第4章 魔王の秘密(5)
「ありがとう。まずは、おじいさま。確か一月後に神殿で5年に一度の王族会議があったわよね?」
「ああ、開催するが。それがどうした?」
エリスはもう一度にっこりした。
「そこでド派手にやりましょう。」
「ああ、それはいいな。度肝をぬかせてやるぜ。」
アージェンの言葉にエリスは異をとなえた。
「アージェンは来ちゃダメよ?倒されたことにするんだから。」
「え?」
「は?」
「それは面白そうですね。」
それぞれの反応をみて、エリスは話し出した。
「そもそも私が魔王にさらわれたのが原因でしょ?だったら、私が魔王を倒せばいいんじゃない?」
「ほう、それは面白い。ワシも参加させろ。」
「いやあ、それは楽しそうです、是非私も参加します。」
「いやいや、ちょっと待てよ。俺、どうなるんだ?」
「だから、倒されたフリをするの。つまり・・・・。」
エリスは、淡々と説明していった。
・・・。
・・・・・・・。
その話を聞き終えて皆は、ニヤリを笑った。
「それは面白いな。」
「うむ。流石はエリスじゃ。」
「なるほど、そういうことですか。いいかもしれませんね。」
こうして、エリスの計画は王族会議にて、実行されることになった。
月日は流れて・・・・。
ここは天空神殿。
今日は王族会議の日。
世界各地より、王族たちがあつまってきている。
やむを得ず欠席する王族たちもいるし、代理をたてる王族もいる。
つまり、この日天空神殿は王族たちで溢れかえっていた。
「いやあ、久しぶりですな。どうですかな、あの鉱山は。」
「おかげさまで、なんとか落盤事故もおさまり、新たな坑道を見つけました。」
「ほう、それはよかったです。そういえば、お聞きになりましたか?」
「ああ、あの話ですか?実際のところどうなんでしょう?」
「実はそれを知りたくて本日参加したのですよ。」
「やはり、そうですか。実は私もなんです。これは会議が楽しみですな。」
会議の始まるまでの時間。
あちこちで王族たちはいろいろな情報を交換していた。
その中には、本日ある重大な事実が発覚するらしいとの、噂があった。
この噂は、カルロ三世や、ネスたちが広めたもので、確かなことは伝えていなかった。
今年の王族会議では、重大な事実が発覚する。
しかも、それは10年前のあの事件にかかわることであると・・・。
その噂だけで、誰も詳しいことは知らない。
聖リンカ公国の王の元にたくさんの王族たちが集まっていたが、王はのらりくらりと話をそらし、最後にこういった。
「もうすぐわかりますから。もうしばらくの我慢ですよ。」
そして、会議が始まった。
会議の進行役は、天空神殿の主が選んだ人物で、この人物のひとことから会議は始まった。
「それでは、会議を始めます。まず始めに、世界規模で起こった大干ばつの件について報告いたします・・・・。」
議題は大干ばつの件から始まり、どこそこの国が戦を始めようとしているとか、あそこの国は暴利をむさぼっているとか。
様々な議題が提示されて、意見をいいあい、次の議題へと移っていった。
しかし、あの噂についてはまだ何も話されていない。
いつ話されるのか。
そのことが会議出席者たちの脳裏をうめていた。
実はこの王族会議は一週間の期間があり、最初と最後に王族全体が集まり、会議場にて話し合いがされる。
しかし、最初と最後の日以外はそれぞれの国が話し合うために、会議場ではなく、別の部屋を借りて話し合いがされることになっていた。
つまり、全ての王族たちが集まるのは最初と最後だけ。
それ以外は自分たちでなんとかしろ、というのがこの会議であった。
そのため、王族たちは最後の会議であの噂について話があると思っていた。
その考えは、昼食をとり終えて、初日の議題が全て終ったときに崩れ去った。
「ええと、それでは次の議題ですが・・・。」
「少し皆にはなしたいことがある。」
そういって、カルロ三世は声を張り上げた。
突然のカルロ三世の声に王族たちは驚いた。
「突然だが、我が血筋であり聖リンカ公国の王女である、エリスが帰ってきた。」
その言葉に一瞬会議場は静まり返った。
しかし、それもわずかなこと。
王族たちはひそひそと話し始めた。
あの噂の真相がここで聞けるのだと。
王族たちは耳をすませてカルロ三世の言葉を待った。
「詳しいことは最終日に話すことになるが、最終日に話すはずであった魔王討伐。この議題は話す必要はない、とだけいっておく。」
そういうと、カルロ三世は席をたった。
「カルロ三世陛下、どちらへ。」
進行役がカルロ三世に声をかけた。
「なに、今日の会議は終わったのだ。もういいだろう?」
その言葉に会議場を見た進行役は、ため息をついた。
会議場はカルロ三世の言った言葉に翻弄されて、王族たちがあちこちでひそひそと、話し合っていた。
その様子に、またため息をついた。
「しかたありません。本日はこれで終了と、させていただきます。」
進行役の一言にカルロ三世はニヤリと、笑った。
「詳しい話しは最終日にエリスより話してもらうことになるだろう。」
カルロ三世はそれだけ言うと、会議場から立ち去った。
残されたのは、王族たち。
「おい、どうなっているんだ?」
「エリス姫が、話すとか言っていたが。」
「生きていたのか。」
「いや、わからん。しかし、なぜ今になって。」
王族たちは口々に話した。
そして、気づいた。
「そういえば、魔王討伐の話しは必要ないとか。」
「それは誰かが倒したということか?」
「ならば、誰が。」
その話を会議進行役の人物は、息をひそめて聞いていた。
「やれやれ、流石はわが婚約者どのですな。」
会議場の全員が声のした方を見た。
その一言を放ったのは、クテルクス帝国の王族。
しかも、エリス姫の元婚約者であったダリス皇子であった。
「ダリス皇子、それはどういう意味ですか?」
一人の王族が、ダリス皇子に聞いた。
「おや。わかりませんか?エリス姫は私の婚約者ですよ?姫の力は私が一番よく知っていますから。」
そういうと、ダリス皇子は前髪をキザにかきあげた。
「ふん、確かに昔はエリス姫の婚約者であったが、今は違うだろう?」
「そうだ、10年前の事件で解消されたはず。」
王族たちの言葉に、ダリス皇子はニヤリと、笑った。
「それは違いますよ。あのときはああするしかなかったのです。そもそも解消の話しは聖リンカ公国から出た話です。我が国はそれにたいして保留と、いう形をとっています。」
「しかし、皇子はすでに別の姫ぎみと結婚されているはず。」
そういった人物を、ダリス皇子は睨み付けた。
「誤解もここまでくると滑稽ですな。それは違います。かの姫ぎみとは、そのようなことになっておりません。私はまだエリス姫を愛していますから。」
「はあ。」
小さくため息をつき、今までの話を聞いていた会議進行役はこれから始まるであろう茶番劇を予想した。
おそらく、クテルクス帝国は、聖リンカ公国から脅され仕方なく解消という形をとらされた。
そして、その話を鵜呑みにした別の国がクテルクス帝国と同盟を結ぶために姫ぎみを無理やり送り込んだ。
ダリス皇子は姫ぎみを邪険に扱えずに、とりあえずクテルクス帝国に滞在させているだけだと。
そこまで想像して進行役は、部屋を出た。
部屋を出た進行役は、神殿奥にあるカルロ三世のプライベートエリアに入っていった。
そして、ある一つの扉の前に立ち小声で呟いた。
「かの君より託された力をもって今扉は開かれん。」
その言葉に反応してカチャリと扉から音がした。
そして、進行役は扉を開けて中に入っていった。
「おお、遅かったな。」
「お疲れ様、どうだった?」
中にいたのは、カルロ三世とエリス姫。
「カルロ三世陛下、エリス姫の話しは会議開始から二日後に皆を集めてするのではなかったのですか?」
それに答えたのは、ネスであった。
「ああ?じいさん、エリスの計画を邪魔したのか?」
ネスの言葉にアージェンは眉をひそめ、カルロ三世を見た。
「いや、それはだな。」
エリスの方を見ながら小さくなって答えた。
「まあ、仕方ないわ。とりあえず今のところうまくいっているんでしょ?」
エリスの言葉にネスは頷いた。
「はい、クテルクス帝国の皇子が適度に話をつくって話してましたので、おそらくこちらの予定通りに進むはずです。」
「となると、計画は続行だな。」
「そうね。ではおじいさま、第2段階にはいりましょう。」
カルロ三世はその言葉に頷いた。
「わかった。では新たなる火種を灯すとしようか。」
その言葉に部屋にいた3人は頷いた。
初日の会議が終わり、王族たちはそれぞれの部屋に戻っていった。
会議場に一人残ったのは、ダリス皇子であった。
「ふう、なかなか面白いことになりつつあるな。どう思う?」
誰もいないはずの会議場から少しくぐもった声が小さく聞こえてきた。
『ここからが本番でしょう?こちらの計画は察知されていません。うまく立ち回ってくださいね。』
「はいはい、わかりましたよ。まあ、今度こそエリス姫を手に入れる。」
クスリと笑い、ダリス皇子は会議場を出ていった。
後には不気味な静けさが残された。
会議二日目。
この日から五日間はそれぞれの王族たちが自分達の利益のために、あちこちでさまざまな事柄を話すことになる。
そこにはカルロ三世も含まれており、王族たちは天空神殿の主と縁を結ぼうと画策を繰り返していた。
こんなことは、毎回のことなのでカルロ三世も王族たちの我が儘に付き合ってばかりはいない。
必要と思われる案件のみに口をはさみ、それ以外はスルーした。
しかし、今回は違った。
カルロ三世は王族たちのどんな話し合いにも参加した。
そして、様々な案件に取り組んだ。
そのおかげで、この数日で複雑な案件のほとんどが、解決した。
それと同時にカルロ三世は、新たな火種を王族たちに与えた。
曰く
エリス姫は捕まってから10年の間に魔力に目覚めたらしい。
しかもその力は、強い。
この火種が最終日にうまく燃え盛るように、カルロ三世は慎重に話をすすめた。
「いやいや、我が孫ながら、魔力に目覚めるとは驚いた。しかもそれは魔族とは違う新たな魔力みたいなのだ。」
「カルロ三世陛下、それは本当ですか?」
「それが事実ならばエリス姫の魔力とはどんなものなのでしょう?」
王族たちは、カルロ三世の話にひきこまれていった。
そして、その話が全ての王族たちの耳に入ったのは、最終日の前日であった。
「とりあえず、魔力をもったエリス姫、という偶像は出来ました。あとは明日の仕上げを待つだけですね。」
「えぇ、なんとかなりそうね。」
ネスと、エリス姫の話を聞きながらアージェンは考え事をしていた。
それに気づいたエリス姫はアージェンに近づき尋ねた。
「アージェン、どうしたの?何か気になることがあるの?」
顔をのぞきこまれアージェンは顔を上げた。
「いや、ちょっと気になることがあってな。気のせいかと思ってたが、そうではないらしい。」
アージェンの言葉にエリスは驚いた。
「え、どういうこと?」
「この神殿に魔族がいる。」
「アージェン以外にいるの?」
「ああ、やはりいますか。なんだか見られているような気がしていたんですよ。」
「お前も気づいたか。」
ネスの言葉にアージェンはやはり、という顔をした。
「まあ、害は無さそうなのでそのままにしましたが。ちなみにどんな魔族ですか?」
「ん、まあ、なんというか、ちょっと厄介な感じで。」
要領を得ない発言にエリスは、ムゥと口をとがらせた。
「アージェン、はっきりいって。一体誰なの?」
エリスの言葉にアージェンは眉をひそめた。
「とりあえず、明日まで様子をみる。大丈夫だ、作戦に変更はない。」
「まあ、いいわ。とりあえず、明日の会議で私が話せばすむことでしょう?魔王を倒したのは私だと。」
「えぇ、そうです。エリス姫の魔力により魔王は倒された。その証拠として、アージェンの黒い羽を見せれば大丈夫でしょう。」
ネスに言われてエリスは胸元から1枚の黒い羽をとりだした。
「そして、魔力を持つ魔族や魔獣は、私が持つ光の魔力により浄化すれば穏やかになり、人を襲うこともなくなるため、天空神殿に集めるようにする。」
「仕上げにクテルクス帝国のダリス皇子には、それなりの報復を。」
そこまでいい、ネスはニヤリと、笑った。




