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第66話合流

強化合宿四日目…今日も各地で戦いが繰り広げられていた。

強化合宿四日目。


朝日が島を照らし始めた頃。


「…ん」


ミラベルは木の根元に身体を預けたまま目を覚ました。


「…朝…。」


ゆっくり身体を起こす。


「っ…相変わらず身体が痛い…。」


肩、腰、脚。


ここ毎日歩き続けて、魔獣や魔法人形と戦い、慣れない野営までした身体は、正直なところ悲鳴を上げていた。


それでも――。


「今日も…頑張らないと!」


ミラベルは立ち上がる。


水筒の残量と食料も確認。


そして腰に結んだリボンを確認する。


「昨日は魔獣四体と魔法人形五体、無力化できた…。」


まだまだ少ない。


「もう四日目だけど…一週間…まだまだ長いわね…。」


そう呟きながらも、ミラベルの瞳に弱気な色はなかった。


「でも…みんなも頑張っているもの。」


杖を握る。


「私も…負けていられないわ!」


ミラベルは森の奥へ進んでいった。




その頃、島の北側。


ブレイブも岩場で目を覚ました。


「…ふぁ〜…」


大きく伸びをする。


「ぐっ…身体中が痛い…。」


昨夜は岩場を背にして眠った。


寝心地など、良いはずがない。


それでもブレイブは立ち上がる。


「…お嬢様、無事かな…。」


自然とミラベルの顔が浮かぶ。


「マリナさんも…ユリウス様も…みんな大丈夫だといいけど。」


剣を腰に差す。


「…よし!」


歩き出そうとした瞬間のことだった。


――ガキィン!


「!」


背後から魔法人形が襲い掛かってきた。


「!起きて早々にこれかっ!」


ブレイブは剣を抜き、魔法人形の剣を受け止める。


「ぐっ…!」


初日よりも明らかに速い。


「こいつ…!」


鍔迫り合い中にブレイブは歯を食いしばった。


「でも―!」


魔力を脚へ集中。


「前の俺よりも…速く!」


身体を捻り、剣を滑らせる。


「加速!」


一瞬で懐へ入り込む。


「そこだ!」


柄で人形の腕を打ち上げ、剣が宙を舞った。


「終わりだ!」


人形の腹部へ剣の柄を叩き込む。


ドンッ!


魔法人形が倒れた。


「…はぁ…」


ブレイブは息を吐いた。


そして人形へリボンを結ぶ。


「よし…!」


彼は周囲を見回す。


「今日こそ…誰かに会えるといいな。」


    


一方、島の南東。


セドリックは険しい山道を一人で進んでいた。


「!…これは…。」


足元を見る。


細い崖道…その先には深い谷。


「迂回するしかない…か。」


しかし、その瞬間――。


「グルルル……」


背後から唸り声。


振り返ると、翼竜型魔獣が二体。


「…なるほど」


セドリックは槍を抜いた。


「道を譲る気はない、ということですね…。」


二体が同時に襲い掛かる。


セドリックは一体目の爪を受け流す。


そのまま身体を回転。


「身体強化!」


槍へ魔力を纏わせ、二体目の足元を打つ。


「ギャウン!」


しかし一体目が背後から迫る。


「!」


セドリックは咄嗟に身を伏せる。


頭上を爪が通過した。


「…っ!」


セドリックは一歩下がる。


二体。しかも戦っている場所が狭い。


「ならば――!」


槍を強く握り直し構え直す。


「互いに互いを…邪魔させればいい!」


セドリックは一体の攻撃を誘導し、魔獣が飛び掛かる。


その直線上に――もう一体。


「!今だ!」


二体がぶつかった。


「催眠波!」


セドリックが魔法を放つ。


魔力の波が二体を包み込む。


「そのまま…眠っていてください。」


二体は力を失い、その場へ倒れた。


セドリックは静かに息を吐いた。


「…殺さずに済んだ。」


そして二体へリボンを結ぶ。


「これも…強くなるために必要なことだ。」


単純に敵を倒す…それだけではない。


如何に少ない力で相手を無力化するか。


それもまた、実戦で生き残るための技術だった。




その頃…、セドリックとは別の山道。


ロザリアもまた、一人で戦っていた。


「…囲まれましたわね。」


周囲には魔法人形が三体。


「ですが…。」


ロザリアは杖を構える。


「私も以前までの私とは違います。」


三体が一斉に襲い掛かる。


「魔霧!」


濃い霧が辺りを包み、人形達の動きが鈍る。


ロザリアはその隙に移動。


「一体目…。」


背後から杖を振る。


「魔鉄の鎖!」


魔力の鎖が人形の腕を拘束。


「二体目!」


別の人形へ。


「地の壁!」


地面から壁を出現させ、突進を防ぐ。


最後の一体が迫る。


「!そこです!」


ロザリアは足元へ魔力を集中。


「滑倒!」


地面が滑る、人形が足を取られて勢いのまま転倒。


「…ふう」


三体すべてを魔鉄の鎖で無傷で拘束した。


ロザリアは微笑む。


「力任せに倒すだけが魔法ではありませんもの。」


そして三体へリボンを結ぶ。


「この経験…必ず皆様と合流した時に役立ててみせますわ。」



更に島の西側。


ルシアンは小さな洞窟の中にいた。


「…ここなら雨風は凌げそうですね」


彼は昨夜からほとんど移動していなかった。


洞窟の入口に簡単な結界を張り、夜を明かしたのだ。


「さて」


魔道具を取り出す。


「水…食料…問題なし。」


そして地面に簡単な地図を書いていく。


「島の地形はかなり複雑ですね…。」


ルシアンは考える。


「ですが…。」


昨日から観察した地形。


水の流れ、魔獣の足跡、魔法人形の出現位置…。


「アウレリオ先生は、おそらく無作為に配置しているわけではない…。」


その推測が正しければ――。


「魔法人形は、こちらの行動を見て配置を変えている可能性がある。」


その時…。


――ガサッ。


「!」


ルシアンは杖を構えた。


洞窟の奥から巨大な蜘蛛型魔獣が現れる。


「…これは。」


魔獣が糸を吐く。


「炎の盾!」


防御壁で防ぐ。


だが糸が壁へ絡みつく。


「なるほど…。」


ルシアンは冷静だった。


「ならば、炎ではなく――」


杖を振る。


「風の刃!」


風の刃が糸だけを切り裂く。


「これでどうです!」


魔獣が跳ぶ。


ルシアンは後退。


そして――。


「催眠波!」


魔法が魔獣を包み込む。


魔獣はその場で眠りへ落ちた。


「…成功…ですね。」


ルシアンは額の汗を拭った。


「戦闘中に相手を分析する…。」


それは学院で戦いを重ねるたびに自分が常に心がけてきたことであった。


「少しずつですが…身についてきましたね。」


リボンを結ぶ。


「皆さんも、きっと頑張っているでしょう。」



その頃、アイリスは湖畔にいた。


「…水場を確保できたのは大きいですね。」


彼女は湖の周辺を調べる。


「ですが…。」


水面、何かが動いた。


「…!」


巨大な魚型魔獣が飛び出してきた。


「氷壁!」


氷の壁を展開。魔獣の突進を防ぐ。


「水中ではこちらが不利…!」


ならば、アイリスは湖そのものへ魔力を流す。


「少しだけ…力をお借りします!」


「凍結!」


水面の一部が凍りつく。


魔獣の動きが鈍る。


「!…今っ!」


氷の杭が魔獣の周囲へ展開。逃げ道を塞ぐ。


「…無力化…完了。」


アイリスはほっと息を吐いた。


「ルシアン様と合流できたら…この方法も共有しましょう。」


そして魔法で魔獣にリボンを結ぶ。


「みんなで生き残るために…私は強くなる。」



一方その頃…島の中央部。


「師匠!」

「!マリナ!」


ユリウスとマリナ。ようやく合流した二人は、森の中を並んで歩いていた。


「やっぱ一人より二人だな!」

「君は一人でも二人以上賑やかだけどね。」

「?なんだよそれ?」

「褒めているんだよ。」

「!そっか!」


マリナとのやり取りに、ユリウスは癒されて思わず笑う。


「しかし…。」


ユリウスは周囲を見る。


「この島の環境…叔父上から出された課題は想像以上に厳しい。」

「だな…!」


マリナも頷き、そして拳を握る。


「でもよ…っ!あたし達なら大丈夫だ!」

「!そうだね。」


その時…、木々の向こうから巨大な魔法人形が姿を現した。


「!…来たか。」


ユリウスが杖を構える。


「マリナ。」

「分かってる!」


二人は同時に駆け出した。



そして、森の別の場所。


ミラベルとブレイブも、ようやく一つの開けた場所へ辿り着き再会を果たしていた。


「!お嬢様!!」

「!ブレイブ!無事だったのね!」

「お嬢様こそ…!ご無事で何よりです!」


二人は駆け寄り再開を喜び合う。しかし、和んだ空気のままではいられない。


周囲を警戒したまま二人は進んでいく。


「…お嬢様、この辺りはもう探索なさいましたか?」


ブレイブが尋ねる。


「いいえ…今日初めてきたわ。」

「そうですか。俺もです…。」


二人は警戒しながら進んでいく。その最中…。


「…あれ?」


ミラベルが遠くを見る。木々の向こうで、何かが動いた。


「!ブレイブ…。」

「はい!」


二人は更に警戒を強める。


しかし…。


「!待って!」


見えてきたのは――。


「ミラベル嬢!ブレイブ!」

「!アルト様!」


アルトとヴィオレットだった。


「やっと会えたな!」


アルトが嬉しそうに駆け寄る。


「2人共大丈夫か?」


ヴィオレットも微笑む。


「お二人とも無事で何よりです。」

「アルト様、ヴィオレット様…この島の構造は分かりますか?」

「もちろん!」


アルトは胸を張った。


「俺の家が管理してる土地だからな!」

「助かります!」


ミラベルの表情が明るくなる。


「これならみんなを探せるかもしれない!」

「それに!」


ブレイブが笑う。


「四人なら、もっと強い魔獣にも対応できます!」


アルトが剣を構える。


「よし!」


ヴィオレットも杖を握る。


「では、行きましょう!」

「ええ!」


四人は歩き出した。



その様子を、島の高台からアウレリオが見ていた。


「おっ!」


魔道具へ映る四つの光点。


「ミラベル、ブレイブ、アルト、ヴィオレットが合流したか…。」


少し離れた場所では二つ。


「ユリウスとマリナ…。」


さらに別の場所。


「セドリック、ロザリア、ルシアン、アイリスも順調に進んでいるな。」


アウレリオは満足そうに笑う。


「カインとエレノアも、そろそろ誰かと合流する頃か。」


12人。


それぞれが別々の場所で戦い、考え、傷つき、前へ進んでいる。


まだ全員が揃ってはいない。


だが、確実にそれぞれの力は磨かれていた。


「…いいぞ。」


アウレリオは腕を組む。


「ただ強くなるだけじゃ面白くない。」


視線を島の中心へ向ける。


「一人で戦う力を存分に身につけた奴らが…。」


口元に笑みを浮かべる。


「仲間と組んだ時、どこまで強くなれるのか…。」


アウレリオは指を鳴らした。


――ゴゴゴゴゴ……。


島の奥深く。


巨大な魔法人形が目を覚ます。


「さあ…。」


アウレリオは楽しそうに笑った。


「そろそろ、合流した連中にも次の課題を出してやるか。」


強化合宿四日目。


12人はまだ知らない。


この島での修行が――、単なる戦闘訓練ではなく、互いの力を理解し、支え合うための試練へと変わり始めていることを。

ミラベルがブレイブ、アルト、ヴィオレットと合流し、ユリウスとマリナも彼らとは別に合流を果たしました。


その状況を見守るアウレリオは更なる試練を12人に課すつもりです。


今回は読んでくださりありがとうございます。次回も読んでいただけたら嬉しいです。

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