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第40話魔界という名の敵

体育祭の魔獣襲撃事件から五日…王城で会議が重ねられる中、ミラベル、ブレイブ、そしてマリナは王城へと呼び出されていた。

体育祭襲撃事件から五日――。


王立学院は一時休校となり、生徒たちは療養や事情聴取に追われていた。


学院の森で発見された魔法陣は、王国最高峰の魔導士や学者たちの手によって徹底的な調査が進められている。


そして、その調査結果は王国全土を揺るがすものだった。




王城――円卓会議室。


普段は国政を司る重臣たちが集うその部屋には、この日、異様な緊張感が漂っていた。


国王エドガーを中心に、王妃リシェル、王太子ユリウス、侯爵家当主レオナルド、王国騎士団長、宮廷魔導士長、古代史研究者たちが顔を揃えている。


テーブル中央には、体育祭で発見された魔法陣を書き写した羊皮紙が広げられていた。


白髪の老学者が震える声で口を開く。


「…何度も確認いたしました。」


部屋中の視線が集まる。


「この魔法陣は…間違いありません。」


老人は隣に置かれた分厚い古文書を静かに開いた。


そこには数千年前の魔法陣が描かれている。


「伝説の巫女と仲間たちが討伐したとされる”魔王”…その魔王軍が使用した古代魔法陣と完全に一致しております。」


その一言で、会議室がどよめいた。


「馬鹿な…!そんな昔話が…魔王など伝承ではないのか!?」


ざわめきが収まらない。


宮廷魔導士長が重々しく続けた。


「残留魔力も解析しました…これは現在の魔術体系では説明がつきません。まるで…別世界から流れ込んできた魔力のようです。」


静まり返る会議室。


国王がゆっくりと問いかけた。


「つまり…敵は何なのだ。」


老学者は息を呑み、静かに答えた。


「この世界とは異なる世界…古文書では”魔界”と呼ばれております。そして魔王とは、その魔界を統べる王。今回の魔導士は…その魔界からの使者の可能性が高いと思われます。」


誰も言葉を発せなかった。ユリウスだけが冷静に資料を見つめている。


「つまり…敵は人間ではない…。魔界という異世界からの侵略者…そういうことですね?」

「はい…!」


老学者は静かに頷いた。


「もし再び魔界と我々の世界が完全に繋がれば…魔獣の被害だけでは済まないでしょう…。敵意ある魔族が大量に流入する恐れがあります。」


レオナルドが腕を組みながら低く唸る。


「王国始まって以来の危機…か。」


騎士団長も表情を曇らせた。


「軍だけでは対処しきれぬ可能性もある…。」


部屋には重苦しい沈黙が流れた。




その頃。


王城の別室。


ミラベル、ブレイブ、マリナも王城へ招かれていた。


「うわぁ〜…。」


豪華な応接室を見回しながらマリナが小声で呟く。


「ここが王城…なんかすげぇな…緊張してきたぞ…!」


ブレイブも苦笑する。


「俺もです。床がピカピカすぎて歩くの緊張します。」

「だよな!汚したら怒られそうだ!」

「俺なんて王城に入ってから靴の裏を三回は拭いてきました!」


二人の会話に、ミラベルは思わず吹き出した。


「ふふっ。二人ともそんなに緊張することないわ。」

「お嬢様は緊張しないんですか?」

「私は以前に来たことがあるし…でも…今日は少しだけ緊張してるかな。」


その時。扉が開いた。


「陛下がお待ちです。」


三人は表情を引き締めた。




謁見の間。


国王と王妃、ユリウスが待っていた。


三人は礼を取る。


「面を上げなさい。」


国王は穏やかな笑みを浮かべた。


「まずは体育祭での働き、大義であった。特に…マリナ・クラーク。」


突然名前を呼ばれ、マリナは目を丸くする。


「は、はい!」


国王は玉座からゆっくり立ち上がった。


そして、その場にいた全員が息を呑む。


国王が、一人の少女へ向かって頭を下げたのだ。


「…!?」

「陛下!?」


重臣たちから驚きの声が上がる。


マリナは慌てふためいた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!王様が頭なんか下げていいのか!?」


国王は静かに語る。


「君の光が、多くの命を救った…。我々は君の力を、王国を守る希望であると考えている。…どうか、これからも王国のため、その力を貸していただけないだろうか。」


静寂。マリナは頭を掻いた。


「そんな難しいこと…言われても困る。」


その場にいた者たちが固唾を呑む。


マリナは少し考えたあと、真っ直ぐ前を向いた。


「でも…一つだけ言える。」


拳をぎゅっと握る。


「王国のためとか、世界のためとか…正直、まだよく分かんねぇ…。」


その言葉に重臣たちはざわつく。しかし、マリナは迷わず続けた。


「だけど…ミラベル、ブレイブ、それに師匠。」


ユリウスへ笑いかける。


「あたしの仲間たちに侯爵家や学校のみんな。そして、この国で笑ってる奴ら。…あたしは、大切に思ってるモンを全部守りたいだけだ!」


その言葉は、飾り気など一切なかった。


だからこそ、真っ直ぐ心へ届く。


ミラベルは優しく微笑む。


「すごくマリナさんらしいわ!」


ブレイブも満面の笑みで頷いた。


「それで十分です!」


ユリウスも穏やかな表情になる。


「君らしい答えだ。守りたいものがある者は、誰よりも何よりも強い。」


国王も静かに笑った。


「そうか…。ならば安心した。その想いこそ、この国を守る力になる。」


王妃も優しく微笑む。


「どうか皆さん。これからも力を合わせてくださいね。」


四人は力強く頷いた。


「はい!」


その姿を見つめながらユリウスは胸中で静かに誓う。


(魔界――。これから訪れるかもしれない両陣営の本格的な戦い…。その時までに…必ず皆を守れるだけの力を手に入れてみせる。)




だが、その頃すでに――。


誰にも知られぬ辺境の空では、ほんの僅かに空間が揺らぎ始めていた。


それが、この世界を揺るがす新たな脅威の始まりであることを、まだ誰も知らなかった。

魔界からの侵略を受けている事態や魔王軍との戦いに伝説の巫女の末裔のマリナの力が必要であると王達も認めるところとなり、マリナもミラベルやブレイブ達と危機に立ち向かう思いを新たにしました。


今回は読んでくださりありがとうございました。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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