第7章 魔王の秘密 その3(4)
そして、
「第三の試練突破、ご苦労であった。次の第四の試練はあるものを持ってきてもらうことになる。」
あるもの。
「なんですかねえ。」
「わからんが、簡単なものでないことは確かだろう。」
リーエとダルシャンが小声で話した。
「期間は明日より20日間。その間にあるものをこの天空神殿まで持ってきてもらう。採点は早さ、正確さ、そして保存状態の三点で行う。心してかかるように。」
「保存状態ってことは、生き物何でしょうか?」
「生き物だけとは限らん。」
ダルシャンはシュリを見た。
すると、その視線に気づいたのかシュリもダルシャンを見た。
そして、意地の悪い顔でニヤリと笑った。
「先ほど渡した水晶は採取した後に天空神殿への転送装置となる。割ればすぐさまここに戻ってくることができる。」
シュリの言葉に会場はざわついた。
天空神殿への転送装置。
つまり、よほど困難な場所にあるものなのだろうか?
はたまた、果てしなく遠い場所にしかないのか?
それとも・・・・。
「別の意図があるのか。」
ダルシャンは小さくつぶやいた。
そして、シュリは告げた。
「第四の試練、あるものとは。」
ゴクリと喉がなった。
「レベル5の銀の宝珠だ。」
レベル5の銀の宝珠。
その言葉に会議室は静まり返った。
「考えたな。」
「ちょっと厳しいですねえ。」
「リーエ、お前ならばできるだろう?」
「ええっと、まあ、できますけどぉ。あそこはちょっとぉ、いろいろあるんですよ。」
「あの、質問してもいいでしょうか?」
一人の人物がシュリに対して質問した。
「ああ、なんだ?」
「すいません。自分はライオットと言います。失礼ですが、レベル5の銀の宝珠は厳しいのではないですか?」
「別に採ってこいと言っているわけではない。作ってもいいのだぞ?」
実は、銀の宝珠は魔法具を作ることできる材料なのだ。
入手ルートは3つある。
一つは、採取する。
二つ目は、売っているものを買ってくる。
そして、三つ目は自分で作る。
しかし、今回はレベル5である。
一般的にレベル1からレベル3まではお店で購入することができる。
しかし、それもかなり高い値段で取引されている。
レベル5となると、普通のお店ではなくオークション会場での落札となるのだ。
落札となると、法外な金額が動くことになるだろう。
ちなみにレベルとは、その宝珠に宿っている魔力の高さによって設定されている。
つまり、高い魔力を宿しているものほど高値となるのだ。
そして、次に採取。
これはレベルによって採取場所が異なる。
魔力の高い場所には魔物がいたり、不可解な現象がおこるのだ。
そのため、冒険者たちの間でもレベルの高い宝珠の採取は嫌煙されがちである。
そして、レベル5の宝珠のある場所が厄介な場所になる。
この世界の北の果て。
別名、氷王の箱庭。
寒さ厳しい極寒の地である。
その地に行くだけでも防寒対策だけでは収まらず、それなりの装備が必要となるのだ。
さらにそこには氷王と呼ばれる魔物がいると言われている。
そのために、よほどのことがない限りその地に足を運ぶものはいないのである。
最後に自分で作製する。
これが一番簡単に思える。
レベル3程度の銀の宝珠を手に入れ自分の魔力を込めていけばいい。
しかし、純粋な魔力を込めなければ銀の宝珠は割れてしまうのだ。
属性は関係なく、魔力を込めることは難しいとされている。
こうした事情をしるものたちは、シュリの言葉を聞いて頭を悩ませた。
購入か、採取か、作製か。
悩みどころである。
「ああ、ちなみにレベル5の銀の宝珠が15日後にバーレリーで行われるオークションでの出品が決まっているそうだ。数は10個とのことだ。参考にしてくれ。では、検討を祈る。」
シュリはそう言って、会議室を後にした。
「どうしましょう?」
「お前は採りに行くのか?」
「そうですねえ、それが一番早そうですし。」
「そうか、なら大丈夫だな。」
ダルシャンはそういいリーエの頭を撫でた。
「作るか。」
「え、作るんですかぁ?」
「ああ、一番簡単だ。五日もあれば出来るだろう。」
「じゃあ、私も頑張って採ってきますぅ。」
こうして、二人は次の日からそれぞれ動き出した。
ダルシャンは町でレベル3の銀の宝珠を手に入れた。
そして、家に戻りいつも通りに仕事を始めた。
ダルシャンの場合、魔力を込めるということは息をするのと変わらないほど簡単なことであった。
しかし、魔力の量が少ないために時間をかけて魔力を込めなければならなかった。
そして。
数日が過ぎた。
「ああ、出来たな。あとは魔力遮断の入れ物に入れたら完成だな。」
銀の宝珠は近くにある魔力をすいとる。
そのためにそのまま置いておくと、近くの属性魔力はすいとり価値が下がってしまうのだ。
そうならないために、魔力を遮断する何かで保護しなければならないのだ。
「だから、急いで持って帰れるように水晶を渡したのか?」
ひとまず、出来上がった銀の宝珠を机におき、リーエのことを思った。
「さて、我が娘はどうなっているのか。楽しみだな。」
窓の外に広がる景色を見て、銀の宝珠を腕にもちダルシャンは部屋を出た。
そして、水晶を割った。
煌めく光に包まれて、ダルシャンは天空神殿の大会議室にあらわれた。
部屋にはシュリと他に3人の男性がいた。
「早かったな。」
「何人目ですか?」
「ちょうど10人目だ。」
「そうですか。」
シュリと会話して隣にいる男性に銀の宝珠を渡した。
「お疲れ様です。では、採点しますのでしばらくお待ちください。」
銀の宝珠を受け取ったあと、その男性は部屋を出ていった。
「隣の部屋に鑑定士がいるんだ。そこで鑑定してもらう。」
「確か、早さ、正確さ、保存状態でしたか?」
「ああ、早さは日数。正確さはレベル5にきちんとなっているか。そして、属性が混ざっていないかだ。」
「成る程。ならば大丈夫そうですね。」
ダルシャンはニッコリ笑った。
そんなダルシャンを見てシュリは嫌そうな顔をした。
「自信満々だな。」
「当たり前です。レベル5位ならば良く作ってますから。」
ダルシャンの答えにシュリは驚いた。
「ちょっと聞くがレベルいくつまで作れるんだ?」
「過去に作った最高レベルは8ですよ。」
レベル8。
想像がつかない。
「で、それはどうしたんだ?」
「ああ、リーエの髪飾りにしました。」
髪飾り。
売ればどれだけの価値になるかわからないのに。
「変わってるな。」
「そうですか?」
まあ、リーエの親ならばそれもありなのか。
シュリに深く考えるのをやめた。
しばらくすると隣の部屋に行っていた男性が、ニコニコしながら帰ってきた。
そして。
「お待たせしました。ダルシャン様、大変素晴らしい銀の宝珠でした。現時点でトップです。」
その言葉にダルシャンはニッコリ笑いシュリを見た。
ほら見たことか。
目は口ほどにモノをいう。
シュリはそれを体験した。
「ありがとうございます。で、どうすればいいですか?」
ダルシャンは男性に聞いた。
「あ、試練が終わるまでは自由です。何でしたら天空神殿に滞在されても大丈夫です。いかがなさいますか?」
ダルシャンは考えた。
ここにいても仕方ない。ならば、帰って仕事をした方がいいだろう。
「でしたら一度帰ります。また試練終了の頃にきます。」
「了解しました。」
ダルシャンが部屋を出ようとした直後。
部屋が少し冷えてきた。
「おや?少し寒くなってきましたか?」
ダルシャンの言葉にシュリは首を傾げた。
「今は初夏だぞ?」
「ですが、ヒンヤリしてませんか?」
そんな会話をしているうちに、吐く息さえ白くなってきた。
「ちょっとおかしいな。」
シュリは部屋の外に出ようとした。
しかしダルシャンに止められた。
「もしかするとリーエの仕業かもしれません。」
ダルシャンの言葉にシュリは首を傾げた。
「何でだ?」
「実はリーエは銀の宝珠を採りに行ったんですよ。」
「それがどうした?」
「あそこには少し厄介な御仁がいまして。」
ダルシャンは苦笑いしながら続けた。
「リーエのことを大層気に入ってるんですよ。」
「厄介な御仁?誰だ?」
「言いたくないんですが。」
「言え。」
シュリの言葉にダルシャンは深いため息をつき答えようとした。
そこに遠くから声が聞こえてきた。
最初は小さく何を言っているかわからなかったが、近づくにつれ二人の人物が怒鳴りあっていることがわかった。
「ですから、これ以上はだめですぅ。」
「いや、一言言ってやらねば。」
「あたしが言っておきますからぁ。」
「直接言わねば意味がないんだ。」
「でもぉ。」
「諦めるんだな。もう着いたぞ。」
「そんなぁ。」
そこで会話は途切れ扉が開かれた。
そして。
凄まじい冷気が部屋の中に入ってきた。
二人の人物と共に。
「ああ、やはりいたな。ダルシャン、これはどういうことだ?」
「どう、といいますと?」
ダルシャンの答えにその人物は怒鳴った。
「あんな場所にリーエを一人で寄越すなんて。何かあったらどうするんだ?」
「あるわけないですよ。」
「根拠は?」
「あなたの縄張りでしょう。」
その答えにその人物は眉をひそめた。
「おい、誰だ?」
シュリはリーエにこっそり近づき尋ねた。
「ああ、すいません。叔父様です。」
「は?」
「だから、私の叔父様なんです。」
続けて聞こうとしたら、当の本人に話しかけられた。
「そこ、何勝手にリーエと話してるんだ?てか、誰だ?」
何故か問い詰められたシュリ。
「とりあえず、後で話そう。銀の宝珠は?」
人のいるところではヤバそうな気配に、シュリはリーエに聞いた。
「あ、はい。これでいいですかぁ?」
リーエは背負っていたリュックを下ろし、中から自分の頭ほどの塊を取り出した。
「お願いしますぅ。」
シュリは目を瞬かせた。
「これはなんだ?」
「銀の宝珠です。やっぱりだめですかぁ?」
「ちょっと改めさせていただいてもよろしいですか?」
シュリの後ろから一人の男性があらわれた。
そして、リーエが差し出した銀の宝珠をもち隣の部屋に入っていった。
すると、おおっ、これは、素晴らしい、等とかなり興奮ぎみな声が聞こえてきた。
「大丈夫でしょうか?」
「心配しなくても大丈夫だ。なに、ダメだったら私がなんとかしてあげよう。」
ニッコリ笑いリーエの肩に手をおいた男性。
その男性を見上げてリーエは泣きそうな顔をした。
「ダメって。やっぱり大きすぎたのがダメなんですかぁ。」
「そういうことじゃない。それより、何故こちらに来たのですか?」
ダルシャンはリーエの肩にあった手を落とし、自分の背に隠し男性の前に立った。
「リーエが無事に安全な場所に着くか心配だったのだ。悪いか?」
「安全な場所って。危ない場所などないでしょう。」
言外に魔王なんだから大丈夫だ、と伝えた。
しかし、そんなことは通じない。
「危ない場所だらけだろう。こんなにか弱いのに。貴様は鬼か、悪魔か。」
ダルシャンはハァと、ため息をついた。
「で、名前は?何しに来た?」
シュリはそれには動じず聞きたいことを聞くことにした。
「私を知らないのか?貴様、何者だ?」
質問に質問で答えられたが、とりあえず素直に従うことにした。
「この天空神殿の主だ。」
その答えにシュリを上から下までじっくり見てから、リーエの叔父である男性は答えた。
「成る程、ならば私も名乗らねばならぬな。私はナハマット。リーエの叔父だ。」
「で、その叔父上が何でここにいるんだ?試練に参加してないだろう?」
「試練?そんなものに興味はない。だが、可愛い姪っ子のためならばなんでもするぞ。ということで、私に会いに来てくれた姪っ子を送ってきたのだ。」
ツッコミどころ満載の答えにシュリは動じなかった。
「だから、なんで天空神殿の城内にいるんだよ?不審人物は通れないはずだが。」
「そんなことは簡単だ。リーエの許嫁といえば入れてくれたぞ。」
「ふぇぇぇぇ、許嫁ぇぇぇぇ。なんでですかあ。」




