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第48話仲間がいるから

ミラベル達の言葉により大切なことを思い出したマリナ。魔界との亀裂を塞ぐための攻防は終盤を迎えていた。

「……そうだった。」


マリナはゆっくりと目を閉じる。


耳に届くのは、剣戟の音。魔法が炸裂する轟音。


そして何より、自分を信じてくれる仲間たちの声だった。


「焦らなくていい!」

「俺たちが守ります!」

「君にしかできないことがある!」

「仲間を信じろ!」


その言葉が胸の奥へ染み込んでいく。


(そうだ…あたしは一人で戦ってきたんじゃない!)


貧民街で孤児たちを守っていた頃も。侯爵家へ迎えられてからも。学院でも。体育祭でも。


いつだって誰かが隣にいてくれた。


ミラベル、ブレイブ、ユリウス。


そして今は、カイン、セドリック、エレノア、ロザリアまで。


「みんな…。」


マリナは自然と微笑んだ。


「ありがとな…!」


その瞬間だった。


彼女を包む黄金色の光が、先ほどまでとは比べものにならないほど穏やかで優しい輝きを放ち始める。


「…!」


エレノアが目を見開いた。


「魔力の流れが…安定しています!」


ロザリアも嬉しそうに頷く。


「ええ…今なら!マリナさん!そのままの状態を維持!お願いします!」


二人の魔法がマリナの周囲を包む。


エレノアは結界魔法で暴走する魔力を整え、ロザリアは精密な魔力制御で流れを補助していく。


「深呼吸してください。力を押し付けるのではありません。世界を…優しく包み込むように力を展開するイメージで…!」


マリナは静かに頷いた。


「うん…!やってみる!」




一方、その頃。


「ガァァァッ!」


巨大な牛のような魔獣がブレイブへ突進する。


「させるか!」


ブレイブは真正面から迎え撃った。


ガギィィィン!!


剣と巨大な角がぶつかる。


「くっ…!」


押し負けそうになる。


しかし。


「ブレイブ!」


ミラベルの声が響き、風魔法を展開させブレイブ魔獣と距離を取らせ、魔獣を足止めする。


「風よ!」

「!お嬢様!ありがとうございます!」


咄嗟に身を翻しながら、礼を言うブレイブ。


次の瞬間。


「雷槍魔法――穿て!」


セドリックが放った雷を纏う槍撃が牛型魔獣の胴体を貫いた。


「今です!」

「ありがとうございます!セドリック様!」


ブレイブは空中で体勢を立て直す。


「ブレイブ!」


ミラベルは咄嗟にブレイブの剣に魔法を纏わせる。アイコンタクトだけでブレイブにはそれが通じ、大きく頷いた後、剣技を炸裂させる。


「剣技―流星斬!」


銀色の軌跡が走る。魔獣は断末魔を上げながら崩れ落ちた。


「…よしっ!」


ブレイブは息を整える。


セドリックが笑みを浮かべる。


「見事な連携でしたね。」

「セドリックさんも!お嬢様も…!ありがとうございました!」


セドリックとブレイブの二人は軽く拳を合わせた。




「どけっ!!」


反対側ではカインの大剣が唸りを上げていた。


ズドォォォン!!


一振りで岩が砕ける。


魔獣が二体まとめて吹き飛んだ。


「まだ来るか!面白い…!」


豪快に笑う。しかし…。


翼を持つ魔獣が背後から急降下してきた。


「死ね。」

「っ!」


避けきれない。その瞬間。


「障壁展開!」


エレノアの結界がカインを包む。


ガキィィィィン!!


鋭い爪が結界へ弾かれた。


「助かった!」

「カイン様!今です!」


カインはエレノアが作ってくれた、その隙を逃さない。


「大地斬!!」


轟音。巨大な斬撃が山肌ごと魔獣を飲み込む。


「ふぅ…。」


エレノアは安堵の息を漏らす。


カインが振り返った。


「ありがとな…エレノア。」


エレノアは少し照れながら微笑む。


「!当然です、婚約者ですから。」

「…!」


カインは耳まで赤くなる。


「い、今…それを言うか!?」


思わず周囲の兵士たちが笑みをこぼした。




「空から来ます!」


ロザリアが叫ぶ。十数体の飛行型魔獣。


「全部撃ち落とします!」


彼女は静かに両手を重ねる。


無数の光が集まり始めた。


一本。二本。十本。二十本。五十本。


兵士たちが息を呑む。


「なんて魔力量だ…!」


ロザリアは静かに目を開く。


「魔導弓術、流星雨。」


空一面へ黄金の矢が放たれた。


雨のように降り注ぐ魔力の矢。


飛行型魔獣たちは逃げる暇もなく撃ち抜かれていく。


「ギャアァァァ!」

「ガァァ!」


次々と墜落していく魔獣たち。


魔獣を相手にしながらブレイブは思わず叫ぶ。


「すごい…!」


魔獣を倒した後のミラベルもその光景に感嘆した。


「これがロザリアさんの本気…!」


ロザリアは少し照れ臭そうに笑った。


「皆さんが前で守ってくださるから撃てるだけです。」




「人間共め…!」


一際巨大な魔獣がユリウスへ迫る。


「王太子!死ね!」


ユリウスは静かに剣を構えた。


「死ぬわけにはいかない。」


魔力が剣へ宿る。


「王国を、仲間を、守るために!」


一閃。白銀の光が走った。


魔獣の腕が宙を舞う。


「ぐあぁぁぁ!」

「まだだ。」


ミラベルも隣へ並ぶ。


「ユリウス様!」

「合わせるよ!」

「!はいっ!」


二人は視線だけで意思を通わせた。


「光よ!貫け!」


二つの光魔法が融合する。


巨大な光の奔流。


魔獣は悲鳴を上げながら消滅していった。




その頃…。


マリナは静かに両手を亀裂へ向けていた。


「お願い…閉じてくれ…!」


黄金の光がゆっくりと亀裂へ染み込んでいく。


先ほどとは違う。暴れる力ではない。傷ついた世界を癒やすような、温かな光。


ピシッ……


亀裂の縁が少しずつ閉じ始めた。


「!動いた!」


ミラベルが声を上げる。


「亀裂が、閉じ始めてる!」


しかし…最後の抵抗と言わんばかりに巨大な魔力が噴き出した。


「ぐっ…!」


マリナが苦しそうに歯を食いしばる。


「まだ…!負けるかぁっ!」


仲間たちが同時に叫んだ。


「マリナさん!」

「頑張ってください!」

「君ならできる!」

「あと少しです!」

「信じろ!」

「私たちもいます!」


その声に背中を押されるように、マリナは大きく息を吸った。


「みんなと―…一緒に…守るんだぁぁぁぁ!!」


眩い黄金の柱が天へと突き抜ける。


世界中を照らすような神々しい光。


ゴゴゴゴゴ……


巨大な亀裂はゆっくりと閉じ始め―ついには完全に消え去った。


静寂が戻り、風が止む。


山岳地帯を覆っていた禍々しい魔力も、少しずつ薄れていった。


「やっ…た…。」


マリナはその場へ膝をつく。


ミラベルが真っ先に駆け寄り、その手を握った。


「やったわね!マリナさん!」


ブレイブも満面の笑みで駆け寄る。


「すごいです!マリナさん!」


しかし、その時だった。


逃げ腰になった一体の人語を話す魔獣が叫ぶ。


「くっ…撤退だ!魔王様へ報告を――!」


「逃がさない!」


ユリウスの鋭い声が響く。


「生け捕りにする!」


カインが進路を塞ぎ、大剣で退路を断つ。


セドリックの雷槍が足元を撃ち抜く。


「動きを止めます!」


エレノアの結界が魔獣を包み込み、ロザリアの魔力の矢が両腕を正確に射抜いた。


「ぐあああっ!」


最後はブレイブが飛び込み、剣を喉元へ突きつける。


「…終わりです…!」


魔獣は悔しそうに歯を食いしばった。


「人間…ども…が…。」


ユリウスは静かに歩み寄る。


「これで終わりではない…君には聞きたいことが山ほどある。」


捕縛された魔獣を見つめながら、ミラベルは小さく息をついた。


長い戦いは終わった。


だが、それは―魔王軍との本当の戦いの始まりに過ぎなかった。

無事に魔界とミラベル達の住む世界を繋ぐ亀裂がマリナによって塞がれたことで、魔王軍の侵攻までに一年の猶予ができました。


ユリウスの命令で尋問のために捕らえられた1体の人語を介する魔獣との話を今後展開していきたいと思います。


今回は読んでいただきありがとうございました。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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