第7章 魔王の秘密 その3(11)
一体どこにいっているのか。
「ああ、それならちょっとした迷路の中にいるみたいだよ。」
その質問にリヴァイアサンが答えた。
「なんでですかぁ?」
「さあ、よくわかんないけどちょっと楽しそうだよ?」
「分かるんですか?」
「うん、一応ね。」
おちゃらけているが一応リヴァイアサン。大海の主である。
「まあ、魔王の魔力を渡してなんとかなったっていうのは言えないでしょ。迷路をクリアしたってことで、交渉できたことにしたらどうかな?」
「今、なんと?」
「あ・・・。」
ちょっぴり口が滑ってしまいリヴァイアサンが言ってしまった一言にルークが気がついた。
「今、魔王の魔力とか言わなかったか?」
「しっかり聞いてるねえ。」
「ど、どうしましょう。」
「まあ、バレちゃったら仕方ないでしょ。話しちゃおう。」
軽くリーエにウィンクしてリヴァイアサンはルークに向き直った。
「よく聞いてね。でも、他の人には内緒で。」
「ああ、分かった。」
「実はリーエは魔族の王である魔王なんだ。でも、まだ就任したばっかりでね。別に悪いことをしているわけじゃないんだ。偏見を持たないでほしいんだ。」
リヴァイアサンは少し真剣な表情でルークを見た。
「それはわかった。だが、なぜだ?魔王ともあろうものが俺のために?」
「それは魔王じゃなくってリーエだからってことかな。多分ナハマットならば絶対しないから。」
「当たり前だ。なぜ人間のためにそんなことをしなければならん。」
少しムッとしたナハマットにリーエは近付き、ニッコリと笑った。
「でも、私には優しいですよね?」
「当たり前だ。」
近づいてきたリーエに満面の笑みをたたえてナハマットは言った。
「で、君の聖霊との代償なんだけど、ぶっちゃけリーエの魔力を渡すことでほとんどの代償をまかなっているんだ。君の見える力を渡すっていうのは、ほんの一部なんだよ。」
そこまで聞いてルークは目を閉じた。
「やはりな。ルディたちが何やらしているのはわかっていたが、そう簡単に交渉できるとは思っていなかったから。ちょうど良かったのかもしれん。」
「何がよかったんだ?」
「いまそれを知ることができたことだ。リーエ、お前に俺の全てを預ける。」
「はえ?」
「好きなようにしてもらって構わん。」
「ほえ?」
「俺のこれからはお前とともにある。」
「ふおおおおおおお。」
いきなりのルークの発言にリーエは混乱した。
「えっと、あの、その。」
「言いたいことがあるのならば、言ってくれ。全てを受け入れる。」
まっすぐルークに見つめられてリーエは顔が赤くなっていた。
「おい、ちょっと待て。その発言は許さんぞ?」
「いやいや、こちらの言い分もあるよね?」
少し離れて聖霊と話していたダルシャンもいつの間にかルークの近くにやってきていた。
「言葉どおりだ。リーエがいなければ俺は今ここにはいない。」
誰が相手でも怯まないッといった態度でルークは二人に対峙していた。
「なんだかとっても面白そうだけど、そろそろ他の連中が出てくるから、そこまでにしといて。」
そんな三人にリヴァイアサンが声をかけた。
「くっ。ならばあとでゆっくりと話すとしよう。」
ナハマットがそういうとダルシャンも少し落ち着いたように、深い息をはいた。
「ああ、そうそう。リーエが魔王だってことは言わないようにね。」
リヴァイアサンはルークに念を押した。
「わかっている。」
そんな会話をしていると、暗い渦が現れた。
そしてそこからルディたちが出てきたのだった。
「おや、ルーク、起きているんですね。」
「おお、ホントだ。」
「良かったですね。」
「・・・・。」
「ってか、なんか空気悪くないか?」
それぞれが出てきてリーエたちを見た。
「ええと、とりあえず皆さん無事でよかったですぅ。」
ひとまず皆の無事をみてホッとしたリーエであった。
「じゃあ、リーエ。用はすんだみたいだから帰るよ。」
そこにダルシャンの一言。
「ああ、はい。ありがとうございました。」
リーエはダルシャンに向かいペコリとお辞儀した。
「うん、じゃあね。また何かあったら言うんだよ?」
そういって、リヴァイアサンとナハマットを引き連れて帰っていった。
「で、ルーク体調はどうだ?」
とりあえずシュリは起きているルークにたずねてみた。
「はい、もう大丈夫です。ご迷惑をおかけしました。」
そういったルークにシュリたちは少し驚いていた。
「なんか雰囲気違う感じですが。」
「なあ、やっぱりどっかおかしいんじゃないか?」
「まあまあ、いいじゃないですか。ひとまずこれで大丈夫ですね?」
そういってルディはちらりとリーエを見た。
少しドキっとしたが、リーエはにっこり笑っておいた。
「で、なぜ聖霊がいるのだ?」
そんなリーエの隣にいた聖霊にリアスが声をかけた。
『不本意じゃが、少しばかりこちらにいることになっておる。』
それを聞いて一同はポカンとした。
「ええと、どういうことでそうなったんでしょうか?」
ラルクの質問に一同は大きく頷いた。
『楔じゃ。』
「いや、もう少し説明がほしいんだが。」
オスカーはさらに聞こうとした。
が、シュリがそれを止めた。
「まあ、ダルシャン辺りが何かしたんだろう?これ以上はやめておけ。」
「まあ、あんたがそれでいいのならいいが。」
オスカーはそういって不本意ながらも納得することにした。
こうして、リーエたちの初の仕事は無事といえるかどうかわからないが終了した。
そしてシュリは臨時の王族会議を開き伝えた。
案の定、勝手なことするな、と言われたシュリはこういった。
「何か不服があるのであれば聞く。もちろん、実力が伴わないというのであれば、試せばいい。」
この言葉に王族たちは何人かの腕利きをリーエたちに立ち向かわせたが、簡単に蹴散らされてしまったため、実力をためそうというものはいなくなった。
「ああ、それと彼らは天空神での主である私を護るのと同時に世界での難解な案件に取り組むことになる。ゆえに名をつけた。」
「名は・・・。」
それから五年の月日が流れた。
リーエたちも世界中から集まってくる難解な案件に取り組みつつも、それぞれが楽しんでいた。
ミシアナ湿原に作られたラジの木を元にしたリーエたちの拠点。
リーエたちは、その拠点をミシアナの大樹と名付けた。
定期的に集まり、自らが知り得た情報を言い合いそれに対応する。
そんな日々が続いていたある日。
ルディの一言でその場は混乱した。
「そういえば、知っていましたか?魔王が現れたらしいですよ?」
「えっ?」
「本当ですか?」
「なんでだ?」
そして、リーエは。
「どういうことですかぁ?」
「この間の仕事で大雨対策の案件があったでしょう?」
ルディは皆の顔を見ながらいった。
その問いに皆は頷いた。
「その時に、魔王さまのためにとか言っている魔族がいましてね。まあ、結局その魔族が大雨の原因だったんですが。」
「魔王のためか。」
リアスは少し考え込むように腕をくんだ。
「そういえば最近魔族の動きが活発化してるみたいですよ。」
思い出したかのようにラルクも最近の魔族の動きに関して話した。
「まあ魔王っていっても勇者だか聖女だかに倒される運命だよな。」
オスカーは過去の魔王の存在を思い出しながらつぶやいた。
そんな中、少し心配そうにリーエをみるルーク。
その視線を感じてリーエは、首を小さく横にふった。
「今のところ目立った動きはないようですが、このままの状況が続くとは思えませんし。どうしましょうか?」
ルディは意見を求めた。
「ひとまず情報収集をすべきだろう。魔王といっても姿さえわからないのではどうしようもない。」
リアスはルディに答えた。
「まあ、そうなるよな。ってことは、片っ端から魔族を捕まえて口を割らせるか。」
少し物騒なことになりそうな予感にリーエは口をはさんだ。
「あのう、ちょっといいですか?」
他の5人はリーエに顔を向けた。
「ええとですね。ちょっとばかり内緒にしていたんですが。」
そこまでいって少し悩むリーエ。
「なんでしょう?」
優しく問いただすルディに、リーエは決心した。
「実は、魔族なんです。」
「はい、知ってますよ。」
「・・・・・。」
「どうかしましたか?」
「まあ、今更だよな。」
「そうですね、結構前から知ってましたから。」
「だからどうした。」
それぞれの反応にリーエは少し停止した。
「でも、リーエさんは人に危害を加えることはなさそうですし。今までもいろいろと人のために頑張ってもらってますからね。」
その言葉にリーエは少し罪悪感を感じた。
魔王であることを、まだ隠している。
しかし、この場でいってもいいものかどうか、悩んだ末リーエはもう少しだけ内緒にしておくことにした。
さらに月日は流れて。
リーエが魔王であることを隠している間にも、人の噂の中に魔王のことが多く含まれるようになっていった。
そのたびに、リーエは皆に話そうとしたが、なかなか言い出すことができず一人悩んでいた。
魔王の話が出た時点でダルシャンにはどうするべきか、聞いたところ今しばらくは内緒にするようにといわれていた。
「少しばかりこちらでも調べて見るから。それまでは魔王であることは内緒にしておくこと。いいね。」
そう言われてしまえばリーエもそう反発することもできず。
ひたすら悩んでいた。
しかし、そんな日々に終止符を打つような出来事が起こった。
魔王のためにと決起した魔族が現れたのだ。
「おい、聞いたか?魔王至上主義ってやつが現れたらしいぞ?」
「魔王至上主義?なんですか、それは?」
ラルクはオスカーの問いに疑問で返した。
「なんでも、魔王さま第一主義らしくってな。魔王のためならなんでもやるって魔族たちらしいぞ。」
「で、具体的には?」
リアスはオスカーに尋ねた。
「はい、なんでも現在魔王が人間に肩入れしているらしくそれが気にくわないとかで。」
「は?どういうことだ?」
オスカーの答えにリアスは首を傾げた。
「実は魔王は人間といっしょにいるらしいです。」
その答えにリーエはドキっとした。
「人間と一緒だと?つまり魔族とは別行動しているということか。」
「そうらしいです。」
「でもなんで別行動してるんでしょうか?」
「何か企んでいるのやもしれん。」
「企む、ですか。」
意味深にルディはリーエを見た。
「あ、そうだ。リーエ、何か知ってるか?」
オスカーはそれに気づかずリーエに尋ねた。
「え、えっとぉ。」
どうしたものかと悩んでいるところにオスカーに尋ねられリーエは戸惑った。
「どうしたんだ?」
「というか、魔王ってどんな姿なんでしょう?誰も知りませんよね?」
ラルクとオスカーに責め立てられるようにされて、リーエは途方にくれた。
「おい、そんなにいきなり聞いても。」
そんな中、ルークがリーエをかばうように前に出た。
そんなルークに感謝しつつもリーエはどうしたらいいのかわからなくなっていた。
そこに。
「おい、その件に関しては現在調査中だ。」
シュリが現れた。
「そうだったのですか。」
リアスはシュリの登場に少し意図的なものを感じたが、あえて問うことはやめておいた。
「それよりも、2つばかり厄介な仕事がある。聖霊に聞いて行ってきてくれ。ルークとリーエは少し話がある。」




