第7章 魔王の秘密 その3(3)
「1から3までが、鬼となり、4から6までが逃げることになる。制限時間は2時間。但し、一時間後に鬼と逃げるものを交代させる。最後まで逃げ切ればクリアとする。」
シュリの宣言のあと選手たちには、それぞれの番号が書かれた札を渡された。
「鬼に捕まれば札を渡せ。札の多いものには第三の試練を免除する。心してかかるように。」
選手たちはその言葉に歓声をあげた。
「ああ、ちなみに戦闘行為は禁止とする。あくまで普通の鬼ごっことする。」
つまり魔力を使わずに頭を使えということになる。
どうやって逃げるか。
または、どうやって捕まえるか。
選手たちの頭の中はこの二つでいっぱいだった。
「では、第二の試練をはじめる。」
考える時間もなくシュリは無情にも開始の合図をした。
とりあえず選手たちは会場に散らばり始めた。
団体で動くのもいいが、個人で動くのもいいだろう。
お手並み拝見といこうか。
シュリは選手たちの行動を眺めた。
その中にはある少女の姿もあった。
リーエである。
リーエは天空神殿の選手として出場していた。
「ええっと、こういうときはどうすればいいんでしたっけ?」
辺りをキョロキョロと見ながら、ひとまず人から離れた。
「リーエ、とりあえず作戦を伝える。」
そこにダルシャン登場。
この対抗戦にダルシャンも参加していた。
ダルシャンのまわりには同じく魔族が集まっていた。
「はい、どうしたらいいですかぁ?」
リーエの言葉にダルシャンは深く頷いた。
「分からなければ考えろ。前半と後半があるから体力分配を考えて行動しろ。健闘を祈る。」
そういい残し、ダルシャン一行は立ち去った。
一人残されたリーエは、しばらくボーッとしていた。
そんなリーエに後ろから迫る影。
しかし、リーエは気づいていない。
「もうわかんないですぅ。」
突然叫び両腕を振り上げたリーエに、近づいていた影は驚いた。
「うわっ。」
その声にリーエは振り向き相手が鬼であることを確認した。
すかさずリーエは走り去った。
「まだ、捕まるわけにはいかないんですぅ。」
凄まじい勢いで走り去りリーエはなんとか危機を脱した。
そのあともギリギリ捕まらずにすんだリーエ。
時間は一時間が過ぎ、鬼と逃げる相手が入れ替わった。
「とにかく捕まえないと。」
しかし、リーエに捕まる相手は一人も居らず、時間だけが過ぎていった。
「第二の試練、終了だ。」
シュリの宣言に、選手たちは集まり始めた。
「それでは、札を係りのものに渡してくれ。確認して次の試練にうつる。」
選手たちは札をもち、順番をまった。
「リーエ、無事だったか。」
そこにダルシャンがあらわれた。
「はい、なんとか生きてます。」
「で、札は?」
「一個もとれませんでしたぁ。」
「は?」
「だから一人も捕まえられなかったんですぅ。」
ダルシャンはため息をついた。
「まだまだ指導が必要なのか。」
ガックリと肩を落としてダルシャンはため息リーエの頭を撫でた。
「これが終わったら特訓だな。」
そういいダルシャンは札を渡しに歩き去った。
「ふぇぇぇ、嫌ですぅ。」
全員が札を渡し終えて数の確認が終了した。
「第三の試練の前に一度半時間の休憩に入る。試練を免除するものには連絡がいく。それまで解散。」
シュリがそう告げると会場付近にある休憩室に行くものや、天空神殿をじっくり眺めるもの、談笑するものたちと、それぞれにわかれた。
ダルシャンとリーエもお茶でも飲みながらゆっくりしようと、歩いていった。
そこにシュリが話しかけてきた。
「どうだ?楽しいだろう。」
「いろいろと考えてますね。」
「ふぅん、わかったか。」
「はい、さすがは天空神殿の主ですね。」
二人の会話についていけないリーエは、ダルシャンに聞いた。
「何がですかぁ?」
「まさか、気づいてないのか?」
「えっとぉ、何がですか?」
リーエの答えにシュリたちはため息をついた。
「最初からきちんと属性別に別れるようになっているだろう。」
ダルシャンの言葉にリーエは瞬きを繰り返した。
「な、何のことですかぁ?全然わかんないですぅ。」
額に手をあてダルシャンはリーエに説明した。
「第一の試練、くじ引き。これは番号順に属性別に別れるようにくじ引き用紙に細工がしてある。ある一定の魔力がなければ反応しない。」
「で、属性別に別れたあとの鬼ごっこ。これは、チームワークを見るものだ。仲間を助けれるかどうかの判断力、さらに相手の力量を見てどうするか。」
「まあ、一人で動き回るものもいるし、リーエのように訳もわからずに参加していたものもいたがな。」
「そうだったんですか。説明ありがとーございます。」
ニッコリ笑いリーエは頷いた。
「だが次はちょっとした争いになるぞ?」
シュリの発言にリーエはシュリを見た。
「ええ?そうなんですかぁ?」
「まあ、楽しみにしてろ。じゃあな。」
シュリはそのまま立ち去った。
「なかなか面白い人物だな。気に入った。」
ダルシャンはシュリを見て、呟いた。
「次はどうなるんでしょう。」
リーエの不安はダルシャンにはわからなかった。
もともと争いごとが苦手なリーエである。
それなのに何故かリーエが魔王に選ばれた。
実はこれにはちょっとした理由があったことを、リーエは知らなかった。
そして、時間が過ぎて。
「それでは、第三の試練をはじめる。今回は、ある質問の答えをある特定の人物に答えてもらうことだ。但し、人数制限があるために早い者勝ちとなる。」
リーエは泣きそうになった。
早い者勝ち。
リーエとは無縁な言葉である。
しかし、負けるわけにはいかない。
実は国別対抗戦に参加が決まる前にダルシャンと約束したのである。
いわく。
優勝したら、
ケーキバイキングに連れていってやる、と。
「負けるわけにはいかないんですぅ。」
リーエは気合いをいれた。
「では、特定の人物を伝える。
まずは、命を奪い繋ぐもの
次に、自然との調和を望むもの
さらに、知識をもち導くもの
そして、弱気を助け強さを示すもの
最後に、天より授かりし力をもつもの。」
シュリはそういい、選手たちを見た。
「これらの人物たちに答えを伝えよ。正解すればそのものから、小さな水晶をもらう。これは次の試練にも使うことになるから無くさぬように。」
選手たちは真剣な表情で、シュリの言葉をきいている。
「水晶は数に限りがあるために早い者勝ちとする。そのため、手段は問わない。ただし、死者をだすことは許さない。では、問題を伝える。」
選手たちはゴクリと唾を飲み、次の言葉をまった。
「問題は、第一の魔王を倒した聖女は誰か。その答えを伝えよ。では、第三の試練をはじめる。」
答えのわかったもの、わからないもの、様々な反応を示し選手たちはあちこちに散らばっていった。
シュリはその姿を見て、ニヤリと笑った。
「さて、どうなるかな。」
ふと、気づくと一人選手がシュリを見ていた。
その選手はゆっくりとシュリに近づいてきた。
シュリは再びニヤリと笑った。
目の前まできたその人物にシュリは尋ねた。
「どうしたんだ?何か疑問でもあるのか?」
「違いますぅ。答えを言ってもいいですか?」
その人物とはリーエであった。
「よくわかったな。俺がそうだと。」
「天より授かりし力をもつもの。天空神殿の主であるシュリ以外にいないですよね。」
リーエはにっこり笑った。
「まあ、分かるやつにはわかるからな。で、答えは?」
「エリス様ですう。魔王アージェンの奥様ですよね。」
「正解だ。じゃあ、この水晶をやる。第四の試練で使うからなくしたり割ったりするなよ。」
シュリはそういい、リーエに水晶を渡した。
「でも、特定の人物って他のひとは難しくないですか?」
「そうか?結構わかりやすいと思っていたんだがな。」
シュリは首をかしげた。
「ええ、そうですかぁ?全然わかりませんよぉ?」
リーエの答えにシュリは考え込んだ。
そんなにわかりにくいか?
まあ、とりあえず様子を見るか。
もし、いなかったら・・・。
リーエの優勝か?
それはそれで、ヤバイような。
「まあ、いいか。」
何事か考えて答えをだしたシュリをリーエは、じーっと見ていた。
「何だ?」
「いえ、別に。ちなみに第四の試練って何するんですか?」
リーエの問いにシュリは妙に楽しそうな顔で答えた。
「それを言ってはつまらないだろう?だが、ヒントをやる。第四の試練は難しいぞ?」
「ふぇぇぇ、今までも難しかったのに、さらに難しいんですか?」
「今までのって難しいってもんじゃないだろ?」
「十分難しいですぅ。」
真面目な顔で返されシュリは返事に困った。
「こら、我が儘をいうもんじゃない。」
「あれ?お父様?どうされたんですか?」
リーエの後ろに現れたのはダルシャンだった。
「第三の試練をクリアしたから戻ってきたのだ。」
「流石です。で、どなたに答えを伝えたんですか?」
「自然との調和を望むもの、だ。」
得意げなかおで言われたが、リーエにはさっぱりわからなかった。
「えっとぉ、どなたです?」
「お前、そんなこともわからないのか。庭師だよ。」
「なるほどぉ、流石です。ちなみに他の方もわかったんですか?」
「とりあえずは。」
ダルシャンの答えにシュリは悪戯心を芽生えさせた。
「よし、採点してやる。最初から言ってみろ。」
天空神殿の主であるシュリの言葉にダルシャンは、ため息をつき答えた。
「では、答えます。命を奪いというのは料理長で、自然との調和は庭師、知識をもちというのは、おそらく宰相でしょう。そして、弱きを助けは騎士団のことで、最後の天より授かりしは、あなたでしょう?」
ダルシャンの答えにシュリは嫌そうな顔をした。
「わかってるんじゃないか。つまらないな。」
「これくらいわからなければ駄目でしょう?」
「流石ですぅ。」
リーエは尊敬の眼差しでダルシャンを見た。
「ちょっと失礼します。リーエ、ちょっとこい。」
「なんですかぁ?」
ダルシャンに引っ張られてリーエはシュリと少し離れたところに連れて行かれた。
「一つ聞くぞ。」
「はい、なんですか?」
「一応お前たちはそれぞれの世界のトップなんだということを忘れるな。」
「そういえばそうですねえ。」
人の頂点に立つのが天空神殿の主
魔族の頂点に立つのが魔王
言われてみると、たしかにそうだ。
「それなりの地位にいるんだから、もう少しきちんとしろ。」
「むぅ、きちんとしてますよぉ。」
そんなリーエをダルシャンはため息で答えた。
「まあ、そのうちなんとかなるか。」
そんなことをしているうちに時間は過ぎて、会場には沢山の選手たちが戻ってきていた。
シュリの隣には一人の男性がいて、シュリに耳打ちしていた。
シュリは1つ頷き、会場に聞こえるように大きな声で叫んだ。
「第三の試練、終了とする。」
シュリが叫んだあとに、1つ鐘の音が響いた。
鐘の音が鎮まるとシュリは再び声を張り上げた。
「第四の試練はあるものを持って来てもらうことになる。詳しくは別の場所で伝える。第三の試練を突破したものは、天空神殿の大会議室に集まるように。」
シュリがそう伝えると、選手たちはそれぞれ言われたとおりに大会議室へと移動した。
大会議室は王族会議などで使われる部屋である。
リーエとダルシャンが部屋にはいるとすでに部屋はいっぱいであった。
「たくさんの人が残ったんですねえ。」
「そうだな、大体100名ほどか。」
「この中から属性別で六人が選ばれるんですねえ。」
「そうなるな。」
リーエたちは空いている席に座り、シュリを待った。
しばらくすると、シュリが現れた。
壇上に上がり、シュリは会場を見渡した。




