第36話閉ざされた森
体育祭を襲撃した魔獣達から生徒達を守るために教師達も奔走するが…
王立学院の広大な森。
体育祭の競技開始から間もなくして、その穏やかな空気は一変した。
地面に浮かび上がる無数の紫黒い召喚魔法陣。
そこから次々と現れる下等魔獣。
そして森中に響く、生徒たちの悲鳴。
「きゃあああっ!」
「魔獣だ! 逃げろ!」
「先生ぇっ!助けて!」
競技どころではない。
誰もが突然の惨劇に混乱していた。
異変を察知した学院教師たちは、すぐさま森へ向かおうとした。
「全教員、森へ急げ!」
騎士科主任教師が剣を抜きながら叫ぶ。
しかし――。
森の入り口へ踏み込もうとした瞬間。
バチィッ!!
青白い雷光とともに、透明な壁が姿を現した。
「ぐっ!」
教師の一人が弾き飛ばされる。
「結界だと…!?」
魔法科主任教師が結界へ手を当て、顔色を変えた。
「高度な封鎖結界です…!外からは突破できません!」
「何だと!?」
学院長の表情が険しくなる。
「生徒たちが中に取り残されているというのに…!」
魔導士教師の一人が歯を食いしばる。
「ならば空から飛行魔法を展開します!」
十数名の教師が一斉に空へ舞い上がった。
「見えた!西側に多数の生徒!東には魔獣の群れ!」
教師たちは上空から状況を把握し、生徒たちへ避難誘導を始めようとする。
「聞こえるか!北へ逃げろ!」
その瞬間だった。
空間が歪む。
ブゥン……
教師たちの目の前に、黒い魔法陣が次々と出現した。
「なっ!?」
「空にも!?」
魔法陣から翼を持つ魔獣が飛び出す。
ギャアアアア!!
「迎撃!」
教師たちは迎え撃つが、それだけでは終わらない。
次々と現れる魔法陣。誘導する暇すら与えない。
「くそっ!狙いは我々の足止めか!」
「生徒への援護ができない…!」
学院長は唇を噛み締めた。
「なんという周到さだ…!」
一方その頃。
ミラベルたちは、襲い来る魔獣を迎え撃っていた。
「右から三体!私が魔法で動きを止めるから攻撃をお願い!ブレイブ!」
「はい!」
ブレイブが一直線に駆ける。木剣とは思えない鋭い一撃。
ガァン!!
一体目を吹き飛ばす。二体目が飛びかかる。
「させません!」
エレノアの氷魔法が魔獣の足を凍らせた。
「ありがとうございます!」
ブレイブがその隙に斬り伏せる。
ルシアンが防衛魔法で時間を稼ぐ中、セドリックは槍を回転させながら魔法陣を展開した。
「雷槍術――!」
槍へ雷が走る。一直線に突き出す。
ドォン!!
三体目を貫き、そのまま後方の魔獣まで吹き飛ばした。
ロザリアは静かに弓を構える。
魔力が光となって一本の矢を生み出す。
「穿ちなさい!」
放たれた光の矢は空中で三本に分裂。
正確に魔獣の急所を射抜いた。
あまりの実力に、ミラベルは思わず息を呑む。
だが、感心している暇はない。
後方で悲鳴が上がる。
「助けて!」
別チームの一年生たちだった。魔獣に囲まれている。
「ブレイブ、行きましょう!」
「はい!」
迷わず飛び出す。
「大丈夫です!俺たちが来ました!」
ブレイブは怯える一年生の前へ立った。
「下がってください!」
その背中は決して大きくない。
だが、不思議と安心感があった。
ミラベルも杖を掲げる。
「皆さん、落ち着いてください!私たちが時間を作ります!できるだけ遠くへ逃げて!」
その声には不思議な力があった。震えていた生徒たちが立ち上がる。
「…うん!」
「ありがとう!」
ミラベルはほっと笑う。
(よかった…私達が守るから、どうかこのまま逃げ切って…!)
その頃。ユリウスたちも各地で戦っていた。
「アルト!右を頼む!」
「任せろ!」
豪快な剣撃。魔獣が吹き飛ぶ。
カインは冷静に敵の急所だけを狙う。
ユリウスは魔法を使いながら全員に的確に指示。
ヴィオレットの支援魔法が全員を強化。
アイリスが拘束魔法で動きを止める。
そして。
「どけぇぇぇっ!」
マリナの拳が炸裂した。
身体強化魔法をまとった拳。一撃で大型魔獣を吹き飛ばす。
「すげぇ…」
他チームの生徒たちが歓声を上げる。マリナは照れ臭そうに笑う。
「へへっ、こんなのまだまだだ!」
だが次の瞬間。泣き崩れる同じ一年生の少女が目に入った。
「怖い…帰りたいよ…!」
マリナは拳を下ろした。ゆっくりとその場に座り込む少女の前へしゃがむ。
「大丈夫。」
優しく頭を撫でる。
「泣くな!あたしたちが絶対守るから!」
少女は涙を拭う。
「…ほんと?」
「本当だ!約束する。」
マリナは力強く笑った。
その笑顔に周囲の生徒たちも勇気づけられる。
「俺たちも戦おう!」
「逃げるだけじゃ駄目だ!」
立ち上がる生徒たち。
ユリウスはその光景を見て微笑んだ。
「ありがとう、マリナ。」
「え?」
「君は人を奮い立たせる才能がある。」
「そうか?」
照れ臭そうに鼻を擦るマリナ。
「だったら…もっと頑張るぜ!」
森の各地。
ミラベル達も、それぞれ生徒を守りながら戦っていた。既に散り散りになっていた2チームのメンバーも合流している。
ルシアンとアイリス。
アルトとヴィオレット。
カインとエレノア。
セドリックとロザリア。
そしてミラベル、ブレイブ、ユリウス、マリナたち。
彼らは連絡用魔法を通じて互いの状況を共有する。
『東区域、安全を確保!』
『西側で大型魔獣を確認!』
『負傷者を保護しました!』
ユリウスが冷静に指示を飛ばす。
『全員聞いてくれ。目的は勝利ではない、生徒の救助を最優先に。魔導士を発見したら即座に連絡してほしい。』
『了解!』
全員の声が重なる。
その頃。
森のさらに奥深く。
誰にも見られていないと思っていた黒衣の魔導士は、静かに新たな召喚魔法陣を描いていた。
だが、その背後――。
一本の木の上から、その姿を見つめる一人の少年がいた。
(!…いた…!)
ブレイブであった。
彼は息を潜め、剣の柄を握り締める。
(あいつが……恐らく…元凶だ!)
ブレイブは迷いなく木の上から飛び降りた。
「そこだぁぁぁっ!!」
その一撃が、この戦いを大きく動かすことになるとは、まだ誰も知らなかった
ブレイブが騒動の黒幕の魔導士を見つけたところで終わりました。次回、本格的に魔導士と対峙します。
今回は読んでくださりありがとうございます。次回も読んでいただけると嬉しいです。




