第16話祝賀会
馬車で王城に向かうミラベル達。祝賀会が今開幕しようとしていた。
アルヴェイン侯爵家の紋章が刻まれた豪奢な馬車は、王都の大通りをゆっくりと進んでいた。
窓の外には、華やかな街並みが広がる。
王太子ユリウス・アークレイン・ヴァルハルトの12歳の誕生日を祝う祝賀会とあって、街中には王家の紋章が描かれた旗が掲げられ、人々は笑顔で王城を見上げていた。
「すごい人…。」
ミラベルは窓から身を乗り出すように外を眺める。
「皆さん、本当にユリウス様のお祝いを楽しみにしているんですね。」
レオナルドは穏やかに頷いた。
「ああ。ユリウス殿下は幼い頃から民にも慕われている。それに今日は、お前たち12歳の子供が正式に社交界へ加わる日でもある。」
セレスティアも優しく微笑む。
「今日から貴族として、多くの方々と出会っていくのよ。」
「はい。」
ミラベルは小さく息を吸った。少しだけ緊張する。
その様子に気付いたブレイブは、向かいの席からそっと声を掛けた。
「お嬢様。」
「え?」
「大丈夫です。」
優しい笑顔だった。
「お嬢様なら、きっと皆さんと仲良くなれます!」
その言葉にミラベルの肩の力が少し抜ける。
「ありがとう、ブレイブ。」
その言葉にブレイブは照れくさそうに笑った。
オズワルドはそんな二人を横目で見ながら、どこか微笑ましそうに目を細めていた。
やがて王城が見えてくる。
白亜の城は青空を背に堂々とそびえ立ち、正門には各地の貴族の馬車がずらりと並んでいた。
「アルヴェイン侯爵家、ご到着!」
門番の声が響く。
オズワルドとブレイブが先に降り、恭しく扉を開ける。
レオナルドが先に降り、続いてセレスティア。そしてミラベルがゆっくりと地面へ足を下ろした。
周囲の貴族たちが思わず視線を向ける。
「あれがアルヴェイン侯爵家のご令嬢…。」
「噂以上にお美しい。」
「金色の髪が本当に綺麗ね。」
ひそひそと聞こえる声に、ミラベルは少しだけ気恥ずかしくなった。
ブレイブは一歩後ろからその様子を見守る。
(やっぱり、お嬢様はすごい。みんなが見惚れてらっしゃる。)
自分の仕えるミラベルが褒められてブレイブは胸の奥に少しだけ誇らしい気持ちが湧き上がった。
王城へ入ると、煌びやかなシャンデリアが来客を迎えた。
高い天井には美しい天井画。磨き上げられた大理石の床には、豪華な装飾が映り込んでいる。
「ミラベル!」
聞き慣れた声に振り向く。
そこには、純白の礼装に身を包んだ少年が立っていた。
「ユリウス様!」
ユリウス・アークレイン・ヴァルハルト。
今日の主役である王太子は、穏やかな笑みを浮かべながら近づいてくる。
「今日は来てくれてありがとう。」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。」
ミラベルは優雅に一礼した。
「そして…。」
ユリウスは少し照れくさそうに笑う。
「今日は社交界デビュー、おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「そのドレス、とても似合っている。」
ミラベルは照れたくさそうに笑いながら返事をする。
「ありがとうございます…!」
そのやり取りを見ていたブレイブは、心の中で微笑ましく思いながらユリウスに同意していた。
(やっぱり、ユリウス様もそう思いますよね。お嬢様、本当にお綺麗だから。)
ユリウスはミラベルの後ろに立つブレイブへも目を向けた。
「ブレイブ。」
「はっ!」
「今日からはミラベルの護衛としても頼りにしているよ。」
「はい!」
ブレイブは胸に拳を当てる。
「必ず、お嬢様をお守りします!」
その真っ直ぐな返事にユリウスは満足そうに頷いた。
「君ならそう言い切ってくれると思っていた。」
そこへ一人の近衛騎士が歩み寄る。
「ユリウス殿下。陛下がお待ちです。」
「分かった。」
ユリウスはミラベル達へ微笑む。
「一緒に行こう。」
広間の中央。
豪華な玉座の前には、この国を治める国王エドガー・アークレイン・ヴァルハルトと王妃リシェルが立っていた。
「アルヴェイン侯爵。」
レオナルドが膝をつく。
「本日はお招きいただき、光栄にございます。」
「うむ。」
国王は朗らかに笑う。
「堅苦しい挨拶は抜きにしよう。」
そしてミラベルへ視線を向ける。
「君がミラベル嬢だね。」
「は、はい。」
「初めまして。」
ミラベルは緊張しながら礼をする。王妃リシェルは優しく微笑んだ。
「ユリウスから、あなたのお話は何度も聞いています。」
「えっ?」
思わずユリウスを見る。ユリウスは少しだけ照れたように咳払いをした。
「いつも一緒に鍛錬をしているから…話題になることが多かっただけだよ。」
王妃はくすくすと笑う。
「魔法も剣術も頑張っている素敵なお嬢さんだと、自慢していましたよ。」
「お、お母様っ!」
「ユリウス様…私のことをそんな風におっしゃってくれていたんですか?すごく嬉しいです!」
「!ああ…」
ミラベルに礼を言われ、ユリウスは少しだけ頬を赤くした。
その微笑ましいやり取りに、国王も豪快に笑う。
「はっはっはっ!仲が良いのは結構なことだ!」
会場にも自然と笑みが広がる。
和やかな空気の中、楽団が演奏を始めた。
まもなく、祝賀会が開幕しようとしていた。
ミラベル達が呼ばれたパーティーはユリウスの12歳の誕生日を祝う祝賀会でした。パーティー編はまだまだ続きます。
今回は読んでくださりありがとうございました。次回も読んでくださると嬉しいです。




