第7章 魔王の秘密 その3(12)
そういわれ、ルディたちはその場を立ち去った。
そこで少しホッとしてリーエは深い息を吐いた。
「で、実際どうなんだ?」
ホッとした所にシュリの言葉が入り込んできた。
心配そうにリーエを伺うルーク。
すこし問い詰める感じのシュリ。
リーエは観念して、話すことにした。
「ええとですね。父様からの定期連絡からですと、一部の熱狂的なファンが行動を起こしたようだということです。」
リーエの言葉にシュリたちは目を瞬かせた。
「熱狂的なファン。というと、どういうことだ?」
「ああもう、だからですね。今私が人とともにいることにヤキモチをやいた魔族たちが私を取り戻そうとちょっとした暴動をおこしたみたいなんですぅ。」
ちょっぴり脱力しながらもリーエはシュリたちに伝えた。
「へ?」
「なるほど。」
「マジか。」
「それはなんとも面白いですね。」
人数よりも多くの声にリーエは、辺りを見渡した。
すると扉付近でオスカーたちがこっそりとのぞいでいるのを発見した。
「ええっ。まさか・・・。」
「ええ、しっかりと聞かせて頂きました。熱狂的なファンですか。大変ですねえ。」
「それよりもリーエが魔王だというのか?」
「魔王って、魔王って。なんでしたっけ?」
「魔王というのは魔族の中でも可愛い魔族がなるものなのか?」
「なんというか、不憫だな。」
いろんな感情の混じった視線を受けてリーエは脱力した。
「まあ、バレてしまったのならば仕方ない。リーエは現魔王だ。だが、おおよそ魔王らしくない。というか、魔王といっていいものか。」
シュリの言葉にリーエはさらに凹んだ。
「ひどいですう、これでもいろいろと頑張ってるんですよお。」
「例えば?」
シュリの一言で皆の視線がさらにリーエへと絞られた。
「ですから、魔王として魔族のお悩み相談とか。人との付き合い方とか。」
「それって、魔王がするべきことなのか?」
リアスの一言に皆は頷いた。
「というか、ほんとに魔王なのか?」
オスカーは半信半疑でリーエに尋ねた。
「一応、ほんとに魔王です。」
魔王であることを信じてもらえないみたいで、リーエは魔王としての威厳を取り繕うことにした。
ひとまず。
が、しかし。
少しばかり偉そうにふんぞり返ってみても、皆の視線が痛いだけであった。
「ううう。魔王であることの証明がこんなにも難しいなんて。」
「とりあえず、リーエさんが魔王であるかどうかは置いておくとして。どうするんですか?魔族の暴動。」
ラルクがとりあえず、まとめた。
「そうですねえ。なんといってもリーエさんが人といることが原因みたいですから、魔族のもとに一時的に帰るということでなんとかなりそうですね。」
「魔族的にはそれでいいかもしれないが、人に対してはどうするんだ?」
「噂がかなり広まってますからね。」
5人は考え込んだ。
ひたすらに、考えてある一つの提案が生まれた。
「あのう、馬鹿げているかもしれないんですが。」
「俺も少しバカなことを考えた。」
「おや、それは楽しそうですねえ。」
ルディはラルクとオスカーの考えた馬鹿げたことを薄々と感づいていた。
「言ってみろ。」
シュリは二人に意見を述べるように言った。
「魔王を誰かが倒したってことにすればいいんじゃないですか?」
「ま、実際どうなっててもわからないだろうしな。」
「確かに、そうですねえ。」
二人の意見にリーエは過去の魔王のことを思い出していた。
事実、魔王は人によって滅ぼされてはいない。
それどころか、元気いっぱいに生きていた。
「だが、世間的には欺けても魔族たちはそれで納得するのか。」
リアスの現実的な意見にリーエは力強く言った。
「なんとかします。一応魔王ですから。」
エヘンと胸をはって言われた言葉だが不安でいっぱいのシュリであった。
「そういうことならば、私に任せてもらおうか。」
突然、リーエの背後から現れたダルシャンに皆は驚いた。
「びっくりした。」
「驚かすな。」
「いやあ、ごめんごめん。でも、気づいている人ばかりだしね。」
リアス、ルディ、ルークの三人をそれぞれ見て、シュリに向き直った。
「魔族のことでご迷惑をかけたようで。」
「いや、こちらとしても対応が遅れて悪かったな。」
そんなシュリに済まなさそうな顔でリーエは、近寄った。
「あのう、魔王としての証明はどうすればいいでしょうか。」
「そこか、そこなのか。というか、そんなこと俺に聞くな。」
「おや、リーエついに魔王としての自覚がでてきたんだね。嬉しいよ。」
ダルシャンとリーエが話を脱線させている間に、シュリたちは話を進めた。
「つまり、人には魔王は倒されたということにして、魔族にはダルシャンさんがなんとかする、ということですよね。」
「ああ、そうだ。だが、今回はなんとかなるとしても、またこのようなことにならないとは言えない。」
「そうですね。ならば、そういうことに対応できるようにしましょう。」
ルディの言葉にシュリは首を傾げた。
「というと、何か策があるのか?」
そんなシュリにルディはニッコリ笑った。
「勇者制度。というものを作ってみましょう。」
「勇者制度?なんだそれは?」
シュリは詳しい説明をルディに求めた。
「つまり、魔王が現れたとなれば人は慌てるでしょう。ならば、定期的に魔王をいう存在を作って倒すことにするんです。もちろん、実際に倒す必要はありません。」
「魔王を作るって?」
あまりにも突飛的な話しにラルクはルディに尋ねた。
「少しわかりづらいですか?我々の手で魔王を倒すということを仕組むんです。そして、魔王を倒したことにすれば、人は安心するでしょう。まあ、世界情勢が不安定なときとか、ちょっと厄介な国をなんとかしたいとかいうときに使ってみるのもいいかもしれまんせんね。」
つまり・・・。
「我々が世界を操るというのか?」
シュリの言葉に皆は一様に黙った。
「そうではありません。我々の活動では限度がありますし、天空神殿の主としても限度があるでしょう?人は安定した生活を求めますが、刺激も求めているんです。」
「ルディくんの言いたいことをまとめるとだね。」
ルディの言葉のあとを引き取ってダルシャンは、話し始めた。
「不和の種をまこうとしている世界的に厄介なことが起きる前に、魔王をいう存在をちらつかせつつ、全てを片付けてしまおうということだろう?」
一度言葉を区切って、少し茶目っ気を出しながら続けた。
「それと同時に人がバカなことを考えて魔族討伐なんてことも行わないように、定期的に勇者という存在をちらつかせて、鬱憤を晴らそうってことだよね。」
そこまで聞いて、リーエはダルシャンに聞いた。
「それって、人の不満を解消するために魔王という存在を使いつつ、世界的に面倒な人たちも一緒にやっつけちゃおうってことですか?」
あまりに簡単にまとめられてダルシャンは苦笑いした。
「そうだよ。でもって、下手に動いて失敗されるよりもこちらから選んで行動してもらうってことかな。」
「とんだ茶番だな。」
ダルシャンの言葉にリアスは辛辣な言葉をはいた。
「では、他にいい策があるのかな?」
「事実を公表すればいいだけではないか?」
リアスの言葉にルークは否を唱えた。
「それはやめたほうがいい。全てを伝えるのは混乱を招くだけだ。魔族が絶対悪ではないということを世界中に知らせることになる。それでは、全世界が混乱するだろう。」
「それは・・。」
リアスはルークの言葉に黙ってしまった。
「まあ、深く考えても仕方ないだろう?」
シュリはリアスに言葉をかけた。
「実際人の歴史は血に塗れている。この勇者制度でもって、血の歴史になりうるであろう出来事を止めることができるのならば、いいのではないかと思う。」
シュリの言葉に皆は黙った。
「そうですねえ、魔族も人も平和が一番です。」
リーエはそういい、皆を見た。
「ええとですね、魔王といっても別に強いわけじゃないんです。ですから、勇者とか来られてもどうしようもないので、できれば来なければいいなあ、なんて思ってたりするわけで。」
リーエのぶっちゃけた言葉にラルクは尋ねた。
「強くないんですか?」
「はい、全然強くないです。」
「でも、先程リヴァイアサンとか喚んでましたけど。」
「お友達ですから、すぐに来てくれるんです。」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんです。深く考えちゃいけません。」
リーエはラルクに力説した。
「とりあえず、そういうことで話をすすめることにするよ。で、今回の勇者候補は君たちでいいよね?」
「まあ、それが妥当だろうな。」
ダルシャンの言葉にシュリは頷いた。
「では、ひとまず王族会議で話をして、討伐部隊を編成するとかいって、お前たちが魔王を倒したってことにすればいいのか。」
「はい、そういうことでお願いしますね。」
「で。魔族の方はどうするんだ?」
シュリの発言にダルシャンはニヤリとした。
「それは、秘密です。」
「おそらく、ろくなことじゃないよな。」
オスカーは一人呟いた。
こうして、勇者制度がひとまず作られて人々の噂からは魔王の話は消えた。
実際には、のんびりと人の世界を満喫しているのだが。
ちなみに。
この勇者制度は、イスカル帝国出身のルーク、ケタム王国出身のラルクとルディ、リンダス皇国出身のリアスとオスカー、それに天空神殿がその管理をすることとなる。
なぜならば。
ルークはイスカル帝国、ルディはケタム王国、リアスはリンダス皇国の後継者であったためである。
それぞれが社会勉強として、軍などに所属していたという話を聞いたのは、勇者制度ができてからのことであった。
のちにミシアナの大樹に集まれるのは、勇者制度を知っているものだけに限られることになり、彼らはそれぞれ次のように呼ばれた。
リーエは、水の乙女
オスカーは、炎の騎士
ラルクは、風の王
ルディは、大地の賢者
リアスは、光の帝
ルークは、闇の君主
総じて、「天のゆりかご」と呼ばれた。




