↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/47

第5章 魔王の秘密 その2(8)


そのようすにラギはビクリとし、ラムザンはハアッとため息をついた。


「さて、何か言いたいことはありますか?」


シンの冷たい声に、首をすくめラギは言った。


「いや、悪かった。」


「何がですか?」


「勝ち抜き戦だよ、ついつい夢中になっちまった。」


「つい、ですか?」


「えーと、なんだ、男のロマンだ。」


「意味わかりません。」


「だな。」


ラギの言葉に、額を押さえながらシンは言った。


「で、結局氷が割れたのもシンがやったのか?」


「えぇ、ずいぶん楽しそうでしたので。水中から氷を破壊しました。」


「あぁ、なるほど。」


「デイロは不満に思っていたようですが、まあ仕方ありません。こちらの都合もありますから。」


「都合?」


シンの言葉にラギは首を傾げた。


「はい、あちらに合わせてこちらもちょっと息抜きに行こうかと。」


シンはニッコリ笑いラムザンを見た。


「では、後は頼みますね。」


「はい、了解しました。お気をつけて。」


二人のやり取りにラギは、焦った。


「いやいや、俺はわかんねぇ。なんなんだ?」


焦っているラギにシンは、一言答えた。


「ニクスに会いに行きますよ。」


「へ?」


こうして、訓練は終わり、ラギとシンはザクセンに向けて出発した。

途中までは飛竜に乗り、ザクセンに入ると歩きにかえた。


「なあ、何で一気に行かないんだ?」


「まだ、道を作ってないんですよ。」


「あ、そういえばそうか。」


「今回の目的の一つには道を作るということも、入っているんです。」


「そうなれば、行き来が楽になるな。」


「そうですね。それに久しぶりにあえるのも楽しみですね。」


そして、ニクスのいるイレーネについた。

正面から行くのはつまらないといい、ラギは裏にある森から侵入することにした。


「ま、驚かせるのもいいかもしれませんし。それに。」


「ああ、久しぶりにあいつにも会える。」


「ですね。」


ラギとシンは森に入り、昔住んでいた離宮を目指した。

深い森からは、爽やかな風と緑豊かな香りに包まれていた。

ちょっとした森林浴を楽しんでいた二人の前に、それは突然現れた。


「何者だ?」


「お、久しぶりだな。」


「ああ、ご無沙汰してます。」


ラギたちは、にこやかに挨拶した。

すると、二人の顔を見てああ、とうなずいた。


「久しぶりだ、本当に。あれからかなり年月が経ったのだな。」


現れたのは、ニクスと一緒に旅をした時にいた狼であった。


「今日はどうしたのだ?何かあったのか?」


狼は、二人にたずねた。

実は、とシンがここにきた理由を話始めた。

そう、この狼はあれからずっとこの森で暮らしていた。

何でも居心地がいいらしく。

ニクスもそれを知っているため、たまに狼に会いに来たりしていた。


「なるほど。ニクスに会いに来たのか。」


「お願いなんて珍しいですからね。気になりまして。」


「多分例のアレではないか。」


「例のアレ?なんだ?」


ラギは狼の言い分に首を傾げた。


「憶測に過ぎんからな。本人に聞け。」


こうして二人は狼と一緒に離宮に向かった。

離宮が見えてくると狼は、別れた。

曰く、あまり人目につきたくないらしい。

二人はそのまま離宮に入り込んだ。

ちらほら人を見かけたが、存在をできるだけ隠しながら進んだ。

離宮にいる人物を驚かせたくて。


「アイツならいつもの部屋にいるぞ。」


別れ際に狼から言われた言葉。

いつもの部屋。

以前、よく遊んでいたあの部屋だろう。

そして。


「ニクス、久しぶりだ。」


バタン、と大きな音をたてて、扉を開けた。


「うぇっ?」


その音におどろいたのか、長椅子で休んでいた人物が、変な声をあげて飛び上がった。


「あはは、あいかわらずだな。」


それを見て、ラギは笑い、シンは微笑んだ。

ニクスは一瞬固まり、ハッとして扉を見た。


「お前たち。」


扉付近にたつ二人を見て、ニクスはニンマリとした。


「今日来るなんて聞いてないぞ?」


そういい、ニクスはラギたちに近づき、抱き締めた。


「わりぃな。俺も寸前まで知らなかった。」


「ちょっとした刺激になりましたか?」


「刺激ってなんだよ?ま、とりあえず座れよ。」


ニクスはそういい、ラギたちを長椅子に座らせた。


「てか、大きくなったな。」


「あれからかなり年月が過ぎましたからね。」


「ニクスも王になったんだろ?」


「ああ、親父のやつ、いきなり隠居するからって言い出して。」


3人は会えなかった時間をうめるように、話し出した。

しかし。


「わりぃな。そろそろ休憩は終わりなんだ。暫くいるんだろ?」


「はい、ちょっとした息抜きにきてますので。」


シンの言葉にニクスは笑い、


「んじゃ、ここで待っててくれ。仕事を終えたらまた話そう。」


ニクスは、軽く二人の頭を撫でて部屋を出ていった。


そして、日が沈み暗闇が訪れた頃。

先に食事をしていてくれと、言われて食事をすませて、まったりと、部屋で寛いでいた。


「待たせて悪かった。」


扉が開きニクスが部屋に入ってきた。


「お疲れ様。」


「ああ、本当に疲れた。」


シンが座っていた椅子に座り、ニクスはハアッとため息をついた。


「毎日、こんなに遅いんですか?」


「いや、ちょっとあってな。」


言葉を濁しつつ、ラギたちを見た。


「聞いてもいいですか?」


「んー、まあいいんだけど。」


ニクスにしては、はっきりしない。


「ニクス、俺たちに遠慮はいらない。」


「ですね。教えてください。」


「実は、最近よく魔族が村や町を襲っているんだ。」


その言葉にラギたちは顔を強ばらせた。


「それは、いつ頃からですか?」


シンはニクスに尋ねた。


「昔からちょっとはあったんだか、最近は頻繁におきるんだ。大体、2週間くらい前からだ。」


「被害は?」


「西の方を中心に5つばかりの町が襲われた。怪我人も多い。」


「亡くなったかたは?」


ニクスは眉をひそめて答えた。


「20人ほどだ。だが、町自体が小さくて、人口も少ないからこの人数になったのではないかって。」


ラギたちは言葉をなくした。

まさか、そんなことが起こっているなんて。

全然知らなかった。

しかし、知ったからには何らかの行動を取らざるを得ないだろう。


「ニクス、ここに道を作りたいんですが。」


シンはニクスに尋ねた。


「道?なんだ?」


「移動のために必要なんです。ここと、僕たちの屋敷を繋げます。そうすれば、好きな時に行き来できる。」


「今回来た目的の一つでもある。」


シンの言葉にラギが付け加えた。


「それはかまわない。この離宮に来るのは俺くらいだからな。」


その言葉にシンと、ラギはうなずいた。


「ニクス、一つ部屋を貸してください。道を開きます。」


「ああ、こっちだ。」


ニクスは何も言わずに、案内してくれた。

案内された部屋は、それほど大きくはなかった。


「この部屋でどうだ?」


「十分です。ここの床に魔方陣を描きます。それを使えばいつでも行き来できます。」


そして、シンは魔方陣を描き始めた。

手にはチョークのようなものを持ち、小さく何かを呟きながら描いていった。


「何を言ってるんだ?」


ニクスはラギに尋ねた。


「魔力を込めてるんだ。誰にでも使えないように。」


「てことは。」


「俺たちとニクスしか使えない。」


「専用か。」


「悪用されると面倒だからな。」


「ちがいない。」


ニクスはシンを見た。

うっすら額に汗をかきながら、シンは作業を終えた。


「これで大丈夫です。」


立ち上がり、魔方陣をじっと見て不備がないかを確認した。


「んじゃ、早速使うか。」


「ニクス、申し訳ありませんが、一緒に来てください。」


「え?どこにだ?」


「俺たちの屋敷だ。」


「大丈夫です。話を聞きに行くだけですから。すぐに戻れます。」


ラギたちに言われてニクスはうなずいた。


「わかった。」


そして、ニクスとラギたちは、ラムザンの待つ屋敷に移動した。

移動した先はたくさんの魔方陣が描かれている転移の部屋だった。

うっすら体にまとわりつく光を振り払い、3人は部屋を出て、執務室へと歩いた。


「ラムザン、聞きたいことがあるんだ。」


扉をあけて中にいるラムザンに、声をかけた。


「おや、お早いお戻りですね。」


ラギの声に反応して、椅子からラムザンは立ち上がった。


「魔族たちのことで聞きたいことが、あります。」


続けて部屋に入ったシンも、ラムザンを見た。


「何事かありましたか?」


にこやかに微笑んでいたラムザンも、二人の様子がおかしいことに気づいた。

そして、二人の後に続いて入ってきた人物を見て、ため息をついた。


「とりあえず、落ち着いてください。ひとまず部屋の中へ。」


ラムザンは、ニクスが部屋に入ったのを確認すると、扉に鍵をかけた。

そして、3人を座らせて自分も座った。


「まず、確認させてください。この部屋に来るまで誰にもあっていませんね?」


「ああ、大丈夫だ。」


「それならよかった。」


ラギの答えにラムザンは、ホッとした。


「見られちゃまずいのか?」


ニクスはラムザンに尋ねた。


「あなたは人間でしょう?ならばお分かりのはず。ここは魔族たちのすむ場所です。」


魔族と、人間。

争いの歴史がその関係を雄弁に語っていた。


「ま、仲が悪いのは知ってるがな。」


ラムザンの言いたいことが分かり、ニクスは眉をひそめた。


「ならば結構です。で、若様、何があったのですか?」


「最近、あちらに怪しい動きはありますか?」


シンは、ラムザンを見据えて言った。

ラムザンはシンの言葉に、少し考え込んだ。


「今のところ、特に何も報告はありません。とりあえず、視察先で大人しくしているのかと。」


ラムザンの答えにシンは、否と答えた。


「大人しくしていないようです。人間の町が魔族によって破壊されています。」


「なんと。それは本当ですか?」


シンは、ニクスを見て話してくれるように頼んだ。

ニクスもそれに答えて、ラギたちに語った話よりも詳しく話した。

その話を聞き終えてラムザンは、一言ニクスに聞いた。


「本当に魔族だったのですか?」


ラムザンの言葉にニクスは、眉をひそめた。


「何が言いたいんだ?」


ニクスの低い声にラギたちは、不思議そうにニクスを見た。


「間違いなく、魔族がおこなったという証拠があるのですか?と聞いているのです。」


「ラムザン、それは。」


「時々ではありますが、人間が魔族を語り町を荒らしているという、報告があるのです。ですから。」


そこまでラムザンが言ったとき、ニクスは机を叩き立ち上がった。


「今回もそうだといいたいのか?それはない。」


「ニクス、落ち着いて。」


シンがニクスの腕を掴み、気を引いた。

そのことにニクスはハッとして、一息ついた。


「悪い。冷静になってなかったな。」


「貴国の民であるという証拠もありませんし、実際魔族であるという可能性もあります。ですが、魔族である、ということをおっしゃったのには訳があるのでしょう?」


ラムザンの言葉にラギたちもニクスを見た。

ニクスはゆっくり椅子に座り、ラムザンを見て答えた。


「生き残ったものの証言だ。襲ってきたものたちは、魔力を使い町を壊していった。そして、最後にこう言って、去っていったそうだ。」


「なんと?」


ニクスは一度目を閉じてから、ゴクリと喉を鳴らしていった。


「我々は、魔王ラギトシンの配下者のである、と。」


その言葉を聞いて、ラギたちは、変な顔をした。

その顔をみて、ニクスも変な顔をした。


「魔王ラギトシン?誰だ?」


「というか、確実におバカですよね?」


「なんといっていいのか・・・。」


三者三様の答えにニクスも、微妙に笑った。


「だから、魔族の仕業だっていっただろ?」


そして、ニクスはラギとシンの頭に手をおいた。


「俺もお前たちの仕業ではないことくらいわかる。だが、誰かがお前たちの名前を使っているのは確かなんだ。」


ニクスの言葉にラギたちは喜んだ。

疑われているわけではない。

信用はされている。

しかし、魔族であることは確実な話になっていた。


「確実にあちらの策略でしょうか?」


「まあ、そうなるんでしょうな。しかし、また、なんというか、もう少し考えれなかったんでしょうか?」


ラムザンの言葉にシンは考えた。


「おそらく、前回の訓練のときにはすでにこの計画は発動していたのでしょうね。」


「でないと、時間軸的に無理になりますからな。」


「となると、嫌がらせにしては規模が大きい。何を狙っているのでしょうか?」


「決まってるだろ?」


ラムザンとシンの会話にラギは入り込んで言った。


「なんですか?」


「俺たちの殺害だ。」


「ああ、なるほど。そういうことですか。」


「ええと、一気に攻めてきたという風に取っていいんですよね?」


「多分な。」


「そろそろ、あちらの我慢も限界に近いということですな。」


ラギたちは納得した。

ラギたちについていっていないニクスは、シンを見た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。