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やっと会えましたわ!

北部辺境伯領へ到着したロゼッタは、エミリアと再会を果たしていた。


「ロゼッタ様!」

「エミリア様!」


ロゼッタは再会の喜びに、思わず駆け寄りエミリアの手をぎゅっと握った。


「お会いしたかったですわ❤️」

「私もですわ」



ふふふ、と二人で笑い合う。

久しぶりに会ったせいか、話題は尽きなかった。


道中の景色が変わっていた話。

家族が快く1人で送り出してくれた話。

花火の話。


気が付けば、ロゼッタはすっかり緊張を忘れていた。


そこに屋敷の方からふわりと柔らかな声が聞こえた。


「こんにちは」


振り返ると、一人の女性がゆっくりとこちらへ歩いてくる。


淡い色のドレスを纏ったその女性は、どこかエミリアによく似ていた。


優しそうな瞳。

穏やかな微笑み。


見ているだけで安心するような雰囲気の女性だった。


「お母様」


女性はロゼッタを見ると、ふわりと微笑んだ。


「ようこそ北部へ。エミリアからお話はたくさん聞いておりますよ」


北部辺境伯夫人、リディア・ノースフェルトだった。


ロゼッタは慌てて姿勢を正し、丁寧に一礼する。

「お初にお目にかかります、リディア様。ロゼッタ・ エル ・グランフェルと申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます」


そう挨拶すると、リディアは嬉しそうにふわりと笑う。


「そんなに緊張しなくて大丈夫よ」

「エミリアがずっと楽しみにしていたの」


「ロゼッタ様のお話もたくさん聞いているわ」

「まぁ……」


なんだろう。

とても優しくて暖かい。どこか安心する人だった。


(素敵なお母様ですわ……)



「そうだわ!」

「私の母からお土産を預かっておりますの!」


「まぁ!」


エミリアが目を輝かせる。

その顔を見て、ロゼッタは急に不安がこみ上げてきた。


自分の母はあのマリアベルである。

常識の方は、大丈夫だろうか。


ロゼッタは恐る恐る箱に指をかけた。


そこには、爆炎❤️と書いた発煙筒が10本。

とても綺麗に、並んでいた。


「…………。」


「ママァァァァァァ!!!!」

「申し訳ありませんリディア様!!これは、、違うのです!!」

ロゼッタは思わず、現行犯で捕まった犯人のように叫んだ。


「まぁ!!」


すると、リディアが口に手を当て感動したように目を輝かせていた。


「マリアベル様、覚えていてくださったのね!」

「何をですの!?」


「以前、マリアベル様に社交会でご挨拶した際に、

吹雪で遭難しかけた時に発煙筒が足りなかったとお話ししたことがありまして。

そうしたら、『煙なら私得意ですわ!』とおっしゃっていましたの。

あの時はよくわかりませんでしたが、きっと覚えていてくださったんですね。」


「吹雪で遭難?」

「ええ」


リディアは本当に嬉しそうだった。


「その時は7本しかありませんでしたもの」

「それで足りなかったんですの!?」


「実用品は助かりますわね。お母様!」

「ええ!」


北部の価値観はよくわからなかったが、2人が喜んでいたので、ロゼッタは納得した。


「母からは、もう一つ預かっておりまして、食料…と言っておりましたが、おそらくお菓子だと思いますわ」


ロゼッタは次の箱を差し出しながら、今更ながら食料と言う言い方に引っかかっていた。


「こちらが、お菓子です!」


今度こそ、きっと大丈夫。


たぶん。


ロゼッタは祈るように箱を開いた。



中には......


干し肉、乾パン。そして非常用塩。


「あっ」


ロゼッタはそっと箱を閉じた。

確かに食料だった。


リディアが目を潤ませる。


「まぁ……」

「なんて思いやりのある方なのかしら……」


「非常用塩まで……!」

「これなら冬も安心ですわね!」


「え?」


「去年は雪で三週間ほど孤立してしまってねぇ」


「保存食は大事ですわ」



北部は怖い。

ロゼッタは本気でそう思った。



すると、視界の端で何かが動いた。


ぴくっ。


柱の陰に、ふわふわとした髪の毛だけが見えている。


誰かいる。


目が合った。


さっと隠れた。


「今、何かいませんでした?」


「あら」


エミリアが振り返る。


「ごめんなさいね、弟なのですが、少し恐がりなんですの」 


「ローレン?」

「大丈夫よ、私の友達のロゼッタ様ですわ」


「………。」



「怖くないですわ。」


「………。」


しばらくすると、柱の陰からふわふわした髪が再び覗いた。

様子を窺うように視線だけがこちらへ向けられる。

今度は逃げずにこちらを見ていた。


そこには小柄な少年がいた。


ふわふわした髪。

どこか小動物のような雰囲気。


可愛い。

とても可愛い。


少年は意を決したように、一歩前へ出た。


ロゼッタは怖がらせないようにゆっくりと少年の方へ歩み寄る。


するとその時


「シュッ!」


少年はプルプルと震えながら、懐からメジャーを取り出してこちらに先端を向けてきた。



「ろ、6メートル97センチ……」


「?」


「あ、姉上!初対面の方が7メートル以内に入っています……」


「え、どうしたんですの?」

ロゼッタは困惑に思わずエミリアに確認した。


ローレンはぷるぷるしながら後退する。


メジャーはしっかり握ったままだった。


「ごめんなさいね」

リディアが苦笑する。


「この子の癖なの」

「癖!?」


「人と距離を測らないと落ち着かなくて」


「そうなんですの……」


ロゼッタは少し驚いたが、とにかく怖がらせてはいけないことだけはわかった。



「お会いできて光栄です、ローレン様」

「突然お邪魔してしまって申し訳ありません」

「でも、とても楽しみにしていましたの」


「よ、よろしくお願いします……」


「こちらこそですわ」


その笑顔を見て、少しだけローレンの肩の力が抜けた。


けれど、その手に握られたメジャーだけは離れない。

先ほどから時折、どこかを確認するように周囲へ視線を向けていた。


「姉上」

不意にローレンが口を開いた。


「ロゼッタ様がこの街に来てから、人が増えました。」



「はい?」


「西側1.24キロ先35名」


「東側1.76キロ先21名」


「さらに南西側1.6キロ先に1名、上方から気配を感じます」


「!?」


「エミリア様、何が始まったんですの?」


「この子は、昔から距離感覚と人の気配に敏感なんですの。きっと花火で人が増えたことに警戒しているんだと思いますわ」



ロゼッタは遠くを見る。

何も見えない。


ロゼッタは思った。


(エミリア様もリディア様もとても優しい方ですのに)


(やっぱり少し変なお家かもしれませんわ)


ルシアン

「……まさか、な。」

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