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第26話三人目の弟子

今日もミラベル、ブレイブ、ユリウスによる三人の鍛錬が行われる中、その光景を見守っていたマリナにユリウスから声がかかる。

マリナたちがアルヴェイン侯爵家へ迎えられてから、二週間が過ぎた。


屋敷にも少しずつ笑い声が増え、孤児たちもそれぞれの仕事に慣れ始めていた。


そんなある朝。


屋敷の庭では、木剣が魔法とぶつかり合う乾いた音が響いていた。


「そこまで!」


ユリウスの鋭い声が庭に響く。


木剣を持ったブレイブと魔法の杖を持ったミラベルは同時に距離を取り、額の汗を拭った。


「二人とも以前より良くなっている。特にブレイブ。剣筋に迷いがなくなった。」

「ありがとうございます!」


ブレイブは胸を張って返事をする。


一方、ミラベルも魔法の杖を握り直した。


「私はどうでしたか?」

「君も詠唱速度が上がった。だが、まだ魔力の流れに無駄がある。もっと肩の力を抜くように。」

「はい!」


ミラベルも素直に頷く。


そんな三人のやり取りを少し離れた場所から見ていたマリナは、腕を組みながら鼻を鳴らした。


「朝っぱらから真面目だなぁ。」


隣にいたレンが苦笑する。


「気になるなら、姐御も行けばいいじゃん。」

「いや。剣も魔法も性に合わねぇ。」


その時だった。


「マリナ。」


ユリウスが静かに声を掛けた。


「少し来てもらえるかな?」

「…あたし?」

「そうだ。」


不思議そうな顔をしながら訓練場へ向かうマリナ。


ミラベルとブレイブも何事かと見守る。


「君は生まれ育った街を出た後、何度か魔物と戦ったことがあるそうだね。」

「ああ。」

「しかも全部素手での討伐だった。」


その会話を聞いていたミラベルはゲームでのマリナは怪力設定があったことを思い出していた。最もゲーム内でその設定が活かされるのは専らギャグシーンだけだったが、現実のマリナはその怪力に何度も助けられたようだった。


一方、マリナはユリウスが何が言いたいのかわからず、怪訝な表情で問いかける。


「…それがどうしたんだよ?」

「単刀直入に言う。ブレイブのように武器を持って戦う気はないかい?」

「戦うってんなら…武器はいらねぇ。」


あっさり答えるマリナ。


「拳の方が早いしな!」


ユリウスは苦笑した。


「そうか…だが、その戦い方には大きな欠点がある。」

「欠点?」

「身体能力だけに頼りすぎている。相手がさらに強くなれば通用しなくなる。」


マリナは少し考え込む。


「…確かに。」


旅の途中でも、以前の魔獣より強い敵が現れていた。


あのままでは押し切られていたかもしれない。


「そこで提案だ。」


ユリウスは一本の杖を手に取る。


「魔法を覚える気はあるか?」

「えぇっ!?」


驚いたのはミラベルだった。


「マリナさんが魔法を?」


ブレイブも驚きの声を上げる。


マリナ本人も目を丸くする。


「いや…魔法なんて難しいだろ…?文字もまだ全部読めねぇし…エイショーってやつが必要なんだろ?」

「確かに魔法を覚えることは一筋縄ではいかないが、私が君に覚えてほしい魔法は君が考えるようなものとは別だ。」


ユリウスは首を横に振った。


「君には魔法使いになってもらうつもりはない。」

「……?」

「魔法による身体強化を主軸に戦う…魔闘家になってもらいたいと思っている。」


その言葉に、その場の全員が耳を傾ける。


「身体強化魔法は剣士だけのものではない。魔力を拳や脚に巡らせれば、攻撃力も速度も飛躍的に向上する。君の怪力と組み合わせれば、他に類を見ない戦士になれる。」


マリナは自分の拳を見つめた。


「!…面白そうじゃねぇか。」


その一言で決まりだった。


ユリウスは小さく笑う。


「では、今日から君も私の弟子だ。一緒に大切な人達を守るために力をつけていこう」

「!ああ、よろしく頼むよ…師匠。」


自然に出たその呼び方に、本人が一番驚いていた。


「…あ。」


その呼び方を聞いたミラベルが喜ぶ。


「マリナさん!今ユリウス様のことを『師匠』って言ったわよね?真面目に教えを受けようって思ってくれてるみたいで私すごく嬉しい!」

「う、うるせぇ!口が滑っただけだ!」


耳まで真っ赤になって否定するマリナ。


その様子にブレイブも目を輝かせながら熱意を持った声をかける


「でも、その呼び方マリナさんに合ってますよ!すごく熱いです!」

「ブレイブまで…!お前らなぁ〜…!」


恥ずかしがるマリナとそんなマリナを讃えるミラベルとブレイブの姿に、ユリウスも珍しく口元を緩めていた。


こうして四人での訓練が始まった。


最初の課題は魔力操作。


ミラベルとブレイブは何度も経験してきた基礎だった。


「身体の中を流れる魔力を感じる。川の流れをイメージするんだ。」


マリナは目を閉じる。


「…川?よく分かんねぇ。」


五分後。


「ダメだ!全然分からん!」


頭を抱えるマリナ。


ミラベルは優しく笑う。


「最初は私も同じだったわ、焦らなくて大丈夫よ。」


ブレイブも頷く。


「俺も魔力を感じられるようになるまで何日もかかりました。」

「そうなのか?」

「はい。」

「だから一緒に頑張りましょう!」


二人の励ましに、マリナは照れくさそうに鼻をかく。


「…ありがとよ。」



そして、数日後…。


特訓の末、ついにマリナの身体から淡い魔力が溢れ始める。


「そのままの状態を維持!」


ユリウスが声を上げる。


「魔力を拳へ流すイメージで!」

「おおおっ!」


次の瞬間、マリナが軽く訓練用の木人形を殴る。


――ドォン!!


凄まじい音とともに木人形が数メートル吹き飛び、粉々に砕け散った。


一同は言葉を失う。


「…………。」

「…え?」


ミラベルが固まる。


ブレイブも目を丸くした。


「す、すごい…!」


ユリウスだけは冷静に頷いた。


「予想以上だ。マリナ、君の魔闘家としての才能は本物のようだね。」


マリナ本人だけが首を傾げる。


「…え?あたし…今、そんなに力入れてねぇぞ?」


その天然な一言に、三人は思わず顔を見合わせた。


ミラベルは笑顔でマリナに対してこう告げた。


「マリナさん…!やっぱりあなた本当にすごい人ね!」


 

その日から、ミラベルは魔法。ブレイブは剣術。マリナは魔闘術。


そしてユリウスは、三人の師として彼らを導き続けた。


身分も、生まれも、育った環境も違う四人。


それでも同じ汗を流し、励まし合い、時には笑い合う日々は、少しずつ…しかし確かに互いの絆を深めていっていた。


やがて彼らは誰もが認める強き仲間となり、来るべき王立学院での生活、そして世界を揺るがす戦いへ向け、大きく成長していくのだった。

マリナもミラベルやブレイブと共にユリウスを師事し鍛錬に加わることになりました。


ミラベルとユリウスは魔法使い、ブレイブは剣士なのでバランスを取って魔法で身体強化して拳で殴る魔闘家になってもらいました。


これからも四人やカイン達他の攻略対象や婚約者達との関係性の掘り下げもしていきたいと思っています。


今回は読んでくださりありがとうございました。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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