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第5章 魔王の秘密 その2(4)


城の正門には警護の兵士が四人立っていた。

しかし、ニクスは関係ないとばかりに真ん中を歩いた。

そんなニクスを、警護の兵士は不審に思うのは、仕方ないことだろう。

正門に入る前に勿論呼び止められた。


「こらこら、ここは遊び場じゃないぞ。近づいてはならん。」


ニクスとラギたちが、観光か何かで来たのと勘違いしたらしい。

警護の兵士の言葉に、ニクスはニヤリと笑った。


「俺のこと、忘れたのか?俺はこの国の第2王子だ。」


その言葉に兵士たちは、ニクスをじっくりと見た。

そして・・・。


「知らんな。第一、王子とやらをじっくりと見たことがないから、わからん。」


ニクスは、もう少し国民に顔を見せるべきだったな、と変なことを思った。


「いやいや、もう少し上の人にかけあってくれよ。本当なんだって。」


「そうやって、城に忍びこむつもりだろう。そうは簡単にはイカンぞ。鉄壁の守りをみせてやるぜ。」


兵士はそういい、正門に四人並んで通せんぼした。

そのとき、正門の内側から声がした。


「なかなか楽しいことをしているな。」


その声にニクスはハッとした。


「お前は。」


その声の持ち主はニクスをみて、ニッコリ笑った。


「だから言っただろう?きちんと王子の役目をしていればこんなことには、ならなかっただろうに。」


仕立ての良さそうな服をきた、男が一人近寄ってきた。


「フィリップ、珍しいな。どうしたんだ?」


ニクスはその男に話しかけた。

正門の内側からきた、男をみて兵士たちは、鉄壁の守りをといて直立不動の姿勢をとった。


「フィリップ殿下、このものをご存知で?」


兵士の一人が、男に話しかけた。


「ああ、我が兄上だ。間違いない。」


その言葉で、兵士たちはニクスの言葉が本当であったことをしり、少し青ざめた。


「誤解もとけたようだし、中に入ってもいいな。」


ニクスは兵士たちに確認をすると、首振り人形のように兵士たちは頷いた。

それをみて、ニクスはラギたちと一緒に正門の内側へと入っていった。


「それにしても、なんでこんなところにいるんだ?」


ニクスは、フィリップの前にたつと、聞いた。


「父上がね、そろそろ帰ってくるから、迎えに行って来いって。」


その言葉に、ニクスは唸った。

どうやら、俺の行動はばれているらしい。

だからといって、ここで帰るわけにもいかない。

ならば。

進むしかない。


「わかった。親父は玉座の間か?」


ニクスがフィリップに訪ねると、フィリップはうなずいた。

ニクスたちは、王がいる玉座の間に向かった。


「てか、フィリップ、お前まで来るのか?それと、そのしゃべり方、気持ち悪い。」


「あれ、駄目か?んじゃ、元に戻すよ。久しぶりだからとりあえず、いろいろ聞きたいんだけど。」


フィリップの答えに、ニクスは嫌な予感がした。


「なあ、ちょっと聞くが他の兄弟たちは、どこにいるんだ?」


「それも含めて、情報交換したいんだ。だから一緒に行く。」


その答えに、少し不安になりつつも、ニクスたちは、玉座の間に向かって歩いた。

玉座の間につくと、警備の兵士がニクスたちを見て一礼して、ゆっくりと扉をあけた。

扉をぬけて、ニクスたちは、玉座に近づいていった。

玉座には、威圧感を放ちつつ、どっしりと座っている人物がいた。

その人物こそこの国の王であり、ニクスの父親であった。

玉座付近までくると、ニクスは立ち止まり王を見た。


そして、膝をおり臣下の礼をした。


「ただいま戻りました。」


ニクスの言葉に王はうなずいた。


そして、


「よく戻った。」


と、言葉を返した。

王はしばらく無言でニクスたちを見ていたが、やおら右手をあげ軽く横に一降りした。

その時に右手の中指に碧色の石がついた指輪をしているのを、ニクスは見て眉をひそめた。

王の動作で壁際にいた兵士たちが、静かに部屋をでていった。

そして、それを見届けた王は、一言、言葉をはなった。


「ついてこい。」


王は玉座から立ち上がり、ゆっくりと左手にある扉にむかい歩いた。

ニクスたちも王につられるかのように、扉に向かった。

王が扉をあけ潜り抜けると、そこには螺旋階段があり、下へと続いていた。

所々にある灯りでは、下までは見通せず暗がりにラギとシンは怖がり、ニクスに抱きついた。


「大丈夫だ、心配ない。ゆっくりいくぞ。」


すでに王は螺旋階段を降りはじめていて、靴音だけが、ひびいていた。

ニクスたちも、ゆっくりと階段をおりていった。

しばらく降りていくと、下の方が明るくなっているのがわかった。


「ようやく出口だな。」


ニクスは軽口をたたき、下まで降りた。

そして、出口につくと外に出た。

暗い場所から明るい場所に出たため、眩しさに目を細めると、そこから通路がつながっていた。


ニクスたちは、無言のまま通路を歩き、一つの扉の前についた。

その扉は少し開いており、中に誰かが入っていったことをうかがわせていた。

ゴクリと唾をのみこみ、ニクスはゆっくりと扉を開き中に入った。

中は明るい色で統一された家具があり、心地よい風が通り抜けていた。

扉の真正面には衝立があり、奥が見えないようになっていた。

ニクスはその奥を見て歩き始めた。

そして、衝立をよけて奥に進むと。


「お帰り~。」


お気楽な声が出迎えた。

その声にニクスはガックリした。


「はあ、やっぱりそうだよなぁ。」


「ん?何がぁ?」


「頼むから、もう少しきちんとしてくれ。」


ニクスは一度言葉を切り、一言付け加えた。


「親父。」


ニクスの言葉にラギは首を傾げてニクスを見た。


「ニクス、親父?」


先程、玉座の間で見た人物はかなり冷たい印象だった。

しかし、今ニコニコと笑顔でわらっている人物は先程とはまるで別人のようだった。


「はあ、簡単に言うとな、公用と私用とで使い分けているんだよ。」


「つかいわける?」


ラギはよくわかっていないようだった。


「ま、うちはちょっと特殊だからねぇ。とりあえず、お茶にしようよ。」


ニクスたちと一緒にきたフィリップは、部屋に入りフカフカのソファにとびこんだ。

それを見て、ラギとシンは顔を見合わせて同じようにとびこんだ。

ひとり立ち続けるのも疲れそうなので、ニクスはソファにどっしり座った。


「で、どこからどこまでが、あれなんだ?」


「え?どういうこと?」


「だーかーらー、刺客を差し向けてから城に帰ってくるまでが、公なのか?」


ニクスの言葉に王は、ウンウンとうなずいた。


「いやぁ、よくわかったね。さすがだよ。」


「指輪。」


ニクスは王の言葉に重ねるように言った。


「小さいときに言ってただろ?指輪がすべてを支配するって。つまり、指輪をしていれば公用、外していれば私用ってことだろ?」


ニクスの言葉にフィリップは驚いた。


「え、そうだったの?知らなかったよ。」


ニクスはフィリップの声に首をたれた。


「ま、どうでもいいんだけど。」


そこに大きな声がひびいた。


「忘れるでない。」


その声にニクスたちは、ビクリと体を揺らした。

そして、ゆっくり声の聞こえた扉のほうを見た。

そこには、一匹の狼がいた。


「あ、完璧に忘れてた。わりぃ。」


ニクスの言葉に狼は不適な笑みを浮かべた。


「ほう、やはりそうか。城の裏口に森があるから、そこからこっそり侵入してくれと、言われて従ったが。」


一度狼は言葉を切りニクスにじわじわと近づいてきた。


「そうかそうか。忘れていたか。」


ジリジリつめよられてニクスは、顔をひきつらせた。


「いや、ちょっといろいろあってだな。無意識のうちにいろいろと、面倒なことを除外してだな。」


「なるほど、面倒なこととな。」


ニクスは焦った。

何を言っても言い訳にしかならない。

ならば、するべきことは一つ。


「悪かった。」


ニクスは狼に頭を下げた。

その姿に狼は、ハアッとため息をついた。


「まあ、危険がなかったようだから、今回は目をつぶるが、二度はないぞ。」


しっかりニクスに、くぎをさした。

そこに幼い声がひびいた。


「ニクス、眠い。」


ソファに飛び込んで、すっかりくつろいでいたラギたちは、疲れたのか眠りの世界に誘われようとしていた。


「ああ、いいぞ。俺はここにいるから、ゆっくり休め。」


ニクスはラギにうなずいた。

それを見て、ラギはコクンと首を縦にふり、シンと二人で眠りについた。


それを見たフィリップは、ニクスに尋ねた。


「ねぇ、さっきから気になっていたんだけど、この子達、誰?」


「そういえば、何も説明してなかったな。ちょうどいいや、これまでのことを話すよ。」


ニクスはそういい、城を出てからの出来事を話した。


「成る程ねぇ、よく生きてたね。」


「ま、崖から落ちたときは流石にヤバイと思ったが、下に川があって助かった。」


「悪運だけは強いみたいだな。」


「生きてるんだからそれでいいんだよ。」


「ちょっとちょっと、息子たちだけで話進めないで。泣いちゃうよ。」


ニクスたちは、王を見た。

手を合わせて、瞳をウルウルさせている。


「親父、気持ち悪い。」


「うん、兄さんに同感だ。」


「ひどい、そんな育て方してないのに。パパは寂しい。」


ガクリと膝を落としてめそめしだした。


「てか、育てられてないし。ああ、もう話がすすまねぇ。つまりなんだ?俺に刺客を差し向けたのは、対外的なモノだったんだろ?」


ニクスの言葉に王は顔をあげ、うなずいた。


「そうそう、それね。ある意味伝統行事なんだよ。」


王の言葉に息子たちは固まった。


「伝統の?なにが?」


「刺客を差し向けるのが。」


しばらくニクスは頭をフル回転させた。

よし、俺。よく考えろ。

まず子供に刺客を差し向ける親ってどうなんだ?

次に伝統ってどういうこと?

ニクスは頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜて、一言言った。


「さっぱりわからん。説明してくれ。」


「だよね、んじゃ説明するよ。」


簡単に言うと、以下の通りであった。

王の息子に産まれたら、王になれる素質があるかを確かめるため、試練をあたえる。

咄嗟の判断、周りの状況、さらに実行力。

試練をクリアしたものに、王の座をあたえる。

試練は18の歳に行い、公平に選ぶこと。


「つまり、その伝統行事を実行したってことか。」


「そういえば、僕達18になったんだね。」


ニクスたちは、母親が全て違うために兄弟皆同じ年齢であった。


「そうなんだよ、決して嫌がらせじゃないからね。」


「嫌がらせって。まあ、王族ともなれば、いろいろあるとは思うが。」


そこでニクスは気づいた。

他の兄弟たちは、どこにいるんだ?

まさか。


「おい、そういえば、兄貴たちは、どうしたんだ?」


ニクスの言葉に、王はハッとした。


「ああ、他の子達かい。ちょっと用事があって出掛けているんだよ。」


目を泳がせながら喋る王。

その事に不安ー覚えて、ニクスはジッと王を見た。

ニクスに見られて王は、目線をさ迷わせた。


「親父、教えてくれ。」


ニクス同様に刺客を差し向けられたのならば、最悪な結果になってもおかしくない。

そんな悲痛な思いでニクスは王に聞いた。

ニクスの言葉に逃げられないと断念したのか、王は一言言った。


「もう城にはいない。」


その言葉に、ニクスは目を見開いた。


「まさか。マジか。」


「うん、残念だけど。」


悲痛な面持ちで王はニクスを見た。

その言葉にニクスは訳のわからない感情に支配された。


悲しみ

喪失

怒り


どの感情が正しいのかわからない。

しかし、どの感情にも当てはまる気がした。


「そうか。」


ニクスはうなだれた。

特別仲がよかったわけでもない。

普通の兄弟だった。

だが、いなくなるとは思っていなかった。

複雑な思いで過去を振り返っていると、フィリップが一言呟いた。


「勘違いしてるね。」


ゆっくり顔をあげて、ニクスはフィリップを 見た。


「勘違い?」


「うん、勘違い。」


「何をだ?」


「え、だから兄さんたちのこと。」


は?どういうことだ?


「ああ、ダメだよ、そんなに早くネタバラシしちゃ。もう少し遊びたかったのに。」


「は?」


「だってそろそろ時間じゃないの?仕事、あるんでしょ?」


フィリップの言葉に王は舌打ちした。


「つまんないよぉ。」


二人の会話に、ニクスはついていけなかった。


「え、だからなんだ?」


「兄さんたち、生きてるから。」


フィリップの言葉にニクスは、ポカンとした。


「べつに死んだと言った覚えはないよ?」


確かに、死んだとはいってない。

ただ、城にはいないとだけだ。

それを俺が勘違いしたってか。

なんだか、腹が立ってきた。




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