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第7章 魔王の秘密 その3(8)


「そうだな、そうしてもらおうか。」


シュリはまず金髪の若者に声をかけた。


「では、名前と年齢に主な属性魔法でも教えてもらおうか。」


シュリはそういい、自己紹介を促した。


「リンダス皇国の第7歩兵部隊に所属しているリアスだ。年齢は24で属性は光だ。」


金髪の若者がそう答えた。


「んじゃ、俺だな。俺もリンダス皇国の第8歩兵部隊に所属しているオスカーだ。年齢は22歳で属性は炎になる。よろしくな。」


続けて赤髪の青年も答えた。

その隣にいた元気な茶髪の少年が続けた。


「えっと、ケタム王国で傭兵をやっているラルクといいます。年齢は16歳で属性は風になります。」


そういいラルクはペコリと頭を下げた。


「おや、ラルク君とは同じ国みたいですね。私はケタム王国で宮廷魔導師をやっておりますルディと申します。年齢は多分、一番上でしょう。28歳です。属性は地です。」


ルディはそういって、その隣に座っている男性を見た。

その視線を受けてため息をついて答えたのは、黒髪の青年だ。


「イスカル帝国第2魔法部隊のルークだ。24歳の闇属性になる。」


そこまでいって、シュリは満足げに笑った。


「では、最後にリーエ、お前だな。」


「はい、えっとリーエです。歳は16歳で水属性です。よろしくお願いしますね。」


リーエはニッコリ笑いみんなを見た。


「リーエさんですか、ちなみに国はどちらなんですか?」


ルディはリーエを見て尋ねた。


「国ですか、えっとぉ。」


そこでリーエはシュリが首を小さく横に振るのを見た。

魔族だとバレないようにしなくてはいけないことを思い出した。


「国はですね、ええと。」


言いよどむリーエに5人は不思議な顔をした。


「何か言えない事情でもあるのですか?」


ルディはそうリーエに聞いた。


「言えないというか、なんというか。」


「リーエは捨て子だったのだ。だから、国に属してはいない。天空神殿で生活しているのだ。」


シュリはリーエを見やりながら他の5人に聞こえるように言った。


「そうだったのですか。それは失礼しました。大変だったのですね。」


ルディの言葉にリーエは、とりあえず頷いておいた。


「これで自己紹介は終わりだな。で、任務なんだが。」


微妙な空気の中、シュリは本題に入った。

そんなシュリを6人はじっと見た。


「死せる大地の浄化だ。」


そう言ったシュリを5人の男たちは、難しい顔で見た。


「それは、あの死せる大地のことか?」


リアスがシュリに確認をした。


「そうだ。はるか昔に魔族と戦うためにハクロ帝国が毒をまいたせいで、何も育たなくなったあの大地のことだ。」


シュリはそういうとリーエを見た。

しかし、リーエは首を傾げシュリを見た。

わかってないのか・・・。

シュリはリーエが知らないことに少しほっとした。

魔族だけが悪いのではない。人も同じように悪いのだ。

人にしろ魔族にしろ悪しき心をもっている。

それをリーエには知られたくない、とシュリは心の中で思った。


「しかし、あそこは何回か大規模な浄化作戦が行われていただろう?で、結局成果なしだったはずだ。」


オスカーは記憶を頼りにシュリに聞いた。


「だからこそ、だ。それを少しでも成功させればお前たちの実力を示すことになるだろう?」


「だがなあ。」


オスカーは眉間にしわを寄せながらリアスを見た。

リアスもオスカーと同じように眉間にシワを寄せて考えていた。


「少しは可能性はあるのではないでしょうか。」


そんな中、ルディが一言呟いた。

その言葉で皆はルディに顔を向けた。


「ここには全属性が揃っていますし、あれから何十年も経っています。ならば試してみるのも一興かと。」


「頼めるか?」


シュリは不安そうに聞いた。


「それが任務ならば仕方ないでしょう。」


リアスはシュリにため息をつきながら言った。


「護衛部隊を辞退することは可能なのか?」


そんな中、ルークはシュリに原点に戻り尋ねた。


「辞退?したいのか?」


「面倒なことはゴメンだ。」


ルークはシュリにキッパリと言い放った。


「今よりは自由だと思うが?」


シュリはルークの目を見ながら言った。


「なるほど、全て調査済みか。」


その真意をくみとりルークは頷いた。


「分かった。その任務引き受ける。」


そういうと、ルークは席を立った。


「どこへ行く?」


立ち上がったルークにリアスは質問を投げかけた。


「死せる大地の浄化だろう?少し試してみたいことがある。」


そういい、部屋を出ていった。

あっけに取られる他のメンバー。


「とりあえず、行きましょうか。」


ルディもルークの後を追うように席を立った。


「ひとまず現在の状況を見てみないとどのような対応になるかはわからないだろう。」


リアスもそういい席を立った。

こうして六人とシュリは死せる大地へと赴いたのであった。

移動の魔法を使い、死せる大地へと到着した一行。

見るも無残な姿をみて、暗い表情を浮かべた。


「以前来たときと何も変わりませんね。」


ルディは眼前に広がる光景を目にしながらつぶやいた。


「ルディさんは以前来たことがあるんですか?」


リーエはルディに尋ねた。


「はい、前回の大規模浄化作戦に参加してましたので。まあ、浄化の魔法をかけても表面だけを浄化するだけでしたが。」


その答えにリーエは考え込んだ。

長い年月が経ったことで大地の奥底まで毒が染み渡っているようだ。


「となると、切り離して浄化になるのかな?」


ぼそぼそと喋っていたリーエにラルクが近寄ってきた。


「何かいい考えがあるの?」


「うーん、汚染された大地の切り離し、で毒の除去をしてからの浄化になるかなって。」


「それって結構大変じゃないの?」


「結構どころか厳しいかも。」


自分で言っておきながら実行できる可能性はかなり低い。

他のひとはどう思っているのかとリーエは他の人に目を向けた。

すると。

ルークが何やらブツブツとつぶやいていた。

なんだろう?何か魔法を使ってる。

そこに興味を示したリーエがルークに近寄った。

近寄ってきたリーエに気づかずに魔法を唱えているルーク。

その様子に他のみんなも注目していた。

そして。

ルークの全身から黒い霧が溢れだした。


「いきなりなんですかぁ?」


驚いたリーエは大きな声を上げた。


「魔力の解放か?」


リアスはルークの様子を見て呟いた。

しかし、ルークから溢れでる黒い霧は留まることを知らないように徐々に広がっていった。


「どこまで広がるんでしょう?」


ラルクは少し離れた場所でルークを見ていた。

そして、死せる大地を覆いつくしたかのように広がった黒い霧。

辺りは薄暗くなっていた。


「闇よりも暗きモノ 黄昏よりも暗きモノ 忘却の海にたゆたいし偉大なる王よ 我が前に立ちふさがりし愚かなるものに 裁きをくだせ 滅びの鐘を鳴らし全てを虚無へと導かん」


呪文を唱えるとルークは魔力を解放した。

すると、凄まじい爆風が巻き起こった。

リーエたちは咄嗟に結界をはったが、間に合わずかなり吹き飛ばされた。

そして爆風もおさまり、舞い上がっていた砂埃も落ち着いてきた。

吹き飛ばされた皆がゆっくりとあたりをうかがうと。

死せる大地が消え失せていた。


「なっ、これは?」


「あり得ないだろ?」


「ふぇぇぇ、どうなっているんですかぅ?」


驚き目を見開いていると、前方から誰かが歩いてきた。


「後は頼んだ。」


それはルークだった。

皆の前まで歩いてくると、一言呟きゆっくりと倒れた。


「え、大丈夫ですか?」


「魔力の使いすぎだ。それと、聖霊の仕業だろう。」


リアスはルークを見てため息をつきながら言った。

倒れたルークに一先ず脱いだマントをかぶせて、顔をのぞきこんだ。

顔色は悪く、息も細かった。

その症状に眉間にシワをよせながら、リーエは癒しの魔法を使いながら、リアスを見た。


「えっと、聖霊?」


聞きなれない言葉にリーエは首をかしげた。


「でないと、ここまでの威力にならないだろうな。」


オスカーはため息をついた。


「となると、どのくらいになるんでしょうか。」


ルディはルークを見ながらポツリと呟いた。


「わからん。が、覚悟のうえだろう。」


まわりの会話についていけないリーエは少し顔色の戻ったルークにホッとした。


「とりあえず、この状況を何とかしないか?」


シュリに言われて5人は消え去った死せる大地の後をみた。


「どれくらいの深さがあるんでしょうか?」


ルディはそういうと消え去った大地との境界線まで歩いていった。

その後をラルクも追った。

リアスとオスカーは、ルークをじっと見ていた。


「あの、聖霊ってなんですか?」


リーエはリアスに尋ねた。

そんなリーエにため息をつきながらリアスは説明してくれた。


「聖霊とはこの世界の安定と調和を司る肉体を持たない生命体のことだ。」


「肉体を持たない生命体?」


「平たくいえば、別次元の生き物ってとこかな。」


オスカーがリアスの説明に付け加えた。


「その聖霊がルークさんに何かしたんですか?」


「ルークが聖霊の力を借りたんだ。」


リアスは眉間にシワを寄せながら言った。


「聖霊の力を借りると、ああいう大きな魔力を放つことができるんですか?」


「聖霊次第だ。聖霊が気に入らなければ力を借りることはできない。気に入ってもらえても、力を借りるには代償が必要になる。」


「つまり?」


「与えられるものが大きくなるほど代償も大きくなるんですよ。」


大地との境目を見に行っていたルディとラルクが戻ってきていた。


「ということは。」


「代償は大きなものになるでしょう。」


悲しそうな顔でルディはリーエに答えた。


「あのぅ、消えた大地はどうするんですか?」


ラルクはチラリと後ろを見ながら言った。


「深さは?」


オスカーがルディに尋ねた。


「わかりません。底がみえないんですよ。」


「確か昔は湿原でしたね?」


ルディは少し考えながら言った。


「はい、確かミシアナ湿原です。」


ラルクはルディに答えた。


「よく知っていましたね。そうでした。ミシアナ湿原。ヒカリゴケが豊富にあったらしいですよ。」


ルディは思い出したように付け加えた。


「つまり、どうするんだ?」


シュリはルディに尋ねた。


「そうですね、すべての大地を復活させるのは難しいですから、大量の水と少しの大地にしましょうか。」


「島、みたいな感じか?」


ルディの言葉にオスカーは首をかしげて聞いた。


「ええ、そうです。水が得意なのはリーエさんでしたね?」


ルディはリーエを見た。


「あ、はいぃ。得意といいますか、他の属性が苦手というのもあるんですぅ。」


すこしションボリしながらリーエが答えた。


「では、この消えた大地の後を水で埋め尽くすことはできますか?」


ルディの言葉にリーエは少し首を傾げ死せる大地の後を見に行った。

そして、その跡地をみて戻ってきた。


「はい、なんとかなりそうです。」


ニッコリ笑ってリーエが答えた。


「おいおい、本当か?」


オスカーはチラリと跡地を見てリーエに尋ねた。


「ええと、下の方を氷にしてもいいですよね?」


その言葉にシュリはピンときた。

あいつか。

シュリはリーエに近づいた。


「おい、まさかはた迷惑なおじさまとやらを呼ぶんじゃないだろうな?」


「ふぇぇぇ、なんでわかったんですか?」


リーエの反応にシュリはため息をついた。


「呼んでもいいがコッソリとやってくれ。」


「というか、皆さん聞いてますよ?」


小首を傾げてリーエがいうとシュリはまわりを見た。

すると、4人がシュリとリーエのやり取りを見ていた。


「あのう、はた迷惑なおじさまというのは?」


ラルクがシュリを見ながらもリーエに聞いた。


「とっても強いんですよぉ。」


答えになっていない。

そこにいた皆がそう思った。


「はあ、バレたなら仕方ない。とりあえず、この場をなんとかしてくれ。」


シュリは諦めたように言った。


「ええと、ルディさん。ということでいいですか?」


「はい、下が氷で上が水ですね。大丈夫ですよ。お願いしますね。」


ニッコリ笑いルディがリーエに言った。


「では早速。」


皆から少し離れてリーエが大きな声で叫んだ。


「大変ですぅ、叔父様。助けてくださいぃ。」



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