表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
21/34

距離が近いですぅぅぅ!!

辺境伯邸の応接室には、重苦しい空気が漂っていた。

エミリアの父、ガイウス・ノースフェルト辺境伯は腕を組み、目の前の青年をじっと見つめている。

ルシアンは無言のまま立っていた。


その隣では、ヴィクトルが静かに紅茶を飲んでいる。

まるで裁判でも始まりそうな空気だった。

やがてガイウスが低い声で口を開く。


「確認したいことがある」

「花火を撃ち落としたのは、お前だな」

「あぁ。」


即答だった。

ガイウスは眉をひそめる。

「目的は?」


「爆発するからだ」

「爆発?」


「花火は頭上で爆発するものだと資料で確認した。」

ルシアンは、きりっとした顔で答える。


「花火は、そうだな。それが花火だ。」


「あぁ。ロゼッタだけではない。街の皆も危険だろう。だから。危険性を排除した」

くしくも、同時刻、母マリアベルが隣国の担当者クラウスの前で同じことを宣言していたことは誰も知らない。


その顔は、ガイウスが間違っているのではないかとたじろぐほど、

とても誇らしげで、口元には笑みさえ浮かんでいた。


「目的はよく分からないが、まぁいい。」

「ところで、あれだけの乱れ撃ちだ。何部隊編成で行った。他のものが止めたりは?」


「一人だ」

「……何?」


部屋が静まり返った。


ヴィクトルも、なぜか分からないが「うちの息子はすごいだろう」とでも言いたげな、自慢げな顔をしている。


ガイウスは聞き間違いだと思った。


「いや、待て、あの小さな球、しかもあの数だぞ?」

「はい」


「暗い空中、夜空だぞ?」

「はい」


「本当に、一人で?」

「はい」


ガイウスは混乱していた。

打ちあがる花火の球に、遠距離で命中させるだけでも、とんでもない技術だ。


(それを本当に、この男一人で......)


この国の宰相、切れ者と有名なヴィクトルの様子をうかがう。


「ははっ!」


ヴィクトルは嬉しそうに息子の頭をワシワシと撫でていた。


「立派になったなぁ!」

「父上と母上のおかげです。」


この男は本当に切れ者と有名なあの宰相、グランフェル公爵なのだろうか。

2人のあまりの空気の読めなさにガイウスはまるで未知の部族と対峙しているような気持ちになった。


そして次の質問を投げる。


「最後の乱れ撃ち、あれは何だ」


そう、クライマックスはまさに圧巻の光景

......になる予定だったと担当者から聞いている。


一度に数十発の球が打ちあがり、計200の球がおよそ1分もの間打ちあがっていた。


「200発だぞ?」

「あぁ」


「全部?」

「あぁ」


「……」


ガイウスはしばらくルシアンを見つめた。

そして、突然。


沈黙を破るように豪快に笑い声をあげた。


「ははははっ!!おまえ!!!化け物か!!!」

「すごいな!そんなこと、辺境の精鋭部隊でも難しいぞ!」


ガイウスはルシアンの周囲を一周してこの傑物を観察する。

その目は完全に珍獣を見る目だった。


「いやーー!すごい!久しぶりだ!こんなワクワクした気持ちになったのは!」


「ヴィクトル公、王都にこんな男がいたとはな!」

「本当に最初は驚いたが、気に入った!」


「飲め!!」


唐突な提案にルシアンが瞬きをした。

「……はい?」

「飲めと言った!」


「そんな芸当ができる男を前に、酒を飲まずにいられるか!!」


豪快だった。

さっきまでの重苦しい空気はどこかへ消えていた。


「おい!ヴィクトル公!こんな優秀な男、どうやって育てた!」

「どう、と言われてもな。妻が怖がりで、自衛のために小さなころから様々な武器を与えていたんだ。」


「ほぉ!王都の子育ては豪快だな!もっと詳しく話せ!」

「長くなるぞ」


「構わん!」

気付けば二人は肩を並べて酒を飲み始めていた。


武力の怪物。


権力の怪物。


方向性は違うが、どちらも自分の世界を支配してきた男たちだった。


意外なほど話が合う。

ルシアンは少し離れた場所から、その様子を眺めていた。


その時、ルシアンは部屋の隅、カーテンの陰に、何者かの気配を感じた。


「出てこい」

「......。」


ガイウスだけが目を見開いてルシアンを凝視していた。


「……気付いたのか」


しばらく沈黙が続いた。


やがて、カーテンの向こうから小さな震える声が聞こえた。


「ち……父上ぇ……」


ゆっくりと一人の少年が姿を現した。


ふわふわ頭を縮こまらせて

目は頼りなげに揺れている。


そして。

なぜか手にはメジャーを持っていた。


すると突然、

メジャーが飛び出した。


シャッ!


勢いよく伸びた先端が、ルシアンを指している。

「ひぃぃぃぃ……」

「目が、合いました!近いですぅぅぅ!!」


「……何だこいつは」


「私の息子、ローレンだ」

「少々気弱でな。怖がりなせいで今まで気配を殺したローレンを見つけられたものなど、家族しかいなかったのだが」


「少々?」

少年は、真っ青になっていっそ気の毒なほどに震えていた。


「7.4メートル……」

「7.3……」

「2……」


「うっ!うわぁぁああ!」


「正確だな」


ガイウスが誇らしげに頷く。

「昔からだ。見える範囲なら1cm単位。見えなくても2km範囲なら、たとえ後ろにいても1m単位で正確に言い当てるんだ!」


「はははっ!」

次はガイウスのほうが誇らしげに息子自慢を始める。


ルシアンが少し興味を示した。

「ほう」


「そうだ!ここまで射撃が上手い男などそういない」

「ちょうどいい!ルシアン公子!息子に銃を教えてやってくれないか!」

「ローレンもルシアン君のことを気に入っているようだ!はははっ!」


ルシアンはローレンを見た。

その目は恐怖にそまり、残像が見えるほどに震えている。

どうみても、気に入っているようには見えなかった。


だが、ルシアンのほうは違った。

「面白いな。」

「何が、ですかぁ……?」


「鍛えてやる」

「いや!!嫌ですぅぅぅぅ!!」


数分後。

屋敷の裏庭。

ローレンは銃を持たされていた。

震えすぎて、銃までカタカタと音が鳴っている。


「む、無理ですぅ……」

「あの的だ。撃て」


5メートルの位置に設置されている、初心者用の大きな的を指さす。


「無理ですぅ……」

「大丈夫だ。お前には才能がある。」


「はいぃぃぃぃぃ!!」

ローレンはとにかくこの場から早く逃げたい一心で、半泣きで引き金を引いた。


パンッ


乾いた銃声が響く。


全員が的を見る

当たっていない


「はっはっはっ!」

「さすがに初回では――」


ガイウスが豪快に笑った瞬間、

後方から盛大な破裂音が響いた。


ドガァン!!


振り返ると、そこには先ほど運び込まれたばかりの酒樽。

そこに見事に穴が開いていた。


酒が噴水のように吹き出して

ガイウスが酒まみれになっていく。


ローレンが青ざめた。

「ひぃぃっ……」


「はっはっはっはっは!!」

「面白い!!」

服をワインで赤く染めながら豪快に笑うガイウスに、ヴィクトルも吹き出していた。


「面白くないですぅぅぅ!!」


ルシアンだけは静かに、

ゆっくりとローレンに手を伸ばし、そっと銃を取り上げる。


「お前はもう、撃つな」

マリアベル「ヴィクトル様~~!花火に色が付けられるんですって!❤️」

「......。」

「あらまぁ~~~!!!なんて可愛い子!!」


ローレン「うわぁぁ!!距離0cmです!助けてーーー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ