第3章 これでいいのかな(1)
カインからの話を聞き終えてサツキは、ウルちゃんと一緒に魔王の元に戻った。
「それにしても、世間ってせまいなあ。」
サツキは、従兄弟としりあっていたカインを少し身近に感じていた。
「それで、その従兄弟は今どうしているんだ?」
ウルちゃんの問いかけにサツキは答えた。
「えっとね、現在もきちんと小説家してるんだけど、サスペンスから、ファンタンジーに趣旨を変えているんだ。これって、やっぱり、カインさんの影響がありそうだよね。」
従兄弟のすみれは、現在竜や、妖精などがでてくるファンタジー作家として名を知られていた。
「そのようだな。竜や妖精ならば、この世界にはたくさんいるからな。」
ウルちゃんの答えにサツキは、目を輝かせた。
「ねえ、ウルちゃん。竜とか妖精にあいたい。会えないかな?」
「それは、かまわないと思うが。魔王に聞いてみるといい。」
ウルちゃんは、迷うこともなくサツキに答えた。
それを聞いたサツキは、魔王さまにあえるかどうか、聞くことにした。
部屋に戻ってサツキは早速魔王さまに聞いてみた。
「ねえ、お願いがあるんだけど。」
サツキは、魔王の前に行き顔を覗き込んだ。
しかし、魔王さまは何か考え込んでいた。
「あれ?ねえってば。」
「・・・。」
沈黙がサツキにかえってきた。
「これは、先ほどの話を考え込んでいるようだな。」
ウルちゃんの言葉にサツキは、ハッとした。
そういえば・・・。
魔王には何もいわずにカインの所に言ったのだった。
「ウルちゃん、やっぱり謎のままにしておいたほうがいいのかな。」
サツキとウルちゃんが執務室をでるときに、カインが言ったこと。
それは・・・。
「あの、魔王さまにはこのことは内緒でお願いしますね。そのほうが面白そうですから。」
クスリと笑いカインはサツキたちに言った。
「え、なんでですか?魔王さまも気になっているみたいですが。」
カインの言葉にサツキは首をかしげた。
「ですから、そのほうが面白そうですよね?今頃、さぞかし悩んでいるでしょうから。」
サツキは魔王さまを少し不憫に思った。
「了解した。この話はなかったことで。」
ウルちゃんは慣れているのか、カインの言葉にうなずいた。
まあ、面白いっていえば面白いのかな。
サツキは、目の前で悩んでいる魔王を見て思った。
ま、いっか。
それよりも・・・。
サツキは魔王さまの耳元に顔をよせて、大声で叫んだ。
「魔王さま、事件です。」
それに驚き、うおっといい、魔王さまは飛び上がった。
そして、廻りをキョロキョロと見回してサツキとウルちゃんに目をとめた。
「あ、お前ら帰っていたのか。」
魔王さまは、部屋を出て行った二人が戻っていることに気付いた。
そして、頭の上にハテナマークを浮かべた。
「ん?そういえばさっきなんか言ってなかったか?」
魔王さまの言葉にサツキは知らん顔を装った。
「え、何のことですか?それよりもちょっと聞きたいことがあるんですが。」
サツキの言葉に魔王さまは座りなおし、サツキにも座るようにすすめた。
「んで、なんだ?聞きたいことって?」
魔王さまは先ほどまで考えていたことを忘れてしまったようで、サツキの話を聞いた。
「えっとですね、竜とか妖精とかにあえないかなって。」
首をかしげて、サツキは魔王に聞いた。
「なんでも、サツキはあったことがないらしいぞ。」
ウルちゃんの言葉をきいて、魔王は驚いた。
「マジか。そうだなあ、会おうとすれば会えるが、どいつに会いたいんだ?」
どいつ?それって・・・。
なんて答えればいいんだろ?
まあ、妖精といえば、ティターニアとか、オベロンとかいるし。
竜っていっても、種族がたくさんいるよね。
サツキは、自分の世界で読んでいた小説などを思い返していた。
悪い竜と、いい竜。
悪い妖精と、いい妖精。
わがままな性格の子や、元気のいいこ。
とりあえず、魔王と一緒ならば、そんなに変な子には会わないはず。
サツキはそう考えた。
「えっとね、とりあえず、かわいい子とかいないかな?」
サツキの言葉に魔王とウルちゃんは考えた。
「かわいい?それって・・・。」
「とりあえず、この城にいる奴らにあわせてみてはどうだ?」
魔王とウルちゃんの言葉にサツキは目を輝かせた。
「え、このお城にいるの?」
それなら、そうと早く言って欲しい。
サツキの目がそう語っていた。
「ああ、お前が帰るために、魔方陣に魔力をながしてもらって、いるんだ。その為竜族がこの城に集まっているんだ。」
それを聞いてサツキはビックリした。
「え、魔王様が魔力込めているんじゃないの?」
魔王と言えば魔力の塊なんじゃないのかな。
サツキは首をかしげた。
「ちょっとイロイロあってな。」
「まあ、魔王にも事情があるんだ。」
魔王さまとウルちゃんに言われて、よくわからないけど、これ以上聞いちゃいけない気がして、サツキは黙った。
「えっと、よくわからないから、とりあえずいろんな竜たちに会いたい。」
それを聞いて魔王さまは、ふむっとうなずいた。
「わかった。じゃあ…。」
魔王さまは、外を見て立ち上がった。
「とりあえず、明日だな。もう、暗くなるからお前は部屋に戻っていろ。」
魔王の言葉にサツキは口をとがらせた。
「え、なんで?早く会いたい…。」
そこでサツキは目の前が暗くなり、頭を押さえた。
なにこれ?
貧血?
それにしては、ちょっと気持ち悪い。
サツキの様子に魔王さまとウルちゃんは、少し焦った。
「おい、小娘。しっかりしろ。」
「ああ、やはりまだ早かったな。」
座っていたため、倒れなかったがサツキはソファーで横になった。
ちょうどそこに、カインが部屋に入ってきた。
「魔王さま、そろそろ…。」
一度言葉を区切りカインは、魔王を見た。
「あれ、ちょっと遅かったみたいですね。」
「ああ、ちょうど今だ。」
カインと魔王の会話にサツキは眉をひそめた。
いったいなんの話をしてるの?
てか、なんでいきなりこんなことに。
先程までは体調に変化はなく、普通に話していた。
しかし、突然体調不良になるはずはない。
なにか原因があるはずだ。
サツキの疑問にウルちゃんが答えてくれた。
「小娘、魔力にあてられたな。」
魔力にあてられた?
それってどういうこと?
疑問が頭の中をめぐったが、頭痛のせいかしっかりと考えることが出来なかった。
「つまりですね、サツキさんの世界には魔力というものが存在していません。
しかし、この世界には魔力が存在しています。
しかもこの城には現在魔力の高い種族が集まっているわけで。」
カインの説明にサツキは、少し考えた。
「えっと、つまりどういうこと?」
頭痛のせいで考えることを放棄したサツキは魔王さまたちに尋ねた。
「だから、魔力になじみのないお前にはちょっと環境が苛酷だったわけだ。」
魔王さまは簡単に説明した。
「この世界にいるのであれば、多かれ少なかれ魔力を身近に感じていますが、サツキさんの場合全く未知の世界にきたようなものですから、体に負担がかかってるんですよ。」
「一応、小娘の部屋には魔力を遮断する結界があるから、部屋にいるのであれば、ここまで体調を崩すことはなかっただろう。」
つまり、異世界にあたしの体が慣れていないから体調を崩したってことだよね。
しかも、この城にはあたしが帰る為の魔法陣に魔力を流す為に、魔力の高い種族が集まっていて・・・。
えっと、自業自得なの・・・・?
「まあ、少し部屋で休めば回復するでしょうから。」
「おう、部屋まで送っていく。」
カインの言葉に魔王さまはうなずいてサツキを抱き上げた。
「いやああああああ。」
サツキは魔王さまに抱き上げられて叫び声をあげた。
耳元で叫ばれた魔王さまは、顔をしかめたが、サツキを落とすことはなかった。
「おい、小娘。突然叫ぶな。耳がつぶれる。」
ウルちゃんの言葉で、サツキは口を押さえたが、顔が真っ赤になっていた。
「だって、いきなり抱き上げるから。」
サツキは小さな声でしゃべった。
「気にするな。部屋まで連れて行くだけだ。まだ歩けないだろ?」
魔王さまの言葉どおり、頭痛は少し治まったが歩けるほど回復はしていなかった。
「あれ、少し頭痛が治まってる。」
「俺がいるからだろ。」
少し治まった頭痛に疑問を浮かべると魔王さまが答えてくれた。
「魔王さまの周囲には常に魔力遮断の結界がはってありますから。その恩恵みたいなものがサツキさんに影響をおよぼしているんでしょう。」
カインの説明に、サツキは成る程とうなずいた。
「んじゃ、いくぞ。」
魔王さまは一声かけると、サツキの部屋に向って歩き出した。
魔王にお姫様抱っこをされいるサツキは、少し恥ずかしかったが部屋にたどり着くまでカインとウルちゃんしか会わないことに気付いた。
疑問を口にすると、カインが答えてくれた。
「ああ、それもサツキさんの体調が悪くならない為に、できるだけ近寄らないように、皆に伝えてあるんですよ。」
いつの間にか、魔王やカインたちにイロイロと気遣ってもらっていることにサツキは感謝を述べた。
「あの、ありがとうございます。」
「いえいえ、元はといえば、魔王さまの失敗が原因ですからね。気にしないで下さい。それよりも、今日はこのまま休んだほうがいいかもしれなせんね。」
頭痛は治まってはいたが、体に妙な倦怠感があった。
「そうですね。今日はこのまま休みます。」
ちょうど、サツキの部屋の前まで来たところだった。
「カイン、ドアを開けてくれ。」
魔王さまの言葉にカインはドアを開けてその中へ入っていった。
部屋に入ると、寝室のドアをあけたカインが待っていた。
「えっと、そろそろ下ろしてください。」
流石にこのままベッドまで運んでもらうわけにはいかない。
サツキは魔王さまに伝えたが、魔王さまは全く聞こえていない振りをして、サツキをベッドまで運んだ。
ベッドまで運ばれて、魔王さまから解放されてサツキは、ほっと息を吐いた。
「では、サツキさん、ゆっくり休んでくださいね。」
カインはベッドに横になったサツキの頭をなでて部屋を出て行った。
しかし、魔王さまはベッドの脇に立ったまま、サツキを見ていた。
「えっと・・・・。」
少し気まずい。
あ、お礼言ってない。
「あの、運んでくれてありがとうございました。もう大丈夫です。」
サツキは魔王に伝えた。
「いや、俺も悪かった。」
魔王の謝罪にサツキはビックリした。
「お前をこの世界に召還しなければ、こんなことにはならなかった。」
サツキは、瞬きした。
魔王って、もっと高飛車なのかと思っていたのに。
謝るなんて。
サツキは、魔王に笑いかけた。
「気にしないでください。最初はビックリしたけど、なかなか体験できることじゃないし。」




