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第31話門出

春、ついにミラベル達の王立学院への入学の日がやって来た。

春――。


王都へと続く街道には色とりどりの花が咲き、柔らかな風が新しい季節の訪れを知らせていた。


そしてこの日。


アルヴェイン侯爵邸では、王立学院へ入学する子どもたちのため、朝から慌ただしく準備が進められていた。


王立学院は全寮制で長期休暇以外家に帰れないためそれぞれに大きな旅行鞄が馬車へ積み込まれ、使用人たちが最後の確認を行う。


「ミラベルお嬢様、お荷物はこちらでよろしいでしょうか。」

「ええ、ありがとう。」


12歳になったミラベルは、新調された学院の制服を身に纏いどこか緊張した面持ちで屋敷を見渡していた。


(いよいよ……これから本当にゲームの舞台だった王立学院での生活が始まる。)


前世では画面越しに見ていた学院。


しかし今は、自分自身がその門をくぐる。


期待と不安が入り混じる胸の鼓動を感じながら、ミラベルは深く息を吸った。


その時だった。


「お嬢様。」


聞き慣れた声に振り返る。


そこには学院用の制服を着たブレイブが立っていた。


胸元にはアルヴェイン侯爵家の紋章が刺繍されている。


しかし、その姿を見てもミラベルは一瞬理解が追いつかなかった。


「…えっ?」


ぱちぱちと瞬きを繰り返す。


「ブレイブ……?その制服は…?」

「はいっ!」


ブレイブは少し照れたように頭をかいた。


「俺も今日から王立学院へ入学することになりました!」


ミラベルは数秒の沈黙。


そして…。


「え…えぇぇぇぇぇっ!?!?」


屋敷中に響き渡るほどの驚きの声だった。


庭にいた使用人たちまで思わず振り向く。


「ど、どういうこと!?聞いてないわよ!?」


ミラベルは目を丸くしたままブレイブへ駆け寄る。


「本当なの!?」

「はい…!俺もついこの前…執事長との養子縁組のお話をいただいた時に侯爵様に伝えられました。」

「あ、あの時…!?」


苦笑しながら頷くブレイブ。


そこへ楽しそうな笑い声が響いた。


「ふふっ。」


セレスティアだった。


「驚いたかしら?」

「お母様!」


ミラベルが振り返る。


隣にはレオナルドと執事長オズワルド、そしてユリウスも立っていた。


「どういうことですか!?」


レオナルドが穏やかに答える。


「これは王家とアルヴェイン家で相談して決めたことだ。ブレイブは護衛として十分な実力や読み書きや座学も努力によって身につけてきた。」


オズワルドも誇らしげに微笑む。


「彼なら学院でも十分学んでいけます。」


ユリウスが続ける。


「学院には貴族だけでなく、功績ある者や推薦を受けた者も入学できる制度がある。王家はブレイブを推薦した。武闘大会準優勝という実績、王城襲撃での功績…そして努力を惜しまない人格。推薦する理由として十分だった。」


ブレイブは少し照れくさそうに頭を下げた。


「今の俺があるのは全部…皆さんのおかげです!」


ミラベルはしばらく呆然としていた。


だが次の瞬間、ぱっと笑顔になる。


「そうなんだ……!」


瞳が嬉しさで輝く。


「ブレイブ!」


思わず両手でブレイブの手を握った。


「おめでとう!本当に、本当におめでとう!あなたの努力がちゃんと認められたのね!」


心からの笑顔だった。


ブレイブも思わず笑みを浮かべる。


「ありがとうございます、お嬢様。俺…まだ夢みたいです。」

「夢なんかじゃないわ!」


ミラベルは嬉しそうに首を振る。


「毎日朝から晩まで鍛錬して、仕事も頑張って、勉強だって誰より努力していたもの!だからこれは、ブレイブ自身が勝ち取った未来よ!」


その言葉にブレイブの胸が熱くなる。


「!…はいっ!俺、もっともっと頑張ります!お嬢様やユリウス様、マリナさん、そして侯爵家の皆様を守れるように。」


マリナは腕を組みながら豪快に笑った。


「いやぁ、やっと言えたな!ずっと秘密にしろって言われてたから口がむずむずしてたぞ!」

「えっ!?」


ミラベルが振り向く。


「マリナさんも知ってたの!?」

「まあな。これは『密命』だーって言ってブレイブにも師匠にも口止めされてた。悪い悪い!」


悪びれもなく笑うマリナに、ミラベルは頬を膨らませた。


「もう!みんなして私だけ仲間外れにしてたんですか!?」


その様子に庭中が笑いに包まれる。


ユリウスも柔らかく目を細めた。


「驚かせたかったからね。でも、大成功だろう?」

「もう、ユリウス様まで…。」

「申し訳ありませんお嬢様!秘密にしていたこと…ご気分害されましたか…?」

「ブレイブ…別に本気で怒ってないわ。本当に嬉しいことだもの!」


ミラベルは苦笑しながらも、どこか嬉しそうだった。


そして改めてブレイブの前へ立つ。


「学院では護衛でもあるけれど、それ以上に大切な仲間で学友ね。一緒に頑張りましょう!」


ブレイブは深く頷く。


「はい!よろしくお願いします、お嬢様!」

「学院では”お嬢様”じゃなくてもいいかもしれないわ。」


ミラベルは悪戯っぽく笑う。


「せっかく同じ学院に通うんだから!」

「…え?」


ブレイブは戸惑う。


「人前では今まで通りでいいけど。二人きりや仲間だけの時くらいは、『ミラベル』って呼んでくれてもいいのよ?」

「っ!?えぇっ!?」


今度はブレイブが真っ赤になる番だった。


「そ、それは…!まだ…無理です!」


慌てふためくブレイブを見て、マリナは腹を抱えて笑う。


「はははっ!顔真っ赤じゃねぇか!」

「か、からかわないでくださいよ!」


穏やかな笑い声が、春風とともに屋敷へ響いていく。


こうして、それぞれが新たな期待を胸に抱きながら馬車へ乗り込んだ。


王立学院。


そこには新たな出会いと試練、そして運命が待っている。


まだ誰も知らない。


この旅立ちが、世界の未来を大きく変える第一歩になることを――。

ブレイブもミラベル達と共に王立学院に入学することになりました。これからはより他の攻略対象キャラと婚約者達との交流や活躍も書いていけたらと思います。


今回は読んでくださりありがとうございます。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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