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第4章 魔王の秘密(7)


「誰だ貴様は。この神殿には関係者以外立入禁止だぞ。」


カルロ三世はその女性を見ながら、神殿の主らしく言い放った。


「いえ、カルロ三世陛下。こちらは・・・・。」


「ネス、早くその人物をこの部屋から放り出すんだ。」


「ですから、陛下、おそらく・・・・。」


「出来んのか、ならばワシが・・・・。」


「ちょっと待て、じいさん。オレが話をする。」


カルロ三世とネスの会話を楽しみながら見ていた女性を見て、アージェンはため息をついた。


『あら、そのため息は何?』


女性はアージェンのため息に文句をいい、アージェンに近づいてきた。

そして・・・・。

アージェンに抱きついた。


「なっ。」


「どういうことだ?」


「えっ。」


男性三人のそれぞれの言葉を聞きながら、抱きついてきた女性を見て、またため息をついた。


『なによ。』


少し離れて女性はアージェンをにらみつけた。


「何しにきたんだ?」


『あら、わからないの?まだまだね。』


女性はクスクスと笑い、アージェンから離れた。


「おい、説明しろ。」


アージェンと女性が、親しく話しているのを見て、ダリス皇子は苛立ちながら女性に聞いた。


『だそうよ、話してあげてくれる?』


女性の言葉にアージェンは、渋々話始めた。


「んじゃ。話してやるがどこからだ?」


その言葉にダリス皇子は嫌そうな顔をした。


「初めからに決まっているだろう。」


「やっぱりか。んと、まずはこの天空神殿で王族会議があることを知って、そこで魔王討伐の話し合いをするからって言うから、それは止めなくてはなってことで、妨害することにして、ついでにお前もいじめてやろうと。」


「なんだ、そのついでとは。」


「しかたねーじゃん、エリスも少し怒ってたし、俺も死にたくないし、ならば、発案した奴を脅せばなんとかなるかなって。」


「おい、ちょっと気になる言葉がでたが。何故魔王がエリス姫の名を呼ぶ?」


「あ?エリスは俺の嫁さんだ。で、話がずれたが。」


「な、なんだとぉ。」


ダリス皇子はアージェンの言葉に驚き大声をあげた。


「やかましい。」


「少しは黙って話を聞けないんですか?」


カルロ三世とネスの言葉も耳に入らず、ダリス皇子はボーゼンとしていた。


「いやいや、あり得ないだろう。拐われたんだぞ?しかも、結婚式の最中に。しかも、相手は俺。どこをどうしたら、魔王の嫁さんになるんだぁ。」


ダリス皇子は叫び出した。


「やかましい。少しは静かに出来んのか?」


カルロ三世に言われたがダリス皇子は全然聞いてなかった。


「だってエリス姫が好きなのは、自信満々でかっこいい大人な男のはずだろう。しかも、金髪碧眼の完璧な皇子がいいはず。」


そういいきったダリス皇子は、キッと、アージェンを見た。


「こんな男のどこがいいんだぁ。」


「つか、一体なんの話だ?」


アージェンはダリス皇子の言葉に考え込んだ。

その答えをネスは知っていた。


「ああ、その設定ですか。それは、私が考えたんです。一般的な貴族のお嬢様たちにアンケートをとり、理想の結婚相手を想像してもらったんです。」


「そう言えばそんな企画があったな。」


「はあ、カルロ三世がエリス姫の好みを知るために、天空神殿からの命令として全世界の姫たちに聞いたんですが、あいにくエリス姫は。」


そこまで言って、アージェンを見た。

見られたアージェンは首を傾げた。


「既に俺と出会っていたか?」


ニヤリと、笑ったアージェン。


「いえ、この企画はエリス姫が10才の時です。まだ姫は異性には興味がなく毎日剣の稽古に明け暮れてました。」


「あ、そう。」


ネスの言葉に少しガッカリしたアージェンだったが、ダリス皇子を見て少し可哀想に思った。


「な、なんだと。あれはエリス姫の本意ではないと。あれを見て必死にそういう男になろうと頑張ってきたのに。」


ずぅーん、と床に座り込みダリス皇子は落ち込んだ。


「ドンマイですよ、ダリス皇子。」


軽くネスはダリス皇子を励ました。


「同情されても嬉しくない。はっ、そうだ。エリス姫に真実を聞けばいいではないか。」


ダリス皇子はそういうと、ベールを被って立っているエリスに近づいた。


「エリス姫、本当のことを教えてください。」


しかし、エリスは何も答えなかった。


「エリス姫、黙っていないで何か一言。」


ダリス皇子はもう一度聞いた。

しかし、やはりエリスは答えなかった。


「あ、わりぃ。そのエリス、偽物だから。そろそろ魔力が切れる頃か。」


アージェンの言葉にダリス皇子は、目を見開きエリス姫のベールをとった。

現れたのは、エリスにそっくりな人形。

そして、ゆっくりと崩れ落ちた。


「なっ、どういうことだ?」


「だから、さっきから言ってるだろ?お前に嫌がらせをするためにいろいろ考えたんだぜ?」


そういうと、アージェンはダリス皇子に近づいた。


「天空神殿の王族会議。これには世界中の王族が集まる。それに会わせて、重大発表があるという噂を流す。すると、王族たちは必ずこの会議に出席するだろ?」


「そこで、エリス姫が魔王を倒した。と、発表されれば、魔王討伐の話しはなくなる。さらに、魔族の実験をしているクテルクス帝国に対して魔族の保護を目的とした天空神殿の考えを伝えて、各国の同意をもとめる。」


「これにより、魔王討伐は必要なし。さらに魔族の保護を天空神殿が行うことで、クテルクス帝国の軍事強化を停滞させることができる。もちろん、エリスが帰ってきたことで、ダリス皇子が動くことは考えた。」


アージェン、ネス、カルロ三世。

三人はそれぞれ話した。

その話にダリス皇子は徐々に青ざめた。


「で、動き出したダリス皇子に対しては、エリスが俺と婚姻をしたことで、嫌がらせと、エリスを諦めさせることにしたんだ。」


そこで、アージェンはニヤリと、笑った。


「どうだ?なかなかだろ。ちなみに、この空間には俺たちしかいない。他の王族たちは、本来の空間でエリスから説明されてるはずだ。魔王討伐の裏にあるクテルクス帝国の軍事強化。これに対して各国の意見を聞いてるはずだ。」


「最初から決まっていたことなのか。」


「ああ、決まっていた。」


アージェンの言葉にダリス皇子はガックリと膝をついた。

そこに場違いな声が響いた。


『これでネタバラシは終わりね。ならば。』


魅惑的肉体の女性は、ニッコリ笑った。

その言葉にアージェンは、その女性を見た。


「どうするつもりだ?」


『決まっているわ、こうするのよ。』


女性が指を鳴らすと、その隣にエリス姫が現れた。


「え、なに?」


「エリス、こっちにこい。」


キョロキョロして、アージェンの声に気付き、エリスはゆっくりとアージェンに向かって歩き出した。


「ねえ、アージェン、あたし・・・。」


アージェンのもとにたどり着いたエリスはアージェンの背にかばわれた。


「大丈夫だ、おれがいるから。」


その言葉に首をかしげならがも今は黙っていたほうが言いと思い、エリスは黙った。


「さて、いったいなにがしたいんだ?」


アージェンは謎の女性に話しかけた。


『あら、ほんとうにまだわからないの?」


女性は少し寂しそうにアージェンにたずねた。


「ああ、わかんねえ。」


アージェンとエリスを交互に見て、女性はため息をついた。


『仕方ないわね、じゃあ教えてあげるわ。私の目的は・・・・。』


「目的は・・・。」


女性は下を向き、アージェンはそれをじっと眺めた。


『それは・・・・・。』


「それは、」


不意にバッと顔をあげて、アージェンに怒鳴りつけた。


『だって、エリスちゃんを紹介してくれないんだもの。アージェンのばかぁ。』


「は?」


「へ?」


「どういうことだ?」


女性の言葉に全員唖然とした。


『だって、アージェンが結婚したっていうのに、花嫁を紹介されていないのよ?まあ、最初はわかるわ、ゴタゴタしていたし。でもね、あれからどれだけ経っていると思うの?もういい加減紹介してくれてもいいと思うの。ねえ、間違っている?』


その怒涛のごとくしゃべられアージェンはため息をついた。


「だから、それは・・・。」


『仕方ないから、イロイロ調べて、こういう手段ならばアージェンもきちんと紹介してくれるかと思って、ダリス皇子を使ったのよ。』


「え、オレって利用されていたのか・・・。」


女性の一言でダリス皇子はへこんだ。


「ああ、致命的にやられましたね。」


「今まで自分でやってきたことを否定されてるもんだからなあ。」


ネスとカルロ三世はダリル皇子を生暖かい目で見守った。


「ああ、言ってることは間違ってないが、やってることは間違ってるだろ?もう少し考えて行動してくれよ。」


アージェンは疲れた感じで言った。

そして、ツンツンと引っ張られている服に気付き、後ろにいるエリスを見た。


「どうしたんだ?」


「ねえ、どういうこと?っていうかあの女性誰なの?」


アージェンはそういえばといった感じで、女性とエリスを見た。


「そういえば言ってなかったな。この際だから紹介しておくか。」


その言葉に女性は満面の笑みを浮かべた。


『ようやく、紹介してくれるのね。』


ワクワクした感じで居住まいをただして、アージェンの次ぎの言葉を待った。


「こいつは、夢魔のリリーさん。で、おれのお袋だ。」


アージェンの放った一言で一同は固まった。

・・・・・。

無言。

いや、一名だけ、喜んでいる人物がいた。


『いやん、きちんと紹介してよ。いいわ、私から話すから。えっと、初めまして、エリス姫。アージェンの母親で、夢魔のリリーでーす。』


エリスは突然のことで、言葉が出なかったが、母親という言葉を聞いて驚いた。


「えぇぇぇぇぇぇぇっ。アージェンの母親?つまり私にとってはお義母さまということ?」


「有体に言えばそうなるな。」


『なにがありていに言えばよ。だいたいあなたが結婚するってことをきちんと言わないからこういうことになるんでしょう?』


「いや、言おうと思っていたんだが、どこにいるか知らなかったし。」


『ええ、言ってなかった?今はキンコウの森でダーリンと一緒に暮らしているのよ?』


「そうなのか?全然知らないけどな。」


『ダメじゃない、そんなんじゃエリスちゃんに嫌われるわよ?』


「あのう、ちょっといいですか?」


アージェンとリリーの会話にエリスは入り込んだ。


『あら、なに?何でも聞いて頂戴。』


リリーはエリスを見て、ニッコリ笑った。

それを聞いてエリスはゴクリとのどをならした。


「お義母さまは・・・。」


『あら、エリスちゃん、リリーさんって呼んで?』


「え?」


「呼んでやってくれ、俺も名前でよんでるから。」


「えっと、じゃあ、リリーさん。」


『なあに?』


「リリーさんは魔族なんですよね?」


『そうよ、夢魔ですもの。昔はいろいろやってたけど、最近はおとなしいものよ?』


昔はいろいろ・・・。

なにをやっていたんだろう?

気になるけど、聞けない。


「魔族なのに、アージェンの国にいないんですか?」


『ああ、そういうこと。だって、ダーリンは人間ですもの。アージェンの国に入れないでしょ?』

「え、人間なんですか。」


『そうよ。というか、魔力を持っていないから、魔族とは一緒にいられないの。ちょっとイロイロあるのよ。』


そういってリリーは寂しそうな顔をした。


「ま、一緒にいられないこともないんだが、お袋は親父と2人でいたいんだと。だから、今は2人でいるからいいんじゃね?」


アージェンの言葉にリリーは、にこやかになった。


『そうねえ、2人でいつもイチャイチャしてられるし。邪魔が入ればすぐに消えてもらうし。』


最後ちょっと物騒な言葉が入っていたが、気にせずリリーに話しかけた。


「やっぱり、魔族と人間は仲良くなれないものなのでしょうか?」


真剣な顔で話したエリスにリリーもまた真剣に答えた。


『そうではないのよ?一部の地域では普通に人間と暮らしている魔族もいるの。でも、世界的にやはり、異端の存在は迫害されることが多いのも事実よ。』


一度、言葉をきってエリスとアージェンを見た。


『でも、あなたたちがいるでしょう?天空神殿の主にも知られているし、エリスちゃんの国でも知っている人がいるでしょう?少しずつでいいの。魔族と人間が暮らしていける世界が出来ればいいのよ。』


その言葉にエリスは自国を思い浮かべた。

確かに、父王や母、側近たち、侍女に衛兵たち。

たくさんの人達がエリスとアージェンが結婚したことを知っている。

そして、アージェンが魔王であることも。

少しずつでもいい。

世界を変えることができれば。

そう思いエリスはカルロ三世を見た。




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