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第46話辺境への旅立ち

辺境の地にて魔界へと繋がる亀裂が見つかり、亀裂を塞ぐべくマリナと彼女をサポートするミラベル達は旅立とうとしていた。

王立学院での体育祭襲撃事件から三週間後。


王国中を震撼させた「あの事件」は、もはや学院だけの問題ではなくなっていた。


王城の大会議室では、国王をはじめ王太子ユリウス、王国騎士団長、各公爵家・侯爵家の当主、そして魔術研究者達が一堂に会していた。


部屋の中央には、一枚の古びた羊皮紙。


ルシアンとアイリスが解読した古文書が広げられている。


「…やはり一致します。」


ルシアンが眼鏡を押し上げながら口を開く。


「先日発見されたという空間の裂け目と、古代の巫女達と戦った魔王軍が姿を現した亀裂…見た目の特徴だけでなく魔力の特徴なども同じようです。」


部屋の空気が張り詰める。


アイリスも静かに頷いた。


「そして、古文書に記された世界を繋ぐ魔界由来の魔法とも一致しています。」


国王は静かに目を閉じた。


「つまり…。」


ユリウスが言葉を継ぐ。


「魔界からの本格的侵略が今にも始まろうとしているということです。」


誰も口を開かなかった。


未知の世界。未知の敵。


伝説としてしか語られてこなかった魔王軍が、現実になろうとしている。


その静寂を破ったのはマリナだった。


「ということは…あたしが、その穴を塞げばいいってことだな?」


堂々とした口調。


王侯貴族ばかりの会議室でも物怖じしない。


「夢の中の『あの子』も言ってた。あたしの力なら…亀裂を塞げるって。」


国王はゆっくり頷いた。


「マリナ・クラーク。伝説の巫女の末裔として…今こそ、どうか王国のためにその力を貸してほしい。」


マリナは一瞬だけ黙る。


そして腕を組み、真っ直ぐ国王を見返した。


「悪いけどさ、王国のためとか世界のためとか…そういう立派な理由はよく分かんねぇ。」


周囲が少しざわつく。


しかしマリナは迷わなかった。


「でも…。」


彼女は隣に立つミラベルと背後で二人の護衛にあたっているブレイブ、そして会議の席に着くユリウスを見る。


「この世界には、守りてぇ仲間がいる。家族みてぇな奴らがいる。」


拳を握る。


「あたしは、ただ大切なモンを守るだけだ!」


力強い宣言だった。国王は穏やかに微笑む。


「そうだな…戦う理由としてはそれで十分だ。…その想いこそ、巫女に最も必要なものなのかもしれんな。」




翌日。


学院の中庭へミラベル達仲間が全員が集められていた。


ユリウスは全員へ向き直る。


「辺境で確認された亀裂へ向かう。同行者を発表する。」


ミラベル。


ブレイブ。


マリナ。


そしてユリウス。


そこまでは誰もが予想していた。


だが。


「そして…カイン、セドリック。」


名前を呼ばれた二人が一歩前へ出る。


カインは腕を組みながら言った。


「亀裂がある場所は、我がヴァルフォード公爵家と…。」


セドリックが続ける。


「我がローゼンフェルト公爵家、その両領地の境界です。」


カインは真剣な表情でミラベル達を見る。


「自分の領地で起きた問題だ…公爵家の人間として放ってはおけない。」


セドリックも静かに頷いた。


「それに…マリナさんの夢の世界で聞いたという話では、魔王を倒せるのは…巫女が心から共に戦いたいと思える仲間だけ…と伺いました。」


その言葉にマリナは少し照れ臭そうに頭を掻く。


「だから…。」


セドリックは穏やかに笑った。


「私も、その資格を得られるよう努力したい。あなた達の真の仲間になりたいんです。」


マリナは目を丸くする。


「セドリック…。」


その時。


「私も同行いたします。」


静かな声が響く。エレノアだった。


「私もカイン様のお力になりたい。そして皆様と共に、この国を守りたいのです。」


続いて。


「もちろん私もです。」


ロザリアが一歩前へ出る。


「セドリック様一人だけ危険な場所へ向かわせるつもりはありません。」


優しく微笑む。


「それに…結界魔法なら私も少しは力になれると思います。」


ミラベルは嬉しそうに笑った。


「みなさん…ありがとうございます!」


ユリウスも静かに頷く。


「君達が一緒に来てくれることが何よりも心強いよ。」




一方、辺境に向かうメンバーとは逆に学院に残る、

ルシアン、アイリス、アルト、ヴィオレット達も集まっていた。


アルトが豪快に笑う。


「本当は俺も行きたかったんだけどなー…」


ヴィオレットがため息をつく。


「アルト様、学院を守るのも立派な責務ですよ。」

「…分かってるって!」


アルトは苦笑した。


ルシアンも静かに言う。


「夢で得た情報なら古文書を解析する者も必要です。こちらは私達に任せてください。」


アイリスも優しく微笑む。


「皆さんが安心して戦えるよう、学院と王都は私達が守ります。」


ミラベルは胸が熱くなった。


「みんな…ありがとうございます…!」




数日後。


辺境へ向かう一行は、それぞれの公爵家が派遣した私設兵団と合流していた。


ヴァルフォード公爵家の重装騎士達。


ローゼンフェルト公爵家の魔導騎士団。


さらに王国騎士団。


壮大な遠征部隊となって山岳地帯を進んでいく。


やがて…険しい山道を越えた先で誰もが足を止めた。


「!…なんでしょう…?あれは…。」


ブレイブが思わず息を呑む。


山々の谷間。空間そのものが裂けていた。


高さは城壁を優に超える、漆黒の裂け目。


その奥からは紫色の瘴気が絶え間なく溢れ出し、耳を澄ませば獣とも人ともつかない無数の叫び声が響いてくる。


空気が重く、肌を刺すような禍々しい魔力。


マリナも顔を強張らせた。


「これが…魔界へ繋がる亀裂か…!」


ユリウスは剣の柄に手を添える。


「皆、気を引き締めて。ここから先は、恐らく戦いになる!」


ミラベルも静かに杖を握り締めた。


(魔獣や魔族の大量侵入を防ぐ…!そのためにも亀裂を防ぐ間、マリナさんに攻撃が向かわないように全力でサポートする…!)



次の瞬間――亀裂の奥から、不気味な咆哮が山々へ響き渡った。


まるで侵略者達が、彼らの到着を待ち侘びていたかのように。

魔界との亀裂を塞ぐチームにミラベル、ブレイブ、マリナ、ユリウス以外に実家が管理する領地での問題ということでカイン、セドリック、エレノア、ロザリアが選抜されました。


次回以降のエピソードでも彼ら彼女らの活躍も書いていきたいと思っています。


今回は読んでいただきありがとうございました。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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