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第18話開幕

国王により祝賀会に挨拶がなされ、各々パーティーを楽しむ中不審な影が忍び寄る…。

高らかなファンファーレが王城の大広間に響き渡る。


楽団の演奏が静かに止み、歓談を楽しんでいた貴族たちは一斉に正面へと向き直った。


赤い絨毯の先。


豪奢な玉座へと続く階段を、国王エドガーと王妃リシェルがゆっくりと歩み出る。


その一歩ごとに、会場の空気が引き締まっていく。


国王の隣には、ミラベル達のそばからいつの間にか足早に移動していた本日の主役である王太子ユリウス。


白を基調とした正礼装に身を包んだその姿は、12歳とは思えぬほど凛々しく、未来の王としての風格すら漂わせていた。


ミラベルは思わず目を細める。


(ゲームでもユリウス様は人気だったけれど…普段の姿だけでなく王太子様としての姿も本当に素敵。)


その視線の先には、鍛錬の師や婚約者候補としてだけでなく大切な人に対しての優しい笑顔も確かにあった。


国王がゆっくりと壇上へ立つ。


「皆の者。」


低く、威厳のある声が広間いっぱいに響く。


誰一人として物音ひとつ立てない。


「本日は、我が王家主催の祝賀会へご列席いただき、誠に感謝する。」


国王は満足そうに会場を見渡した。


「そして本日は、我が息子――」


一歩下がっていたユリウスへ穏やかな眼差しを向ける。


「ユリウス・アークレイン・ヴァルハルトが12歳という節目を迎えたことを、皆と共に祝えることを大変嬉しく思う。」


会場から大きな拍手が起こる。


ユリウスは一礼すると、少し照れくさそうに微笑んだ。


その姿に王妃も優しく目を細めている。


「また、本日は王国の未来を担う若者たちが社交界へ歩み出す、大切な門出の日でもある。」


国王の視線がミラベル達子ども達へと向く。


「身分や領地は違えど、この国を想う気持ちは皆同じである。互いを知り、支え合い、この王国の未来を築いていってほしい。」


その言葉にミラベルは胸が熱くなる。


(私も貴族家の一員…そうでなくてもたくさんの人が人生を送るこの国を…守らなくちゃ。)


ゲームではイベントCGと短い文章だけだった。


でも今は違う。


ここには笑い合う人たちがいて、夢を語る子どもたちがいる。


彼らにはそれぞれ人生がある。


だからこそ、危機が訪れる未来など絶対に阻止せねばと強く思っていた。


国王はゆっくりとグラスを掲げる。


「それでは、我が息子ユリウス、そして若き諸君の未来に。乾杯!」

「乾杯!」


無数のグラスが高く掲げられた。


楽団が再び華やかな演奏を始め、大広間は一気に祝宴の空気へ包まれる。


料理人たちが豪華な料理を運び込み、人々は再び談笑を始めた。


「ミラベル嬢。」


セドリックが穏やかに声を掛ける。


「先ほど少しだけ伺いましたが、魔法の鍛錬をされているそうですね。」

「!はいっ、まだまだ未熟ですけれど。」


するとセドリックは優しく笑う。


「努力を続けられる方は、それだけで尊敬できます。才能だけでは人は強くなれませんから。」


その言葉にミラベルはその言葉に感銘を受け笑顔でこう答える。


「はいっ!ありがとうございます!」


ロザリアも柔らかく微笑んだ。


「セドリック様も毎朝、日の出前から槍術と魔法の鍛錬を欠かさないんですよ?」

「ロザリア。」

「事実でしょう?」

「…そうだけれど。」


少し照れるセドリック。ロザリアは楽しそうに笑う。


「努力を隠したがるところも、この方らしいんです。」


その様子を見たミラベルは思わず笑みを浮かべた。


(この二人、本当に素敵な関係だな。)


一方、少し離れた場所ではアルトがブレイブの肩を叩いていた。


「次の年の武闘大会も俺は出る予定だ!お前も出るだろ?今度こそ決着つけような!」

「はい!次は負けません!」

「望むところだ!」


ヴィオレットは苦笑する。


「お二人とも、今日くらい剣を忘れてください。」

「無理!」

「じ、自分も剣術の話が大好きなので無理かもしれません!」


息ぴったりの返事に、周囲から笑いが起こった。


ルシアンはそんな様子を見て吹き出す。


「あの2人、なかなかに似た者同士だね。」


アイリスも上品に微笑む。


「ふふ、本当に。」


その頃…カインは黙って料理を口へ運んでいた。


「カイン様。」


エレノアが小さなお皿を差し出す。


「こちらのお菓子も美味しいですよ。」

「…ありがとう。」


短い返事。それでもエレノアは嬉しそうだった。


ミラベルはそんな仲間たちを眺める。


(ゲームでは攻略対象とライバル令嬢だったみんな…。でも今は違う。誰も誰かを蹴落とそうなんて思ってない…こんな未来が、本当はあってもよかったんだ。)


自然と笑みがこぼれる。


その時だった。


ユリウスの表情が変わる。穏やかだった瞳が鋭く細められる。


「…?」


ミラベルもその変化に気付いた。


(…ユリウス様?)


同じ瞬間。


会場の入口付近を警備していた一人の上級魔導士が顔色を変える。


「!まさか…この魔力は…!?」


ユリウスが叫んだ。


「全員、警戒しろ!」


次の瞬間――王城全体を震わせるような轟音が鳴り響いた。


ゴオォォォォンッ!!


窓ガラスが激しく揺れる。


床に巨大な魔法陣が次々と浮かび上がった。


「きゃああっ!」

「何だこれは!?」


貴族たちが悲鳴を上げる。


黒紫色の光が会場中を覆い尽くす。


ミラベルの背筋を冷たいものが走った。


(この魔力の気配…まさか…!!)


魔法陣の中心が大きく歪み始める。


そして…


グルルルルルル……!!


獣の唸り声が、大広間に響いた。


次々と現れる巨大な影。


鋭い牙。赤く光る瞳。禍々しい魔力。


以前ミラベルを襲った魔獣すら霞むほどの、上位種の魔獣たちだった。


「!魔獣だ!!」

「か、会場を守れ!!」


近衛騎士たちが一斉に剣を抜く。


侯爵夫妻のそばで警護にあたっていたオズワルドも迷いなく腰の剣を引き抜き、その様子を見たブレイブも只事ではないと察し剣を抜いた。


レオナルドとセレスティアも娘のミラベルの元へ駆け寄りを庇うように前へ出る。


しかし、騎士や魔導士達が相手するのには魔獣の数はあまりにも多く、力も強力であった。


ユリウスは瞬時に状況を見極め、力強く叫んだ。


「ミラベル!ブレイブ!みんなを守るぞ!!」


ミラベルは念の為にブレイブに預けていた杖を受け取り、力強く頷く。


「はい!!」


ブレイブも剣を構える。


「必ず守ります!」



――王城最大の祝宴は。


たった一瞬で、壮絶な戦場へと姿を変えたのだった。

ミラベル達が実戦で戦う展開がやってきました。次回はそれぞれのキャラクター達の活躍を書いていけたらと思っています。


今回は読んでくださりありがとうございました。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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