第1章 どうしてこうなった・・(1)
いつものように、カインに起こされて、食堂へ向かい、朝食をとる。
メニューは、クロワッサンとオレンジジュース。
レタスや、トマトなどのサラダ。
スクランブルエッグにベーコン。
朝食を食べている間に、カインが一日の予定を伝えていく。
「えー、本日は午前中は来月から始まる、収穫祭のパレードの準備。 午後からは、魔族たちのお悩み相談。あとは臨機応変にお願いします。」
こんな感じで、魔王さまの一日は管理されている。
黙々と、朝食を食べていた魔王さまに、カインがニヤリと笑い話し出した。
「そういえば、2つお知らせしたいことがあります。 いいニュースと、悪いニュース、どちらがいいですか?」
「へっ、なんだそれは? なんかちょっと嫌な予感がするんだが。」
魔王さまは、カインを見て、顔をしかめた。
「毎日同じことばかりでは、つまらないでしょう。 たまには、刺激も必要ですよ! で、どちらから聞きたいですか?」
意地の悪そうなカインの言葉に魔王は迷った。
「ンート、じゃあいいニュースからで。」
ひとまずどちらも聞かなければならないようだ。
なので、魔王さまはどちらでもいい感じで、答えた。
「では、いいニュースから。 実は、ゴブリンナイトのブリン君と、 ゴブリンプリンセスのエスメラルダ様が、 婚約することに、なりました。」
ゴブリン一族のお目出度い話に、魔王さまは、ちょっとほっこりしました。
「それは、めでたいな!何か祝いを贈らないとな!」
「で、ゴブリンキングが是非魔王さまに、腹芸を一つお願いいたします、と。」
「・・・・?今なんていった?」
魔王さまは、カインに尋ねた。
「ですから、ゴブリンキングより魔王さまに腹芸を一つ御願いしたいと。」
腹芸・・・?なんでだ?
普通、祝辞とかでないのか?
「カイン、ちょっとおかしいだろう?」
「いえ、魔王さまの腹芸を見たいと、仰ってました。」
魔王さまは何故だぁ、と叫びたいのを我慢して、話を進めた。
「まあ、それは俺からゴブリンキングに話しておく。 ちなみに、悪いニュースはなんだ?」
カインは、少し真面目な顔をして、魔王に尋ねた。
「魔王さま、勇者さまご一行を覚えてますか?」
魔王さまは、記憶を探りはじめた。
確か、前にあったのは500年位前か。
そんときは、四人グループで、城にやってきたな。
あんときは、ちょっとビビったぜ。
なんせ、風邪引いて寝込んでたからなぁ。
そんな記憶を思いだし、魔王さまは頷いた。
「ああ、思い出した。かなりヤバかったけど、なんとかしたからな。それがどうかしたか?」
「実は、新たなる勇者さまご一行が、現れました。しかも、今回は5人組です。」
へっ、なんつった?
新たなる勇者さまご一行の出現。
「おい、ちょっと待てよ。イスカル帝国や、ケタム王国、リンダス皇国、その他の国からも勇者が現れたなんて 聞いてないぞ?」
「はい、全く聞いてません。協定には、勇者を出現させるには、事前に知らせるとありますが、今回は完璧にフリーの勇者が現れたみたいです。」
魔王さまも朝食を中断して立ちあがり、カインにつめよった。カインは近づいてきた魔王さまに、少し嫌そうな顔をして話を続けた。
「今回の勇者出現の一報は、オオムカデのゲンさんが、ちょっと前から行方不明であることから、発覚しました。」
ゲンさんが…。ときどき、あの体で抱きついてきたよなぁ。ちょっとボンレスハムみたいなかんじで、気持ち悪かったな。
と、違うことを思い出して、吐き気がこみあげた魔王さま。
「で、まさか誰かに殺害されたのではと調べたところ、ゲンさんはオオカマキリのカマタツさんと、旅行に行っていたらしく、無事が確認されました。」
かなり人騒がせなゲンさんだったが、無事でよかった。
あれ?それがどうして勇者が出現したことになるんだ?
「で、その旅行途中で魔族に村を滅ぼされた子供たちが、魔王打倒を叫び、旅をしていることをゲンさんが、聞いたそうなんです。」
「誰だぁ、村を滅ぼすなんて、バカなことをしたのは。」
魔王さまは、ガックリと肩を落として呟いた。
そもそも村を滅ぼすなんて、どんだけ大変なんだ?
焼き払うにしても、一軒一軒火を放つのか?
チョー面倒。あり得ねぇ。
カインは、その様子を見てうんうん、と頷いた。
「ですよね、魔王さまが、わざわざ村を滅ぼすなんてあり得ないですよね。こちらは、ダーク蝙蝠君に調べてもらったら、人間たちの仕業でした。」
「マジか。山賊とか、そんなところか?」
魔王さまは、カインの情報から導き出される答えにいきついた。
「はい、有名な極悪非道な山賊である獄炎の鬼で、あることがわかりました。」
てか、人様が魔族に迷惑かけてんじゃねーよ。
「で、どうしたんだ?お前のことだから、何かするんだろ?」
魔王さまはカインに尋ねた。
カインは、ダークな笑顔で答えた。
「もちろん、いろいろ考えてますよ。捕まえて、強制労働です。針山地獄に、極寒の谷底探検、さらに、馬屋の掃除から、城の窓拭きまで、いろいろ働いてもらう予定ですよ。」
最後、なんかおかしい…。
あえてそれには触れずに、カインにさらに尋ねた。
「んで、そのガキどもが俺を倒しに、くるのか?」
「まあ、簡単にいうとそうなります。」
簡単でなくても、魔王打倒を叫ぶなら、確実にここにくるだろう。
「どーすんだよ?俺は戦えないぞ?」
「そんなのわかってますよ。だから、世界中の国々と協定を結んだんですから。」
だよなぁ、協定のことを考えたのは、コイツだもんな。魔王さまは、カインの顔をじっと見つめました。
「何ですか?私は男に見つめられても、嬉しくありません。」
カインは魔王さまを冷たくあしらった。
「そんなんじゃねえよ。とすると、まずしなきゃいけないのは、」
「そうですね、世界中の国々に連絡して勇者が現れた件について、調査しないといけませんね。」
となると、世界中の国々からの連絡を待つ間に、俺がすることは。
「んじゃ、いつも通りに仕事するか。」
「はい、5日くらいで勇者たちの情報をまとめてみます。」
魔王さまはカインに頷いて、食堂をあとにした。
食堂をから、執務室までは廊下を三回曲がり、階段を二回降り、四回上がる。
ぐるぐるまわっているようだか、この行動をとらないと、たどり着けない。
それは、何故か。
勇者たちが魔王の城にきたときに、迷子にするためである。ただし、魔王たち住民にとっては、かなり面倒であった。
「やっぱり、この城、リフォームするべきか。」
そして、5日後。
執務室で、裏山に怪しいキノコが、大量発生して困っている、とお悩み相談を、受けた魔王さまは、どうすべきか考えていた。
「ちなみに、そのキノコは何色なんだ?」
相談相手のリトルベアのべリングさんは、答えた。
「すごい色なんです。ピンク色で、青い水玉なんです。私は怪しいから近寄らないんですが、主人が怪しいキノコを退治するなんていうんです。私は、絶対に嫌、危ないことはしないで、といっているんですよ?でも、君が危険にさらすよりは、僕がその危険と戦うといいだしまして。」
ちょっとずつ、ノロケが入っているのは気のせいだろうか…。執務室もうっすらピンク色に、染まっているような …。
そこに、天の助け、カインが登場。
「ああ、べリングさん、ご主人がお迎えにきてますよ?キノコの件は、後日対応させていただきますね。」
カインはそういって、べリングさんを執務室から追い出した。
「カイン、助かった。もうちょいで桃色吐息まで、出るかと。」
魔王さまは、カインに尊敬の眼差しを向けた。
「ま、魔王さまには特に何も期待してませんから。気にしないでください。」
冷たい一言で、うっすらピンク色の部屋が、粉雪が舞う寒い部屋に変わった。
ブルっと、体を震わせてから魔王さまは尋ねた。
「で、なにか分かったのか? 」
カインが、来たのは勇者たちの情報を知らせるためだと、気づいた魔王さまは、話をするように促した。
「はい、今回は穴もぐらのモグリンさんと、ゴーストのスカー君にお願いしました。もちろん、世界中の国々の王たちにも、情報をいただきました。」
カインは魔王さまに書類の束を渡した。
「こんなに、調べたのか? 」
「全力で調べました。」
どんなことまで調べたのか、興味を持った魔王さまは、書類の束をめくりはじめた。そして、読みはじめてビックリ。プライバシー侵害なんてもんじゃない。
産まれてから今までのことが、事細かに記されていた。
例えば、
最後におねしょしたのは、何歳だったとか。
初めて好きになったのは、誰だとか。
さらに、実は可愛いモノ好きで、モフモフしたモノに目がないとか。
あらゆる情報が、書いてあった。
「とりあえず、一人目から見てみるか。」
魔王さまは、一枚目を見た。
名前:アベル・リカルド
性別:男
職業:勇者
年齢:16歳
特技:キャベツの千切り
趣味:レース編み
長所:勇気ビンビン
短所:ちょっとイライラしやすい
・・・・・・・。
魔王さまはここまで読んで思った。
この勇者、ちょっと会ってみたい。
イヤイヤイヤ、会ってしまえば戦いになるかもしれない。けど、この趣味のところ、気になるよなあ。
と、魔王さまは心の中でつぶやいた。
「えっと、カイン、ちょっといいか?」
聞かれるであろうと、待ち構えていたカインは、魔王さまに聞かれる前にこたえた。
「魔王さま、ここに書いてあることは全て事実です。決して疑ってはいけません。」
聞こうとしていたのは、別のことだったが、とりあえず、続きを読むことにした。
考察:見た目は結構、イケメンである。体格はやや中肉型。腹筋は割れていない感じ。やさしげな目元が好印象を与えている。どちらかというと、典型的な勇者であるかもしれないが、趣味と特技にちょっと興味あり。女子力高めかもしれない。自分としては、お付き合いしたくない。
魔王さまは、目をパチパチさせた。
「なあ、カイン、これって・・・」
「ですから、これは全て事実です。」
「いや、違うって。これを書いたのは誰だ?」
カインは、ああ、とうなずいて答えた。
「これを編集したのは、誰であろう、サキュバスのサリーちゃんです。多少、私情が入ってますが、公平な感性で作成されています。」
うそだ・・・。すっげえ、私情はいりまくりじゃん。
魔王さまは、勇者の情報をとりあえず、覚えた。
で、さらに二枚目を見る。
名前:シャイン・レミアム
性別:女
職業:魔法使い
年齢:18歳
特技:ファイアーボール
趣味:ファイアーキャンプ
長所:熱血
短所:熱くなりすぎること
考察:容姿は、赤い髪に、金の瞳。体型は、ちょっと細め。
・・・・・。
おい、全然わかんねえ。とりあえず、この女は炎系の魔法が得意で、熱血女子だということだな。てか、こんな女を仲間にしたのか。勇者って結構大変なんだなあ。
と、変なところに感心した魔王さまであった。
名前:リリス・ミックウェル
性別:女
職業:盗賊
年齢:23歳
特技:カギあけ
趣味:宝探し
長所:あきらめないど根性
短所:頑固
考察:ナイスバディーのお姉さま綺麗な金髪に翠の瞳。自分的には完璧。なぜ、勇者などという、バカな男と一緒にいるのか。できれば一度、一緒にお酒を飲みたいなあ。
「・・・・・。」
おい、ちょっと待てよ。
なんだこれは?かなり気に入っているみたいだが、どう考えてもおかしいだろ?このサキュバス、そういう趣味なのか?あまり、深く考えないほうがいいのか。
そうおもって、カインを見ると。
「さすがですね。よく調べてます。確かに彼女はその道に、有名だったみたいです。勇者一行になってからは、前よりもハデに宝探しをされているとか。この城にきたら、大変かもしれませんねえ。なんせ、お宝の山ですから。」
カインはそういって、魔王さまににっこり笑った。
まあ、勇者一行がこの城にくるのであれば、それはそれで、他にも大変なことになりそうだが。魔王さまは、とりあえず、次の人物をみることにした。
名前:セイラ・タリス
性別:女
職業:僧侶
年齢:15歳
特技:どうぶつ集め
趣味:どうぶつ実態調査
長所:天然ぽややん
短所:おっとりしすぎ
考察:勇者の幼馴染で回復魔法の使い手。聖女と呼ぶにはまだまだだが、そのうちそう呼ばれるかも。はっきりいって、コイツ嫌い。
サリーちゃん、私情はいりまくってますが・・・。
魔王さまは、さりげなく目元をぬぐった。まあ、サキュバスと聖女系であれば、天敵とよんでいいかもしれない。
ここで、魔王さまは気付いた。
「おい、これって・・・。」
「やっぱり、気付きましたか?そうです、この勇者一行は実はハーレムみたいなものです。勇者ってもてるんでしょうかねえ。」
カインはしみじみとつぶやいた。勇者というのは、モテるのか。とりあえず、困っている人たちを助けて、最終的には、魔王倒すのが目的だよな?魔王を、倒すということは強いはず。そこに女性はひかれるのか。
いや、魔王を倒すほど強い男がそんなにいいのか?
そうすると、マッチョな勇者もありか?筋肉ムキムキな勇者。ちょっと見たくない。ていうか、そんなやつがきたら、俺殺される。
そこまで、考えて魔王さまは、青くなった。
それをみたカインは静かに語った。
「魔王さま、勇者がこの城にきたら、確実に魔王さまは、アウトですよ。いろいろ考えなくて大丈夫です」
カインは魔王さまの肩をぽんっと、叩いた。
「カイン、お前面白がってないか?」
「おや、ばれましたか。まあ、なんとかなりますよ。」




