第4章 魔王の秘密(1)
はるか昔のことです・・・。
この世界が出来て、大地や生き物が生まれました。
そこは、楽園と呼んでもいいくらい平和な世界でした。
しかし、人という種族が生まれさらに、魔力を使う魔族や魔物が生まれると、世界は変わりました。
負の感情
これが、魔王を誕生させたのです。
憎しみ、恨み、悲しみ、怒り。
これらの感情が、凝り魔力と交わり、
第一の魔王が、生まれた。
魔王の出現は世界を混沌の世界へ変貌させました。
人々は魔王と戦うことを決意しましたが、魔力を扱えない人では、魔王に太刀打ちできるはずもなく、なすすべもなく殺されていきました。
魔王出現から10年の月日が流れ、人々はあきらめていました。
このまま、魔王に殺されるのだと。
しかし、奇跡がおきました。
聖女の誕生です。
聖女は魔王と対になる、光の魔力を持って生まれました。
光の魔力をもって、聖女は魔王と戦いました。
激しい戦いの末、聖女は魔王をたおしたのです。
そして、世界は平和な日常を取り戻しました。
しかし・・・。
聖女が世界を救ってから、数百年の後。
再び、魔王が出現したのです。
これが第二の魔王でした。
人々は、また恐怖に支配されました。
そして、人々は思ったのです。
再び聖女が出現し、魔王を倒してくれることを。
その人々の祈りが通じたのか、再び奇跡が起きました。
しかし、現れたのは勇者でした。
人々は勇者を崇めたたえました。
勇者は、人々の想いを受けて、魔王と戦いました。
そして、魔王は再び倒されました。
この頃から、人々の中にも魔力を持って生まれる者が現れました。
そのため、魔物と戦う人も増えてきました。
魔物を倒すと、国から報償金がもらえる制度もできました。
これにより、冒険者という職業ができたのです。
冒険者たちは、また魔王が出現しても倒せるように、備えることにしました。
武器、防具、魔法。
これらを開発して、魔王と戦える環境をつくりだしていったのです。
そして、人々の平和をあざ笑うかのようにまた、魔王が出現しました。
第三の魔王。
この魔王は、今までの魔王とは違いました。
第三の魔王は、人々を殺めなかったのです。
人々は、混乱しました。
誰も殺されない。
しかし、魔王という恐怖の存在。
人々は、悩んだ末、冒険者たちに魔王討伐を依頼したのです。
今は、殺されなくてもいずれ、殺される。
今までの魔王の恐怖により、人々は心の平穏を求めたのでした。
そして・・・・。
ある冒険者たちは第三の魔王を倒したのでした。
それが、今から五千年前のお話。
「と、ここまでが一般的に人々が知っている歴史になります。」
カインはそういうとサツキを見た。
サツキは、やはりと思った。
魔王の存在は悪である。
しかし、第三の魔王の存在は謎であった。
「あの、カインさん・・・。」
サツキが話し出そうとすると、カインは実は、と話し始めた。
「実は、この話は人間が作り上げた歴史でもあるんです。」
そういうと、カインは語りだした。
この世界に魔族が誕生したのは、はるか昔。
しかし、魔族が誕生したというのは間違いである。
正しくは、人々の中で闇の魔力をもった人間が魔族と呼ばれるようになったのである。
つまり、元を正せば魔族は人間であった。
そして、魔物もまた闇の魔力を持った動物であった。
闇の魔力を持つことにより、姿が少し変わり人としては生きられなくなった。
そのような人々が集まって、一つの国を作った。
これが、現在魔王の治める国
魔族が幸せに暮らせる国
アージェン王国である。
アージェン王国は、魔族や魔物にとって、楽園であった。
姿形がかわったことで、人々から負の感情をぶつけられていたため、心身ともに病んでいたのが、この国にきてからは、そういうことがまったくなかったのである。
そして、全ての魔族をまとめあげるために、王が選ばれた。
王は、人と同じ姿をしていたが、唯一背中に黒い翼があった。
そして、魔族のなかでもひときわ強い魔力をもっていた。
王は、魔族たちが平和に暮らせるように、人々と争うことがないように国全体に結界をはった。
そうすることで、アージェン王国に闇の魔力を持たない人々や動物が迷い込まないようにした。
こうして、アージェン王国の平和は守られていた。
しかし、この事が後に終わりの始まりになるのだった。
王が結界の見回りをしていたとき、ある1人の少女に出合った。
少女は、アージェン王国の隣にある聖リンカ公国の皇女であった。
2人の出会いが世界を変えることになるとは、まだ誰も知らなかった。
はるかなる昔・・・。
魔王の治める国の物語。
いつものように、結界の見回りをしていた魔王。
ふと、結界付近に人の気配を感じ、そちらに足を向けた。
「ったく、誰がこの結果近くまできたんだ?まあ、少し脅せば逃げだすだろ。」
いつものように、結界に近づくモノに、魔力をちらつかせれば、逃げるだろうと考えいた。
しかし、結界付近に感じた人を見たとき、魔王は驚いた。
高貴な気配、美しい容姿。
今まで出会ったことのない衝撃を魔王はうけた。
いわば、一目ぼれに近いものだった。
歩を止めた魔王に少女は気がつき、ジっと見つめると魔王に近づいてきた。
しかし、結界に阻まれ一定の距離でとまった。
「ねえ、ちょっと、どういうことよこれ。」
少女は腰に手を当て魔王に話しかけた。
突然話しかけられた魔王は驚きながらも答えた。
「ああ・・・・。結界がはってあるんだ。そこから先は魔族の治める国だ。」
魔王は結界近くの少女に近づいた。
「え、そんな国あったかしら?」
ブツブツと独り言を話しながら、近づいた魔王を見た。
「まあ、悪くないわね。」
「ん?」
「あなた、私をさらいなさい。」
「は?」
「だから、誘拐して欲しいのよ。」
意味不明な言葉をしゃべった少女は、ああもう、と怒り、ことの次第を話し出した。
「私は、この聖リンカ公国の第一皇女、エリス。実はひと月後にある男との結婚が決まっているの。でも私はそんな男と結婚なんてまっぴらなの。だから、それがイヤで城を逃げ出してきたんだけど、行くところがないのよ。」
皇女エリスの一方的な会話で魔王はようやく納得した。
「なるほど、結婚がイヤで逃げ出したが、いく当てがなくさまよっていたわけか。」
「そうよ、何か文句でもあるの?」
「いや、特にないが。しかし、この国に入ることは出来ないぞ。魔力を持たないものは入れないようになっている。」
魔王の言葉にエリスは、うーんと考えた。
「魔力。一応あるんだけど・・・。封印してあるのよね・・・。」
その言葉に魔王は驚いた。
魔力の封印。
まだ、魔族の中でも一部の者だけが成功しているだけで、一般の魔族は封印などしていない。
「魔力の封印だと。どういうことだ。詳しく話してくれ。」
魔王は結界をこえてエリスの腕をとった。
「え、なんで、触れるの?」
エリスは突然腕をつかまれて驚いた。
「結界をはったのはオレだ。通り抜けることが出来て当然だろ。」
魔王は、それよりも、と封印のことを聞いた。
「頼む、封印のことを詳しく教えてくれ。謝礼はきちんとする。」
魔王の言葉にエリスはニッコリと笑った。
「いったわね、男に二言はないわよ。」
そして、反対に魔王の腕をつかみ、こういった。
「私と結婚しなさい。」
「おい、ちょっと待て。何をどうしたら、そうなるんだ?」
魔王は眉をひそめて、瞬きをした。
「だから、私と結婚しなさい。あなた、容姿、悪くないし、魔力もあるんでしょう?私の結婚相手より全然マシよ。」
「そんな理由なのか?それでいいのか?」
魔王はエリスの言葉に驚いた。
「結婚は愛する相手と幸せになるためにするものだろう。」
魔王の真面目な声音にエリスは、笑った。
「あなた、真っ直ぐに育ったのね。普通ならば、政略結婚で知らない相手との婚姻になるでしょう。」
「いや、だが。」
魔王のしどろもどろな答えにエリスはキレた。
「ああ、とりあえず一緒に来てもらうわ。」
そういうと、エリスは右耳についていたピアスを外し、地面に落とし踏みつけた。
その瞬間、眩い光が辺りをつつみこんだ。
魔王は咄嗟に目をとじた。
「もう、いいわよ。」
エリスの声に魔王は瞼に感じていた光がなくなっていることに、気づいた。
ゆっくり目を開くと、魔王は驚いた。
「ここは何処だ?」
いつの間にか、魔王とエリスは石造りの部屋の中にいた。
足元には、うっすらと光る魔法陣があるのがわかった。
「さっきのピアスには転移の魔法が封じられていたの。壊れたら、この部屋に転送されることになっているのよ。」
ここまで、日常に魔力を使って生活をしていると思っていなかった魔王さまは驚いた。
では、なんのために、結界をはってまで人と距離をおいていたのか。
その疑問にエリスは答えてくれた。
「いっておくけど、この国が少しおかしいのよ?他の国では魔力は忌み嫌われているから。」
そういうと、魔王の腕をつかんで、部屋の外へと歩き出した。
部屋を一歩出るとそこは、緑深き森のなかであった。
「城の一角の森の中にあるのよ。少し歩くわよ。」
魔王は逆らわずにエリスの後を歩いた。
しばらく歩くと、森が途切れ、城が見えてきた。
白く清らかなる城。
水晶があちこちにちりばめられているのか、太陽の光でキラキラと光っていた。
エリスはそのまま歩き、城の中を迷うことなく進んだ。
「おい、いいのか。」
魔王は、何もいわずに歩き続けるエリスに尋ねた。
「気にしないで、そのままついてきて。」
エリスの答えに魔王は、はあっとため息をつき、そのままついていった。
そして、10分ほど歩いただろうか。
ひときわ大きな扉の前にたどり着いた。
扉の両脇には衛兵らしき人物が2人。
エリスの姿に2人は気付き、敬礼をした。
「おかえりなさいませ、姫さま。」
「毎日ご苦労さま。父上はいらっしゃるかしら?」
衛兵の言葉に答え、エリスは尋ねた。
「陛下でしたら、いつもの中庭にいらっしゃいます。」
「あら、もうそんな時間?ありがとう。」
エリスは衛兵に礼をいうと、また歩き出した。
城のなかをぐるぐるつれまわされている魔王。
普通ならば、不審者扱いされそうだが、エリスといるせいか、全く気にされなかった。
「これはこれで、どうなんだ。」
複雑な心境で魔王はエリスとともに歩いていった。
しばらく歩くと、エリスは通路から離れ、庭の中を歩き出した。
そして、バラのアーチをくぐり噴水の横を通り抜けると、東屋が見えてきた。
その東屋に、2人の人物がいた。
1人は男、もう1人は女であった。
「父上、母上、ご無沙汰しております。」
エリスはその2人に話しかけると、魔王の手を放し、2人に近づいた。
その声に2人は気付き、エリスを見ると、とても嬉しそうに笑った。
「おお、久しぶりだな、我が娘。いったいどこまで遊びにいたんだい?」
「そうよ、お出かけするときはきちんと教えてね。」
「それは失礼しました。実は結婚がイヤで逃げ出していたのですが、いい相方を見つけたので、戻ってきたのです。」
そういうと、エリスは魔王にこちらにくるように目線をおくった。
魔王はとりあえず、エリスに近づき、挨拶をした。
「アージェンと申します。」
「とりあえず、紹介するわ。私の父と母よ。」
エリスからこの国の王と王妃であると説明されると、魔王は2人を観察した。
人の王。
傲慢で、下のものなど、家畜同然とみている王族や貴族たち。
そんな人達から逃れる為、魔族の国をつくった。
しかし、この王たちは・・・。
「まあまあ、イケメンさんね。エリス、あなたどこで探してきたの?」
「これこれ、王妃、ワシもそれなりにハンサムであろう?」
「父上、母上、とりあえず、この人物との結婚をお許し下さい。」
「え、エリス、それはずるいわ。ママも再婚しようかしら。」
・・・・・・。
なんだ。この脱力感・・・。
魔王の心の内とは、関係なく、国王たちの会話は続いていく。
「エリス、そうするとお前の結婚相手はどうするのだ?」
「あんなの破談に決まっているでしょ、父上。あんな顔、タイプじゃないもの。」
「まあ、エリス、人の好さは外見だけではないのよ?」
「あら母上、お言葉を返すようだけど、母上も外見で父上に決めたって聞いたわよ?」
「あら、誰に聞いたの?だって、お父様若い頃カッコよかったんだもの。」
「それは嬉しいね。数多ある求婚者たちの中から、選ばれたわけか。」
「父上、母上、惚気るのはいいけれど、今は私の話よ。」




