨大人形を包む。
「五!四!三!」
巨大人形が激しく震える。
「二!一!」
パァァァン!!
巨大人形の身体から、全ての魔力が抜けた。
ガシャ……。巨大な身体がその場へ崩れ落ちる。
「…止まった?」
セドリックが息を切らしながら尋ねる。
ルシアンが確認する。
「…魔力核、全部停止です。」
アイリスも頷く。
「完全に無力化しています!」
「…っ!よし!」
セドリックが拳を握る。
しかし…。
「まだです!」
ミラベルが叫ぶ。
「魔獣が!」
全員が振り返る。
巨大魔獣は、未だに拘束の中で暴れていた。
「グオオオオオッ!!」
「マリナ!」
ユリウスがマリナを魔法で庇いながら飛翔魔法をかける。
「今だ!」
「おう!」
マリナが魔獣の前へ進む。
巨大な身体。鋭い牙。恐ろしい咆哮。
それでも――マリナは逃げなかった。
「大丈夫だ!」
優しく語りかける。
「あたしたちは、お前を傷つけたいんじゃない。」
魔獣がマリナを見る。
「もう…戦いは終わりにしよう。」
マリナの手から、柔らかな光が広がる。
「怖くない…怖くないよ。」
光が魔獣を包み込む。
「!…グル……」
魔獣の唸り声が弱くなる。
そして、ゆっくりとその巨体が地面へ伏せた。
「!…落ち着いた。」
ミラベルが呟く。マリナは魔獣へ近づき、その頭へそっと手を置く。
「もう、大丈夫だ!」
魔獣は目を閉じた。静かな寝息が聞こえる。
「無力化…成功だ。」
ユリウスが微笑む。ミラベルも大きく息を吐いた。
「みんな…!」
全員がその場に集まる。
「やった…!」
カインが座り込む。
「さすがに疲れたな…。」
「ふふっ、私もです…。」
エレノアも肩で息をする。ヴィオレットが笑った。
「でも…全員無事です。」
「そうですね。」
ロザリアも頷く。セドリックが巨大魔法人形を見る。
「こっちも完全に止まってます。」
ルシアンが確認する。
「魔力核はすべて停止を確認しました。」
「!では!」
ミラベルが言った。
「最後の仕上げです!」
アウレリオから言われていた。
無力化の証。
それを示す――。
「リボンを結びましょう。」
ミラベルが巨大化魔法で魔獣に合うサイズにリボンを大きくし、巨大魔獣へ歩み寄る。ブレイブがその隣へ。
「俺も手伝います!」
二人で大きな赤いリボンを持つ。
巨大魔獣の首元へ近づき、そっと結ぶ。
赤いリボンが光った。
パァァァ……。
「綺麗だな…!」
マリナが目を輝かせる。
続いて、巨大魔法人形へ…セドリックとロザリアが近づく。
「こちらにも」
二人で巨大なリボンを結ぶ。こちらも淡い光を放った。
その瞬間――。
「合格!!」
アウレリオの声が島中へ響き渡った。
「全員、見事合格だ!」
「…!?」
歓声が上がる。
「!!やったぜ…、やったぜぇっ!!」
マリナが両手を上げる。
「やりましたね!」
エレノアが笑う。
「ふう…何とか、だな。」
カインも息を吐く。
「…みんながいたからできたことだな!」
アルトが周囲を見る。
ミラベル。ブレイブ。マリナ。ユリウス。カイン。エレノア。アルト。ヴィオレット。ルシアン。アイリス。セドリック。ロザリア。
12人。
誰一人欠けていない。誰一人、大きな怪我も負っていない。
そして、巨大魔獣も…巨大魔法人形も…無傷に近い状態で無力化されている。
ミラベルは、赤いリボンの結ばれた魔獣を見つめる。
「…私たち、ちゃんとできたわよね。」
「そうだな!」
マリナが頷く。
「みんなで力を合わせたからできたことだ!」
「その通りだ。」
ユリウスが笑う。
ブレイブもミラベルを見る。
「お嬢様…。」
「何?ブレイブ?」
「今回で俺…本当の意味で分かった気がします。」
ブレイブは仲間たちを見る。
「自分の力を信じるだけじゃない…。」
そして――。
「仲間の力も信じることが大切なんだなって!」
「!そうね!」
ミラベルは微笑んだ。遠くの森。
その木の上から、アウレリオは12人を見下ろしていた。
「上出来だ。」
豪快な笑顔。
「これなら、あいつらも安心して背中を預けられる」
アウレリオは空を見上げる。
「魔王との戦いは、まだ先だ。」
だが――。
「こいつらなら…きっと大丈夫だ。」
島には、12人の笑い声が響いていた。
厳しい合宿の中で得たもの。
それは魔法でも、剣技でもない。
対魔獣や魔族を想定した無力化させる戦闘技術の向上と、そして何より仲間を信じること。
そして…信じてもらうに足る自分になること。
その三つを胸に刻み――。
彼らはまた一歩、迫り来る魔王軍との決戦へ近づいていった。
アウレリオの課した最大の試練をミラベル達はクリアしました。
次回は残りの日数のサバイバルを切り抜けた様子や後日談を書きたいと思います。
今回は読んでくださりありがとうございました。次回も読んでいただけると嬉しいです。




