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第4章 魔王の秘密(3)


「悪い。そういう所は普通の女と、変わらないな。」


魔王は、エリスを見つめた。


「少し話したい。最後まで聞いてくれ。」


魔王の言葉にエリスは、不安そうに見た。


「何よ?話って。」


「はっきり言おう。俺はお前に一目惚れした。しかし、お前はとりあえずで俺を選んだのだろう?もし、好きなやつがいるのならばわが国によんでもいい。だからはっきり言ってくれ。」


突然の魔王の告白にエリスは狼狽えた。


「うそ、なんで?」


「何故こんなところで嘘をつく必要があるんだ?」


「だって、私たち出会ったばかりよ?それなのに好きになるの?」


「時間は関係ない。結界の森で初めて見たときから、気になっていた。そしてここまで一緒にいてやはりお前のことが気になって仕方がないんだ。だから教えてくれ。恋人はいるのか?」


魔王の言葉にエリスは、目を伏せた。

その行動を見て魔王は思った。

やはり好きなやつがいるのだと。

それが言えなくて、こんなことになったのだと。


「わかった。とりあえず、式はぶち壊してお前を拐う。そのあとのことは、後でかんがえよう。」


その言葉にエリスは顔をあげた。


「ちょっと勘違いしないでよ。実は私も…。」


「ん?なんだ?最後声が小さい。」


「だから、私もあなたが好きなの!」


魔王はエリスの言葉に驚いた。

そして、不意にニヤリと笑い、エリスを抱き締める腕を強めた。


「お前、素直じゃないな。しかし、そういうお前もいいな。」


魔王はそういうと、エリスの額にキスをした。


「なっ。」


エリスは額に手をあて顔を赤らめた。

その仕草に魔王は口に手をあてた。

ヤバイ。可愛すぎる。


コホンと、咳をし魔王はエリスに言った。


「では、俺と結婚してくれるんだな。」


その言葉にエリスは頷いた。

それを聞いて魔王は、地上へと戻り始めた。


「ねえ、そう言えば思い出したんだけど、私はあなたの国にはいれるかしら?」


「何故だ?」


「だって、魔力がないと入れないって。」


「ああ、そのことか。結界を解いてもいいし、確か魔力を封印してると言ってなかったか?」


「あら、聞こえていたの?魔力を封印したのはネスなの。あの時は魔力などいらないから詳しく聞かずに封印してもらったから。元に戻せるかしら?」


「まあ、とりあえず聞いてみるか。」


ちょうど地上に降りた魔王たちは、既に国王達がいないことに気づいた。


「ああ、お昼の休憩が終わったのね。夕食までは執務室で仕事だから、それまでお茶でもしていましょう。」



魔王とエリスは手をつないで城の中に入って行った。


ーーーーーーーー


「という感じなんですよ、実は。」


第一の魔王と聖女の話を聞いたサツキは驚いた。

全然話が違う。


「あの、それで続きは。」


カインはサツキの言葉にニッコリ笑い答えた。


「その前にお昼ご飯にしましょうか?」


「え?」


窓の外はすっかり陽がのぼり、明るい光が部屋を照らしていた。


「もうこんな時間なの。」


「かなり夢中になって聞かれてましたからね。この部屋に食事を用意させますから、少し待っていてくださいね。」


カインはそういうと部屋を出ていった。

サツキは窓際で寝ているウルちゃんに近づいた。


「ねぇ、ウルちゃんはこの話知っていたの?」


サツキの問いにウルちゃんは頷いた。


「無論知っている。その続きも第二、第三の魔王の話もな。」


「ねえ、やっぱり、人の話っていうのは当てにならないのかな?」


「ん?急にどうしたのだ?」


「え、ちょっとね・・・。」


サツキは自分の世界であったあの日のことを思い出していた。


「まあ、話したくなったときに誰かに話せばいい。幸いまだこの世界にいるのだからな。」


その言葉にサツキはありがとう、と小さく答えた。

しばらく、ウルちゃんの毛並みをなでているとカインが戻ってきた。


「お待たせしました。では準備しますね。」


カインはそういうと食事の準備を始めた。

テーブルの上にはおいしそうな食事が並び始めるとサツキはテーブルに戻った。


「では、サツキさん、たくさん食べてくださいね。」


カインの言葉に促されてサツキは、食事をした。

サツキが食べている間、カインはにこやかに笑いながら、お茶を楽しんでいた。


「あの、カインさん、そろそろおなか一杯なんですが・・・。」


あらかた食べ終えたサツキだが、テーブルの上にはまだたくさんの食事が残っていた。


「ああ、無理しないで下さい。料理長がすこし張り切って作りすぎたみたいで。でも、最後にコレは食べていただきますね。」


そういって、サツキの前にガラスの器に入った、アイスクリームが置かれた。


「うわあ、おいしそう。」


「料理長オススメの一品ですよ。」


「いただきます。」


サツキはスプーンで一口すくい口の中に入れた。

甘いアイスと少しビターなチョコの組み合わせで、甘すぎずサツキは気に入った。


「スッゴイおいしいです。」


「それはよかったです。」


カインは最後の一口を食べ終えたのを確認して、テーブルの上を片付けはじめた。


「あ。私も片付け手伝います。」


サツキはカインの手伝いをしようと立ち上がりかけたが。


「ああ、大丈夫ですよ。コレも仕事ですから。」


と断られてしまった。

仕方なく、サツキは椅子に座りカインの動きを見ていた。

それを見て、カインはクスリと笑った。


「もうすぐ終りますから、待っていてくださいね。」


サツキに語りかけると、片付けた食器をもって、部屋を出て行った。

それから数分後・・・・・。

部屋のドアが開き、カインが戻ってきた。

それを見て、サツキはニッコリ笑った。


「お疲れ様です。」


それを聞いてカインもニッコリ笑った。

カインは再びサツキの前に座り、サツキを見た。


「さて、続きを話しましょうか。」


その言葉にサツキは背筋を伸ばした。


「まあ、結局計画通りに話は進みました。アージェンがエリス姫を式場から拐い魔族の国に連れていったんです。そして、二人は幸せに暮らしていました。魔族たちもアージェンが選んだ伴侶である、エリス姫をあたたかく迎えたんです。しかし、外の世界では魔族がエリス姫を拐ったことが問題になっていました。」


「え、それはエリス姫の相手が何かしたんですか?」


「はい、目の前で花嫁を奪われたのですから、相手からみればバカにされたようなものでした。そのため、魔族が世界を征服するために姫を拐ったのだと、世界に広めたんです。」


サツキはそれを聞いて驚いた。


「でも、魔族たちはなにもしていないんですよね?それなのにどうやって魔族が世界を征服するつもりだなんて、言ったんですか?」


「実際、魔族のなかでも好戦的な魔族もいましたから。あながち嘘を言っていたわけでもないんです。さらに、時期が悪かったんですよ。」


「時期?」


「大干ばつが世界的に起きたんです。そのために、田畑は荒れ果て川は干上がり、動物や人々は飢饉におちいりました。しかし、魔族の国は緑あふれていたんです。」


それを聞いてサツキは眉をひそめた。

それは、誤解される。

人々は必ず緑豊かな国を恨むだろう。

そして、その次におこるのは。

そこまで考えて、サツキは考えをやめた。


「それでどうなったんですか?」


サツキの質問にカインは答えてくれた。


「エリス姫の実家である聖リンカ皇国から、アージェン国に対して密やかに救助が要請されました。魔王アージェンは、その要請を受け秘密裏に魔族を動かしたんです。それは、魔力による干渉でした。」


魔力による干渉。

どういうことだろう?

心の声が聞こえたのか、カインはサツキに教えてくれた。


「魔力による干渉とは、自然界に魔力を放ち弱りきった力を取り戻すようにしむけることです。例えば、乾ききった大地に対して、水気を与えたりとか。」


なるほど、魔力で世界を助ける訳なんだ。


「しかし、それでも足りなかったんです。元々魔力は万能ではないんです。破壊が得意な魔力、癒しが得意な魔力、こんな感じで区分けされているんです。ですから、すぐに救援活動ができるのは、魔王様くらいでした。地道に活動して10年が過ぎ去った時に事件は起きました。」


事件?

不吉な言葉にサツキは眉をひそめた。


「魔王様とエリス様がご結婚されて、お子さまが産まれて、そのお子様をエリス姫のご実家にお披露目するために行ったときのことです。」


ーーーーーーーーーーーーーー


「久しぶりだね、エリス。」


「元気そうね。安心したわ。あの後、連絡はとっていたけど、実際に会っていなかったでしょう?」


「父上、母上。ご心配をおかけしました。しかし、私は元気ですよ。」


そういってエリスは、ニッコリ笑った。


「御無沙汰しております。本来でしたら、もう少し早く来たかったのですが。」


アージェンもまた、エリスと顔を見合わせてニッコリ笑った。

そして、アージェンの腰の辺りにしがみついていた子供がこっそり顔を覗かせた。


「ほら、きちんと挨拶をしなさい。」


エリスに言われて子どもはアージェンのそばを離れて、エリスに近寄った。


「あの、初めまして。イルンです。」


恥ずかしそうに挨拶したのは、アージェンとエリスの間に産まれた男の子だった。


「まあ、なんて可愛いの。小さい頃のエリスにそっくりよ。」


「ああ、そうだな。目元がそっくりだ。」


国王夫妻はイルンを見てニコニコ笑った。


「イルンが大きくなって魔力が安定するまで、会いに来ることが出来なかったのよ。ごめんなさい。」


「いや、こうして会えただけで十分だよ。今日はゆっくりしていけるのかい?」


国王の言葉にエリスたちは頷いた。


「では、今日はいろいろお話を聞かせてね。」


王妃はそういうと、イルンに近寄った。


「さあ、イルン。あなたのことも教えてちょうだい。好きな食べ物はなにかしら。お茶を飲みながらゆっくりお話ししましょうか?」


その言葉にイルンはエリスを見た。

エリスはコクンと、頷いた。

それを見てイルンは顔をきらめかせた。


「はい、僕もたくさんお話ししたいです。」


王妃はイルンとエリスを連れて城の中に入って行った。

残されたのは、国王とアージェン。


「では、少し真面目な話をしましょうか。」


そこに突然現れたネス。


「久しぶりだな。」


アージェンはネスに挨拶した。


「そうですね、あれから10年経ちましたから。」


「そうか、もうそんなに経つんだな。」


あの、エリス姫誘拐事件は世界を仰天させた。

王族の結婚式に余所者が紛れ込み、花嫁を誘拐した。

この事実は世界の国々に動揺をもたらした。

魔族の襲来。

いままで大して脅威を感じていなかったが、この事件により魔族の危険度があがったのだ。

人ではないと、迫害をうけていたころとは違う。


「あの事件から魔族へのあたりはさらに厳しくなりました。そのために世界はあることを決めたんです。」


世界を助けるために時々魔族の国から出ていたアージェンは、ネスの言いたいことがわかった。


「魔王討伐、だな。」


その言葉に国王は険しい顔をした。


「わが国はエリスを拐われた。その事に同情する国はたくさんある。しかし、魔王を倒そうということを言い出す国はなかった。」


「それが今になって言い出したということは。」


「エリス姫の元結婚相手ですよ。」


「やはりそうか。」


「魔王を倒せば、エリス姫を奪還出来るしと、一石二鳥な考えを持ったみたいです。」


さらに世界は緩やかにではあるが、回復しつつある。

その事が拍車をかけるかたちになっていた。


「それで、どうするつもりですか?」


ネスの言葉にアージェンはニヤリと笑った。


「まあ、当然オレは倒されるつもりはない。従って、ある程度の抵抗はさせてもらうことになる。だが・・・。」


「当然、ある程度の犠牲者はでることになるでしょう。」


ネスの言葉に国王もうなずいた。


「被害を最小限に抑える為にも、情報を交換する必要があるな。」


そこでふと、アージェンは顔を上げた。


「何か聞こえなかったか?」


アージェンの言葉に国王たちは耳をすませた。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


「エリスか。」


城から聞こえたエリスの声にアージェンは駆け出した。

城の中に入っていったアージェンを見て、国王も立ち上がり城に駆け出そうとした。


「お待ち下さい。大丈夫ですよ。陛下。」


ネスの言葉に国王は立ち止まった。


「何か知っているのか?」


「はい、実はあの方がお見えになっています。エリス姫が本日城に来ることを秘密裏に知ったようで。」


その言葉に国王は、驚いた。


「なに?それは本当か?だとすると、アージェンがやばいのではないか?」


「まあ、仕方ありません。一度は通らなければならない道ですから。」


少しうんざりした様子でネスは城を見上げた。


「そうだな。これも一つの試練だな。」


国王はこの後に起こるだろう出来事に頭を抱えた。

突然聞こえたエリスの声にアージェンは城の中を走り抜けた。


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