第4章 魔王の秘密(4)
王妃とお茶をするということは・・・。
城の中にある談話室に向けてアージェンは意識をはしらせた。
確かに談話室には王妃、エリス、イルンの存在が確認できた。
しかし、もう1人。
誰かいることも分かった。
「くそ、間に合うか。」
アージェンは談話室へと急いだ。
バタン。
大きな音を立ててアージェンは部屋のドアを開けた。
そこには・・・・・・。
ドアを開けて正面に大きな窓。
その窓の近くに王妃とイルン。
視線を横にそらせば、エリスと1人の男。
男はエリスの腕をつかんでいた。
エリスはなんとかその腕を放そうともがいていたが、男の力が強いのか、全く効果はなかった。
「エリス。」
アージェンはエリスの元に駆け寄った。
しかし・・・・・。
男はエリスを自分の背に隠し、アージェンに向き合った。
「貴様がエリスを連れ去ったものか。」
男の低い声にアージェンは眉をひそめた。
「だとしたらどうだというのだ。」
「アージェン、やめて。違うの。」
エリスが必死な顔でアージェンに言った。
「少し我慢していてくれ。すぐに終るから。」
アージェンはそういうと、腕につけていた封印石の腕輪をはずした。
腕輪を外すことによって、封じられていた魔力があふれだした。
部屋の中が微妙に暗くなり、圧迫感が部屋をうめつくしていった。
「ほう、少しはできそうではないか。しかし、まだまだだな。」
男は魔力を解放したアージェンをものともせず、こぶしを振り上げアージェンに襲い掛かった
「くっ。」
とっさに受け止めたアージェンだったが、その力の強さに半歩後ろに下がった。
「アージェン、やめて。」
エリスの声を聞いてもアージェンはとまらなかった。
「その程度で終るのではないのだろう?本気でかかってこい。」
アージェンはあえて男を挑発した。
とりあえずエリスから引き離そうと考えた。
しかし、次の瞬間。
アージェンは目を見開いた。
「おじい様もやめてください。」
そういってエリスは男の頭をハリセンでたたいた。
スパァーン。
今、すっごいいい音がしたなあ。
さすがエリスだ。
アージェンは少し現実逃避した。
夫婦喧嘩になると突然出てくる謎のハリセン。
エリスに聞いても内緒といい教えてくれない。
なんとしてもあの謎を解かなければ・・・。
オレに解けない謎はない。
少しばかりアージェンは混乱していた・・・・。
そして、我にかえった。
今、なんていった?
おじいさま?
・・・・・・。
「ええっ。どういうことだ?」
アージェンはハリセンで叩かれた男を見て、エリスに聞いた。
「ああ、アージェンは初めて会うのだったかしら?この人は、父方の祖父にあたるんだけど、ちょっとした職業のせいで、普段はこの城にいないの。」
エリスの説明にアージェンは驚いた。
祖父。
まあ、いてもいなくてもある意味関係ないんだが・・・・。
しかし。
この男のエリスを見る目。
少しばかりおかしい。
「まあまあ、エリス。それではあまりにもおじい様がかわいそうよ。きちんと説明してあげなさい。」
王妃の言葉に渋々といった感じでエリスは話した。
「えっとね。実はちょっとした職業と言うのが、天空神殿の主になるんだけど。それで、この前ちょっとしたことがあったでしょ?だから、少しばかり心配なんだと思うの。」
「実はエリスのことを溺愛してるのよ。昔はエリスが視界からいなくなるだけで、大騒ぎしてたくらいなの。今は少し落ち着いているんだけど、神殿から拐われたことで、またぶり返したみたいなの。」
王妃の言葉に魔王は少し目眩を覚えた。
だからエリスを見る目が違ったわけか。
何だか疲れた。
「エリスは可愛すぎるのだから、仕方なかろう。そもそもあの結婚自体、ワシは反対しておったのだぞ?それをなんとかするから放っといてなどというから。」
なるほど、確かになんとかしたな。
「因みに天空神殿の主とは、なんなんだ?」
魔王はエリスに質問した。
「それは、」
「おや、もう終わったのですか?意外に早かったですね。」
エリスの言葉を遮り、ネスが部屋に入ってきた。
「あらネス、仕事は終わったの?」
「今はカルロ三世陛下がおみえですから、こちらの相手が最優先事項ですよ。」
いろいろな言葉が飛び交い魔王はため息をついた。
「誰でもいいから全部説明してくれ。」
その言葉にネスが話始めた。
「こちらにいらっしゃるのが、エリス姫の父方の祖父で、天空神殿の主であるカルロ三世陛下であらせられます。」
「因みに天空神殿の主とは、世界から一目おかれていて、その発言は絶対的なモノになるらしいわ。私はよくわからないんだけど。ただのおじいさまだから。」
つまり絶対的な権力を持つエリスを溺愛するジジイ。
そういうことか。
「で、今回はどうしてこの城に来ているんだ?普段はいないのだろう?」
「それはですね・・・。」
「エリスが帰ってくるというから、来ただけだ。文句あるのか?」
「まあ、早い話、この城を見張っていたみたいでして。」
どこまでもエリスLOVEなのか・・・。
「とりあえず、お茶でも飲んで、ゆっくりしないか?イルンもびっくりしているみたいだし。」
初めてあった曽祖父が父めがけて、拳をあげるなどなかなか見れるものではない。
「そうねえ、お茶にしましょう。」
王妃の一言でお茶会が再会された。
お茶を飲んで一息ついたところでアージェンはたずねた。
「実際のところ、なんでいるんだ?」
カルロ三世は鼻で笑った。
「そんなこともわからんのか。エリス、今からでも遅くはない、ワシのところに来い。不自由はさせんぞ。」
「おじいさま、それは出来ません。そして、意地悪しないで教えてください。」
エリスの言葉にカルロ三世は、デレっとした。
「エリスが言うのなら仕方ないな。実は、魔王討伐の件で話したいことがあるのだ。」
その言葉に皆は背筋をのばした。
「どういうことなの?魔王討伐って。」
エリスはアージェンを見た。
アージェンは苦虫をつぶしたかのように、顔をしかめた。
「その話ならば、違う部屋で話そう。」
アージェンはそういうとカルロ三世を見た。
「アージェン、これは私にも関係ある話しでしょ?おじいさま、その続きを教えてくださいな。」
エリスのお願いにカルロ三世は、そのまま話を続けた。
「今、世界では魔族を危険視する声が高まっておる。その一つは10年前の花嫁強奪事件だ。そして、現在はさらに魔族を束ねておる魔王を倒すことでエリスを助け出し、世界に平和をもたらそうと、ばかげたことを考えている輩がいるのだ。」
「それって、魔族に対して戦いをするということ?」
「ああ、そうじゃ。しかし、この考えを持っているのはまだ一部の国。今の内になんとか対策を立てようと思って、今日はこの城に来たんだ。」
カルロ三世の言葉にエリスは、顔を青ざめさせた。
「こんなことになるなんて。」
そうつぶやいてエリスは顔を伏せた。
それを見て、アージェンはエリスの隣に移った。
「エリス、そう嘆かないでくれ。オレのことならばどうとでもなる。どちらにせよ、魔力を持たない人間が俺たち魔族にかなうわけはないのだから。」
アージェンの言葉にエリスは、ハッと顔をあげた。
「そうよ、そうじゃない。かなうわけないのになんで、戦いをするの?」
「その答えは私からお話します。」
そういうとネスは、カルロ三世を見た。
「カルロ三世陛下。一つお聞きしたいのですが、よろしいですか?」
「ああ、なんじゃ?」
「実は我が領地から発掘される封印石の情報がもれているみたいなんでが。何かご存知ですか?」
ネスがそういうとカルロ三世は、あからさまに視線をおよがせた。
「な、なんのことじゃ?ワシは全く知らん。」
確実に何か隠しているとわかる態度で、カルロ三世は話した。
それをみて、エリスはカルロ三世のそばに行き、手を握った。
そして瞳に涙をうかべ少し上目遣いで首をかしげて言った。
「おじいさま、本当のことを話していただけませんか?これは私にも関係のある話なのです。」
そんなエリスにカルロ三世は落ちた・・・。
「実はな、ある国から魔力のことで相談があるとかで封印石のことをはなしたことがある。もしかしたら、封印石を使って魔王をなんとかするつもりかもしれん。」
その言葉にアージェンは、フムと考えた。
封印石。
これのおかげで、アージェンたち魔族はかなり助かっていた。
魔力を封印することによって、魔力の暴走がかなり減ったのである。
「ちなみに、そのある国っていうのは、どこなんだ?」
アージェンの言葉に皆はカルロ三世を見た。
はあ、っとため息をついて、カルロ三世は答えた。
「言ってきたのは、クテルクス帝国だ。」
その言葉にエリスは、驚いた。
「それって、私の元婚約者の国じゃなかった?」
「そうですよ、やはりあの国が関わっていたんですね。」
クテルクス帝国。
エリスと結婚しようとしていた国。
それを聞いてアージェンは立ち上がった。
「どこにいくの?」
エリスの言葉にアージェンは、ニヤリと笑った。
「ちょうどいいから、決着をつけてくる。」
「決着?」
その会話を聞いたネスは、なるほどとうなずいた。
「ああ、それはいいかもしれません。一度痛い目を見ないと分からない輩みたいですし。こちらとしても、いい加減うんざりしていましたから。」
「そういうことならば、ワシも行くぞ。」
アージェンとネスは顔を見合わせて、ため息をついた。
「これは、魔王という立場の者が行うことで効果が発揮できるんです。カルロ三世陛下はおとなしくしていてください。どうしてもというのでしたら、その後のフォローをお願いします。」
「仕方ないな、では派手にやってきてくれ。あの国はもともと好かん。」
男たちの会話についていけないエリスは、考えた。
痛い目にあわせるって、どういう・・・。
まさか・・・・。
一つの考えに至ったエリスは恐る恐る尋ねた。
「ねえ、もしかしてクテルクス帝国に攻め込むつもりじゃ・・・。」
「攻め込むなんてことはしないぞ。ちょっとばかり脅すだけだ。」
「どちらにせよ、魔王討伐という名目がでているわけですから、ほっとくわけにはいかないんですよ。」
「なに、心配はいらん。この男がいなくなったのであれば、ワシのところにこればいい。」
男たちは口々に言った。
「おい、ちょっと待て。俺がいなくなるわけないだろう?バカなこといってんじゃねえよ。」
「はん、どうだかな。あの国は少しばかり厄介だぞ。」
「それはどういう意味だ?」
「あの国には、ひそかに魔力の研究をしているという噂があるんですよ。」
ネスの言葉にアージェンは驚いた。
魔力の研究。
その言葉に魔王は嫌な予感がした。
「最近、俺の国にくる魔族が減ってきている。つまりはそういうことか?」
魔力の研究による人体実験。
「その可能性は高そうですね。」
少しうんざりしたような声でネスは答えた。
「だったら尚更痛い目にあわせてやるまでだ。」
エリスはそれを聞いて、はっとした。
そうだ。アージェンは誰よりも魔族たちを心配している。
そして私は、アージェンの妻だ。
その事を思い出して、エリスはニッコリ笑った。
「ねえ、ちょっとお願いがあるんだけど。」
エリスの言葉に男たちは、エリスを見て固まった。
なんだろう、この圧迫感。
アージェンが腕輪をとり、溢れた魔力よりも威圧感が半端ない。
「どうせならば、魔王討伐の件と魔力の研究、さらに私の誘拐事件までを、一気に片付けましょう。」
エリスの言葉に一同は驚いた。
「エリス、一体何を考えているんだ?危ないことはさせないぞ。」
アージェンはエリスに向き直った。
「安心して、危険はないから。ただ、おじいさまとネスの力が必要なの。お願いできるかしら?」
その言葉にカルロ三世は頷いた。
「エリスの願いなど、久しぶりだ。なんでも言ってくれ。」
「何を企んでいるのかわかりませんが、協力させていただきます。」
それを聞いてエリスはニッコリ笑った。




