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第65話それぞれの試練

強化合宿一日目。各地で散り散りになったミラベル達は各々魔獣や魔法人形を無力化するために戦っていた。

巨大な猪型魔獣が茂みを突き破って飛び出してきた。


魔獣は地面を蹴り、一直線にミラベルへ突進する。


「風よ!」


ミラベルが杖を振る。


突風が魔獣の身体を横から叩く。


だが――。


「くっ……!」


巨体は僅かによろめいただけ。


「これくらいじゃ止まらない…!」


魔獣が再び突進してくる。ミラベルは横へ飛び退いた。


猪型魔獣が木へ激突する。


(!今…!)


ミラベルはその隙に地面へ杖を突き立てた。


「深緑の蔓!」


地面から植物の蔓が一斉に伸び、魔獣の四肢へ絡みつく。


「グオオオッ!」


魔獣が暴れる。


蔓が次々と千切れていく。


(無力化にはまだ押さえ込む力が足りない…!それなら…!)


ミラベルは魔力をさらに注ぎ込む。


一本。二本。十本。


無数の蔓が魔獣を縛り上げていく。


やがて――。


巨体が地面へ倒れ込んだ。


「ふう…よし…!」


息を整えながら、ミラベルは腰に下げていたリボンを取り出した。


「殺さずに無力化…これでいいのよね。」


魔獣の角へ、青いリボンを結ぶ。


するとリボンに魔力が灯った。


「これで一体…。」


ミラベルは額の汗を拭った。


「でも…これが何十体もいるのよね…気を引き締めないと!」


そう呟いた直後。


森の奥から――。


「……グルル」

「…!」


別の唸り声。


ミラベルは杖を構え直した。


「休ませてはくれないのね…!」



一方、島の北側。


切り立った岩場では、ブレイブが一人で魔法人形と対峙していた。


(!なるほど…!)


魔法人形が剣を構える。ブレイブも剣を構えた。


(俺の動きを学習してるのか…!)


魔法人形が地面を蹴る。


「――っ!」


鋭い斬撃。


ブレイブは剣で受け流す。


「っ!重い…!」


一撃。二撃。三撃。


人形の攻撃は正確だった。


「それでも…!」


ブレイブは身体を低くする。


「俺だって、前より強くなってる!」


魔力を身体へ巡らせる。


強化魔法。


脚力を一気に引き上げ――。


「翔脚!」


ブレイブの姿が一瞬で消えた。


「そこだ!」


背後へ回り込み、剣の柄で人形の腕を打つ。


ガキンッ!


人形の剣が弾かれた。


「よし!」


しかし、人形は即座に蹴りを放つ。


「!?うわっ!」


ブレイブは腕で防いだ。


「ぐっ…!」


岩場を転がるが、即座に立ち上がる。


魔法人形は無傷。


「そう簡単にはいかないか…。」


ブレイブは剣を握り直した。


「なら…無力化の方法を見極めるまで付き合ってもらうぞ!」





南側の森。


「はああああっ!」


マリナが拳を振り抜いた。


巨大な魔法人形の脛を攻撃しバランスを崩させる。


「身体強化!」


マリナは自身の身体へ魔力を纏わせる。


「巫女の力だけがあたしの力じゃない!」


拳を握る。


「ミラベルやブレイブ…師匠達と一緒に鍛えてきたんだ!」


魔法人形が起き上がる。


「だから――!」


マリナは突っ込む。


「これでどうだぁぁぁっ!」


拳が人形の首筋へ直撃する。


ドゴォンッ!


人形が気を失ったように機能を停止した。


「…っしゃあ!人形でも人間と同じ方法で気絶させられるんだな!」


マリナは人形の指先に無力化の証のリボンを巻き、拳を握りしめる。


「まずは一体!」


しかし…。


「!この気配は…。」


新たな気配を感じ振り返った視線の先、そこには別の人形が三体。


マリナは気を引き締め、拳を握りしめた後に強気にこう言い放った。


「何体でもかかってきやがれ!」


  


その頃。


東側の草原。


カインとエレノアもまた、それぞれ別々に試練へ挑んでいた。


カインは二体の魔法人形を前に剣を構える。


「二体同時…か」


一体が突っ込んできたが、カインは攻撃を受け止める。


そうしていると、もう一体が背後から斬りかかる。


「それくらいの動き、こちらにも読めている!」


身体を捻り、紙一重で回避。


そのまま体を回転させ人形の首筋に剣の鞘を叩き込む。


「はあっ!」


人形は機能を停止するが、もう一体の拳が迫る。


「くっ!」


剣で受け止める。


カインは人形の拳を振り払った後、わざと大振りの攻撃を繰り出す。


人形が誘いに乗った。


その瞬間、カイルは剣を返し――。


「――そこだ!」


一閃。


人形の脚を攻撃し跪かせた後に、胴に鞘を叩きつけて機能を停止させた。


「これで…二体…!」




一方、エレノアは森の中で杖を構えていた。


「…数は多いけれど…」


周囲には魔獣が四体。


「…焦る必要はありませんわ。」


冷静に魔力を練る。


「一体ずつ相手をする必要もありませんもの」


杖を掲げる。


「氷の領域!」


地面が一瞬で凍りついた。四体の魔獣の脚が止まる。


氷が地面から突き出し、人形達を次々と拘束していく。


「…ふう。」


エレノアは小さく息を吐いた。


「四体の無力化に成功…。今まで学んできたことがちゃんと活かせている。」


単純な威力ではなく、相手の動きを封じる。


これまで何度も教えられてきた戦い方だった。


「戦うなら…無駄なく。」


彼女もリボンを取り出した。



島の西側。


アルトとヴィオレットは渓谷を進んでいた。


「アルト様!」

「分かってる!」


二人の前には巨大な熊型魔獣。


アルトが剣を構える。


「俺が注意を引く!」

「では、私は動きを止めます!」


アルトが走る。


「おおおおっ!」


熊の爪を剣で受け流す。


「ぐっ…重てぇ!」


その隙にヴィオレットが詠唱する。


「魔の鎖よ!」


魔力の鎖が熊の脚へ絡みつく。


「今だ、ヴィオレット!」

「ええ!」


二人は同時に魔力を込めて、ヴィオレットが発動した対象を失神させる魔法をより強化する。


熊型魔獣は気を失い、地面へ倒れる。


「!成功だ!」


アルトが笑う。


「やったな!」


ヴィオレットも微笑んだ。


「ええ。二人だからできたことですね」

「この島でのサバイバル、思ったより早く終わるかもな!」

「それはまだ気が早いと思います」

「えっ?」


その瞬間、遠くから――。


ドォォォン!


地響きが響いた。


二人の顔を見合わせる。


「今の何だ?」

「わかりません。」

「だよな…。震源地に行ってみようぜ!」




そして夜。


島のあちこちで、小さな焚き火が灯っていた。


誰もが一人。あるいは二人。


それぞれが簡素な寝床を作り、今日一日の疲労を癒していた。


ミラベルは木の根元に背を預け、空を見上げる。


「…ブレイブ、無事かしら」


同じ頃、ブレイブも夜空を見上げていた。


「お嬢様…大丈夫かな」


マリナも焚き火を眺めながら呟く。


「みんな…ちゃんと元気にしてっかな…。」


ユリウスは岩陰で魔力を整えていた。


「明日は…もう少し奥へ進むか。」


カインも、エレノアも、アルトも、ヴィオレットも、ルシアンも、アイリスも、セドリックも、ロザリアも。


それぞれが一日の戦いを終えた。


だが――。


島の上空。


誰にも見つからない場所に立つアウレリオは、遠くから島全体を眺めていた。


「…初日はまずまずだな」


手元の魔道具には、12人の現在位置が映し出されている。


「一部は合流済みだが…まだ単独行動の者の方が多いか。」


アウレリオは楽しそうに笑った。


「さて…明日あたりから、少しずつ難しくしてやるか。」


その言葉と同時に、彼の足元に魔法陣が浮かぶ。


島の各地、木々の奥、洞窟の中、岩山の陰…。


まだ誰にも発見されていない魔法人形達が――。


ゆっくりと目を光らせた。


「お前達…この一週間は思った以上に長いぞ。」


アウレリオは夜空を見上げる。


「せっかくの合宿だ。最後まで、とことん鍛えてやる」


こうして――。


強化合宿第一日目は終わった。


しかし、ミラベル達はまだ知らない。


この翌日から始まる試練が、一人で戦う力だけではなく、仲間を信じる力まで試すものになっていくことを。

ミラベル達のそれぞれの単独行動の様子やそれを見守り試練を与える側のアウレリオの様子を書きました。


当たり前のようにアルトとヴィオレットは既に合流済みですが、一応アルトの家の領地なんで2人共土地勘があって早々に合流できた設定です。


次回以降も強化合宿編を書き続けたいと思います。


今回は読んでくださりありがとうございます。次回も読んでいただけたら嬉しいです。

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