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第3章 これでいいのかな(2)


まだこの世界に来て一日しか経ってないけど、落ち込んだり、辛かったりすることはない。

それは、魔王さま達がいろんなことを考えてくれているから。


「そういえば、魔王さまってなんて名前何ですか?」


サツキは魔王さまが納得してない感じで、額にシワを寄せているので、話題を変えてみた。

しかし、魔王さまは。

額のシワを深めた。


「魔王に名前はないぞ。」


ビクッとして、ベッドの下を見るとウルちゃんが、寝そべっていた。


「小娘の護衛が、仕事だからな。」


少しふて腐れたようにいった。


「ウルちゃん、それってどういうこと?」


サツキはウルちゃんの言葉に首をかしげた。

魔王には名前がない?どうして?

ゲームの世界でも呼び名はあるのに。

不思議に思い魔王さまを見た。


「ま、大人の事情ってやつだ。」


明らかに適当な言い訳をしてる。

サツキはジーっと魔王を見た。

その視線に気づいているはずなのに、魔王はとぼけた。


「そんなことより、早く寝ろ。体調まだよくないんだろ?」


魔王の言葉でサツキは頭痛を思い出した。

ズキズキするためサツキは大人しく枕に頭をのせた。

さっきまでは、そんなに痛くなかったのに。

なんで?

疑問符を浮かべながら、瞼を閉じた。


「明日はこの部屋でゆっくりするんだな。」


「え、竜族にあわせてくれるんでしょ?」


サツキは魔王に言った。


「こんな状況で会わせるわけないだろ。少し大人しくしてろ。」


魔王はサツキの額を指ではじいた。


「痛い。」


地味に痛い目にあい、サツキはジンワリ涙を浮かべた。


「2~3日したら、会わせてやるから。」


魔王はそういうとサツキの額に手をのせた。

自分とは違う体温に少しドキドキしたが、その暖かさにいつのまにか寝てしまっていた。

サツキが、寝入ったのを確認して魔王さまは、手をどけた。


「珍しいな。魔王にしては。」


足元から聞こえた声に、魔王は視線を向けた。


「ま、たまにはこういうのもいいんじゃないか。」


苦笑いをして、魔王はサツキの部屋から出ていった。

残されたウルちゃんは。


「全く素直ではないな。」


一言呟き、そのまま目をとじた。


一方、サツキの部屋を出た魔王さまは、執務室へと向かった。


「おい、カイン。」


いきなりあいた扉に、カインはため息をついた。


「魔王さま、部屋に入るときにはノックしてから声をかけて、相手が答えてから、入るのがルールですよ。」


あきれたカインの言葉を気にせず、部屋の中央付近にあるソファーに魔王さまは、座った。

無言のまま、一ヶ所を見つめる魔王さまにカインはため息をついた。


「魔王さま、どうしたんですか?らしくないですよ。」


「俺らしいってなんだ?」


ちょっと不機嫌な声で答えた魔王さまに、カインはフムと、考えた。

さて、何があったんでしょうね。

サツキさんを部屋で寝かせてきたはずですが。


「なあ、カイン。魔王は魔王だよな。」


少し震えた声で魔王さまはカインに尋ねた。


「ええ、魔王さまは魔王さまですよ。何を突然。」


カインはその言葉に驚いた。

今まで魔王が魔王であるということに疑問を持つことはなかった。

サツキさん、ですか。


カインは突然現れた女性を思い浮かべた。

彼女がここに来たのは偶然であるはず。

しかし、魔王にとってそれはどういう意味をもつのか。


「何かサツキさんに言われましたか?」


「なぜ俺には名がないんだ?」


魔王に名前がない。

それは必要がないから・・・・・。

魔王は魔王だ。

それは理屈ではなく、当たり前のことであった。


空が青いのに理屈はない。

鳥が飛ぶのに理屈はない。

それと同じこと。


魔王は生まれてからずっと、魔王だった。


「少しお疲れのようですね。今日は早めにお休み下さい。明日は、私がサツキさんのお世話をしますから。魔王さまは一日ゆっくりしてくださいね。」


カインは魔王が不安定な状況であることを知り、少し落ち着くまでサツキとの接触を控えるべきだと考えた。


「わかった。頼む。」


魔王はカインの心遣いを感じて素直にうなずいた。

魔王は執務室を出ると、そのまま自分の部屋に行き、眠りに付いた。


魔王さまが部屋を出た後、カインは考え込んだ。

このままでは、バランスが崩れてしまうかもしれない。

一度崩れてしまえば、そう簡単には元に戻らない。

そうならないためにも・・・。


「仕方ないですね。」


カインはため息をつき、一つの決心をしたのであった。


翌朝、サツキは昨日よりかなり早めに目が覚めた。

ベッドから起き上がり、昨日と同じようにシャワーを浴びて、着替えた。


「小娘、今日はこの部屋から出るなよ。また、倒れるぞ。」


ウルちゃんの言葉に、わかったと、答えカーテンを開けて朝日を浴びた。

そういえば、昨日あたし魔王に何か言ったような・・・。

少しおぼろげな記憶を探りつつ、窓を開けて少し冷たい空気を吸い込んだ。


トントントン。


ドアをノックされる音にサツキは、はーい、と答え首をかしげた。

こんな朝からだれだろう?

ガチャリとドアをあけて入ったきたのは、カインであった。


「おはようございます。サツキさん、ゆっくり休めましたか?」


「あ、はい、昨日はすいませんでした。もう大丈夫です。」


昨日頭をなでてもらったのを思い出し、ほんのり頬を赤くして答えた。


「それはよかったです。本日はこの部屋ですごしてもらうことになりますので。お願いしますね。」


カインはサツキの顔色がよくなっているので、安心した。


「あの、カインさん。聞きたいことがあるんですが。」


サツキは、この世界にきてから不思議に思っていたことを聞くことにした。


「はい、今日はそのつもりで、ここに来ました。朝食をたべてから、ゆっくりお話しますね。」


カインはそういうと、サツキの朝食の準備を始めた。

目の前に置かれた朝食をおいしくいただき、食後の紅茶を一口飲んで、ふうっと、息をはいた。


「ご馳走さまでした。今日も美味しかったです。」


サツキはニッコリ笑い、カインを見た。

この世界に来てまだ2日目。

なにも知らないでは、いられない。


「食事も終ったようですし、そろそろお話しますね。この世界と魔王さまのことを。」


カインはそういうと、サツキの前に座り、話し出した。


「これから話すことは、真実と虚偽が混ざり合っています。しかし、それを知っているのはごく一部のものだけです。ほとんどの人達はこれが真実だと思っています。」


カインの言葉にゴクリとのどをならし、サツキはカインの言葉に耳を傾けた。




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