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第5章 魔王の秘密 その2(9)


「ちょっと説明してくれ。」


「ああ、すいません。実はですね、ちょっとした人物に命を狙われていまして。」


「は?」


「ニクスもそうだったでしょう?ですから、そう難しく考えていなかったのですが。ここにきて、僕達を見ることで、考えが変わったのでしょう。」


シンはニクスにデイロのことを話した。


「実は父親の従兄であるデイロという人物が、僕達をいじめるんですよ。まあ、対外的にはかわいがっているように見えますが。実際のところは。」


「最悪だ。」


シンの言葉にラギは言葉をかぶせていった。


「つまり、そいつがお前たちを狙っている?最初は様子を見ることにしていたが、うまい具合にいかないもんだから、堪忍袋の緒が切れたってとこか。」


「有り体に言えばそうなります。」


その言葉にニクスはため息をついた。


「なんか、思い出すな、あの頃を。」


「そういえばそうですねえ。ですが、ニクスの場合と僕達とは違いますから。」


「俺たちからしたら、親殺しだからな。」


「へ?どういうことだ?」


ラギの言葉にニクスは真剣な眼差しでラギを見た。


「まあ、実際親とかしらないんだけど、ラムザン曰く、俺たちの親を殺したのはデイロだって。」


「直接的ではないのですが、関係していることに間違いはありません。」


「そんなやつと付き合っているのか?」


ニクスは目を吊上げてラギ達を見た。


「ですから、対外的です。しかし、あちらの仕業となると、僕達がどう手を出していいものか。」


シンはラムザンをチラリと見た。


「そうですな。この件に手をつけてもつけなくても何か言ってきそうですが。」


フムとラムザンは顎に手をやり、考えた。


「じゃあ、こういうのはどうだ?」


ニクスは、ラギたちに一つの提案をだした。

曰く

襲われているのは、現在はザクセンだけであるが、そのうち被害は拡大しそうである。

そうなれば、世界の王たちも黙ってはいない。

ならば、世界の中心である天空神殿の主に魔族討伐を提案してはどうか?

その討伐にザクセンが中心となって討伐部隊をつくる。


「で、その部隊にラギたちも加わるっていうのは?」


討伐部隊ともなれば、たくさんの人が集まるだろう。

その中に紛れ込めば魔族とはわからない。

ついでに、デイロまで倒せれば御の字である。

ニクスの提案にラギたちは顔を見合わせた。

そして


「それは面白そうだな。」


「ぜひやりましょう。」


「人間にやられたとなれば、デイロも終わりでしょう。」


それぞれがニヤニヤと笑い、ニクスを見た。


「よし、じゃあ早速帰って計画を立てるか。」


そういい、ニクスは立ち上がった。


「ああ、そういえばニクスの話って?」


ラギは自分たちが何のためにニクスに会いに行ったのかを思い出し尋ねた。


「そういえば、そうでしたね。では、ニクスと一緒にザクセンへ行きましょう。」


「はい、お気をつけて。何かわかりましたら連絡致します。」


ラムザンに見送られてニクスたちは、離宮へと戻った。

そして・・・。


「で、お願いというのは?」


シンはニクスに聞いた。

ニクスは、うーんと考えてから、話しだした。


「実はな、俺、息子がいるんだ。」


「ええ、知ってます。それがどうかしたのですか?」


「で、もうすぐ18になるんだ。」


その言葉にラギたちは、ああと頷いた。


「例のアレか。」


「なるほど、アレですか。」


そう、ザクセン国の伝統行事となりつつある試練。

王にふさわしいかどうかを見定めるモノ。


「で、どうするんだ?」


ラギはニクスに尋ねた。


「それをどうしようか、考えているんだ。何かいい案はないか?」


ニクスは弱りきったこえでラギたちに聞いた。


「そうですねえ、ニクスみたいにするのも一つの手ではあると思います。」


「つまり、俺から刺客をおくるってことか。」


「ええ、そうなります。しかし、僕たちはニクスの息子さんを知らないので、なんとも言えません。」


シンの言葉に、ニクスは二人に会わせていないことに気がついた。


「そういえば、あわせてなかったな。よし、明日の朝、会わせるよ。今日はもう遅いし、寝るとするか。」


ニクスがこの離宮に来たのも遅かったし、ラムザンのところに行っていたために、かなり遅い時間になっていた。


「そうですね、では今日のところはこのへんで終わりにしましょうか。」


「ああ、以前と同じ部屋を使ってくれ。俺は城に戻るから。」


ニクスはそういって、二人に背を向けた。

しかし、歩みを止めラギたちと再び向かい合った。


「どうしましたか?」


シンは不思議そうにニクスを見た。


「いや、ちょっと気になったんだが。」


言葉を濁しながらニクスはラギたちに聞いた。


「さっきの話なんだが。討伐部隊に入るってことは、魔族と戦うことになるんだぞ?」


シンはニクスの言いたいことがわかった。


「そのことですか。大丈夫です。同族であろうとなかろうと、他人を害することなど、あってはならないことです。ですから、気にしないでください。」


「ニクスは心配症だな。大丈夫だ。俺たちの意思は変わらない。悪いやつはやっつけろ、だ。」


ラギたちの言葉にニクスは苦笑した。


「分かった。この話の続きは明日な。あ、それと明日の朝メシ、一緒に食おう。迎えに来るから。」


そういい、今度こそニクスは城へと帰っていった。

残されたラギたちは、ニクスを見送ったあと、睡眠をとるために部屋を出たのだった。


そして、翌日。

朝日が部屋を照らす前に、ラギたちは目が覚めた。

いつもより少し早めの起床に、二人はクスリと笑いながら、着替えを始めた。

着替えが終わり、いつもの部屋に行くと、そこにはすでにニクスの姿があった。


「おはようさん、よく眠れたか?」


「おはようございます、早いですね?」


「おはよう。ニクスはきちんと寝たのか?」


「とりあえず、横にはなったぞ?」


「あんまり寝てないようですね?もう少し寝てもいいのでは?」


ニクスの睡眠が足りてないことは、ニクスの顔を見ればわかった。


「目の下にクマができてる。」


ラギの言葉にニクスは、顔に手をやり苦笑した。


「いろいろ考えることがあるからな。」


そういって、ニクスは立ち上がり、ラギたちを城の中庭に誘った。


「今日は中庭で食べようと思ってな。まだ、準備はできてないが、少し歩かないか?」


ニクスの提案に二人はうなずき、三人は朝もやの中をゆっくりと歩いた。


「そういえば、ニクス、息子さんですが、どんな方ですか?」


「会えるんだよな?ちょっと楽しみだ。」


ラギたちの言葉に、ニクスは眉間にしわをよせた。


「あんまり、期待しないでくれ。俺からみてもヤバイやつだってことはよくわかってるから。」


ニクスの答えにラギたちは顔を見合わせた。


「それは一体?どういうことですか?」


「ヤバイって?」


「とりあえず、あったらわかる。それまでは、何も言わないことにする。」


ニクスの意味深な答えにラギたちは、頭の中を混乱させながら、歩いた。

深い緑の中をゆっくり歩けば、気分は落ち着いてくる。

そこに甘い花の香りも相まって、三人は無言のまま中庭へとたどり着いた。

すでに準備が整っているようで、丸いテーブルの上にお皿がたくさんのっていた。

その上には美味しそうなパンがあり、色とりどりなサラダが食欲をさそっていた。


「とりあえず、腹が減っては戦はできぬということで、食べるとするか。」


「だな。俺、腹ペコだ。」


ニクスの言葉に促されるように、ラギたちは椅子に座った。

すると、近くに控えていた執事たちが焼きたてのベーコンや、温かいスープを持ってきてくれた。

テーブルは、美味しそうな香りで包まれた。

ニクスは、執事たちに向かって一つ頷くと、心得ていたかのように、彼らは姿を消した。


「あいつらがいると、対外的に対応することになるからな。」


そう言われ、ラギたちはニクスの父である前王のことを思い出していた。


「そういえば、前王さまはお元気ですか?」


シンは、ニクスに聞いた。

シンの問いにニクスは少しウンザリした顔で頷いた。


「ああ、すんごい元気だぞ?時間があれば、会ってやってくれ。」


「わかりました。そのときはお願いしますね。」


そんな会話をしながら、三人は食事を終えた。


「ごちそうさまでした。」


「ニクス、美味しかった。」


ラギたちの満足そうな顔にニクスも嬉しそうにした。


「それは、良かった。で、もう少し待ってくれ。息子をここに呼んでいるんだ。」


「分かりました。」


そう答え、シンはまだ会っていないニクスの息子に思いをはせた。

一体、どんな人物なんでしょう?

ニクスに似ているのでしょうか?

そして、緑の壁の向こうから足音が聞こえてきた。

ゆっくりその足音はこちらに向かってきた。


ラギたちはその足音を聞きながら、もうすぐあえるということに、ワクワクした気分になってきた。

足音はどんどん近づいてきて、ラギたちはそちらに顔を向けた。

現れたのは、仕立ての良さそうな服を着ている青年。

そして、腰あたりまでのマント。

額の中心に、紅い石が埋めこんであるサークレット。

銀髪に、黒い瞳。

外見はそこまで変ではない。

しかしその人物が話しだしたとたんに、空気が変わった。


「はっ、暗黒の波動を感じてみれば親父殿と見知らぬ二人組。まさか、俺様の闇のオーラに導かれてのことではないだろうな?」


「・・・。」


三人は、何も言えなかった。

ラギは目をこすり、シンは瞬きを繰り返している。

そして、ニクスは。

ため息をついた。


「おい、朝の挨拶はどうした?」


「朝の挨拶だと?禍々しい光がふりそそぐ、このような場所でできるはずがないだろう。」


清々しい朝日の中、ニクスの息子は言った。


「もう一度いうぞ?きちんと挨拶しろ。」


少し声を落として言われて、仕方ないとばかりに、ラギたちに向き直り、優雅に腰をおり、挨拶を始めた。


「お初にお目にかかる。我が名は漆黒の魔術士、アガット。以後よろしく頼む。」


「魔術士?」


聞きなれない言葉に、ラギは首を傾げた。


「噂で聞いたことがあります。人のなかに、魔力を持つものが現れ始めたと。」


「ああ、それもあってお前たちを呼んだんだ。」


ニクスの言葉にラギたちは、アガットを見た。


「実はアガットには魔力があるんだ。」


「本当ですか?」


「本当だとも。我が暗黒の秘められし力を感じるだろう。」


「アガット、少し黙ってろ。」


「仕方ない。しばし、眠りにつこうではないか。」


アガットはそういうと、近くにある大木に近づき根本に座り込むと眠り始めた。

そんなアガットを見て、ニクスはため息をついた。


「悪いな。あれが俺の息子だ。」


「なんというか、自由な人ですね。」


「変わってんなぁ。」


「ラギ、言葉を選んでください。」


ラギたちの会話にニクスは苦笑した。


「ま、俺もラギの意見に同感だ。だからヤバイって言っただろ?」


「それでニクス、魔術士とは?」


シンはニクスに尋ねた。


「ああ、詳しくは知らないが魔力をもつ人のことらしい。で、アガットは闇の魔力を持ってるんだ。」


「何故闇の魔力だと?」


シンの言葉にニクスは、ため息をつきながら答えた。


「アガットが言い出したんだ。俺には魔力がある、闇の魔力がな。ってな。」


ニクスの言葉にラギたちは顔を見合わせた。


「ニクス、彼を貸してください。」


「貸す?どういうことだ?」


「俺たちの屋敷なら魔力を調べることができる。それに使い方も教えられる。」


ラギたちの言葉にニクスは考え込んだ。

魔力を調べ使い方を教える。

それはつまり。


「魔族になっているのか?」


不安そうにニクスは尋ねた。

そんなニクスにラギは苦笑した。


「ニクス、違うよ。人と魔族は元々一緒なんだ。ただ、魔族は闇の魔力持つものが多いことは確かなんだけど。」


ラギの言葉にニクスはやはり、と息をはいた。


「やっぱり、魔族に。」


「ニクス、きちんと話します。だから少し落ち着いてください。」


シンはニクスの前にいき、目をじっと見た。

ニクスは一度ゆっくり深呼吸をし、シンに話してくれるように頼んだ。


「教えてくれ。」


落ち着いた様子のニクスに、シンはホッとした。

そして、話した。

魔族と人の違いを。



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