新しい編成で
そうやって、神世はこれまでにない緊張感から解放されつつあった。
ルシウスの城は、サイラスの領地の中に無事に建ち上がり、七人の長く籠っていた闇達は、そこへ移り住んで、時にヴァンパイアたちと交流しながら楽しく暮らしているらしい。
維月は、定期的にそこへと訪ねて、皆の様子を見て来ていた。
ルシウスは、落ち着いて地上の霧を操作して、十六夜の浄化を助けている。
不干渉地域の霧は、停戦してこのかた激減しており、それは人が激減したからだと知っている神達にとっては、とても複雑な事だった。
だが、残った人は善良な者が多く、戦が終わったことで他の土地からも人が流れ込み始めて、正しく神を信仰する心も共に移動して行き、他の地域と変わらぬ様子へと変わって行くように見える。
戦も、もう起こらないだろう。
なぜなら、世界中からこの地域の状況を憂いていた国際組織の者達が集まって来て、あのミサイルの撤去も進め、軍も解体され、戦えるような状況がなくなって行っているからだ。
これまでは、世界的に戦争というものをとっくにやめていたので、国際的に必死に止めていたが、それが聞き入れられる事もなかった。武力行使に出て来るので、現地に入ることすらできなかったのだ。
それが、今回軍が壊滅したことで、助かっていた戦場から離れた位置に居た参謀なども、国際警察に戦犯として捕まる事になり、遂に地上から、軍隊というものが消える事になったのだ。
なので、不干渉地域は、あの回りを囲んでいる、ディオン、アンドレアス、セレスティノ、ファウストが交代で見る事になった。
ファウストは、順調に回復していて、力は少し、失ってしまったものの、狂気に陥ってはいなかった。
宇洲も近いので時に応援を頼まれるらしいが、面倒だと愚痴っているそうだ。
維心はと言えば、時に月に話しかけては月の宮で維月と会うが、泊まって帰ってもまだ、同じ部屋で休むことはなかった。
維心自身が、どうあっても体の関係がなくても愛して行けると証明したいと思っているようで、維月もそれを汲んで、会ってもお互いの近況などを語り合って身を寄せ合って過ごすためで、そこには穏やかな空気と愛情しかない、心地良いものしかなかった。
激しく求めあって愛し合っている、という事ではないものの、これはこれでお互いの心だけを見ているようで幸福だ。
とっくに夫婦ではあるが、夫婦ではない。それに向かって、会っているだけの存在のような、そんな状況で、維月も構えることもなく縛られることもなく、心穏やかに過ごしている。
十六夜は、そんな二人を見守っているだけで、特にこうした方が良いとか、口出しはしなかった。
碧黎も天黎も、あれからルシウスに会いに行く事もなくなって、ただ見守っているようだ。
ルシウスは、あれから積極的に十六夜にも話しかけて来るようになって、十六夜もそれに、嫌な気はしなかった。
どうやらルシウスは、自分も意味があって生まれ、責務を持っている命なのだと言われたことで、これまでの陰の月以外には興味がないような考え方も、少し変化して来ているようだった。
ルシウスとも、維月は仲良くしているが、こちらとは夫婦というような空気感ではない。
ルシウス自身が維月の幸福を見守りたいという姿勢でいるので、維月も無理に押し付けて来ることのないルシウスを好意的に見ているだけで、男女の仲になろうとは、お互いに今思っていなかった。
ただ、時に唇を合わせたりは、ついやってしまう事がある。
そんな時は十六夜にも、呆れられたりしたが、ルシウスが慕わしい性質の命なのは事実なのだから仕方がない。
維月は、あまり深く考えず、これまで抑えつけていた陰の月のことも見つめ直して、これまでの人生で初めて、それを受け入れて素直に従って、生きてみようと思っている。
自分が、陰の月を受け入れなければ、回りも受け入れてはくれない、ひいては闇達も受け入れてもらえないのではないかと、維月も考え直したのだ。
こうして、陰の月も公に出ていて、それなりに律しながら生きている自分を側で見て、それでも維心との仲がまた近付いて行くのなら、それもまた選択だと思う。
維月は今、やっと本当の自分を認めてあげられたような気がしているのだ。
隠して生きても、大切な物を失うこともある。
今回の事件は、起こるべくして起こったことなのだと、十六夜も維月ももう、理解していた。
そうして、神世はまた元通りに戻って回り始める。
新しい大陸の神達も時々に訪ねて来るようになった島は、以前にもまして輝いて美しく、清浄な気に溢れて眩しいくらいだ。
新しい世界が、始まったのだと月の眷族たちは思って見ていた。
ここまでありがとうございました。次もまた、だらだらと続きますが、このだらだらが癖になるという奇特なかたがいらっしゃいましたら、よろしくお願い致します。ちなみに、また明日から始まります。続・迷ったら月に聞け19~新世紀 https://ncode.syosetu.com/n2666if/ よろしくお願い致します。これを書いている今は、5/1でありますが、予約投稿で先々まで書き溜められているので、お待たせすることも無いと思います。お一人でも読んでくださっているかたが居る限り、頑張って参ります。




