第5章 魔王の秘密 その2(1)
「だって、仕方ないじゃないか。どうすることもできないのだから。」
「ふああ・・・・・?」
あくびをして起きたサツキは、首をかしげた。
あれ?
なんで、ベッドで寝てるの?
ソファで少し目を閉じただけなのに・・・。
「起きたのか?」
ベッドの下から聞こえた声にサツキは、気付き下を覗き込んだ。
「あ、ウルちゃん、おはよう。あたし、やっちゃった?」
「まあ、仕方ないだろう、アレだけの話を聞いたのだから。安心しろ、運んだのはカインだ。」
その言葉にサツキは、顔を赤らめた。
うわあ、失礼なことしてないよね?
寝言とかいってたら、ちょっと恥ずかしい。
その様子をウルちゃんはみて、ため息をついた。
「いつまでそこにいるんだ?そろそろ起きたらどうだ?」
サツキはその言葉に気付き窓を見た。
陽は上っているようだが、昼には少し早い時間のようだ。
「そうだね、仕度しなくちゃ。」
サツキはおきて、顔を洗い服を着替えた。
そして・・・・・。
ぐぅぅぅぅぅぅぅっ。
お腹がなった。
「ふん、疲れはとれたみたいだな。少し待っていろ。何かもらってくる。」
サツキの腹の音を聞いて、ニヤリと笑ったウルちゃんは部屋を出ようとした。
そのとき。
コンコン
「起きていますか?サツキさん?」
ちょうどカインが部屋にやってきた。
「ああ、はい、今あけます。」
サツキがドアを開けると、いいにおいが鼻をくすぐった。
「おや、身支度まですんでいたのですね。少し遅かったですかね?もう少し早ければ、サツキさんの寝顔を拝見できたのですが。残念です。」
少し怪しげな笑みを浮かべてカインは、部屋に入ってきた。
「昨日の夕飯を食べていないので、お腹がすいているかと思いちょっとしたものをお持ちしました。」
そういって、カインの手にはマフィンとお茶がのっていた。
それを見てサツキはとびきりいい笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。ちょうどお腹がすいて・・・。って、カインさん、昨日はすいませんでした。」
おいしそうなマフィンに気をとられてが、昨日の失態をカインに謝っていないことに気付き、サツキは頭を下げた。
「いえ、気になさらないで下さい。一日聞いていたのでつかれていたはずですから。さあ、お茶の準備をしますので、座ってください。」
カインに促されてサツキは椅子に座った。
目の前にはカインの持ってきたマフィンとお茶。
ちょっとしたお茶会の始まりだ。
サツキはマフィンを手に取り一口かじった。
口の中に広がる甘さと、ジャムの程よい酸味が口いっぱいに広がった。
「おいしい。」
笑顔でカインに伝えると、
「それはよかったです。どんどん召し上がってくださいね。」
そういって、カインも笑顔で答えた。
「あの、そういえば魔王さまは?昨日からみてないんですが。」
サツキは気になっている魔王さまのことについて、聞いてみた。
「ああ、魔王さまでしたら、視察にでておられますよ?」
カインの答えにサツキは、うーんとうなった。
「どうかされましたか?」
その様子にカインはサツキに尋ねた。
「えっと、昨日の話を聞いて失礼なこととか、言ってたような気がして。」
その言葉をきいて、カインはにっこり笑った。
「大丈夫ですよ、魔王さまに遠慮していたら負けてしまいますよ?それにこちらのほうが、サツキさんにいろいろ迷惑をかけているのですから。」
カインの言葉に、そういえばうっかり魔王さまに召還されたんだったなあ、と思い出した。
「それと、この城にいる竜たちに会いたいなって。魔王さまがあわせてくれると約束してくれたんです。」
「ああ、そういえばそんな話をしていたな。」
「ええ、ウルちゃん忘れていたの?あたしすっごい楽しみにしてたのに。」
「まあ、私たちにとっては珍しいことではありませんからね。」
ウルちゃんとサツキの話をきいて、フムとカインは考えた。
「それでしたら、今日は魔王さまが戻られてから竜たちに会われますか?もちろん、竜たちにも聞いてみないといけませんが。」
その言葉にサツキは目を輝かせた。
「ええっ、いいんですかぁ。すっごい嬉しいです。お願いします。」
サツキは二つ返事でカインに答えた。
「では、聞いてきますので、少し待っていてくださいね」
そういい、カインは部屋を出て行った。
「うわあ、嬉しい、本物の竜にあえるんだ。どんな感じだろう?東洋系かな?西洋系かな?」
サツキはワクワクしながら、マフィンを食べながらカインを待った。
その様子にウルちゃんは苦笑いを浮かべて、寝そべっていた。
しばらくして・・・・。
「お待たせしました、了承がとれましたよ。では、本日の昼から黒の森で竜たちとお茶会を設定しますね。」
部屋に入ってきたカインは、ニコニコしながらサツキに話した。
カインの言葉をきいて、サツキは嬉しくなった。
「ありがとうございます、カインさん。竜たちとお茶会なんて・・・。」
そこまでいって、サツキは首をかしげた。
「ん?竜とお茶会?どういうこと?」
サツキはファンタジー映画や小説などを思い返した。
竜若しくはドラゴン。幻の種族。最強の魔物。その姿は・・・。
「大きかったはず・・・。」
「ん?なんだ?大きい?」
サツキの独り言をきいたウルちゃんはサツキに尋ねた。
「えっとね、竜って大きいのよね?それなのにお茶会できるの?」
サツキの問いにカインは、答えてくれた。
「ああ、そういえば、あちらの世界で竜は巨大な姿をしていたのでしたね。しかも、大きな口にズラリと並んだ牙。」
そこまでいって、カインはにっこり笑った。
「大丈夫ですよ。この世界の竜たちは二つの姿をもっているのです。
一つは、サツキさんの想像したとおりの巨大な姿、もう一つは私たちと変わらない人の姿。今日は人の姿をしてもらってのお茶会になります。魔力があるので、姿を変えることができるんですよ。」
その言葉にサツキはほっとした。
「そうだったんですね。ちょっとドキドキしちゃいました。」
そして・・・・。
昼食をとって、お茶会にいく準備をしていたところ。
コンコン。
「おい、いるか?いくぞ?」
扉を叩く音がして魔王さまの声が聞こえた。
「はーい、今行きます。」
森でお茶会ということで、どんな格好をしていけばいいのか、考えていたところウルちゃんに、そのままでいい。といわれたので、念のためにショールを手に部屋を出た。
「すいません、お待たせしました。」
部屋の外でまっていた魔王さまに挨拶をして、2人と一匹で城をでた。
「あの、黒の森ってどんなところですか?」
お茶会の場所は魔王さまが知っているらしく、そのあとをついていく間に、サツキはいろいろ聞くことにした。
「ああ、城の東にある森だ。今の季節ならば花や木の実もたくさんあるはずだぞ。ときどき料理長が料理につかう薬草なんかを採りに行くってきいたことがある。」
「あの森には様々な効能をもつ薬草があるのだ。いろんな魔族が出入りしているから、魔王のそばを離れぬようにな。」
「え、危ないの?」
ウルちゃんの説明にサツキは少し怖くなった。
「いや、魔王のそばの結界がないと倒れるぞ?」
そういえば・・・。
初日はそれで倒れていたっけ。
「そうだね、気をつけるよ。」
そういって、魔王のそばを離れないように気をつけていたサツキだが。
森に入ったとたん、色とりどりの花に目を奪われ、フラフラと歩いていた。
「うわあ、綺麗。あ、あっちには美味しそうな木の実がある。」
「おい、聞いていたのか?」
危ない足取りのサツキの後をウルちゃんは、せわしく付いていった。
それを見た、魔王さまはにんまりと笑った。
「大分仲良くなったんだな。」
そうつぶやくと、サツキは魔王さまをみた。
「そうかな。ウルちゃん、優しいから。」
「危ないから放置できぬだけだ。」
サツキとウルちゃんはそれぞれの意見を口にした。
「ま、仲いいのはいいことだな。」
そういって少し羨ましそうにいい、森の奥を見た。
「ん?どうした?」
「あ、ちょっとな。まあ、大丈夫だろ。」
ウルちゃんも何かを感じたのか、森の奥を見つめた。
「え、何かあるの?」
少し不安になったサツキは、魔王に尋ねた。
「いや、予想とちがうから。少しな。」
微妙な言い回しに、サツキが腕をさすったところ・・・。
ガサガサ・・・。
近くの茂みから音がした。
一際大きな音をたてたあと、それは現れた。
「ジャーン、俺様登場。」
現れたのは、赤い髪で金の瞳の男だった。
その登場にサツキはビックリして、魔王にしがみついていた。
「ビックリしたぁ。」
「大丈夫だ、危険はないから。」
しがみついていたサツキの肩を軽くたたき、現れた男に顔をむけた。
「久しぶりだな、元気そうでなによりだ。」
魔王は、その男に話しかけ近づいた。
「おお、魔王じゃん、久しぶり。あいかわらず。」
男は一度言葉をきり魔王を見た。
「あいかわらず、なんだ?」
「小さいな。」
満面の笑みでいわれ、魔王はしばし固まった。
サツキはそれを聞き、首をかしげて魔王を見た。
「えっと、知り合いなの?」
サツキの言葉に魔王は眉間にシワをよせた。
「知り合いだが、友人ではない。」
その言葉に男は大袈裟になげきはじめた。
「おいおい、それはないぜ。小さいときはあんなにかわいかったのに、今じゃなあ。」
「うそ泣きはよせ。てか、さっさといくぞ。」
魔王はそういい、再びあるきだした。
「へーい、みんなもう待ってるぜ。」
そういうと、男は指をならした。
次の瞬間、魔王たちは少し開けた森のなかにいた。
「えっと、瞬間移動?」
「お、よくわかったな。あとはここをこうしてっと。」
男は笑顔でサツキを誉めてから、足元にあった小石を転がした。
すると、カーテンが開くように別の景色が見えてきた。
「さ、入った、入った。」
男はサツキの背を押しなかにはいるように促した。
サツキは男のほうを向き、押されながら中に入っていった。
中は別空間になっていた。
小さな大地に続く道。
そのまわりは、空だった。
「ここどこ?」
つい片言になってしまったサツキにウルちゃんが、答えた。
「空間移動で竜たちの領域にきただけだ。気にするな。」
そういうと、ウルちゃんは目の前に続く道を歩いていった。
おいていかれないようにサツキも後をおった。
その様子を魔王と、男は見ていた。
「変わった人間だな。普通はもうちょっといろいろ反応ありそうだがな。」
「確かに変わった人間ではあるな。」
魔王はそういうと、サツキの後に続いた。
「素直じゃないねぇ。ま、それもアリか。」
そう呟くと男も歩き始めた。
道を歩いて数分後。
ようやくお茶会の場所に到着した。
大きな丸いテーブルに、椅子が6つ。
そのうちの半分はすでにうまっていた。
「さて、自己紹介するか。俺様は、炎竜のエン。」
ここに連れてきた男がそう名乗ると、
「あ、私雷竜のライン。」
「岩竜のガンテツ。」
「雪竜のユキです。」
それぞれが名乗った。
「あ、私はサツキと言います。今日はありがとうございます。私の我が儘で皆さんに集まっていただいて。」
サツキもその後に続けて挨拶した。
「とりあえず、座ってちょうだい。ユキ、お茶をいれてね。」
ラインと名乗った女が話すと、ユキが動いた。
魔王とエンはそれを聞き椅子に座ってサツキを見た。
「サツキちゃんは俺と魔王の間ね。」
促されてサツキも座った。
ウルちゃんはサツキの後ろにある木陰に寝そべり、目を閉じた。
「さて、まずはサツキちゃんの趣味から聞こうか。」
ユキの手により入れられたお茶が、配られると、わくわくしたエンが、口火をきった。
「え、趣味?んーと、なんだろ?読書?でも堅苦しい哲学書とかは読まないから。どうなんだろ?」
サツキはエンに言われて自分の日頃の行いを考えた。
毎日同じように起きて仕事にいき、休日は友達と遊んだり。
特別にこれといった趣味はなかった。
「へぇ、読書かぁ。すげぇな。俺なんてソッコー寝そうだな。」
サツキの答えにエンは感心していた。
「あ、でもファンタジー系はよく読んでたから。竜とか、妖精とか好きです。」
その言葉に皆笑顔を浮かべた。
「あら、そうなの。」
「なるほどな。魔族でも苦手だという輩もいるが。」
「そうですね。少し安心しました。」
「ん?苦手って?」
サツキは疑問に思い魔王に聞いた。
「一口に魔族っていっても色んな種族がいるからな。」
「特に俺達竜族は、魔力も大きく図体もデカイ。妖精族とかには嫌われたりするからな。」
「時々、ケンカするくらいなの。」
エンに続きラインも教えてくれた。
しかし、
「人族は同じ種族だが、殺しあいをする。何故そんなことをするのか、理解に苦しむ。」
ガンテツの言葉にサツキは、目を見開きうつむいた。
「だか、そんな人間ばかりではないだろ?」
うつむいたサツキを見て、エンは眉間にシワをよせた。
「確かに変わった人間もいたものね。」
ユキの言葉に魔王はうなずいた。
「アイツか。」
「ああ、そういやいたな。」
「あの変わり者のこと?」
「確かに変わった男だったな。」
魔王、エン、ライン、ガンテツとその人物を思い出していた。




