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第12話初めての挑戦

執事長オズワルドと共に買い出しに街にやってきたブレイブはある張り紙を見かける。

朝靄の立ち込める侯爵領の街。


石畳の通りには、露店を開く商人たちの威勢のいい声が響き始めていた。


その人混みの中を、一人の少年と一人の老人が歩いている。


「今日は頼みましたよ、ブレイブ。」


柔らかな笑みを浮かべた老人――執事長オズワルドがそう言うと、ブレイブは背筋を伸ばして頭を下げた。


「はい、執事長!」


オズワルドは懐から二枚の買い物メモを取り出した。


「私は日用品を買い集める。あなたには食料品店を回ってこのメモの一覧にある品を注文し、屋敷への配送をお願いしてきてもらいたい。」


ブレイブはメモを受け取り、真剣な眼差しで内容を確認する。


小麦粉、牛乳、野菜、果物、香辛料、肉……。


どれもアルヴェイン家で毎日使うものばかりだった。


「…できますね?」


試すような問いかけではない。信頼を込めた問いだった。


ブレイブは力強く頷く。


「はい!必ずやり遂げます!」

「うん。その意気ですよ。」


オズワルドは満足そうに微笑んだ。


「では昼頃、この噴水広場で落ち合いましょう。」

「はい!行ってきます!」


ブレイブは勢いよく駆け出した。




市場を歩きながら、ブレイブは一軒一軒丁寧に店を回っていく。


「こんにちは!アルヴェイン侯爵家から参りました!」


最初は緊張して声も震えていた。


けれど今では違う。


「いつもありがとうございます。午後には屋敷へ届けさせてもらいますよ!」

「はい!よろしくお願いします!」


店主たちも笑顔で応じてくれる。孤児だった頃には考えられなかった光景だった。


(屋敷のみんなが信用を積み重ねてきたから店の人達も親切に応対してくれるんだ…きっと。俺も、早く信用される一人になりたい。)


そんな想いが自然と胸に湧いてくる。


そして、最後の店を出た時だった。


「ん?」


広場の掲示板に、一枚の大きな張り紙が目に留まった。


赤い文字で大きく書かれている。


『王都武闘大会 出場者募集!』


思わず足が止まり、近づいて読んでみる。


年齢や身分を問わず参加可能。


木剣を用いた安全な試合形式。


優勝者には賞金と記念の盾が贈られる。


ブレイブは無意識に自分の手を見つめた。


(俺…。今の俺なら…。)


毎日、朝から晩まで鍛えてきた。


ユリウスに剣を教わり、ミラベルと共に汗を流し、何度も倒れても立ち上がってきた。


(この一年間で、どれくらい強くなれたんだろう。)


胸が高鳴る。


もちろん怖さもあったが、それ以上に。


(俺の今の力を…試してみたい!)


その想いが、心を満たしていた。




その日の夕方。


アルヴェイン侯爵家。


訓練場では、今日も三人の鍛錬が続いていた。


「そこだ!二人共、息を合わせるんだ」


ユリウスの声を聞き、ブレイブが木剣を振るいミラベルが風魔法で援護し鍛錬用の魔法で動く人形を倒していく。


鍛錬を終え、休憩に入った頃。


ブレイブは深呼吸を一つして、意を決したように口を開いた。


「あの…っ!」


二人が振り向く。


「…お話があります!」


真剣な表情だった。


「今日…街で武闘大会の募集を見つけました。」


ミラベルが目を丸くする。


「武闘大会?」

「は、はい!」


ブレイブは頷く。


「それで…そのっ…俺、出てみたいんです!」


一瞬、静寂が流れた。


「自分がどこまで通用するのか知りたいんです。…もちろん簡単に勝てるなんて思ってません!でも…」


 拳を握り締める。


「もっと強くなりたい…。だから、挑戦したいんです!」


その真っ直ぐな瞳を見て、ミラベルはすぐに笑顔になった。


「素敵じゃない!」


ブレイブが驚く。


「!お嬢様…。」

「挑戦したいって思えること自体がすごいことよ!私は応援する!」


その言葉に、ブレイブの表情がぱっと明るくなる。


「!ありがとうございます!」


一方、ユリウスは少し考え込んでいた。


「…確かに。」


静かに頷く。


「力自慢の者たちと戦うのは、良い経験になる。対戦形式でしか学べないことも多い。」


そして、ふっと笑った。


「…ただし。」


その笑顔に、ミラベルは嫌な予感がした。


「大会へ出るからには、いつも以上に厳しく鍛えるよ。…覚悟はいいね?」


ブレイブは一瞬も迷わなかった。


「もちろん!望むところです!」


即答だった。


ユリウスは満足そうに頷く。


「いい返事だ。」


ミラベルは苦笑しながら二人を見比べる。


「もう…師弟そろって熱血なんですから。」


けれど、その頬は自然と緩んでいた。


「ブレイブが頑張るなら…私だって負けてられない!」


二人が振り向く。


「ブレイブ、ユリウス様、私ももっともっと魔法を覚えます!」


ユリウスは優しく微笑む。


「その意気だ。ちょうど新しい魔法を教えようと思っていたところなんだ。」

「!本当ですか!?」

「もちろん。」


ユリウスは地面へ新しい魔法陣を描き始める。


「これからは攻撃魔法だけじゃない。上級の防御魔法や身体強化魔法も学んでもらう。」


ミラベルの瞳が輝く。


「はい!」


その横では、ブレイブも木剣を握り直していた。


(負けられない…俺はもっと強くなる。お嬢様を…ユリウス様を…アルヴェイン家のみんなを守れるように。)


夕焼けに染まる訓練場。


三人は再び鍛錬を始める。


木剣がぶつかる音。魔法が炸裂する音。笑い声。励まし合う声。


そのどれもが、確かな絆の証だった。


そして誰もまだ知らない。


今回開催される武闘大会が、ブレイブという一人の少年の名を、少しずつ王都に知らしめる最初の一歩となることを。

ブレイブはミラベルとユリウスの応援を得て武闘大会に挑戦することになりました。ここから2話ほど武闘大会絡みの話になるのでブレイブの成長、三人の絆、そして新キャラの登場に注目してくださると嬉しいです。


今回は読んでくださりありがとうございました。次回も読んでくださると非常に嬉しいです。

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