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第7章 魔王の秘密 その3(6)


「合格者は27人ですね。」


「そうだな。よし、5日後に最終試練を発表する。その旨伝えてくれ。」


「はい。わかりました。」


恭しくお辞儀をされシュリは部屋を出た。


「さて、最終試練はどうするかな。」


口元が緩むのをシュリはおさえきれずに、ニヤニヤしながら自室へと歩いていった。

自室にはいると椅子に座りシュリは何かを書きはじめた。

10分ほどで書き終え、じっくり見て満足げに頷くとその用紙を引き出しにしまった。

そして、最終試練について考えはじめたのだった。


そして。

5日後。

大会議室には第4の試練を通過した27人がいた。


「最終試練はなんですかねぇ。」


「ふむ、そろそろ実力を見るんじゃないか?」


「それって、戦うってことですか?」


「まだわからんが、そうじゃないのか?」


リーエはダルシャンの言葉に眉をひそめた。


「簡単なものがよかったのに。」


リーエはポツリと呟き、口をとがらせた。

そのとき。


「待たせた。」


ガチャリと扉か開き、シュリが部屋に入ってきた。

そのまま部屋を見渡し人数を確認すると、シュリは頷いた。


「よし、では、これより最終試練を行う。」


その言葉に会場は静まり返った。


「内容は、一番得意な魔法を見せてくれ。」


シュリが告げた言葉に皆は目を見開いた。


「ただし、天空神殿の闘技場で行えるものとする。」


得意なこと。

リーエは考えた。

なんだろう?

水魔法が得意なリーエ。

雨を降らせる、はダメだよね?

あとは霧を発生させる。

でも、真っ白になればよくわからない。


「ふぇ、どうしましょう?」


顔に手をやりオロオロしているリーエに、ダルシャンはいった。


「怪しいからやめなさい。」


しかし、リーエの耳にはダルシャンの言葉は入っていなかった。


「では、今から試練を行う。闘技場に移動してくれ。」


シュリに言われそれぞれ席をたち、部屋を出ていった。

残ったのは、リーエとダルシャン、シュリの3人である。


「どうした?質問か?」


二人にシュリは聞いた。


「いえ、特には。ああ、そうだ。ちなみにこの試練でどうやって優勝を決めるんですか?」


「人気投票だ。一番気に入ったものに投票してもらう。」


「好みで分かれそうですね。」


「仕方ないだろ?簡単なものがいいっていうから。」


チラリと、リーエを見てシュリはいった。


「まあ、それならば仕方ありませんね。」


そして、ダルシャンは部屋を出ていった。


「お前は何をするんだ?」


シュリはリーエにゆっくり近づき聞いた。


「えっとぉ、とりあえず派手にやってみます。」


「派手に、ね。」


「はい、派手に。」


よくわからない答えにシュリは呆れたが、リーエらしい答えに微笑んだ。


「ま、頑張ってくれ。」


こうして最終試練が、始まるのであった。

闘技場にはすでに大勢の観客が試練開始を待ち望んでいた。


「それでは、最終試練を開始する。一応、闘技場と観客席の間には結界をはった。が、被害がでないように気を付けてくれ。」


そして、シュリは懐から紙を取りだし読みはじめた。


「ルールは闘技場が壊れない程度の一番得意な魔法を披露とすること。それを見た観客が全員が終わった後に一応よかったと思う人物に投票してもらう。その投票が一番多かったものがこの国別対抗戦の優勝者とする。」


ここで一度口をとじ、会場を見回した。

特に反応がないため続きを読みはじめた。


「なお、優勝したものには望みの品を与える。頑張るように。」


シュリの言葉に出場者たちは歓喜の声をあげた。

優勝という、名誉。

それを勝ち取るための対抗戦であると説明していたからである。

優勝賞品のことを伝えやる気を出させて実力を発揮してもらう。

それがシュリの狙いでもあったのだ。


「では、一番から順に披露してくれ。」


そういい、シュリは闘技場から観覧席へと移動した。

そして、最終試練が始まった。


一番手は、黒髪の男性。

腰に剣を指しており剣士のようであった。

中央までやってくると、男性は一礼して剣を抜いた。

陽の光に反射してきらめく剣。

何が始まるのかワクワクしてまつ観客たち。

それに答えるかのように、剣を振りかざすと刀身が蒼き炎に包まれた。

会場からは、驚きの声が響き渡った。


男性はその声を断ち切るかのように、剣を上から下へと振り下ろした。

そして、そのまま右になぎ払い、鋭く突く。

そう、男性は蒼き炎をまとった剣を用いた剣舞を披露していたのである。


「キレイな剣舞ですねえ。」


リーエは呟いた。

鋭く操り、時にはゆっくりと。

強弱をつけて剣を自在にあやつり、人々を魅了していった。

時間にしてはそれほど長いわけでもないが、剣を鞘にもどして一礼する男性をみて、人々は感嘆の吐息をもらしたのであった。


そして、男性が闘技場をあとにすると続く二番手は、可愛い女の子であった。


「二番、ミリンダ行きまーす。」


大きな声で自己紹介すると、おもむろに両手をあわせた。

その間にはまばゆい光が生まれていた。

その光はだんだん大きくなり、両手では収まりきらないほどになった。

するとミリンダと名乗った少女は、その光を天高く放り投げた。

光は勢い良く天へとのぼり、弾けた。

弾けた光が七色の光となり、地上へと降り注いだ。

その美しさに人々は、しばらく頭上を仰いだままであった。


「ありがとーございました。」


ミリンダがそういうと、光は消え失せた。

名越惜しげに頭上をみていた人たちも地上へと目線を移した。

それをみて、ニッコリ笑ってミリンダは闘技場をあとにした。

さて、次は誰がどんなことをしてくれるのか、ワクワクドキドキしながら、三番手が入ってくるのを会場の人々は待った。


そして、三番手が入ってきた。

厳つい顔に大きな身体の男。

少し怖そうな雰囲気が会場を静かにした。

男は中央までくると、フーッと息をはいた。

そして、足を肩幅に開きゆっくり腰を落とした。

両手は拳を握り右手は下にむけ、左手は腰の辺りにあった。

ゴクリ、と誰かがノドを鳴らした瞬間。


男は大声を発して、右手を引き上げ地面にむかい叩きつけた。

ドゴーン、と大きな音をたて闘技場が真っ二つに割れた。

砂煙がモクモクと立ち上ったが、男がスッと立ち上がると風が吹き荒れて砂煙がはれた。

男は一度頷いて何事もなかったかのように、闘技場から出ていった。


「派手にしたなぁ。」


そんな闘技場に四番手にあたる若者が現れた。


「んじゃ、やってみようか。」


クスリと笑い若者は両手をひろげた。


「母なる大地よ、偉大なる賢者の名のもとに新たなる姿を現せ。大地に住まう精霊よ、我に力を貸せ。傷つきしものに再生の力を与えよ。」


若者の声に誘われるように壊れた闘技場は、地響きを立てながらゆっくりと元の形に戻っていった。


「では、改めて。風の精霊よ、我がもとに集まれ。集まり躍り狂え。激しく荒れ狂え。」


そして、次の言葉で風が荒れ狂い竜巻となった。

闘技場にそびえ立つかのような巨大な竜巻。

人々はその恐ろしさに沈黙した。

しかし、若者が一言つぶやくとそれは姿を変えた。


「舞い踊れ。」


その言葉どおりに荒れ狂っていた竜巻が徐々に消え失せ、小さな竜巻へと変化した。

小さな竜巻は闘技場をぐるっと一周りすると消えたのであった。


「こんなものかな。」


首を小さくかしげて若者は観客に一礼すると、闘技場を去った。


「ふええ、皆さんいろんなことができるんですね。」


その様子を闘技場脇の小部屋で見ていたリーエは、考えた。

巨大な水鉄砲でもしようかと思っていたが、このままではインパクトにかけてしまいそうである。


「むうう、どうしましょう。水だけだとつまらないかもしれないですねえ。でも、他の属性はあんまり得意ではないですし。」


腕組みをしてウンウン唸っているダルシャンが隣にきた。


「リーエ、いい加減落ち着きなさい。」


頭をポンっと叩かれリーエはダルシャンを見た。


「でもぅ、落ち着かないんですぅ。」


「焦っても何も変わらないよ。それよりもちょっとは楽しんでみなさい。」


ダルシャンの言葉にリーエは首をかしげた。


「楽しむ、ですか?」


「ああ、折角こんな舞台に立てるのだから皆をあっと言わせるようなことを考えてごらん?」


「むぅ、難しい。」


「では、リーエ。君は何が一番楽しいんだい?」


「スイーツを食べてるときですね。」


その答にダルシャンはリーエに冷たい視線を送った。


「冗談です。んと、綺麗なものや可愛いものを見たときです。」


「ならばそれを皆に見せてあげてごらん。ちょっと派手にしてね。」


フムと腕組みをして頭の中で考えてみる。


「なんとか、なるかも。」


リーエの言葉にダルシャンはニッコリ笑った。


「もう、大丈夫だね。では、私も頑張ってくるよ。」


ダルシャンはそういうと、もう一度リーエの頭をポンと、叩いて闘技場に歩いていった。

ゆっくり歩いて闘技場に足を踏み入れると、ダルシャンは周りをぐるりと見た。


「では、少し頑張ってみましょうか。」


ダルシャンはそういうと手のひらに小さな火の玉を生み出した。

ふわりと浮かんだ火の玉を闘技場の真ん中辺りに漂わせた。


「では、始めましょう。」


ダルシャンはそういうと右手を火の玉に向けた。

次の瞬間、赤い火の玉が青く変わった。


「次。」


ダルシャンがそう呟くと、さらに黄色く変わり。


「次。」


また今度は緑へと変わった。

次はどんないろに代わるのかワクワクしていると、


「次。」


黒い火の玉へと変わった。

それを見てダルシャンは右手を握り締めた。

黒い火の玉は、ダルシャンに促されるように小さくなっていった。

そして、消えてしまった。

それを見てダルシャンは、声をあげた。


「目覚めよ、五色の賢者。」


すると消えたはずの火が再び現れた。

しかも今度は、変化した色の火の玉がそれぞれ浮かんでいた。

火の玉は少しずつ形を変えていき、やがて鳥の姿をとった。

闘技場に現れた五色の火の鳥。

優雅なその姿に観客たちは見とれた。

ダルシャンはいつの間にか下ろしていた右手を勢いよく上に振り上げた。


「舞い上がりて癒しを。」


火の鳥たちは上空へと昇り翼をはためかせた。

翼からキラキラと光がこぼれ、観客たちに降り注いだ。

降り注いだ光を浴びた観客たちは、お互いが淡く光っていることに気づいた。

その光は徐々に消えていくと、体の内側がポカポカしていた。


「これは。」


シュリもこの光を浴びていて、ちょっと不思議な感覚に襲われていた。

じっとしていられない。

そんな感覚に戸惑いを覚えながらも決して不快感はなかった。


「では皆様、ごきげんよう。」


闘技場でダルシャンがそういうとその感覚は薄れていった。

少しもの足らない感じがからだを支配していた。


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