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第37話黒衣の魔導士

ブレイブはついに騒動の元凶を見つけ攻撃を仕掛けるが…。

ブレイブの体が、木から飛び降りた勢いのまま訓練剣を振りかぶる。


「そこだぁぁぁっ!!」


鋭い斬撃が、黒衣の魔導士へ迫る。


だが――。


ギィン!


魔導士は振り返ることすらなく、片手を軽く上げただけで透明な魔力障壁が展開され、ブレイブの剣は容易く受け止められる。


「!?なっ!?」


次の瞬間、魔導士はゆっくりと首だけをブレイブへ向けた。


ローブの奥から覗く口元が、不気味に歪む。


「ほう…見つけたか。」


低く冷たい声。まるで人間味を感じさせない響きだった。


ブレイブは剣を引き戻し、再び構える。


「お前が…!みんなを襲わせてるんだな!?今ここで止める!」


魔導士は鼻で笑った。


「止める?貴様がか?」


その言葉には、あからさまな侮蔑が込められていた。


そして一歩、ブレイブへ歩み寄る。


「身の程を弁えろ――」


魔導士はブレイブの耳元まで瞬時に移動し、囁くように言った。


脇役モブが。」

「……え?」


聞き慣れない言葉だった。


ブレイブは言葉の意味を理解することはなく、魔導士の掌から漆黒の魔力が噴き出す。


「ぐぁぁぁっ!!」


轟音とともにブレイブの体が吹き飛んだ。何本もの木をなぎ倒しながら地面を転がる。


「ブレイブ!」


駆けつけたミラベルが叫び、ユリウスも同時に魔法を放つ。


「光盾!」


黄金色の障壁がブレイブの前に展開される。


続けてミラベルも杖を掲げた。


「聖壁展開!」


二重の障壁が完成した瞬間、黒い魔力が激突した。


ドォォォン!!


爆風が森を揺らす。


障壁には大きな亀裂が走ったが、辛うじてブレイブは致命傷を免れた。


「大丈夫!?」


 ミラベルが駆け寄る。


「お嬢様……。」


 ブレイブは苦しそうに起き上がる。


「すみません…俺、一人で……。」

「謝らないで!」


ミラベルは首を横に振った。


「あなたが見つけてくれたから、ここまで来られたの!」


その言葉にブレイブは歯を食いしばり、再び立ち上がる。


その時だった。


「てめぇぇぇぇぇっ!!」


怒号が森中へ響く。


マリナだった。


彼女は倒れた生徒たち、傷ついたブレイブ、そして嘲笑う魔導士を見渡し、その瞳に激しい怒りを宿していた。


「好き勝手やりやがって!仲間を傷つける奴は…絶対に許さねぇ!!」


身体強化魔法を全開にし、一瞬で間合いを詰める。


拳が唸りを上げた。


だが――。


パシッ。


「…っ!?」


魔導士は片手で、その拳を受け止めた。


マリナの表情が驚愕に変わる。


「止め…られた?」


魔導士は冷たく見下ろす。


「なるほど…確かに貴様は成長している。だが――」


腹部へ拳を突き出す。


ドゴォッ!!


「!?がはっ…!」


マリナの体がくの字に折れ、そのまま数メートル吹き飛んだ。


「マリナ!」


ユリウスが叫ぶ。


マリナは何とか立ち上がろうとする。


しかし、足が震える。


「くそっ…。」


魔導士はゆっくり近付いた。


「予定より早いが…ここで消えてもらおう。」


掌に黒い魔力が集まる。


そして静かに告げた。


「死ね。この世界の主人公ヒロイン。」


その言葉を聞いた瞬間。


ミラベルの瞳が大きく見開かれた。


(主人公……?今……主人公って言った?)


だが考える暇はない。黒い閃光がマリナへ放たれる。


「マリナさんっ!!」


ミラベルは反射的に飛び出した。


ドシュッ――。


黒い魔力がミラベルの身体を貫く。


「……え?」


時間が止まったようだった。


ミラベルの制服が、血によって真っ赤に染まっていく。マリナは咄嗟にミラベルを受け止め必死に呼びかける。


「ミラベル…?ミラベル!!」


ブレイブの悲鳴。


「!?お嬢様ぁぁぁぁっ!!」


ユリウスの顔から血の気が引く。


「ミラベル!!」


マリナは呆然と目を見開く。


「なんで…なんであたしを…!」


ミラベルは震える手でマリナの肩を押した。


「仲間だからに…決まってるじゃない…。あなたは…生きて…。」


それだけ言うと、ゆっくりと崩れ落ちる。駆け寄ったブレイブが必死に呼びかける。


「嫌だ…嫌だ!お嬢様!目を開けてください!」


涙が止まらない。


その光景を見たマリナの胸の奥で、何かが弾けた。


怒り。悲しみ。悔しさ。


守れなかった自分への憤り。


「…ふざけるな。」


小さく呟く。


「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


その瞬間。


マリナの身体から、眩い白銀の光が噴き上がった。


森全体を包み込むほどの、神々しい光。


その光に触れた魔獣たちは次々と浄化され、黒い霧となって消えていく。


魔導士も思わず腕で顔を庇った。


「これは…巫女の力か…!」


光はなおも強まり、魔導士のローブを焼く。


「くっ…!まだ覚醒したばかりで、この出力…!」


初めて魔導士の声に焦りが混じった。


「今回は退く…だが…」


ローブの奥から、ミラベルたちを見据える。


「次は必ず…世界はあるべき姿へ戻す。」


転移魔法陣が展開される。魔導士の姿は闇の中へ消えた。


残されたのは、静寂と、重傷を負ったミラベルだけだった。


ブレイブは震える腕でミラベルを抱き抱える。


「お嬢様…!お願いです!死なないでください…!!」


その涙は、止まることがなかった。

ミラベルが自分を庇い重傷を負ったことでマリナの巫女の力が覚醒し黒衣の魔導士は撤退していきました。


魔導士の正体についてもこれから掘り下げていきたいと思います。


今回は読んでくださりありがとうございます。次回も読んでいただけると嬉しいです!

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