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闇とは

天黎と碧黎は、ルシウスと別れて月の宮の上空に浮いて月を眺めていた。

碧黎は、言った。

「…あれの存在意味。我は考えたのだ。あれは、間違いなく闇が地上に出現した初めの命だった。それまで、あんなものは地上には居なかった。人や神が生み出す黒い霧が、鬱陶しく感じて我がなんとか地の気で地中へ引き込んで時間を掛けて浄化する中で、それが追い付かぬようになって参った頃に出現した命だった。月はまだ居なかった。我が、そんなことに考えが及ばなかったからぞ。神や人が、あれに大量に影響されて死ぬのを見て、直接に浄化できる存在、月を作ろうと考えた。そして生み出し、それを月に上げたが、間に合わぬかもしれぬと焦った。実際、あの性質でなければ間に合っておらなんだだろう。これは偶然なのか?我には分からぬのだ。」

天黎は、苦笑した。

「分かっておろうが、偶然などない。全ては必然。主の浄化が間に合わぬほど、霧が増えたからこそ闇は生じた。」

碧黎は、それは事実を述べているだけだろうと顔をしかめた。

「それが事実ぞ。だからなんだ?」

天黎は、言った。

「考えよ。その事実からどう思うのだ。ルシウスは、生まれたその時から力の使い方も命に刷り込まれていた。あれ以上地上に霧が増えたら人や神はどうなるのよ?」

碧黎は、眉を寄せた。

「それは…闇にならぬでも霧は善良なものですら狂わせるゆえ、地上は霧の影響を受けたもの達ばかりになる。生まれても生まれても、学びどころではなくなる。」

天黎は、頷いた。

「その通りよ。人や神は、特に善良な命であるほど何を望む?」

碧黎は、眉を寄せたまま言った。

「…霧に影響されずに学びたいと望む。」碧黎は、ハッとした。まさか…。「…闇は、人や神が作った。もしかして、あれは善良な命の望みを受けて生まれたのか。地上の霧を何とかしてくれと…それを扱える命を望んだゆえ、霧の長として霧の中からその力を凝縮して?」

天黎は、微笑んだ。

「分かったではないか。我は、常申しておったであろう。闇は、人や神が生み出したのだと。」

碧黎は、目の前が開かれるのに次々に言葉を出した。

「だからあの時に出現したのか!ゆえにあれは善良な思考を持っておるのか…その初め、善良な命の望みを体現して出現したから。ゆえにあれほどの長い時を、籠って生きる選択ができたのか。」碧黎は、そう思うと、月を作り出した自分が何やら、早計だったように思えて、顔をしかめた。「…ならば消そうと月を生み出すなど、我はよく見ていなかったのだの。」

天黎は、碧黎の頭をポンポンと叩いた。

「それはそれで良いのよ、いくら闇でもたった一人では地上の霧を全て消費などできぬし、消す存在も必要だった。しかしそれは、同じ責務を持って生まれているルシウスすらも消す可能性があった。ゆえ、我はわざわざルシウスに知恵を与えたのだ。いつか参るこんな日のためにの。主らは選択を誤らなかった。これでルシウスは、本来の責務に邁進できる。案じていたが、やはり維月ぞ。闇寄りの性質。あれは十六夜に守られているだけの命ではなかったのだ。何事も必然なのだ。全ては意味があってそこに居る。意味のない命など、ただの一人も居らぬ。人でさえ、最後の一人まで責務を持っておる。居らねば誰かの学びが進まぬからこそ、そこに生まれて生きている。皆が、何かのために。全ての命が地上でそうして構築されておるのだ。意味のない誕生など、一つもないのだ。だからこそ、途中で投げ出すことは許されぬ。どんなに辛くとも、最後まで生き抜いてこそ黄泉での安穏が待っておる。ルシウスが、あのような状況で三千年待ったようにな。」

分かっていた。

分かっていたが、やはり深くは理解していなかった。

碧黎は、呆然と月を見上げた。

やはり全ては、必然なのだ。


維月と十六夜は、月でそれを聞いていた。

ルシウスは、属性は違うが十六夜と同じ責務を持って生まれた命だったのだ。

今回の霧の大発生も、結局十六夜一人では追いつかなかった。

十六夜は、ルシウスの存在意味のその話を、なので納得して聞いていた。

ルシウスという闇と一緒に、霧を人や神のために処理して行くのが、自分の責務だったのだ。

十六夜は、むっつりと言った。

《…なんでぇ。だったら、オレの命に闇を嫌悪するような感情を刷り込むなよ。判断誤るじゃねぇか。維月が居なかったら、オレは消すことしか考えなかったぞ。》

維月は、言った。

《だから、あなた生まれたてだったでしょ?お父様は急いでたし、本能的に霧とか闇とか消す命でないと、間に合わないって焦っていらしたのではないかしら。天黎様ってつくづく、めっちゃ見てらっしゃるわね。なのに言わないなんて、すごい精神力だと思うわよ。あれだけ皆が、消さなきゃ消さなきゃって空気の中で、あのままだったら有無を言わさずあの子達は攻撃されて消されてた。そう思うと、お父様と天黎様の会話をあの時、私が聞いていたのだって、偶然ではないのかなと思ったわ。私、あれを聞いて話を聞いてみないと、と思ったんだしね。》

十六夜は、ため息をついた。

《まあなあ。今天黎も言ってたじゃねぇか。偶然なんかないんだよ。わざとそんな会話を聞かせたってのが正解じゃねぇか。でもよー天黎からしたら、全部分かって見てたわけだから、こうなって欲しかったはずなんだよな。でも、全部オレ達の選択に任せてたわけだろ?維月がそれを聞いて、全く動かなかったら結局そのまま進んでたのにさ。もしオレだったら、眠ることになっても言ったな。絶対ルシウスを殺させたくねぇから。》

維月は、苦笑した。

《そこが命の成長具合の違いなのかもしれないわね。結局、私達って学ぶために生まれてるわけでしょ?そこに気付いて、こうして正しい道を自分で選んで進まなきゃならないのよ。ルシウスも、よく言うじゃない?それが選択だから、って。》

十六夜は、渋い顔をした。

《それさー結局ルシウスの方がオレより先に生まれてるわけだけど、ちょっとの差なんだよな。それなのに、あいつはあんなに悟っててオレはこんな感じ。なんか自信なくなるわ。》

維月は、言った。

《良いのよ、あなたはあなただし。ルシウスには、最初からデロイスが居たしね。なんだかそれも、決められていたような気がするわ。あなたはたった一人だったし、自分で価値観から作り上げて行かなきゃならなかったでしょう。ツクヨミに出逢ったのも、結構生まれてから時間経ってからだったからね。ルシウスが、神の教えで育った元は人に基本的な考え方や価値観を生まれてすぐから教えられていたのに、十六夜は要は自力で地上を見つめてそこから良い、悪いを自分で判断して行かなきゃだったわけでしょ?そりゃ差が出るわよ。》

十六夜は、ハアとため息をついた。

《だよな。オレにも教師をつけてくれたら良かったのにさ。このままじゃヤバいって思ったからお前達月の眷族ってのができたんじゃねぇ?島にも闇が出現したから。》十六夜は、考え込む顔をした。《…でもさ、だったら何で性質の悪い闇が出現するんだろうな?霧の質?ルシウスは、人や神の願いから生まれたんだろう。あんな性質の悪いヤツは願ってねぇだろ。》

維月は、答えた。

《それね、私思うんだけど、ルシウスが生まれた事で、霧達の中ではいろいろ刺激を受けて、集まったら固まるって流れが出来たんだと思うの。だから、ルシウスの後に生まれた闇は、みんな霧自身が勝手に集まって意思を持って来て闇になったわけね。だから、その霧の質がその性質に影響してるんだと思う。あの頃の島でもさ、戦とか多かったし、人も女子供を大切にするような風潮ではなかったでしょう。あまり成長してない命が多くて、善良でもか弱い人々はみんなつらい思いをしなきゃだったわ。そんな中で生じた闇なんか、良い性質ではないわよね。》

十六夜は、うーんと唸った。

《でもさ、マキシミリアン達は?あいつらも、デロイスに教育されたってだけであんなに素直な命に育つのか?》

維月も、顔をしかめた。

《私もそんなに分からないけど、これは想像よ?多分、霧が多く存在する地下に、ルシウスが籠っていたからじゃないかなって思うの。つまり、ルシウスの存在が、闇の発生を促したってことね。霧の質も、まだマシだったんじゃない?ルシウスの側に集まってる霧だもの。今の霧は、めっちゃ質が悪いとルシウスも言ってた。私も思うけど。》

十六夜は、ハアアアと大袈裟にため息をついた。

《滅多に真剣に考えないのに考えたから、オレ疲れた。ちょっと寝る。大丈夫だろ、ルシウスも居るし。》

維月は、呆れて言った。

《ちょっと!だからっていきなり丸投げとかしないでよ?ルシウスだけじゃ駄目だからあなたが居るって天黎様も仰ってたじゃないの!》

十六夜は、ゴロンと横になった。

《ここんとこ寝てなかったから疲れたんだよ。お前は寝てたじゃねぇか。地上は落ち着いてるよ。後は流れのままだって。》

維月は頬を膨らませたが、確かにその通りだ。

やっと、世の中が通常通りに動き出す気がした。

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