第2話『事故』
私には小さい頃仲間がいた。いつも一緒に遊んだり、イタズラをしたり今思えば大人からよく怒られていた記憶ばかりだ。
翔太は、その中のひとりでリーダー役だった。翔太には人を引き付ける力があったのだと思う。
だから翔太が家の都合で転校した時、私達は、アッサリ疎遠になってしまったのだ。
でも、そんな翔太が帰ってきた。
そして私の気持ちを救いあげてくれたんだ。本当に不思議な奴だと思う。
私は、もうマスクをしていない。
本音で話せるあいつがいるからだ。この数日は、私の周りはざわついていたが最近は普通に話しかけてくるようになって来た。
「琴音、今日帰り付きあってくれないかな」翔太が言った。
「い、いいけど、どこまで」
「俺の家!」
聞きつけた女子がざわついていた。これは別のザワザワだ。
放課後になり、私達は一緒に学校を出た。
「俺だからハッキリ言うけどお前の顔の傷、バスの事故なんだってな」
「うん、居眠り運転の車が突っ込んで来てあたしが小さい子をかばってたら自分の顔に大怪我して…これでもお医者さんがマシにはしてくれたんだけど」
「子供をかばったこと後悔してるか?」
「してるよ、だけどあの子が死んでたらもっと後悔してる」
「お前らしいな、何とかなるかもよ、それ、でもあんまり期待しすぎんなよ」
「えっ、どう言うこと」
「話してなかったけど俺の母親は魔女なんだよ」
完全騙されてるよね、私
それでもノコノコ付いて来てしまった。翔太の家を知りたかった事もあったからだ。
「ただいま、琴音連れて来たよ」
「おかえり、いらっしゃい琴音ちゃん、本当久しぶりね」
あれっ、翔太のお母さんまったく変わって無いんじゃないかな。
「こ、こんにちは、お久しぶりでっ…」翔太のお母さんは突然私を抱きしめた。
「つらかったよね。でももう救われてもいいんだよ」
よくわからないけどこうして優しく抱きしめられるだけで私は何だか救われるような気がして泣きながら「うん、うん」と返事をしていた。
翌日の朝、私は本当に久しぶりに自分の顔を見た。傷跡は相変わらずひどい気はする。
翔太のお母さんの話によると昨日の魔法陣で体の再生力を高めたそうなのだ。時間は、掛かるけど治るからと言っていたけど翔太のいう通り期待しすぎずにいようと思う。
「琴音っ、今日はちょっと相談があるんだけど帰り時間空いてる」
「うん、いいよ」
放課後になり翔太と学校を出た。
「お前、真理子の学校知らない」
「真理子って、マリちゃん?」
「そう浅田真理子だったよな」
「ど、どうしてマリちゃんを」
「昔の仲間がどうしてるかなと思ってさ」
「で、でも新しい仲間が出来てるよ。きっと」
「そうは言うけどお前だって俺の事覚えていただろう、今の仲間がいたって昔の仲間がいたら困るわけじゃないだろ」
翔太には、あまり真理子を合わせたくない気がしている。いい噂を聞かないのもあるがそれだけが理由じゃない。
きっと翔太は、真理子を救ってしまうのだろうから…




