第7章 魔王の秘密 その3(2)
「では、どうすればいいと?皆の意見を聞かせてほしい。」
下手にでたシュリにニヤニヤしながら王族たちは顔を見合わせた。
「そうですな、まとめ役と言うのはいいかもしれません。」
「そして、まとめ役を選ぶのは投票というのはいかがですか?」
「投票?それこそ無理があるのでは?」
シュリは王族たちの意見に反対をとなえた。
「まずは、有名な冒険者や、力のあるものを冒険者たちに選んでもらい、その後闘って勝ち抜いた者がまとめ役となる。どうでしょう。」
「それはどうなんだ?力を持つものが上に立てばそれが一番厄介なことになる。」
「ですから、力だけではなく冒険者たちの意見を取り入れるのです。ある程度絞り込めれば我々も調べることができるでしょう。」
「おお、それはいいですな。人望もあり力もあれば上にたってもいい。」
「ああ、そうそう。そこに加えて我ら王族たちが後ろ盾にいるとなれば、逆らうものもおりますまい。」
口々に王族たちは話し、自分たちの意見を言い始めた。
「少し待ってくれ。それでは意味がない。」
そんな王族たちの会話にシュリは口をはさんだ。
「意味がないとは?」
「それでは王族たちの言いなりとなる。」
シュリは、ハッキリと王族たちを見ていった。
「それはどういう意味ですか?」
「王族たちが後ろ盾に付けばその王族を贔屓にすることもあるだろう。それでは、意味がない。それに。」
シュリは一度目を伏せ鋭い眼差しで王族たちを見た。
「王族よりも下の立場になってしまう。」
その一言が王族たちの怒りへと導いた。
「天空神殿の主どの。一つお聞きしたい。王族たちよりも下の立場とは?もしや、冒険者風情に王族と同等の権力を渡すというのではないでしょうな?」
「それは許しがたいことです。」
「ありえないでしょう。」
「そうではない。王族たちと冒険者。互いに競うことでより良い世界へと導いていきたいのだ。」
「馬鹿馬鹿しい。これ以上の論争は無理ですな。申し訳ないが、本日はこれで退出させていただく。」
そういい、王族たちは会議場を出ていった。
残されたのは、シュリとリーエの二人である。
一つため息をつき、シュリはリーエを見た。
「すまなかったな。せっかく来てもらったのにこんなことになってしまって。」
少し大人びた口調のシュリにリーエは、笑顔を向けた。
「大丈夫ですよぉ。全然気にしてませんから。それよりも良かったんですかぁ?」
「ああ、これ以上話し合いは無理だろう。」
その言葉にリーエは、ウーンと考えた。
「大まかなことはいいんだと思うんですよぉ?でもぉ、価値観の違いがありますからねえ。」
「価値観の違いか。」
「はい、王族の皆さんは権力が一番大事みたいですし、それを奪われることは嫌なんですねえ。」
二人して、どうすればいいのか考えた。
しかし。
「ああ、全然思い付かないや。」
「ダメみたいですぅ。」
何も思い付かなかった。
「あのぅ、誰かに相談しませんかぁ?」
「誰に?」
「えっとぉ、ああ、お父様に相談しましょう。」
「お父様?」
「はい、困ったことがあればいつも相談してました。それに、前魔王の右腕の補助的な感じだったんですよぉ。」
右腕の補助的な。
微妙にずれてる。
しかし、妙案も浮かばないまま放置するわけにもいかず。
「ま、気分転換になるかな。よし、行こう。」
「はーい、わかりましたぁ。」
こうして二人は、魔王の城へと戻っていった。
魔王の城に戻ったリーエたちはダナンに言って、リーエの父親を城に呼んでもらうことにした。
呼び出しに応じて、すぐさま駆けつけたリーエの父親。
部屋に入るなり一言言った。
「一日しか駄目だったのか・・・。」
「え?」
「ん?」
がっくりと項垂れたリーエの父親。
とりあえず、娘であるリーエが近付き肩をたたいた。
「どういうことですかぁ?」
その一言に反応したのか顔を上げてリーエを見た。
「せめて一週間くらい頑張ってほしかった。」
その言葉でシュリはすべてを把握した。
「なるほどね、つまり魔王をクビになったと思っているんだ。」
「ええ、そうなんですかぁ?」
シュリの言葉にリーエの父親は起き上がり、シュリに近づいた。
「で、原因はなんだい?何かしでかしたのか?」
「イヤ違うし。ってかなんでそうなってるの?」
「魔王の城からの呼び出し。前日には娘が魔王になっている。これを結び付けずにどうする?」
「まあ、そうなるよね。でもクビになったわけじゃないんだ。ある意味僕の用事になるんだけど。」
そこで、ようやくリーエの父親はシュリをじっくりと見た。
全身をジロジロと見て、シュリの前のイスに座る。
その隣にリーエもチョコンと座った。
「失礼だが、どちらさまかな?かなり地位は高そうだが。」
その言葉にシュリは挨拶していないことに気づき、姿勢を正した。
「これは失礼をした。私は天空神殿の主、名をシュリといいます。」
リーエの父親は、目を細めた。
そして。
「こちらこそ失礼しました。私はダルシャンと申します。天空神殿の方の用事といいますと、どのようなことでしょうか?」
いきなり政治的な雰囲気になりリーエは、父親とシュリを交互に見た。
「実は、少しばかり融通の聞かない人たちがおりまして。」
その言葉にダルシャンは、ニヤリと笑った。
「はっきりと言っていただいても結構です。あやふやな言葉ではわかりやすいこともわからなくなりますので。」
シュリは少し驚いた顔をしたが、同じくニヤリと笑い、話を続けた。
「お話のわかる方で助かります。実はですね。」
そういい、シュリは先程の天空神殿での会議の内容を伝えた。
そして、最後に。
「というわけなんですが、どう思われますか?何か策があれば教えていただきたい。」
頼む形で終わった話にダルシャンは隣りに座る娘を見た。
「なんだか初日からハードな話題だな。」
「そうなんですう。で、どうしたらいいと思いますか?」
ダルシャンは考えた。
そして、ある一つの提案をした。
「とりあえず、トップを決めたらいいんですよね?でしたら、国対抗の何かを行うというのはいかがですか?」
「国対抗ですか?具体的にはどういうことでしょう?」
「つまり、一つの国から20人程度を選び、その選ばれた人でいろいろと競うことにするんです。そうすれば、平等になりますしなにより手間が省ける。」
「なるほど、続けてください。」
シュリは興味深そうに聞いた。
「で、集まった人たちで戦いも含めて様々な分野での競技を行いそこで優勝したものが選ばれる。これならば文句はでないでしょう。」
「しかし、その優勝したものに皆が従うかどうか。」
「そこは天空神殿の主の権力を振りかざしてください。ひとまず、優勝したものには、天空神殿での生活に王族会議への出席。それに一番上に立つのであれば親衛隊みたいな部隊を作ってみるのはいかがでしょうか?あとは、そうですね、本人の望むほしいものをひとつだけ。」
「それは。」
シュリは戸惑った。
「天空神殿での生活はどうにでもなります。しかし、王族会議への出席はどうなんでしょう?」
「一応上に立つものですから世界の事情を知っておくのもいいのではないですか?」
「なるほど、しかし、冒険者のほうが情報は手に入れやすいのでは?」
「ここでいう王族会議での世界情報は貴族以上の話になります。冒険者たちが手にするのはおそらく市民レベルの話でしょう。ならば、少しは貴族のことを知っておくのもいいでしょう。」
ダルシャンの言葉にシュリはなるほどと頷いた。
「えっとぉ、親衛隊っていうのはどういうことですか?」
話の流れでリーエも父に質問をした。
「親衛隊といっても直属の部隊というところかな。上のものがあちこちに顔をだすと何事かと疑うものがでるだろう。それならば、それ以外のものが動く、そして対応しきれない場合は上が動く。これが組織としていいのではないか?」
「ふぇぇぇぇ、いろいろ難しいんですねえ。」
「お前、魔王なんだぞ?それくらい考えてくれ。」
ダルシャンの言葉にリーエは小さくなった。
「でもでも、昨日なったばかりですし、何も聞いてないですぅ。」
その言葉にダルシャンはため息をついた。
「それくらい前もって勉強しておくのが当たり前だ。」
「まあ、それはおいおい考えるとしてですね。うん、その考え方、面白いです。それでいきましょう。」
シュリはダルシャンの意見を取り入れることに決めた。
「ああ、それで一つお願いがあるんですが。」
シュリの言葉でダルシャンはシュリに向き直った。
「なんでしょうか?」
「その国対抗ですが、天空神殿も一つの国として出場していただきたい。そして、我ら魔族を出場させてほしいのです。」
「それは、どういう意味ですか?」
「言葉通りです。ただ面白そうだから参加したい、ではいけませんか?」
シュリは考えた。
裏がありそうだが魔族の参加はなかなかいいかもしれない。
「いいですよ。では、10人ほど参加させましょう。天空神殿からも5人ほど出します。」
「ああ、それで結構です。では、そんな感じで話を進めてみてください。」
こうしてとりあえず決まった冒険者のトップを決める国別対抗戦を、王族たちに話すことにした。
再び集まった王族たちにこの事を話した。
もちろん魔族が出場することは伏せたままで。
王族たちは渋い顔を見せたが、前回のように頭ごなしで否定することはなかった。
そのためシュリの提案した内容でとりあえず国別対抗戦をすることが決まった。
世界中の国々に伝達し、選手の選別や対抗戦の準備を行う。
そのため準備期間が設けられ、実際に国別対抗戦が行われたのは、発表から1年以上経ってからであった。
その間にリーエは魔王としての知識を父親であるダルシャンから教え込まれた。
魔族たちとのやり取り、人との付き合いかた、様々なことを学んでリーエは最初に比べて少しだけ魔王らしくなった。
こうして迎えた国別対抗戦は、世界中から興味と注目の視線をあび始まったのだった。
「それでは国別対抗戦を開催する。」
集まった選手たちの前にたち堂々と開催宣言を行ったのはシュリである。
「これは皆の力をみるための戦いである。それは力だけではなく知力や、運も必要である。それを踏まえた上で望んでほしい。」
シュリの言葉に会場からは大きな歓声がほとばしった。
そして、大きな鐘の音が響き渡ると会場は一気に静まり返った。
「では、第一の試練を発表する。」
選手たちはシュリの次の言葉をまった。
「第一の試練は、これだ。」
シュリの声が響くと巨大な箱が落ちてきた。
何事かと構える選手にシュリは一言いった。
「くじ引きだぁ。」
大声で言われ選手たちは呆気に取られた。
「戦場では、運も味方につけなければならない。よって運に見放されるようではトップはつとまらん。」
呆気に取られる選手たちを構わずシュリは着々と進めていった。
「では、前の選手から順番にきてくれ。」
シュリの言葉に選手たちは我にかえり、くじ引きを始めた。
あちこちから歓声や絶望の声が聞こえる。
「空白は落選だ。落選したものは会場から立ち去るように。」
くじには数字が書いてあり、1から6までとなっている。
そして、それは次の試練をするための組分けにもなっていた。
選手たちは数字のかかれた札がある場所にそれぞれ別れた。
全ての選手がくじを引き終わり、シュリは会場を見回した。
大体半分ほどまでに減った選手を見て、シュリは1つ頷いた。
「よし。では、第二の試練を行う。」
選手たちは再びシュリを見た。
「第二の試練は、鬼ごっこだ。」
シュリの言葉に会場は静かになった。




